黒狼狐己録 -Life Harboring-   作:ふーか

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やっと更新できました。申し訳ない。

はい…新章です。
この物語も、段々と終わりに近づいてきました…
半分越えた…かな? 結構曖昧な感じですが。


この章は2~3話程続きますっ。
次回は…戦闘よりの描写になりますかねぇ…


第八章 地底の異変
五十六 異変と黒狼


「…燐」

「あいや、なんだい? 深刻な顔して」

 

 とある日の夕暮れ。仕事も終わり、頼まれた浴場の清掃を終えた今日この頃。湯船に浸かって一休みと、至上の時間…なのだが…。

 

「ちょっと…警戒してて。胸騒ぎがする」

「…狼戈の勘はよく当たるんだよね」

 

 どうにも…胸騒ぎがして仕方がないのだ。よくない事が起きるような予感が…。胸騒ぎで、真っ先に予測出来るのが地霊殿の異変。それに…確か時期も最近。恐らく…もう起きるのだろう、あの異変が。野性の勘か虫の知らせか…落ち着けない。

 長く浸かる事もなく浴槽から上がり、手早くお湯を落としてから着替える。普段のパジャマ姿ではなく、体の要所要所を狼の体毛が覆う半獣状態。狐火鴉に襲われるかも知れないが、まぁ仕方ないと言える。私は慣れているもので。

 

「ん…?」

 

 そもそも、あの異変は何が発端で…? 神奈子が関わることは知っているが…いったい、どのように始まる?

 私が知る限りでは、この異変は空が暴走し、それを止めてもらうという目的で燐が地霊を外に逃がした(?)。それが原因なのだが…空はどのように神奈子と干渉したのか。

 …考える程に既知だったことすら混乱し、訳がわからなくなる。流石にさとりに相談する訳にもいかないし、地霊殿の…家族のことは私達が自力でなんとかしなくては…。まあ、それは“事前に防ぐことが出来たなら„という話だ。勿論、そうするつもりだが。

 

「…お空?」

 

 館の中を探し回ってはいるものの、見つからない。空の仕事は…まだ終わっていないのだろうか? 私は他者の仕事に関してあまり手を出していない為よくわからないのだが…。

 埒が明かないと目を瞑り、精神を統一、全ての集中力を聴覚と妖気に込めていく。空の声と妖気の色…

 

「…っ!? この感じは…!!」

 

 感じたことのある、神の力。それが今…空のところに。もう間に合う筈もない…だが行かない訳にはいかぬ。偶然会った燐の手を無理矢理引っ張り、空の元へ駆け出した。

 

 

 

 

「…お空、大丈夫?」

「うぅ…う~?」

 

 上半身を起こすと力なく項垂れる空。しかしその後すぐに起き上がり、普段通りの笑顔と化した。倒れていた時は少し殺意を抱いたが、彼女が無事ならそれでいい。だが…異変は、避けられなさそうだ。

 

「見てみて!! ね、凄いでしょ!?」

「…そう…だね」

 

 本人が幸せなら…それでいいのかも知れないが、それでも避けられるはずのものを避けられなかった後悔は消えない。私が単に抱え込み過ぎているだけなのかも知れない。だが、この状況でポジティブな感情を引き出せる程私は強くなれない。

 

「…狼戈、どうしたの? 元気ないよ?」

「っ…ごめん、なんでもない。わ、私、部屋にいるね」

 

 全てに目を逸らし、ただ逃げることしか出来なかった。

 

 

 

 

 長年避けたいと思っていたことが簡単に起きてしまう現状、深く考えるのはただの馬鹿…そうは言っても、やはり霧が晴れない。先程から空と燐は楽しそうに話しているが、部屋の隅で丸まる私には、気を遣っているのか話しかけることはない。

 

「…ねぇ、お空。自分の姿が変わってさ…嫌じゃないの?」

「え? う~…全然。これとか、外せるよ」

 

 …取り外し式ですか、そうですか。…本人が幸せなら…きっと大丈夫だよ、ね。

 数時間は要したが吹っ切れた感情を露に、燐に突っ込んだ。

 

「ぐっ…!! ちょいと狼戈!? …よし、いいよ。そんなに遊ばれたいなら」

「ひにゃ!? い、いや、やめ、ふわぁぁ…っ」

 

 そういえば私、服着てませんでした。

 燐に弄ばれつつ、空に乱入されつつ…。唐突に過ぎた異変の原因の発生に憂鬱になりながらも、楽しい一夜を過ごすのだった。…狐火鴉はいつの間にかずっと寝ていたが。

 

 

 

 

「狼戈…狼戈!!」

「ん……っ!?」

 

