黒狼狐己録 -Life Harboring- 作:ふーか
性的描写が苦手なお方は、次話から飛ばした方がいいかも知れないですね…
(ヒント?→緋想天の登場キャラと、異変前間での狼戈との関わり)
「…ん、雲の上は寒い」
「ん~…どうだろうねぇ」
よくわからないまま飛びつつも、到着する雲の上。このまま元凶のところまで…といきたいところだが、やはり私には“物事が順調に進む„という事が起き得ないようで。
「…竜宮の使いか。珍しいねぇ」
そうか、この人(?)の存在を忘れてた。私の能力関係上、強敵という訳でもないが…先程地味な大技を放ってしまったし、どうすべきか非常に悩む。戦うか否か…どう悩んでも、戦闘は避けられなさそうだが。
「…狼戈、先に行くといいよ。あたしゃ後から行くから」
「え? でも…」
「後でたっぷり報酬を貰うから」
まだ此方に気付いていない、雷を操る竜宮の使い、永江 衣玖を見据えながら萃香が行けと催促する。少し話してみたいところではあるが、行けと言われている以上行かねばならぬだろう。解決後に何時もの如く待っているであろう狐火鴉や藍の理不尽な強姦を想像して涙目になりながらも、更に上を目指し、飛翔するのだった。
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「…弱そう」
「なんだと」
堅物かと思いきや意外に馴染めるお方のようで。
緋想天、異変の元凶。天人である正直よくわからない人(?)。比那名居 天子。要石を周囲に浮かせたり持ってたりと先程から挙動不審だ。正直、萃香と私のポジションが逆だと素で思うのだが。戦闘慣れに関してはどう考えても萃香の方がしているし、私は然程強くは…最近、強いと言われて否定出来なくなっているのも事実だが。
「…ま、話は何時でも出来るね。今度暇な時にでも来ようかな…ん、ごほん。
比那名居 天子。異変の元凶である貴女に…制裁を与えます」
「面白い。かかってきなさい…格下の妖怪ごときが、私に勝てるのなら…ね」
その言葉…後悔させてやろう。未熟な天人よ。格上の存在を…思い知るが良い。
唐突に飛んでくる要石を力業で叩き落とし、萃香の時と同じく電気を纏い、筋肉を刺激する。元々、あのスペルカードはこの状態から派生する技だったのだが、落雷のせいで中断せざるをえなかった。よく考えると、よく無傷だったな、私。
地を蹴り、一瞬で天子の背後へ移動、妖気を軽く纏った肘で地面へ叩き付ける。その直後即座に足を振り上げ、天に向けた踵を降り降ろした。小さな悲鳴が聞こえたが、体が丈夫過ぎる。あまりダメージを受けていないようで。私もあの桃食べたいなぁ。見る限り、胸は大きくならないんだね。いや~…結構切実なのよ。私はあるけど。でも肩がこって困る。
「…その程度?」
「ん~? 今は速度も妖気もほぼ乗せてない挨拶代わりだよ~?」
「…なめやがって。いいわ、地中深くへ沈めてあげる」
そんなことしたら、藍や狐火鴉が発狂してしまうのでお断りです。
天子の繰り出す拳や蹴りを避けつつ流しつつ、どうしようかと思考を巡らせる。想像以上に…弱いかも知れない。見た目も余裕で可愛いのだから、大人しくしてればいいのに。ん~…最近、幻想郷の住人として完璧に馴染んできた気がする。毒舌とか。
「ん~…よし、そろそろ本気でいこうかなぁ」
「…っ!!」
苛々を滲ませる天子。やはり、まだまた幼いなぁ。私や萃香、勇儀みたいに、千年何百年も生きていればもっと強かっただろうに。まあ、感情的になるなと言われたら、私も無理だけど。
「…イラついてるねぇ? そんなに手加減されるのが嫌なら…いいよ、やったる」
「っ!? がっ…は、うぅ!!」
一発が終わればもう次の一発が入っている。空を駆ける轟雷の如きスピードに、天子は目ですら追えていないようだ。いや、正確には見えているのだろう。……残像が…ね。
衝撃に襲われ雷撃に襲われ…気の毒だが、この異変を引き起こした以上、ある程度の覚悟はあってのことだろう。ならば…我慢することだ。戒めを受けるがいい。
「…ふん、一撃の重さは軽い。見かけ倒しね」
「んにゃ? 妖気纏ってないよ?」
「…何処迄馬鹿にすれば気が済むんだ、お前は…!!」
策略の真っ只中だ、天子。怒りは判断力を鈍らせる…。挑発に乗れば乗る程…それは自分を追い込むんだ。心を読むさとりと、私の精神的な弱み。このふたつが重なっている為、精神的なことに関しては比較的熟知している。さとりに相談に乗って貰うこともある程だから。どうすれば相手の心を癒せるか、傷付けられるか、とか……ね。
