黒狼狐己録 -Life Harboring-   作:ふーか

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いろいろと誤字や日本語のミスが多いため修正。
何かあったらご指摘お願い致します。


六 黒い狼と玉藻前

「どうしようかな…」

 

 迷う所でもない気がするが、迷いまくる私である。加勢? いやいや、足手まといどころか殺されるわ。どちらに味方しても。だが、原作ではかなり好きなキャラなのだ。加勢出来るなら…いや、でも人間を敵に回すのも嫌だ。そういえば、彼女はまだ藍ではないはず。そもそも、式になる際のその名前が与えられたはずだ。まだ名前は違うはずなのだ。確か、玉藻前。色々と説が合ったため定かではないが、恐らくその線が濃い。夜行性の妖怪の目を侮らないで貰おうか。

 

「…でも、正直どうしようも出来ないんだよなぁ」

 

 人間に加勢すれば、恐らく私は藍と関係を持てなくなる。また藍に加勢すれば、人間に対する私の居場所が無くなる。もう決める必要性は無いだろう。申し訳ないが、無視だ。それに、人間に加勢した際にはまだ問題が生じる。妖怪扱いされ、私もやられるハメになるのは目に見えてる上、もし藍を退けたとしても、どうせ妖怪である私の道は無くなる。つまりどうしようもない。

 まだ会ったこともない相手に罪悪感を抱きながら、長い尻尾を体に巻き付け、深く眠ったのであった。

 

 

 目が覚めた瞬間に、私の意識が完璧に覚醒した。

 昨日感じた妖気が、すぐ近くに…近付いてきている。だが、昨日よりも更に弱々しい…勿論、この状況を黙って見る私ではない。私の手の届く範囲にあるというとに、見逃してなるものか。

 私が立ち上がり、小屋を出ようと扉へ向かおうと歩き出したその瞬間、扉が強く開け放たれ、その扉からは血に濡れた九尾がフラフラと入ってきた。

 

「追い詰めたぞ…!!」

 

 そして何やら人間様のご登場。ああ、これはダメだな。人間とは友好関係築けないかも。ま、私が今味方をするのは、目の前に倒れ込む御狐様だけだ。

 

「ッ…貴様、妖怪か」

「ええ、そうだけど。ま、貴女達に名乗る名などないわね」

 

 九尾様をお姫様だっこのように抱え上げ、小屋を出ようとする。勿論、この人間達が易々とそれを許してくれるとは思っていない。

 

「逃がさぬ。貴様事封印してくれる!!」

 

 そうか、問答無用という訳か。

 

 ーーーならば私も…いいのだよな?

 

 妖気を全開解放。その場にいる民衆全てを威圧する。その圧倒的な存在にへたり込むものもいれば、涙を露にするものもいる。なにこれ、おもしろい。

 勿論攻撃するつもりは更々ない。攻撃されても面倒だし。小屋を出て、森の方角を見据えた。さて、全力で逃げさせていただきやしょうか。

 地面に両手両足を付け四肢に妖気と力を込める。だが、この九尾様は虫の息。この状態で全力で飛べば、それだけで命に関わる。だがそんなものは妖気でなんとか出来る。尻尾で抱いた九尾様を大量の妖気で覆い、足へ更に力を込める。全ての力を受けた太股の筋肉が大きく隆起し、はち切れそうになる。四足歩行は初めてだが、本能的なもの。多分大丈夫。

 

 ーーーさて、行きましょうか。

 

 地面を全ての力を込め、蹴る。以前妖気を込めて走った時の、何倍何十倍ものスピードに、思わず籃を覆う妖気を増やしてしまう。落としたら洒落では済まぬ。そのまま遥か遠くの森へ着地し、そのまま走り続ける。四足歩行に何等違和感はなく、ただ走る。というか此方の方が速い。それよりも、だ。彼女を匿える場所は…

 

 ……そうだ。萃香といたあの空洞の洞穴。

 

 その結論に至らせ、私は更にスピードを上げた。

 

「大丈夫。だから…死なないで…」

 

 

 私は…どうなったのだろうか。

 戦いで死んだのでは…ああ、逃げたのだな。私は。

 そしてただ逃げ着いた小屋で倒れて…そこから先は覚えていない。意識が無い。

 

 不思議に痛みは無く、妖気は溢れるようにある。意識と視界がぼんやりするだけで、恐らく命に別状は無い。ふらふらと上体を起こし、辺りを見回す。すると、驚くようなものが目に入った。

 

 すぐ、すぐ隣に妖怪がいたのだ。その狼に似た少女の妖怪は私にもたれかかるように寝ており、そして何より、優しく私を抱き締めるような尻尾。その尻尾の主は寒そうに咳をしている。何故私を…そう思って尾を退けようとするが、その尾はまた私に巻き付いた。不思議に思いながらその妖怪の顔を見詰めていると、彼女の頬に…一筋の光が流れた。

 

「…独りにしないで」

 

 確かに私の耳にはそう聞こえた。恐らく恩人であろうこの少女。とても弱々しく、簡単に殺してしまえそうな少女。だが、その温もりは母親のようで、とても逃げ出す気にはなれない。恩人ということもあるのだが。

 少女を膝に寝かせ、尻尾で包む。するとさも幸せそうに、微笑むのだった。

 

 

 …とても悪い…思い出したくない夢を見た。内容を思い出すのも嫌だ。

 またこんな事は…起きないだろうか。いや、起きてはならない。起きさせない。絶対に…私が。

 

 そう決意を固め、ぼんやりとする視界を開く。そこにはいつぞやのように、無機質に映る岩壁。だが違和感が何個かある。まず私は壁にもたれて寝ていたはずで、寝相的に横に倒れていることはないはず。そして私が枕にしているもの。私の尻尾ではなく、柔らかい何か。次に、私を包んでいるこれまた柔らかく、気持ちのいい何か。それはところどころ波のような凹みが…8……個?