 燐に無理矢理起こされ、どうしたのかと燐を見る。理由は彼女の表情を見れば一目瞭然だった。始まってしまった…? 出来れば避けられるように、そう思って昨晩色々誤魔化したのだが、無意味だったようだ。

 

「お空が…っ!!」

「だいたい…ん、理解した。どうする?」

「お空を…消されたくないよ…っ」

「ん~…燐、怨霊というか地霊というか…ね?」

 

 こうなってしまった以上…原作に忠実に行動した方がよい、それは既に理解している。私がいても、どれだけ対策しても、基本的な異変や事件は全て起きてしまっている。不思議と…本来の物語に直されていっている。ならば、それを無理に壊す必要はないだろう。今回は特別だ…避けたかったのに…。

 

「…っ、わかった」

「よしよし。大丈夫だよ、何があっても…私が守るから」

 

 私の言葉の意味を察した燐が走り去る。私が空を止めるのもひとつの手なのだが…やはりそれは止めた方がよいだろう。直感がそう言っている。正直言うと、さとりに全て報告するのが一番だと思う。さとりがこんなことを理由に、空を消すはずがないのだ。一緒に住んでいて、それは確信していること。だが…何度も言うが、原作には従った方がよいのだ。勿論緋想天で私が天子の巻き添えをくらったように、全てプラスに働くという訳ではないが。

 動き始めた異変。はっきり言ってしまえば、私の出る幕などない…。だが…それでも、家族のことは放っておけない。原作に従い…されど私に出来ることをしよう。

 

 

 

 

「己嵐は動物達を避難させておいて。危険になるから…狐火鴉は私と」

「…わかった」

「了解しました…空さん、大丈夫なんでしょうか…」

「大丈夫…本人には害も無さそうだし」

 

 …地霊殿の中は、一部戦闘になるだろう。動物達の安全は確保しなくてはならない。住人達に関しては、既に仕事場から離れるなと伝えてある。独断で仕事を放棄させる訳にもいかず、それに今回の目的上、戦闘は少ない方がいいのだ。

 

「…狼戈さん、際どいです」

「ん。色々隠してるよ?」

「いや、そういうことじゃなくて…ほぼ裸じゃないですか…」

 

 体の一部に包帯を巻いただけだが何か。

 

「…襲いたくなるのでやめてください」

「別に襲えばいいんじゃない? 今の私は吹っ切れてるから逆に襲うわよ」

 

 何を考えたのか少し淫らで嬉しそうな表情を浮かべる狐火鴉に若干引きつつ、地霊殿の外を見据える。私が地底側の以上、異変解決のサポートは出来ない。さて、私にはまだやることがある。行くと…しようか。

 

 

*

 

 

「…やけに妖怪共がいないわね」

「ああ…そういや地底って…狼戈が住んでるところか?」

「…彼奴も変なところに住んでるわ」

 

 霊夢の言葉に少し共感しつつ、奥を目指す。土蜘蛛だったり嫉妬妖怪だったりを薙ぎ倒して進んではいるが、それ以外の妖怪にほぼ出会わない。ここまで誰もいないところなのだろうか?

 

『あ~、マイクテストマイクテスト』

「聞こえてるわよ」

「何も聞こえてないぞ?」

『嘘を吐け嘘を』

 

 霊夢の周囲に浮く玉と、よくわからない機械から響く声。正直いらない気がする。

 にとりと文とでサポートをして貰っている訳だが、先程から邪魔なのだ。暇も霊夢と話すか適当に弾幕をぶっぱなすかで潰せるし、話し相手には生憎困っていない。

 

「…あれが旧都?」

『あややや…そうですね、あれですあれ。ささ、突っ込んじゃってください!!』

「なんでそんなにテンション高いのよ」

 

 呆れる霊夢をひっそりと鼻で笑いつつ、旧都と呼ばれた街に突撃する。

 いざ入ってみると中は空っぽで、住民の姿など見えない。不意打ちを警戒しても無駄なようで、本当に完璧な無人。気配はするため粗方家の中にいるのだろうが、何故…?

