黒狼狐己録 -Life Harboring-   作:ふーか

59 / 96
どうもどうもです。
投稿時、色々あって前書き等出来ませんでした。申し訳無い。

これでこの章は終了です。色々引き延ばしてすみません。
以前から用意していた短編を投下し、そこからは暫く短編無しで進めます。

次回…以前出来なかったBAD END短編。


五十一 決意と異変

「あ~…ぎゃぅ!? う~…ひゃぅぁ!?」

「ふぇ!? え、えっと……ぬぁ!?」

 

 全身が軋む、痛む。己嵐にやられた快楽と痛みに襲われ、どうにも心中の霧が晴れなかった為に、空にマッサージを頼んだ訳だが、余計に痛い。揉むところも押すところも全然違う。妖怪の力的に骨が折れそうだ。リアル骨折り損。

 

「…う、うん、もういいや、ありがとう」

「うにゅ…ごめん……」

 

 しょんぼりとする空に余りのお菓子を渡しつつ、ふっと息を吐き出す。彼女に関わる異変まで、もう何十年もない…心中、かなり焦っているのだ。恐らく、神二人の神社は既に山上にあるだろう。殴り込み、か…命を懸けてまで殴り込みに行きたくはないが、私の私情がそうさせない。妥協? 知るか。

 

「それにしても…」

 

 どう切り出すか…。“空に手を出すな”と言っても、それはおかしい。空だけを狙ってやった訳ではないだろうし、それに、私がそれを口にするのは、“私が未来を知っている”と思われることになる。そういう能力だと説明するのもいいかも知れないが、仮にも神相手にそれは…ねぇ…?

 ならば、常に空と一緒にいる…それが最善案ではなかろうか?

 でも、それでは…ダメだ。考えるほどに狂っていく。

 

「…ねぇ、空」

「にゅ?」

「……ううん、なんでもない。お空、ちょっとおいで?」

 

 饅頭を頬張っていた空を呼び寄せ、ゆっくりと抱き締める。この行動に意味があるのか…そう問われても、私には何も言えない。それでも、長い尻尾と短い腕で包み込む。

 

「狼戈…?」

「・・・・・・」

 

 感じる空の体温と鼓動。何故か小さく小刻みに震える体は、優しさと暖かみを帯びている。

 

「お空…大好き」

「…私も、狼戈のこと大好きだよ」

 

 なんとしてでも…原作を変えてやる。彼女が損をせずとも、彼女が悲しまずとも…私は嫌だ。このまま…ずっと。それは私の我が儘であり、エゴであり、そして…叶えるべき夢であり…。例え身を…犠牲にしてでも。

 

「…お燐、狐火鴉。覗いてないで此方に来なさい」

 

 空と抱き合ったまま、扉に向けて無慈悲に言い放つ。その直後狐火鴉の悲鳴と転ぶような音、巻き添えを食らったのか、燐の悲鳴が響く。何をしているんだこの小動物たちは。

 

「いや~、いい雰囲気だったから入りずらかっ…!?」

「え、ちょっ、狼戈さん…!?」

 

 入って来た二匹を、尻尾で纏めて抱き寄せる。それぞれの鼓動。体温。表情。感情。私が何をしたいのか、何を目的としているのか…それは自分ですらわからないのだ。

 

「…私達、ずっと…家族だよね? 宝物、だよね…?」

『…勿論!!』

 

 三匹の声が揃う。その言葉に微笑み、うつ向いていた顔を上げる。私の中で、ひとつ…決意したことがある。この時間を…この生涯をーーー。

 

 

「…みんな、大好き」

 

 

 

 

 未来を知る私だから出来ること。流石に、緋想天等は防ぎようがないだろうけど…それでもやることはやるのだ。恩返しを…少しずつでも……

 

「…まあ、君達も仕事なら仕方ないよねぇ……手加減抜きで来なさい」

「仕方ないのに手加減抜き!? まぁ…正直それくらいがいいのかな?」

「まったく、巫女といい魔法使いといい狼といい…登山が好きねぇ…」

 

 