 

 そこまで考え、私の頭は真っ白になった。今私が枕にして、毛布のようにしているのはまさか…

 

「目覚めたか」

「きゅあ!?」

 

 思いきり飛び起きる。私の仕草に驚く様子も無く、私を寝かしつけていた張本人の九尾様は、ただ微笑みながら私を見ているだけだった。いきなり驚かされたが、とりあえず命に別状は無さそうで、安心する限りだ。

 あの後私がしたのは簡単なこと。私のもてる妖気を、全力で九尾様へ注ぎ込んだ。私の妖気がどれ程強いのかは知らないが、彼女を完治させた時、意識がフラフラと薄くなった。やはり、妖気を失うのは命を削るのと同じことだろう。そのまま彼女を凹凸の少ない壁に寝かせ、私も隣で、寒くないようにと尾を巻き付かせて眠った。こんな感じだろうか。

 

「あ、あの…わ、私…」

「気にするな。私が勝手にした事だ」

 

 そう微笑む九尾様は、大人っぽく妖艶で、女の私でも惚れてしまいそうだった…いや、ダメだ。流石に百合の花を咲かせるのはいけない。蕾で我慢しておくのだ…!!

 

「あ、あのですね、その…」

「…ありがとう。恩に着る」

 

 その突然のお礼に若干困惑しながらも、私は笑顔でこう言った。

 

「どういたしまして」

 

 

 彼女の名前だが、玉藻前で合っていたようだ。憶測通りで嬉しい限り。

 そして彼女の容態。妖気はあるものの、肉体的にも精神的にも疲労の色がよく見える。このまま行かせる訳にはいかないな、と、そう思った私は、彼女にしばらく一緒にいようと提案する。すると彼女は、恩人の頼みならばと、即座に承諾してくれた。優しい。

 

 …ただ、たまに私を見る彼女の眼が、時々獲物を見るような捕食者の眼になるような気がする。九尾だから仕方ないのだろうかと軽く纏めたが、やはり警戒すべきなのだろうか…。

 

「…狼戈?」

「え? あ、ああ、うん」

 

 いつの間にか、私は変な顔になってしまっていたようだ。即座に反応しつつ、どうしたのかと玉藻前の顔を見る。やはり、名前に違和感ありまくりだな。

 

「…ちょっとだけ…頼んでもいいか?」

「え? うん。いいよ?」

 

 あれから一日が経過している。あの人間達を驚かせた時、何故か空腹感が消えた。妖怪は人の恐怖心を糧にするというが、私もその類いなのだろうか。今は普通に腹減り状態だけども。ちなみに、あの小屋は…新しい住居は放棄した。ちくせう。

 私が敬語を使っていない理由は、簡単に私が慣れないからだ。敬語より、私語の方が話しやすい…気がした。それだけのこと。

 そして、玉藻前のお願い。それは…

 

「ちょっとだけ…血を貰えないか?」

「…へ?」

 

 その言葉は、以前の萃香とほぼ同じことだった。

 

 

 恩人である妖怪少女、咬音 狼戈と、一時的だが一緒に暮らし始めて一日。どうもひとつの感情が頭から離れない。

 

 …美味しそうで仕方がない。

 

 今まで見てきた人間や妖怪の中で、これ程までに美味しそうだと思ったのは今回が初めてだ。恩人に対し、失礼なことなのはわかっている。信用もしてるし、本当に感謝している。

 だがどうしても。あの血肉を貪りたいという感情が頭から離れないのだ。だから私は、質問を包み隠さずに聞いた。いや、正確には、本来の目的の基準を下げて聞いた、といったところか。

 狼戈からの返事はない。それもそうだろう。失礼極まりない。断られるだろうと十分承知している。少し間を開けて顔を上げる狼戈。その表情は、思い描いたものと違った。恐怖や拒絶ではなく、苦笑だった。そして狼戈の言葉は…

 

「いいよ?」

 

 短い、肯定を表す言葉だった。

 

 

 いやぁ、驚いた。まさか同じ事を言われるとは。だが、これで少しずつハッキリしてきた。どうやら、私は妖怪達に狙われやすいらしい。萃香は甘くて美味しいと、玉藻前は、濃厚でとっても甘いと。共通して甘いと言われているが、大丈夫か?

 また肩を抉られるのは勘弁して欲しかったため、手首を爪で切り裂いた。自殺行為だが、多少の貧血ならどうにでもなる上、傷口は妖気で簡単に塞げる事が出来る。代わりに、傷口が小さいために手首辺りが唾液に濡れているが。私はそこまで気にしないけど。

 満足そうな玉藻前に美味しかった? と聞くと、ゆっくりと頷いた。何故だろう。もう私は見境なしの変態で良い気がする。

 と、変な事を考えていると、玉藻前が想像もしなかった言葉を口にした。

 

「狼戈。お前は見たところ…血肉など食べた事がないだろう?」

「え? うん。なんで?」

 

 私の疑問に口を開く玉藻前。次の言葉で、私の頭が完全に思考を停止する事となる。

 

 

 

「私の血、飲んでみるか?」

 

 

 

 ……え?




 性的描写と残酷な描写の原因は主人公の体質故。
 苦手な方は、戻るか無視するかを推奨します。
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