 

「おやおや…来客とは珍しい。しかも人間じゃないか」

 

 ふと路地から現れるは、赤い盃を片手に此方を見据える妖怪。不敵な笑みを見せ、舌なめずりする姿に威圧感を感じる。

 

『…まずい』

『…まずいね』

「…まずいな」

「ちよっと。三匹揃って勝手に共感しないでよ。魔理沙はわかってないでしょ」

 

 さらっと私を匹で纏める霊夢を完璧に無視しつつも、即座に戦闘に移れる体勢に構える。もしや、住民はこいつに怯えて…という訳ではないか。

 

「ま、何もしないから通りな」

「…は?」

 

 明らかに強さを感じるというのに、さらっと通行許可を出す妖怪。何か裏があるのかと疑ってみるも、そのような素振りは見せない。

 

「そうだ、伝言。さっさと館に来いってさ」

「?」

 

 意味深な発言をし、去る妖怪。結局のところ何がしたいのか、まったくとしてわからなかったのだが。とりあえず、行く先は決まった。館…か。

 

『…あれ? 行っちゃった?』

「行ったわ。品定めって感じかな。まぁいいよ。早く行きましょう」

 

 霊夢に急かされる前に、奥を目指し飛びたつのだった。

 

 

 

*

 

 

 

 地底奥深くに存在する、綺麗な館。ずかずかと入り込んだはいいが、本当に何もいない。虫一匹いないのでは探しようがないな。はてさて、どうする。骨董品でも盗んでいこうか?

 

「…いらっしゃい、人間さん」

「っ!? 何処だ…?」

 

 不意に響いた声に辺りを見回すが、何もいない。気配は感じる…とても弱いが。

 

「…早く出てこないと館ごと吹っ飛ばすわよ」

 

 早くも痺れを切らした霊夢が、苛々を孕ませた口調で言い放つ。だが、反応はない。霊夢と目を合わせて頷くと、八卦炉を構えた。

 

「そんなことしたら、本気で殺すわよ貴女達」

「なっ…狼戈!?」

「あら、私は地底住みって言ってなかったかしら? ここは私達の家よ」

 

 やけに上から目線に、煽るような声色で言葉を連ねる狼戈。彼女の性格上まさかとは思うが、この異変の元凶は狼戈なのだろうか。だとしたらまずい。冗談抜きで、強がりも抜きで…勝てる訳がない。遊びの範囲でも…。

 

「いいえ、私は元凶じゃない。さあ、どうする? 一戦交えるか、このまま進むか」

「…やってやるぜ」

「ちょっと、魔理沙?」

 

 面倒事は避けようと私を睨む霊夢。だが、今の私は…勝てないから、という理由で戦わず進むことになる。そんなの認めない。上の存在だからこそ、絶対に勝たなきゃ気がすまない。

 

「仕方ないわね。狼戈、暴れる分には構わないでしょ?」

「嫌と言っても暴れるでしょう。かかってきなさい」

「まあ、私は観戦するけどね」

 

 余裕で言い放つ狼戈。絶対に後悔させてやる…強い決意を胸に、私は八卦炉を構え直すのだった。

 

 

 

*

 

 

 

 どうしてこうなった…?

 あれから私がした行動は至極単純だ。旧都へ向かい、住居から出ぬようにと住人達に呼び掛けた。勇儀の協力もあり、戦闘を無くしたのだ。ヤマメとパルスィは…残念ながら間に合わなかった。

 ここまではいい。当初の予定通りだった。だが…何故戦闘になるのか。霊夢の性格上戦闘は避けると思ったのだがどうやら予測ミスだったようで。魔理沙の瞳には殺気に似た何かが浮かんでいるし、心を読んでもその通りだしでもう恐ろしい。本当に、どうしてこうなったやら。

 

「“狼符„黒雷牙」

 

 先手必勝、どうせやるなら負ける訳にはいかない。狼を模した巨大な妖力の塊が縦横無尽に駆け巡り、風を引き裂く。だが当然当たらない。元々当たると思っていない、ただの牽制のため無問題だ。

 

「生ぬるいぜ!! “恋符„マスタースパーク!!」

「“轟符„白焔凶鳴」

 

 時刻は既に夜。ならば私の独壇場。周囲に血が舞い、黒の狼は覚醒する。牙の間から溢れる妖気を凝縮し、溜め込み、爆発する程に熱し、放つ。ふたつの力はぶつかり合い、互いに届くことなく相殺される。成る程、紅魔館の時に比べ、目に見えて強くなっている。

 

『…これは本気で行くべきかねぇ?』

「唸られても何を言ってるのかわかんないぜ?」

 

 展開される弾幕に、妖気を纏って突っ込む。破裂音や粉砕音が響き、星形の弾幕は全て掻き消された。また展開される前にと全速力で背後に回り、地面に叩き付ける。

 

「がはっ…ちょっとは…手加減しろよ…っ」

 

 血を滲ませる魔理沙。館的にこのままエスカレートさせる訳には、と一度館から出ていく。追うように飛んで来た魔理沙にほぼ隙間のない弾幕を高速展開。かすりつつも避けられ、此方に向かってくる魔理沙に舌うちしつつ、次の手を探す。

 

