黒狼狐己録 -Life Harboring-   作:ふーか

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どちらかと言うと短編的な…?

▼性描写注意▼


第五章 渦巻く各々の気持ち
四十一 白狼と黒狼


「…お世話になりました。また来るね」

「はい、何時でも。お嬢様もお喜びになりますので」

「…フランも。またすぐ会えるから、ね?」

 

 私の言葉に笑顔で頷くフラン。深々と礼をする美鈴。一週間、色々楽しかった。私としてもお礼を言いたい程だ。今はいないらしく、咲夜に挨拶出来ないのが残念だが、また会えるのだし、別にいいだろう。

 

「それじゃ…バイバイ」

「うん、バイバイ」

 

 フランに手を振り、飛翔する。折角だから、椛にも会いに行こう。

 

 

 

「も、椛…?」

 

 少し妖怪の山に寄り道して、そのまま帰る…予定だったのだが…。どうにも椛の様子がおかしいのだ。顔が赤いし、息も荒い。風邪でも引いたか…?

 

「大丈夫?」

「ああ…はい…大丈夫……です…」

 

 どう見ても大丈夫じゃないです。本当にありがとうございました。

 ふらふらと倒れそうになる椛を咄嗟に受け止め、抱き抱える。とりあえず、ここでは看病も満足に出来ない。一度、何処かへ連れて行こう。

 

「おや、黒い狼…貴女が狼戈さんですね」

「…? 誰?」

 

 突然、姿を現す黒い羽を持つ、一匹の少女。鴉天狗にして、幻想郷のブン屋。自称幻想郷最速の記者。鳥料理を嫌う鴉。勿論誰かは知っているが、実際は見知らぬ妖怪。一応、誰かを聞いておく。

 

「射命丸 文と申します。お見知りおきを」

「…やけに丁寧ね。天狗というのは」

 

 私が呆れる中、目の前に降り立つ文。椛(今は違うが)といい、この鴉天狗といい…何故こうも丁寧なのか。自分より上と見ると、こうなるんだったか? え、じゃあ私、椛に下に見られてるの?

 

「仲間ですので、私が責任をもって引き取ります」

「…私、こういうのは放っておけないの。大事な友達だし、私が面倒見るわ」

 

 文に一歩も引かず、反論する。特に意味はないが、こういうのは放っておけない。病気や怪我にも詳しいし、私が見るのが一番だろう? どこぞの竹林の診療所に行く方が格別にいいだろうけど。

 

「…何故そうまでして?」

「誰かを助けるのに、理由がいるのかしら?」

 

 足に妖気を込め、真顔で告げる。一気に地底まで跳ぼう。ここに上司がいるのだから、咎を食らうこともないだろうし。もし食らうようなら…例え賢者だろうが上だろうが神だろうが、全力で潰してやる。

 

「…仲間なら、上に報告頼むわ。あと…新聞に変な事書いたら焼き鳥にするわよ」

「おお、怖い怖い。わかりました、ではよろしくお願いします」

 

 物分かりがよくてよろしい。いちいち首を突っ込まれたら、たまったものではないから。特に上下社会の天狗には。

 

「…貴女とは、また今度話をしたいわね」

「ええ、お待ちしてます」

 

 鴉天狗の力を宿し、翼と両の足に、更に妖気を込めていく。ここから地底の穴まで…さて、跳ぶとしようか。

 

「…じゃあね、文」

 

 一言告げると、上寄りに地面を強く蹴る。重力と風が体を襲い、移動を妨げる。そんなのは効かないと翼をはためかせ、風に乗り、地底の入り口まで急降下していく。始めに上寄りに跳んだ理由は、強い風に乗る為と、降りやすいという理由があるのだ。そのまま地底の底へと落ち、風を切る。

 

「…変な病気じゃなけりゃいいけど」

 

 愚痴を言いつつも、私は翼を動かし続けるのだった。

 

 

 

 

「…っ。ここは…?」

 

 狼戈に会った以降の記憶が途切れている…。私の視界に映るのは滝裏の空間ではなく、綺麗に整えられた部屋。そして見慣れた、黒く可愛い狼。どうやら付きっきりで看病させてしまっていたらしく、私の隣で寝てしまっていた。私自身の体調は安定しており、全て正常だ。何故…こうなったのだろう。私の体調が崩れたのは、隣で眠る少女の事を考えた後。以前狼戈が言っていたが…所謂“恋煩い”というものだろうか?

