黒狼狐己録 -Life Harboring- 作:ふーか
物語の時期が現代になれば、少しはマシになる…と思います…。
次回、とあるお方に(違う意味で)暴走していただきます。
紅魔館に居候して一週間。そろそろ帰らねばと思い始めた夕暮れ時。フランの吸血に関してだが、何故か夜になり、朝起きると貧血になる為だいぶ引き延ばしてしまっている。フランも待ってくれてはいるが、申し訳ない。今日の夜、あげるつもりだ。
あれからパチュリーに本を借りたり、フランとチェスをしたり(奇跡的に勝った)、お菓子を作ってたりと。正直言えば、地霊殿での日常と大差ない普通の暮らしだ。住んでる者が普通じゃないけど。
「…フラン、私明日帰るね。血は…今日の夜」
「…もう帰っちゃうの?」
申し訳ないが、私はここの住人ではないのだ。いつまでも居座る訳にはいかないし、いつまでも仕事を放棄する訳にもいかない。帰らねば…ならないのだ。
「また遊びに来れるよ。我慢…出来るよね?」
「…うん」
頭をポンと撫でる。すると、寂しそうに、嬉しそうに微笑むのだった。
その後、折角だからとお菓子作りをフランに手伝って貰う事にした。紅茶好き(原料はさておき)だから、何か…紅茶風味のものを作ろうか。紅茶の原料…以前から試したかったが、良い機会だ。やってみよう。
作りやすさと、今回試したかったことのやり易さから、マカロンに。最近マカロンが多すぎて少し飽きてきた。シフォンケーキでも作ろうかな。ガトーショコラとかでもいいや。あ、でも生チョコも…やめよう、止まらなくなってしまう。もう止まらないけど。
基本の素材自体はいつもと同じ。だが、調味料に…
「私の血を加える、と…」
手首にすっと切り込みを入れる。ポタポタと垂れる鮮やかな血と痛みに目を瞑りつつ、数滴垂らしてから傷を癒す。勿論フランにも手伝って貰って作り上げる。着色料等は一切使用せず、見事な深紅に染まったお菓子。私の…血と瞳の色。ま、瞳は朝昼は緋色だけど。
勿論、血を入れてないものも作っておいた。一部に渡せなくなるし。
「フラン、味見してみて」
端数をフランにあげる。恐る恐る食べたフランの反応は…
「…っ!! 美味しい…!!」
かなり可愛かった。笑顔で跳び跳ねるフランに和みつつ、レミリアにもマカロンを届けに行く。無償で泊めてくれたのだし、しっかりお返しをしなければならない。吸血鬼なのだから、血入りのマカロンは相当美味しいものだろう。私には…よくわからないけど。レミリアの部屋の扉をノックし、乱入する。
「私、明日になったら帰るね。拙いものだけど…お返しに」
「ありがとう。別に気にしなくていいのよ」
マカロンを口に運び、固まるレミリア。お菓子と私を見比べ、目を見開いている。まさか、不味かったか…口に合わなかったのだろうか?
「ご、ごめんなさい…不味い?」
「…いいえ、とっても美味しいわ」
お菓子自体は好評のようだ。ならば別にいいのだが。何故そんなに驚く…?
首をかしげつつ、レミリアの部屋から退散する。次。
「咲夜さーん。メイド長ー。咲夜!!」
「…呼びました?」
居候から三日間くらいは仕事モードの咲夜だったが、四日目位から段々素が出てきた。私がアタックし続けた結果。敬語を使うも使わないのも咲夜はイメージ通りだが、私は敬語、あんまり好きじゃないから。フレンドリィ的な意味で。
「はい、居候した分のお返し。メイド達の分も…拙いけど、ごめんね」
「え? いえ、私は…」
「お客様じゃなくって、友達として受け取ってよ。ね?」
「…ありがとう」
苦笑して、咲夜は姿を消した。私としては、常に普段のように、素の状態で接してほしいというのが本心だ。私は客として来てないのだから。まあ、伝えてないけど。
後渡すべきなのは…パチュリーと小悪魔。魔女には必要ないのだが、気持ちとして受け取っていただこう。
「…図書館ここだよね?」
「うん」
扉をゆっくりと開け、パチュリーの姿を探す。魔力を辿れば発見は容易だ。
「パチュリー」
「…何?」
「これ、本とかのお礼。気持ちとして受け取っておいて?」
小さい小包に包まれたお菓子を手に、パチュリーは無表情。彼女は普段から表情をあまり変えない為、まあ何時も通りといえばその通りだ。
「…ありがとう。ありがたくいただいておくわ」
笑った…だと…!? 盗撮したい気もするが、もしそんなことしたらレーザーで焼き払われる為に自重しておく。くっ…!!