「“恋符„マスタースパーク!!」

『“咆哮„月下凶明』

 

 二度目のスペルに驚きつつも、相殺すべく技を繰り出す。閃光と衝撃に目を眩ませた先には、魔理沙の姿はない。成る程、今のは目隠しか。

 

「お返しするぜ…!! “恋符„マスタースパーク-戟-」

 

 自然と…口許がニヤリと釣り上がる。流石、期待を裏切らぬ子だ。八卦炉を使用するとはいえ、普通の人間が出せる魔力ではない。称賛の一言だ。

 

『“爆砲„月光砲」

 

 暴走を解きつつ、能力抜きの最大火力スペルを発動する。日に日に変わるスペルと私の強さ…留まることを知らず、妖気は増えていく。だがどうも腕力等は増えない。…快楽に対する抵抗力もつかない。なんでだろう。

 辺りの空間全てを覆うように現れるは無限の宇宙。流れる星に彗星。その中で光輝く月の光を受け、黒い尾が目映く発光する。全ては私が作り出した幻…スペルカードルールに沿っても綺麗なものだろうし、火力も高い。今のお気に入り。

 尾に集まった月の光は体を介して両の手に集まり、自転する惑星の如く渦を巻き始める。純白で汚れのない光は、私には似合わないかも知れないな。

 

「いっけぇぇ!!」

 

 魔理沙の強い声。同時に放つ大技に、空気が震えて音をあげる。ふと部屋の窓からさとりが見ているのをちらりと見て、すぐに目を逸らした。部屋から出ないで欲しいと頼んだのだが、後々説明せねばならぬな。微笑んで大丈夫とアピールしておき、視線を戻す。

 

「っ…まだ…っ…!」

 

 魔理沙が苦しい声を出す最中、私はただ出力を上げていく。このまま押しきるのが一番なのだ。こんなに魔力を使ったら後々確実に疲労するだろうに…まあ、いいや。霊夢がなんとかしてくれるでしょ。

 

「チェックメイト!!」

 

 出力最大…疲労覚悟で思いきり放つ。私が圧しつつあった光に魔理沙が耐えきれず、轟音と共に空気が爆ぜる。生きているかと心配になるような衝撃が発生し、すぐにいつも通りの静寂に包まれた。

 

「…魔理沙? 魔理沙!?」

「ここ…大丈夫だ。まったく、化け物か」

 

 人間からしたら妖怪妖獣亡霊なんて全部化け物だが何か。

 

「生きてるならよかった…はい、これで勝負は終了。よろしい?」

「ああ…あ~、全身が痛い」

 

 ごめんなさい。

 魔理沙の傷を(無理矢理)処置した後、中庭へ案内する。魔理沙はどうせ止めても行くだろうと諦めている為に何も言わないでおいた。彼女は普通に強い…何等問題はないだろう。流石にもし狐火鴉も相手になっていたら立てなくなっていただろうが。まあ、あの子は私が鍛えてる子だし。

 

「異変の元凶はこの奥に…赤黒猫にご用心。行ってらっしゃい」

「言われなくても行ってやるぜ!!」

「まったく…さっさと温泉に入りたいわ」

 

 愚痴を溢しつつ、威勢のよい声を上げつつと、空がいる場所へと進んでいく人間達。本来いらぬ戦闘も入り、色々と狂ってしまったが…それでも、私が出来る限りのことは出来たと思う。旧都や道中、地霊殿での戦闘を減らした…それだけでも意味はあるはずだ。ヤマメとパルスィは…後日何か持っていってあげよう。それにしても、キスメは何処に…? 見かけないのだが…。

 

「さて…あとは任せたよ。燐」

 

 不意に現れ、此方を一瞥しながら足元をすり抜けていく赤黒猫。にゃあと一鳴き、同じように奥へと消えていった。上手くやってくれるだろう。彼女ならば…ね。

 

「ん~…さて、旧都の面子に御知らせにでもいこうかしらね」

 

 一歯下駄がからりと音をたてる。次の瞬間、黒い人狼の姿は風と共に消えた。きっと数十秒もすれば、もう旧都で立ち話をしているに違いない。今回の異変は精神的に結構辛かったが、全て必要なことだと割りきってしまえば私的にはなかなかに楽しめた。あっちへこっちへと回り、駄弁りつつも住人を避難させるのは、結構楽しいものだ。今度行きたいな、という店も出来たし、言うことなし。ま、正直空自身が嫌でなければ問題ない。

 

 もし…異変が避けられない宿命ならば…。私は…全力で楽しむまでだ。

 

 

 …今出て来られても快楽を伴う異変はいりません。藍しゃま。




突拍子ですが、おきになさらず(え
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