 …そこまで考え、苦笑する。同性で、見た目は私より小さくて…そんな相手に…? だが、それに否定出来ない自分がいるのだ。整理出来ない、気持ちがあるのだ。

 自分では自覚していないが、欲等何もない仕事の疲れもあり、欲求不満なこともあるだろう。狼戈も私も、変な方向の話はあまり好きではないし。

 

「…んぅ」

 

 小さく声をあげる狼戈。今なら…襲っても気付かれないではないだろうか。こっそりと、唇を奪って…

 …私は何を考えているのだろう。看病してくれた相手を弄ぼうなど…

 

「…でも……」

 

 ーーーちょっとくらいなら、いいよね?

 

 横向きに寝る狼戈を仰向けに寝かせ、両の手を頭上で組ませる。れろりと頬を舐めると、ビクッと体を震わせた。それがなんとも可愛くて…いけないことだとわかっていても、止められない。

 狼戈の体に覆い被さるように抱き、頬を擦り付ける。犬や猫が、主人に体を擦り付けるように。好きな相手に構って貰うために。自分のものに…するために。狼戈の甘い香りが、意識を錯乱させていく、

 

「…椛」

「……っ!?」

 

 ふと我に返ると、私がそうさせた体勢のまま、じっと私を見詰める狼戈の姿が目に入った。狼戈は震えており、真っ赤な顔で視線を合わせてくる。次第に私の顔も赤くなっていく。

 

「あ、あの、その、私…きゃっ!?」

 

 狼戈が、唐突に尻尾を私の腹に巻き付けた。そのまま私を抱え上げ、起き上がる狼戈。耳の先まで真っ赤で、もう視線を合わせてくれない。

 

「…こういうのは、夜にしてね」

「…はい」

 

 私は、ただ肯定することしか出来なかった。

 

 

 

 

 八雲の屋敷にて。地霊殿で看るつもりだったのだが、やはり色々な動物が住んでいる以上、騒がしくなってしまう。病気は、静かな場所で治すのが一番だ。ただ…本人がこうも真っ赤では、病気なのか照れなのか、判別出来やしない。とりあえず念には念を、暫く此処にいて貰おう。

 

「…ご飯作ってくる」

「…うん」

 

 一言を言い残し、部屋から退室する。椛まで…椛まで私を…?

 冷静に考える。結局のところ、皆私を何に見てるんだろう? 家族か、友人か、知人か、道具か。そんなことは、考えても無駄だな。そう思い、溜め息混じりに歩き出したのだった。

 

 

 

「いいから、ほら、動かないで」

「い、いや、尻尾は…ひゃぅ…」

 

 風呂場にて。椛の背中を洗う中、悪気はないという演技のもと、十分に仕返しさせて貰った。

 

「…ん、よし。次は頭だよ」

「ふぇぇ!? 流石に自分で洗う…」

 

 椛の言葉を完璧に無視し、泡立てる。短めの髪を解かし、撫でるように洗っていく。途中途中で獣耳を擽りつつ、洗い終えた後には椛がぐったりとしていた。獣耳も尻尾も敏感だから、気持ちはよくわかる。ふはは。

 

「…狼戈。まさか人だけ洗っておいて、自分は自分で洗うとかないよね」

「さ、さて、さっさと洗っちゃおう」

 

 殺気混じりの声に、じりじりと浴場の隅へ逃げる。お湯に手を掛けた時、椛の手が、私の肩を掴んだ。あれ~? この状況、以前狐火鴉と風呂に入った時と同じだよね~? あはは…

 

「にゃぁぁ!? 尻尾は…ッ! 尻尾はだめっ!!」

「大丈夫だよ~? しっかり洗ってあげるから…」

 

 その後、私の悲鳴を聞いた藍が覗きに来て、苦笑しながらまた帰っていった。助けてと言ったら逆に参加して来そうだから、これも逆に助かった。でももう嫌だ。

 

 

 

 

 食事も終わり、風呂も終わり。後は時間が過ぎるのを待ち、眠るだけ。

 先ほど紫に許可を取り、空き部屋を借りた訳だが…何故藍がいるのでしょうか。

 

「…藍? なんで此処に?」

「ちょっと話しに来ただけだが」

 

 普通、話しに来たなら尻尾を巻き付けたりしません。らんしゃま。

 …何故椛にジト目で見られなければいけないのだろう。

 

「ご用件は?」

「む~…冷たいな、狼戈。暖めてやろうか?」

 

 何年経っても、何百年経っても、藍が私を襲う事は絶えない。ただ私が暴走する度に、その頻度は減っている。出来ればそのままやめてほしい、というのが本心だ。

 

「…藍。自重してくれないかな。私だってプライドも感情もあるんだよ」

「…すまん。つい…」

 

 しゅんとする藍に罪悪感を感じつつ、もう寝ようと椛に催促する。

 

「…後で遊んであげるから。ほら、おやすみ」

「ん、おやすみ」

 

 藍が笑顔で退室して行った。何あれ、可愛い。

 

「…さ、寝よう。もみ…じ?」

 

 ジト目で見つめ続ける椛。もう文句を言われるようなことはしていないし、されてもいない。どうしたのかと詰め寄って見ても、変わらずじとーっと見てくるだけだ。

 

「…狼戈」

「な…何?」

「私と遊ぼう」

 

 …は?

