黒狼狐己録 -Life Harboring- 作:ふーか
※かなりの独自解釈が含まれています。
五 運命と必然
「ぁぁぁ…お腹空いたぁ…」
隣に萃香がいたら満面の笑みでブン殴られるであろう言葉を呟きながら、道を歩いていく。基本的に今は夜に行動中だ。夜の方が比較的安全で、尚且つ私の毛並みの色、服装が迷彩となっている。闇に溶けるのさ。
…一応、いますぐにでも、食事を摂る方法はある。近くに人のいる民家がある。それを言えば、誰でも意味を理解するであろう。だが、私は元人間。人間を食うなど…絶対に無理だ。水や山菜等で保ってはいるものの、キツくてキツくて…妖怪って、そこまで食事いるものだっけ? 魔法使いとかはいらないはず…あぁ、もう訳がわからない。誰か東方図鑑でも持っていないのか。値段は体で…いや、嘘です。嫌です。
「んぅ…住居は都の近くがいいなぁ…」
私の耳と尻尾、どうやら妖力で誤魔化せるらしい。その妖力をまた妖力で誤魔化すのだから、なんともおかしな話だ。これで人間に化けて、食事を貰うのも…ああ、ダメだ。私にそんな度胸はない。
そして、都。もう年代は確定した。貴族でしか有り得ないような服装の人物と、また明らかに見たことのある(気がする)人物を見たからだ。あの人が不死になる前…そうか、多分あの竹取物語より前だな。まったく、あの少女(神)は何を考えていたのだ。今となってはこの札もそのせいでないかと思い始めているが、今はどうでもいい。どうせもう会わないのだし。
ああ、あの時こっそりついて行けば何処か都にでも行けたかも知れないのに。私ったら最強ね!!…違う意味で。ああ、悲しい。もう凍ってしまいたい。まるきゅう。
…ところで、まだ重要な事のひとつがわかっていない。
それは私の能力。程度の能力と呼ばれる固有能力。それがまだ、私にはわからない。
何の説明もなく、且つ人間だった頃の記憶以外が無いのでは、どうしようもない。私の能力、何なのだろう。あまり戦闘は好まないから、日常的に便利なものがいいなぁ。
ちなみに戦闘についてだが、萃香と別れて数日、既に何度も襲われている。毎度毎度逃げていたのだが、何となく妖力を全力解放したら、恐ろしい速さで逃げていった。普段から妖気全開の方がいいのかな。どうも普段の私は雑魚妖怪同然に見えるらしい。悲しい。
「…あ、あれ? あの灯は…」
街並みの灯。昔夜の山で見えた光景とそっくりだった。自然ではなく、規則的に並べられた灯達。どう考えても、あの灯は…
「…でも、陰陽師もいそうだよね。騙せないだろうなぁ……」
喜びつつ、落胆しつつ、呟きつつ。私はその灯目指して、歩を進めたのだった。
▼
「うん、ここでいっか」
なんともまぁ、自分の気楽さ、能天気さに失笑だ。
都から然程離れぬ森の中。誰にも使われておらず、人間の匂いもしない小さな木製の小屋。中に入っても匂い、気配共に問題なし。軋む床に目を細めつつ、中を見回してみる。どうやら何かの倉庫に使われていたのか…藁や埃が散乱している。基本的に何も無く、何も置かれていない引っ越したばかりの部屋のようだ。
「…ちょっとお邪魔します」
勝手に小屋に入り、勝手に住み始める者(しかも妖怪)の言葉ではないが、なんとなく言わなければならない気がした。それだけだ。やはり、生前(?)の感覚は抜けないもので。
「くぅぅ…!! まともに寝転がるの久っ々だな~…♪」
掃除もされていない小屋の中をゴロゴロと。まぁ不用心極まりない。
ある程度ゴロゴロとした後、尻尾をピンと立たせる。勿論、私がこんなボロ屋敷に住む訳がない。矛盾等、私の辞書にはない。
埃を尻尾で払い、小屋の外へ放り出していく。散らばった藁を束ねて隅っこへ放置。これだけで片付く、なんともまぁ質素な小屋だ。というか広過ぎるぞ。一人でこんな広さはいらぬ。
「とりあえずもう寝よーーー」
そう呟いた時、都の方角から轟音が響く。離れているのに感じる小さな地震そして巨大ながら、少し弱々しい妖気。ああ、これ、ヤバイ。私もうここ住めないよね。ああ、運がないなぁ。
そんなことを考えながら小屋を出て、都を見据える。瞳孔が途端に細くなり、暗闇に光る妖怪の瞳が、その轟音の主を捉えた。
あの尻尾…あの強さ…。どう見ても九尾そのもの。つまりは、だ。そう、確定だ。あれが誰なのか。もうわかりきってる。
いつか八雲 藍と呼ばれる妖獣、玉藻前がそこにいた。
藍しゃまと、玉藻前の情報ですが、pixiv様に頼りました。
“成る程„な内容が表記されていたので、一度目を通して見てはいかがでしょうか?