黒狼狐己録 -Life Harboring-   作:ふーか

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どちらかと言えば、前回より此方と次回が短編的な感じですかね。
次回は…ちょいと描写が入るかな?


四十二 宴会と…

「…もう大丈夫?」

「うん…昨日はごめん。私…」

「ふふ、気にしないでって言ったでしょ?」

 

 妖怪の山にて。白と黒の狼達が話している。あの後、夜になるまで待ってから此処まで送って来た訳だ。昼でも良かったが…何度も言うが、念には念を。用心するに、越したことはないのだ。まあ、常識で考えれば日中に動くんだけどね。私が夜行性だから仕方ない。

 

「…じゃ、私は帰るね。また会いに来るよ」

「…うん、ありがとう。またね」

 

 後ろ手に手を振り、妖気を足に込める。そのまま地面を強く蹴ると同時に足裏で爆発させブーストをかけ、能力無しの最高速を実行。さて、帰るとしましょうか。

 

 

 

 

「お酒~♪お酒~♪」

「飲み過ぎはダメよ?」

 

 ど う し て こ う な っ た 。

 帰り道、ちょっと挨拶しようとヤマメの家(巣)にお邪魔したら、流れで以前約束した“パルスィを誘ってお酒”が遂行されてしまった。最初に飲んだ酒が血のワインという悲劇を行った後で…よく考えると、私少しも酔っていない。一度おかわりしたし、決して少量ではないのだが…アルコールが弱かったのだろうか。

 

「…なら、勇儀や萃香も誘って、地霊殿でやろうよ。燐達もいるしさ」

「ん、いいね。酒は大勢で飲んだ方が楽しいからねぇ…♪」

 

 とりあえず…さとり様にどう謝ろうかなぁ…ダイレクトでいいか。

 ハイテンションのヤマメと、それを保護者のように見守るパルスィを連れて、勇儀達を探す。どうせ、何処かの店先で飲んでいるに違いな…

 

「おお、狼戈。それにヤマメ達。珍しいな」

 

 …やっぱりな。

 

「ちょっと皆誘って酒って話になってるんだ。来る? 萃香も、隠れてないで」

「ありゃ? もうバレたか。ちっ」

「勿論、行かせて貰おうか!!」

 

 …萃香さん、何舌打ちしてんですか。私の反応は見せてあげません。

 ハイテンションが二人に増え、それを見守る保護者も二人に増えた。よく考えると、原作キャラのキスメに会っていない。首を寄越せぇぇぇ!!!…ハッ!?

 

 …仕方がない。もうさっさと行こう。周りの視線が気になる。

 

 

 

 

「え、宴会…!?」

「は、はい…その…ごめんなさい。ダメ…ですか?」

 

 無茶ぶりなのはわかっているし、唐突過ぎて失礼なのも理解している。

 

「…唐突にすいません。流れでこうなってしまって」

「…もう。まあ…たまには息抜きも必要よね」

「じゃあ…!?」

「ええ、いいわ。全員呼んで来るから、準備お願いね」

「…はい!!」

 

 …さとりの優しさに感謝しつつ、部屋を飛び出す。地霊殿の庭…でいいのか。ホールで待たせていたヤマメ達を連れ、庭へ向かう。広い庭には、植物や仕事場があったりもするが、妖怪化していない動物を除けば、余裕で暴れるスペースがある。

 正直必要はないが、レジャーシートを敷いて色々と準備を開始する。料理にお酒に出し物に…と共同作業で準備を進め、全員が集まった頃には全て完了していた。正直そんなに大勢いる訳ではないからね。

 

「…真夜中にいきなり誘ってごめんね? でも、楽しんで貰えたら…嬉しいな」

 

 全員に謝り、そして…

 

「…さ、どうぞ!! たんと召し上がれ!!」

 

 一気に弾く。静かに酒や料理に手を出すものもいれば、大声で笑い合っていたり(犯人は勇儀と空)、うつらうつらと眠そうな者もいたり(真夜中にごめんなさい)。

 まあ、私は隅で一人酒がお似合いだと思います。はい。

 

「そこ!! 一人で飲むんじゃない!!」

「ぇぇ…別にいいでしょ…んぐっ!? ちょっ、離して!!」

 

 勇儀に担がれ、ヤマメ達の所にポイ捨てされる。燐やパルスィから注がれる悪意丸出しの視線に震え上がり、即座に起き上がった。ポイ捨て、ダメ絶対。

 

「ほら、貸してあげよう。飲みな?」

 

 勇儀から盃を受けとり、困惑する。周りから飲め飲めと視線が注がれている上に、盃にも萃香が酒を注いでいる為に後戻り出来ない。元々強く、極上の鬼の酒を、更にワンランクアップさせる鬼の盃。飲んで死なない事を祈る。

 

「ん…く……っ!!」

「一気呑みとは…やるねぇ!!」

 

 誉められても何も出ないよ。

 

「美味しいけど…なんかフラフラする…」

「盃一杯で潰れられちゃ困るさ…♪ さあ、ドンドン呑みなよ!!」

 

 料理と酒を押し付けられ、仕方なく全て平らげていく。が…もう意識が定まらない上、フラフラするし自我も安定しない。酒は呑んでも呑まれるなとはよく言ったもので…ごめんなさい。呑まれました。丸呑みにされました。

 

「ふぁ…もう…らめぇ…」

「…勇儀。この子もう出来上がっちゃってるけど」

「鬼の酒を飲み続けたらそうなるよ」

 

 ふらふら重心が定まらない。ヤマメにぶつかったり燐にぶつかったり故意に狐火鴉の尻尾を触ったりと。全てわざとではないため、申し訳ないが我慢して欲しい。

 