 いやいや、待て。何故そうなった。どうしてこうなった。言え。なんでだ。

 元々、椛はこういう話を嫌い、すぐに顔を赤くして背ける。だが、何故…?

 

「…嫌? 私とは…遊びたくない?」

「い、いや、そういう訳じゃ…きゃぅ!?」

「なら、いいよね?」

 

 椛が私に乗しかかり、胸に手を這わせる。突然の行動と、その表情に震える私の事など、椛は知る由もない。舌舐めずりするその姿に、私は戦慄するしかないのだ。

 

「やめ…て…!! 離して…あぅぅ…!?」

「逃がさない…離さない。一緒に居よう…ね?」

 

 私を抱き締め、頬をれろりと舐める椛。その温度に、柔らかさに体の力が抜けていく。椛はそのまま私の口を奪い、舌を絡め始めた。誰とも変わらぬ、くちゃ…という卑猥な水の音。混ざる唾液とその甘くどいような匂いに全て錯乱する。椛の尻尾はぶんぶんと揺れており、まるで嬉しがっている犬のようだ。無意識なのだろう。

 

「…いっぱい遊んであげるから」

「ゃ…嫌だよ…ひっ!? ん…はぅ…」

 

 抵抗は虚しく、無力と化す。椛の細い指は私の中に侵食し、掻き回していく。身を捩っても、涙を流しても、その“遊戯”は終わらない。私の反応を見て淫らに笑むその姿に、心体共に衰弱していく。

 

「ん…ぁ…!! いゃ…らめ…」

 

 遂に呂律が回らなくなる。尾が絡み、舌が絡み、二匹が絡む。永遠に続くかのような快楽に、次第に身を委ねていく。逆らうことなど…出来ないのだ。

 

「…えへ。狼戈と…一緒…♪」

 

 

 

 

「ぅ…ぅぅ…」

 

 液に濡れ、力の入らない体を無理矢理起こす。部屋や肌には卑猥で嫌な臭いが染み付いており、とてもじゃないが誰かを入れられる部屋ではない。無理矢理具現化の能力を発動させ、消臭剤と芳香剤を置いておく。風呂にも入らなければならないのだが…まったくとして力が入らない。指くらいしか動かせない。いつだったか…最初に藍に犯された時も、こんな風に暫く動けなくなったか。

 

「椛…椛ってば」

「ん…ぅ」

 

 私をこうさせた本人は、可愛らしい顔で熟睡している。助けは求められないし…数秒悩んだ結果、最後の力を振り絞って尻尾で裸体を隠し、また意識を投げ出すのであった。

 

 

 

 

「んぅ…?」

 

 上半身を起こし、首をぶんぶんと振る。私は一体何を…確か、狼戈とお風呂に入って、ご飯食べて、その後…。

 その後の記憶を思いだし、体が震える。私は…嫌がる狼戈を無理矢理…

 夢だったらと願って辺りを見回すと、そこには尾を体に巻き付け、眠る狼戈の姿がある。互いに裸体では、夢であるはずがない。全ては…現実なのだ。私が彼女を犯した事も、彼女がそれを嫌がったことも。当然のことだけど…とてもじゃないが、正面から顔を合わせる等出来ない。

 

「…椛? 起きたならちょっと助けて」

「ひっ!? ろ、狼戈…あの…その…」

 

 私が狼狽するのを見て、狼戈が苦笑する。

 

「…気にしないで。それより、動けないんだ。お風呂行こうお風呂」

「え? あ…うん。わかった」

 

 私の心配を他所に、笑顔で話す狼戈。狼戈の肩を支え、部屋を出る。

 

「…ん、とと。ありがと、一応歩けそう」

 

 狼戈が一人で歩き出す中、立ち止まる。狼戈はお人好しで、優しくて、自分なんかより他を優先する妖怪。きっと…本心私の事が嫌いでも、口に出さないだけ。もう…私なんかとは会わない方がいいのではないだろうか。

 

「…変な気を起こさないでね? これでも、私は椛のこと好きだから…さ」

 

 私の憂いを簡単に吹き飛ばす狼戈。笑顔で言われたその言葉に、敵わないと痛感する。やはり…素直に心に従おう。私は…

 

「さ、お風呂お風呂!! 行くよ~♪」

「…うん」

 

 ーーー私は、狼戈の事が、大好きだ。

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