 妖怪の山の道中にて。最近働かせてしまっているが、藍に異変の状況を聞いて登山に趣、文と椛に遭遇した訳だが…仕事の関係上、形式的に私とは戦わなければならないらしい。文とも決して仲が悪い訳ではない為、通してやりたいのは山々だが、上から彼奴は通すなと言われているのだとか。私、悪事を働いた覚えはないのになぁ…食わず嫌いって奴かな? いや、食われるのはご勘弁。実際、天狗共相手なら私は食われそうだ。

 

「本当に手加減はいらないわよ。逆に、手加減したら勝てないから」

「ん~…正直わざと負けてあげたいんだけどね」

「…椛。一応上司の前よ」

 

 舌をちろっと出す椛。いつになく可愛いな、お似合い天狗め。

 

「…私は一枚。あの二人が既に行っているのなら…速攻で終わらせるわ」

「そう簡単には終わりませんよ…? 手加減なしで、というのなら」

 

 自称幻想郷最速の鴉天狗と、俊足の黒狼…果たしてどちらが早いのかね…♪

 

「いくぞっ!!」

 

 全方向へ弾幕を展開、その間に長刀の具現化を行い、相手の放つ弾幕への対応と同時に突っ込む。先手必勝、即座に終わらせていただこう、天狗さん達。

 椛の刀と長刀がぶつかり、甲高い金属音が辺りに響く。背後から迫っていた弾幕を察知して尻尾で弾き飛ばし、そのまま一回転して椛を弾き飛ばす。頭上からの風の斬撃に一瞬反応が遅れつつも回避し、周囲を囲んだ妖気の塊に長刀を一回転させて相殺、身構える二匹に、不敵な笑みを浮かべる。

 

「“轟符„黒焔殲戈」

 

 両手を合わせ、黒に染まる妖気を集めていく。二匹からの攻撃を相殺しつつの為時間はかかるが…次第に膨張していく妖気の塊は、遂に辺り一帯を包み込む程の巨大な球体へと化した。残念だが…無理矢理突っ込んででも止めなかった時点で…君達の敗けだ。天狗さん。

 

「轟け、焔の戈よ…」

 

 合わされた手が模すは狼の口。鋭く尖った爪が、己の放つ妖気に耐えられず小刻みに揺れる。さあ、いくよ…っ!!

 

「…っ!!!!」

「風が……っ!?」

 

 私を中心に、球体状に広がっていく黒い焔の渦。戈の如く突き刺さっていく炎に、二匹が戦慄し、悲鳴をあげる。ごめん、やり過ぎた。

 

「…降参。もう熱くてたまらないです…幸い木々がないからよかったものの…」

「周りに木があったら使わないわよ…それにしても、まだ全然余裕そうね?」

「ええ、勿論。目的があるなら、今本気で争う必要はないわ」

「熱い!! あ、熱っ、ひゃぁぁ!?」

 

 衣服に燃え移った火に、必死に消化作業を始める椛に苦笑しつつ、妖気で保護した尻尾で叩き消しておく。感謝されたかと思ったら怒られてしまったが…

 

「…じゃ、私は行くね。文、今度は真剣勝負よ」

「わかりました…次は本気でいくわよ」

 

 天狗二匹に別れを告げ、山上を目指す。誰にもばれぬよう。ひっそりと行くとしよう。

 

 

 

 

 魔理沙や私より霊夢の方が早かったようで、私と魔理沙は、霊夢と八坂 神奈子の弾幕ごっこを観戦することに。乱入すればいいのに…というかしていいだろうか。霊夢との戦闘後だったのもあり、この神社の巫女とは戦闘にならなかった。早苗さん…

 

「…霊夢の弾幕、嫌いじゃないなぁ」

「私だって綺麗だぞ? 実演してやろうか?」

 

 いえ、結構です。

 撃ち合い殴り合いをじっと眺め続けていると、段々と霊夢が圧し始めた。送られる密かな声援を受け、勝利の女神は霊夢に微笑んだ。流石は最強の巫女だな。遊びじゃなければ誰も勝てない…ねぇ? 血が騒ぐ…な。

 