「此方においで、狼戈。お姉さんが膝枕してあげようか」

「ふぇ…いぁ…いいれす…」

 

 勇儀を退ければ狐火鴉に絡まれ、狐火鴉を退ければ萃香に強制膝枕に処された。なにこれひどい。私は子供じゃないんだぞ~…でも、案外こういうのも良いかも知れないな…

 

「…今なら襲ってもいいかな?」

 

 …前言撤回。この鬼幼女信用ならん。

 ふざけつつ酔い潰れつつ…そのまま、私は酔いが覚めるまで萃香の膝枕にて横になっていたのだった(正確に言えば強制的に寝かされたのだった)。

 

 

 

 

「えへへー♪」

 

 眼前で満面の笑みを見せる、真っ赤な狐。その無垢な瞳に、ジト目で返す私はおかしいのだろうか。

 復帰だけは早く、数十分後に再降臨(!?)した私だったが、酔い潰れた狐火鴉に能力を発動させられ、現在私はミニサイズ。元々だけど萃香よりミニサイズである。先程からあっちにこっちにと引っ張り蛸にされている為、早く治して欲しいのだが…

 

「…治してよ」

「ん~…可愛いからダメー♪」

 

 貴女の方が可愛いと思うよ。きっと。だから治してくださいお願いします。

 

「ん~…可愛いな。人形みたいだ」

「んっ…!? ちょっ、やめ…」

 

 萃香に抱き締められ、両足が浮く。人形を抱くように抱えあげられる。本当に軽く持ち上げてしまう萃香から逃げようとするが、どうも私の天敵は鬼だけではないようで。

 

「狼戈は渡さないもん!!」

「え~? でも今私が抱いてるもん。ふふ」

 

 そう言って私を抱き寄せる萃香。空が涙目で此方を睨み付けているのがなんとも耐えがたい。可愛すぎると思うんだ。反則。レッドカード。

 

「…しょうがないな、貸してあげるよ」

「~♪」

 

 私はお人形ですか。何ですか貸すって。私は萃香の所有物か!?

 

「ん~…こんな良い匂いの人形いないよ…」

「…そういえば、狼戈はお酒の匂いしないね」

 

 まだ歯も磨いていないし、口臭系のタブレットだったりを食べた記憶もない。酒は結構飲んだから酒臭いはずだが…

 空に抱き締められ、ほろ酔いパルスィに頭を撫でられ、燐に頬をつつかれ、さとりに尻尾を撫でられて…多分相当羨ましがられることをされているけど、疲れきった私にとってもう苦行でしかない。助けてください。私は着せ替え人形ではありません。取り扱い説明書を読んでください。

 

「うぇぇん…みんな怖いよぉ…」

「大丈夫? 狼戈しゃま」

「大丈夫じゃな……橙!? なんで此処に…」

 

 ハッとして辺りを見回すと、ヤマメや勇儀と、酒を片手に盛り上がる九尾の姿が目に入る。冷や汗混じりに目を凝らせば、さとりと談笑する隙間妖怪の姿も。そして眼前の橙に限っては酔っているようで、呂律が回っていない。あれ、このパターンはまさか…

 

「狼戈しゃま…あそぼぉよ…♪」

「うわぁぁぁん!!! 誰か助けてぇぇ!!」

 

 酔いからか発情からか赤色の橙から逃走し、藍の尻尾に飛び付く。すると藍はにっこりと満面の笑みを見せ、私を抱き寄せた。ちょっと待て。この九尾…酔ってる?

 

「酒を飲んだ狼戈はかなり可愛いらしいな…ほら、飲め」

「いや!? もう酒はむごがっ!?」

 

 一升瓶を口に突っ込まれ、地獄を見ながら一気呑み。あれ…? 視界が…

 

「ふぇ…ぁにすんの…るぁん…」

「…一瞬で出来上がったな」

 

 ロリ化しているため、酒への耐性は更に下がっている。意識が定まらない。

 

「ふぇ…うなー…んにゃん」

 

 もう、自分で何を言っているのかわかんない。

 …ははっ、もう、どうにでもなれ。

 

 

 

 

「ぎゃお~♪」

 

 全員が狼戈の仕草と言動に和む部屋の中。可愛い。

 

「わざわざすまないね。邪魔して」

「いえいえ。皆喜びますので」

 

 勇儀達も何故か泊まることに。部屋が広いこともあり、館の主の優しさもあり。全員家から此処まで距離がある訳ではないために泊まる必要性はないのだが、まあ不可抗力ということで。紫様は帰ってしまったが。

 

「…きゃぅ!?」

 

 狼戈の尻尾で萃香が悲鳴を上げる。狼戈がごろごろと転がっている為、まあ当然と言えば当然の結果なのだが…

 

「…狼戈。ちょっとおいで」

「んにゃ~?」

 

 狼戈を呼び、尻尾を撫でる。普段からどういう手入れをしているのかは知らないが、毛並み、艶、全て完璧なもふもふ尻尾。私も自信はあるが、その面では正直勝てる気がしない。

 

「…狼戈様~!!」

「ぎゃぁぁ!?」

 

 …ごめん、狼戈。私が呼んだから。

 橙が狼戈を玩具にし始めたところで、ゆっくりと起き上がる。私は…やることがある。帰らねば。

 

「橙、帰るよ。離してあげて」

「あれ~? もう帰っちゃうの?」

「用事があるからな。狐火鴉…酔い過ぎでは…」

 

 酔っぱらい狐火鴉に苦笑しつつ、橙から狼戈を引き剥がす。さて、一仕事…

 目の前に現れた主の隙間に、にやりとしながら飛び込んだのだった。

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