「小悪魔は…」
「そっちよ」
パチュリーが指を指した先には、小悪魔が積み重ねた本を両手に移動していた。あ~…あれ絶対落ちるよね。
「こあ!?」
…言ってる傍から落とすなよ。
溜め息混じりに落とされた本を片付け、小悪魔にも渡しておく。片付けとお菓子でありがとうございますを二度言われたが、まあ感謝されて嫌な気分は…前も同じことを言った気がする。
また本を落とされて片付け~なんてなるのは困るため、足早に退散する。次は美鈴。まだ日は出ているためフランを一度館に残し、門へ飛翔する。歩くより飛んだ方が楽。
「め い り ん…?」
「ひっ!? ろ、狼戈さん…!? ど、どうしました?」
また寝てるから悪いんだと思う。
私の起こし方に怯える美鈴を尻目に、ポーチからお菓子の小包を出す。丁度人数分と、余り三袋しかないため、美鈴に渡して今の残りは四袋。にゃん。
「これは…?」
「お菓子。お世話になったからね、ありがとう」
「いえいえ、此方こそありがとうございます」
美鈴には、迷ったが血入りのものを渡した(というか、血無しを一袋しか作っていない)。
そのままフランの部屋に戻り、私の仕事は終了。明日の朝、帰るだけだ。
「ほら…勿論、フランのもあるよ」
「え…? いいの?」
渡し忘れていたお菓子をフランにも渡す。これで血液はチャラに…して貰えませんよね、はい。
「…血、いいよ」
「ふぇ?」
マカロンを頬張りながら言葉を返すフラン。口に物を入れて喋る際、口を隠しているあたり、姉妹そろって上品だ。私も癖で隠してしまうけど。
「…でも…うん」
お菓子を飲み込み、私に近付くフラン。私に触れる指はとても冷たく、氷のようだ。
吸血…というにも、やり方がよくわからないようで。やり方と言うか、どこを吸えばいいのか、というか…。よくある感じなら、首? それとも、手首?
「…っ」
私の背中に腕を回し、首に牙を沿えるフラン。次の瞬間鋭い痛みが首に走る。それと同時に、何かを吸われている感覚に目を瞑る。
「ちょっと…吸い過ぎ…っ」
私に絡めた腕を離してくれない。無理矢理引き剥がそうにも、吸血鬼の力には勝てない。だが、流石にこのままでは吸い殺されてしまう…仕方がないと妖気を纏い、ゆっくりと引き剥がす。この子…自我、ある…?
「フラン!!」
「っ…!? わ、私…」
…自我が無かったと見るべきか。勿論、これは紫の悪戯ではない。私の…血の味故だ。媚薬的な私の存在は、幼い吸血鬼の自我を奪う程になっていた。やはり…悪化している…? このまま悪化していった場合…最悪の未来が想像出来る。私の…思い違いであることを祈ろう。
「あ、あの…ごめんなさい…」
「ううん、気にしないで。今度からは、私が何かに注いであげるから」
クラッと貧血のような症状にふらりと倒れそうになる。頭をぶんと振って目眩を振り払い、落ち込むフランに何かないかと話題を探す。
「…ね、フラン。チェスの続きしよう」
「…うん、今度は負けないから」
…うん、この子に暗い顔は似合わない。笑顔が一番だ。チェス盤を広げ、駒を並べる。さあ、第2ラウンドだ…!!
結果としては、私が勝利した。チェスで誰かに負けるのは、プライドが折れる。
その後調子に乗ってトランプをした結果、ボロ負けしたのは、また別の話。
あなたは吸血鬼です。
目の前には、美味しそうな狼の少女が佇んでいます。
1.襲う(吸血) 2.反応を見る 3.襲われる(多分、普通の意味で)
…え? 私ですか? ん~…3でs(殴蹴刺打
こんな作者ですが、よろしくお願いします(今更