「お疲れ、霊夢。流石だね」

「どうも。あ、狼戈、あんたお賽銭忘れてない?」

「忘れてない。めんどい。怠い」

 

 ガミガミ言い始める霊夢。…このまま奥に進んだら、あの蛙様と戦闘になるのだろうか。本題とは少し逸れてしまうけど…行こうかね。会ってみたいし。

 

「う~…」

「あ、巫女さん。えっと…東風谷 早苗だっけ?」

「ええ、そうだけど。なんでこんなに増えてるの?」

「ん~…私としては、仕事を盗られたから、神社を見物してるだけ」

「仕事泥棒はあんたでしょ」

 

 またも霊夢に怒られた。この巫女二人を擽り倒したい。

 霊夢と神奈子、早苗とで話を始めた頃、こっそりと奥へ進む。魔理沙が着いて来ようとしたが、来るなと一蹴した。奥へ奥へと進んでいくなか、目に入る変なものいっぱい。なんだかなぁ。

 

「…おや珍しい。神奈子が通すとは。しかも貴女、妖怪ね」

「いや、こっそり忍び込んだだけなんだけどね?」

 

 噂をすれば、ご登場のようだ。意外に身長が高く、早苗よりも高いようだ。神奈子より低いが。それはともかく、此方に興味津々といった様子で話しかけてくるこの神様は、自分が神だと自覚しているのか…。神だからこそ、信仰を集めるのだろうけど、こんなフレンドリーな神様…なんだかなぁ。

 ふとここで、ひとつの考えが私の頭中を巡る。この人(?)に予め、何かを言っておけば、あの異変が起きる確率は減るのでは…

 

「…今は暇だし、何か話さない?」

「ん~? 別に私は構わないよ? 久しぶりの客人だわ」

 

 …なんだかなぁ。

 

 

 

 

「表向きは神奈子だけど、本当の神様は私だよ」

「ふ~ん…大変なんだねぇ…」

 

 ごめん、かなり楽しい。

 ぺらぺらと繰り広げる、知らない人からしたら頭のおかしい世間話。それが幻想郷の日常であり、常識であり…。とにかく、愚痴を聞いたり話したりというのは得意な為、今は普通に話していたい。

 

「…狼戈は何処に住んでるの?」

「私は地底よ。地獄に使者的な…なんてね。ただの狼だよ」

「あら大変。私は地獄行きかな?」

 

 笑い声が反響する。楽しい話をしたいところだが、そろそろ…本題に。

 

「…諏訪子、私からひとつ、お願い事があるんだ」

「…何?」

「神奈子が変なことをしようとしたら、止めて欲しい。勿論諏訪子も止めてね。

 詳しくは言えない…でも、大事な家族が関わってる」

 

 私の言葉にうつ向く、裏の神様、洩矢 諏訪子。

 

「…私は過去に現実を見た。神は信じない…でも、友達や友人としてなら…

 私は誰でも信じる。仲間を裏切らないのなら。だから…」

 

 それは余りにも…理不尽で自分勝手な頼み事。実力行使を避ける為に、私が選んだ選択肢。例え神二人が相手でも、多少の犠牲はあっても私一人でなんとか出来る…そう思ってはいるが、命を懸ける勝負事はあまり好きではない。私が挑むのは、死ぬ心配がなかったり、信頼出来る者だけ…まあ、売られたら買う。とりあえず自分から仕掛けるのは基本的にはしないのだ。紅魔館の時は例外として。

 私の言葉を聞いて、暫く考え込んだ後、諏訪子が口を開く。

 

「…いいよ。代わりに、私からも頼み事がある」

「…何? 私は信仰出来ないし、周りの住人もそういうタイプじゃないから…」

「うんにゃ、違うよ。狼戈…」

 

 …その時点で、粗方予想が着いた。これは…避けられそうにない。それが遊びの範疇なら、私は全然構わない。寧ろ望む。神との…遊びを。

 

「弾幕祭りといこう!!」

「それでいいなら…幾らでも!!」

 

 睨み合う神と妖怪。さあ、始めようか。奏でよう…狼の旋律を…!!

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。