黒狼狐己録 -Life Harboring-   作:ふーか

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本編五十話目が何故こうなった…
暴走気味の性描写回。苦手な方は少し注意。且つオリキャラ注意。

正直、短編でもいいかも知れない回。
飛ばしていただいても構いません。


五十 影と快楽

 ここから頻繁に起きていく異変。原作で言えば緋想天や妖々夢、そして…地霊殿。

 正直な事を言ってしまえば、その異変の発端となる空と神奈子の接触を避けたい。“本来存在しない私がいる”からといって、原作を完璧に変える事など出来ないのだ。

 接触を避けるとなると、私が神奈子に直接交渉しに行く…それしか方法はない。発端になる時の核融合云々の時にはもう遅いのだ。やられてしまえばそれでおしまい…選択肢は、どう足掻いてもひとつしかない。

 もしそれで拒否出来て、空の姿が、その時点での本来の姿と変わったとしても…私は構わないし、寧ろそれを望む。こんな無垢で純粋な少女に、あんな事件は起こさせたくない。目指すは神、か…まったく、笑えない事実だよ。

 

「…己嵐? 何やってるの?」

 

 暗くなった一人部屋の中で、一人様々な案を練っていた私だったが、扉から響いたガタンという音と、本人からしたら聞こえてないつもりであろう密かな話し声に、痺れを切らして問いかける。今は既に、ほぼ全員が寝ている時間。起きているのはおかしいのだ。

 

「はわわわ…どうしよっ…ばれちゃってるよ…!?」

『静かにしなさい…そんな声で話してたら気付かれるに決まってるでしょう』

「やぁ、こんばんは。蛇さん達、何をしているのかな?」

 

 この世の終わりを見るような顔で此方を見てくる己嵐と、やれやれといった表情で己嵐に巻き付く己神を部屋に引きずり込む。机に置かれたスタンドライトが、鈍く暗く辺りを照らしている。

 

「…ご用件は?」

「へ、部屋に狼戈さんがいなくて、何…してるのかなって…」

 

 この子は基本的に嘘を吐かない為信じるが、それに構わず私に巻き付いてくる己神をどうにかしたい。私自身の力では振りほどけないのだ…妖気を使えば余裕で引き剥がせるが……

 

「心配かけてごめんね。私は大丈夫。もう遅いから、寝ておいで?」

「…ねえ、狼戈さん。ちょっと…話してもいい?」

 

 唐突に此方を見つめ、そう問うてくる己嵐。時間帯が時間帯の為に多少の嫌な予感は感じるが、とりあえずと話を聞いてみる。いつの間にか、己神がいなくなっている。粗方、夜だからといって地霊殿の外に遊びに行ったのだろう。一瞬の内に消えたりと、かなり気まぐれやさんだ。

 

「構わないけど…どうしたの?」

「狼戈さんって…好きな人、いるの?」

 

 意外な質問に、己嵐の顔を見る。先程からじりじりと近寄って来ているものの、恥ずかしそうにチラチラ見てくる姿は変わらない。

 

「…皆大事だし、好きだよ。異性に対して思うような好きは…今のところないかな」

「そう…なんだ……」

 

 何処か落ち込んだようにうつ向く己嵐。この子も誰に影響されたのか、結構情緒不安定になる時がある。それを治す時は、だいたい私が(性的な意味で)犠牲になるのだ。その時のみ私以外は受け付けないという、私からしたら残酷極まりない状況。私の経験上、狙ってやってるのでは等、気楽な事はいえない。本人がそうするしかないなら、私も従うしかないのだ。…この世界に染まっても、お人好しは治せる気配がないね。

 

「…な、なら、大切な人とか…」

「言ったでしょ? 皆大切なんだよ。動物も妖怪も、勿論、貴女も」

 

 私の答えが気に入らないのか、寂しげな表情のまま笑わない己嵐。また紫にでも悪戯されたか、と少し警戒してみるが、勿論札などない。それに紫が札を貼れば、今の私なら感知出来る。紫の妖気は独特なのだ。だから感じやすい。

 

「…狼戈さん、私がまだ蛇の時に、館から出て迷子になってたの覚えてる?」

「え? まぁ、うん。偶然私が外に出てた時に、白い蛇が這っててびっくりしたよ」

 

 何年前か忘れたが、以前外を散歩していた時、地面に何か白いものが這っているのを見掛けた。それは地霊殿の近く且つ、その時点で蛇からは妖気を感じなかった為、地霊殿に連れて来たのだ。地霊殿の中で見掛けることはなかったが、それ以降は見掛けるようになった。

 

「…己嵐って、元々ここに住んでた?」

「うん、ずっと」

 

 では、やはり迷子だったのか。助けておいてよかった。噛まれたところが痺れた時は流石に戦慄したが、ね。神経毒でも持っているのかこの子は。猛毒すら効かない私を痺れさせるとは…いや、根本的に一部の毒に耐性があるだけなのかも知れない。理解不能。

 

「お腹は空くし、暑いし、怖いし…その時に、狼戈さんが助けてくれましたよね」

「偶然、ね…結果的に良かったわ。噛まれたのは驚いたけど」

「ぅぅ…ごめんなさい……本能的に…」

 

 いつの間にかぴったりと私に寄り添っている己嵐。狐火鴉といいこの子といい…寂しがりが多い気がする。それは、たくさんの動物がいるからこそなのかも知れない。ともかく…! 私にとっては、性別も種族も関係なしに、全員大切な家族ですよっ!!