「…ん、次こそ本気。…っ!!」
還付無き迄に叩き潰す。それだけを目標に、妖気を半分で解放する。弾幕ごっこ? 一方的な虐殺の間違いじゃないのかね。
「何処にこれだけの…がはぁっ!?」
「ほら、来なよ。全力だよ? ま、能力は使ってないけど」
小馬鹿にする態度をとる私に、天子のプライドが音をたてる。仮にも自分の力に自信を持つ天人。まぁ、ここまでやられればそりゃ感情的になるだろうな。
電光石火の如く近付き遥か上空へ蹴りあげ、一瞬の隙に更に地面へ叩きつける。纏う妖気は全力の半分もないが、それでも十分ダメージは与えられているようだ。
…ふと、眼下に私達を肴に酒を飲む萃香が見えた気がした。いや、見えた。
「“音符„レクイエム-序曲-」
具現化するは巨大なハープ。指で弾くと、そこから周囲に音符型の妖気の塊が飛び散る。
音とは振動。その振動に妖気を乗せ、極自然に宙へ放つ。音符型になるのは特に意識もしていない為関係はない。私としてはお気に入りだが。
「う…あぅぅ…!!」
「さっきまでの威勢はどうしたの? 貴女がやれっていったからやってるのよ?」
音と音で反響し合い、周囲に音符の弾幕は飛び散っていく。当たれば衝撃が内部を走り、鈍い痛みに倒れふす。静かな幕開け…序曲には相応しいね。
「さぁ、まだやるかい」
「…当たり前よ」
「タフだねぇ…やっぱり本気でやるべきなのかな?」
私の言葉が、遂に天子の逆鱗に触れた。
最早ルール等無視した、溢れるエネルギーの流れ。完璧になめきった結果がこれで…この子、結構強いな。
『全人類の緋想天』
天子の周りをぐるぐると動く剣。なんて名前だったか忘れたけど、気質を見極める云々…? なんだっけ、理解不能。
「ふふ、血がたぎるねぇ…私も、一匹の妖怪に過ぎないね」
「…懺悔の時間等与えない。惨めに土に還るがいい!!」
展開されるレーザー。もしこれがゲームならば、体力を削れば攻撃は酷くなる訳だが…さて、お相手が本気なら、私も本気でいこっかな…? 弾幕ごっこのルールを破ると、たまに紫にどやされてしまう為あまり好まないが、紫にとって天子は邪魔者。お咎めなどあるまい。私としても、私の全力を試したかった。そう…全力を。死なないでね、天人さん?
ーー生命「神羅万象を統べる者」
私の宿す能力は、限界がない。希にプラスとマイナス両方に働くものも存在するが、宿せば宿す程に力は増す。プラスマイナス…プラスだ。万物をその身に宿した時、私の力はどうなるか…
狼の形等原型も持たぬ、異形の化け物。幼き少女の瞳には、恐ろしい程の力が凝縮されていた。
「さぁ、終わろうか、この遊戯を…“獣符„エンドクロー」
幼く小さな掌。それは強大な力を帯び、次第に巨大な化け物の手へと姿を変えていく。それは自身の半分程の大きさ。
その手に集められていく妖気、霊気、神気…様々な力は、空間を裂き、命を裂き、全てを断ち切る。
「空に散れ!! 未熟者の天人よ!」
「地に散れ!! 狡猾な黒の狼よ!」
互いの技がぶつかる。鼓膜を破る程の破壊音。土を抉る粉砕音。空気を割る反響音。眩い閃光の中、無限につづくような時間を介し、やがて全ての動きが止まる。
「…終わったね、天子」
微動もせず倒れ伏す天子に、勝利の宣告をする。私は無傷、か…まったく、張り合いのある相手はいないのかねぇ…? 紫とか、戦ってみたいな。
「狼戈、お前さん…あれでも本気じゃないだろう」
「能力と妖気に関しては本気。ただ、夜限定の暴走が出来ないし…」
「…暴走って…あれ、何倍以上も跳ね上がってただろう?」
どちらにせよ、これが日中の全力。スペルカードは全力技ではないが、とりあえず手加減しないと殺しかねない。天人がどういうものなのか私は知らないからね。
「…ま、いい肴にはなったでしょ。萃香」
「ん、だねぇ…わっ!? 大丈夫かい!?」
能力の反動は尋常ではなく、力が一切入らない。指すら動かせぬその状況に苦笑しつつ、萃香に身を委ねる。さて、天子は萃香に任せるとして、私は帰ろうかねぇ…。
「これにて、一見落着♪」
「おー♪」
萃香に抱き上げて貰いつつ、天子も連れて地上へ戻る。今回の異変、結構楽しかったね。さ、私は普段の日常に戻るとしようか。空のことも警戒しつつ。
…その時、私は一瞬の胸騒ぎを感じた。よくわからぬ寒気…疑問に思いつつも、気のせいだと振りきるのであった。
「…今なら犯しても、反抗されないね…♪」
「…え」
強いのに優し過ぎる主人公にとって、強さとは、いったいなんなんでしょう…?
他人を守る力なのか、それとも……
え~、(性的には)次話からこの章の本編です~。