 

「僕、やっぱり…狼戈さん、食べていい?」

「…うん。どっちの意味かな?」

「……どっち…も…」

 

 以前椛と似たような会話をしたのだが…? あの時噛まれたのは、危険を感じたからではなく私を食べようとしたからではないのか、この白蛇。毒の牙は抜いてあげようかい?

 

「…なんで皆揃って、性欲を私にぶつけるのかなぁ…? しかも、ほぼ雌のみから」

「…狼戈さんも大変なんだね」

 

 同情こそしているものの、辺りの影が動き始めた。完璧にやる気満々だこの子。

 

「…まだ私はいいとは言ってないよ? まだ…っ!?」

「狐火鴉さんが、狼戈さんは無理矢理のが可愛いって言ってたから…」

 

 あの狐、本気で許さない。他の奴にも入れ知恵してるし。媚薬準備…

 

「ひぅ…ぁ…んっ…!! み、己嵐…痛い…っ!!」

「…ふふ、大丈夫。死にはしないからさ」

 

 私を恩人と言う割りには無理矢理な己嵐。恩人ってなんだっけ…?

 

「ぎゅ…ぁ…っ…いた…痛い…」

 

 襲いくるのは快楽ではない…正真正銘の“痛み”だ。私を縛り付ける黒い影の縄は、締め上げ、うねり、巻き付いていく。腕を吹っ飛ばされようが、四肢をもがれようが、(本来なら死ぬが)まだ我慢出来る。だが…こんな状況で痛みを我慢する術はないし、妖気を使わぬ為に処置や痛みの穏和も出来ないのだ。私はMじゃない。普通に本気で痛い。気持ちいい? ふざけんな。

 

「獲物は弱らせて…動けなくなったら……丸呑みに…♪」

 

 譫言のように喋り始める己嵐。捕食者の笑みを浮かべ、拘束された私の頬を舐める。彼女の目に、息を荒げて顔を赤くし、怯えた目で見てくる私は、どう映っているのだろう。

 

「はぅ…痛い…よぉ……んぐっ…」

「む…ふふ…」

 

 影の拘束を解かれ、押し倒される。既に全身が痛い。柔らかくて硬い影に縛られる感覚は、とてもではないが耐えきれるものではない。快楽と同じことだ。

 押し倒され、口に侵食する小さな舌。必死に舐め回してはいるが、その大きさからか全然届いていない。蛇の癖に…舌が短いのか。もうされることにはなれたディープキス…されるのには慣れても、その快楽に慣れたとは言っていない。口から糸を引く二匹の唾液。それを舐めとり、己嵐が淫らに微笑む。

 

「…み ら…ん…」

「な~に? 狼戈さん…大丈夫、とっても…気持ちよくさせてあげるから…♪」

 

 己嵐の言葉を引き金に、影が私の中を犯していく。生温いお湯が体を循環するような感覚、激しい快楽に身を捩り、逃れようとする。力を込めても影の縄は私の四肢を、体を拘束し、身動きなどさせてくれはしない。

 

「…なんで逃げるの? 気持ちいいでしょ?」

 

 影が体から出ていき、安堵したのも束の間、冷たく白く、細い指が中を愛撫し始めた。抵抗も出来ず、ただひたすら快楽を受け続けるのがどれだけ屈辱的で、疲れ、惨めか…普通の者ならわからぬだろう。無理矢理犯されることなんて、普通はないのだから。

 

「っ…!!」

「…鳴かないように我慢してるんだ。ふふ、いつまで保てるのかな…?」

 

 歯を食い縛り、ただ耐える。もう…妖気を使って逃げてしまいたい。

 

「やめ…てよ……己嵐…!!」

「…嫌だよ。ほら、ほら……」

「ひゃっ!? にゃ…うぐ…」

 

 無限に続く快楽の循環。身を捩っても、鳴いても、抵抗しても、全ては無駄なのだ。この状況では…私など、ただの獲物に過ぎないのだから。

 その後、夜が明けるまで私が逃れることは出来なかった。幸い始まった時間が既に早朝に差し掛かる時間だったためにまだ大丈夫だったが、これが真夜中からずっと続いていたとすれば体が壊れていたかも知れない。事後に見せた、私の怒りを孕ませた言動と態度に、己嵐は涙目になりながら自重すると約束してくれた。

 

 この千年と数百年で、私が学んだことがひとつある。

 

 ーーー夜は素直に寝ていた方がいいってね。




名詳細
・白音 己嵐(しろね みらん)
・黒音 己神(くろね みかん)
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