黒狼狐己録 -Life Harboring-   作:ふーか

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 更新宣言しつつ、実際更新するのは遅れるお決まりのパターン。申し訳ない。

 此処から新章!! 以前何処かで見たような展開(短編にて)。
 何時もながら、性的描写注意ですっ。


第九章 狼戈の能力と
五十九 涙目と仕返し


 うっすら…本当にうっすらと視界が開く。段々と霞かがった視界は綺麗になり、そこに写るのは見慣れた家族に、藍達の姿。何が起きたのか…確か、私は倒れたのだったか。何が原因かすらもわからずに…。

 

「狼戈っ!! 心配したんだよ…!?」

 

 恐らく私をここまで連れて来てくれたのであろうこいしが、涙目で抱き付いてきた。此処は私の一人部屋か…最近あんまり出番がない部屋だな。

 

「ごめん…」

「…全くもう。それは別として…狼戈。妖力は?」

「妖力? …あ、あれ? なんで…」

 

 なんで…使えないんだ…?

 力を込めようが集中しようが、以前出来たことが微塵も出来ない。具現化すらも使えない…天性故か、宿すは普通に使うことができる。何故…? 私に何が起きたのだろう…。

 

「まさか…」

「…うん、使えないよ」

 

 焦りか驚愕かわからぬ色を浮かべる各々。私もとてもではないが正常ではいられない。私に妖気がないのは…あまりにも無防備過ぎる。疑いたくはない、考えたくもない…だが、私を殺してでも手中に納めようとする輩は、家族にすらいるのだから…。

 ふと紫を見てみるが、その表情は苦汁を舐めるように深刻なもの。さとり妖怪の力を宿して見てみても、心の底からの心配ばかり。彼女の仕業、という訳ではないだろう。

 

 …いや、原因はわからなくもない。私は本来、無理矢理この世界にやってきた、いわば“邪魔者”なのだ。無理矢理来ている以上何らかの異常をきたすのは、少し考えればわかること。今回はそれが私自身に起きている…そう考えれば、容易に結論は出せるのではないだろうか。

 

「…私に、いったい何が?」

「わかんない…お姉ちゃん、どうしよう?」

「…とりあえずは様子を見ましょう。ふぅ…怪我自体は無さそうだから安心したわ」

 

 私がかなり迷惑をかけてしまったらしい。罪悪感で満たされる心を静めつつ、またベッドへと横になる。隣ですやすや眠る橙に、いつの間に居たのかと驚きつつも、思考を巡らせた。

 

「狼戈、お前…大丈夫なのか?」

「体はね。ちょっとふらふらするくらい。気にしないで、ね?」

 

 尻尾も獣耳も動く、気管や内蔵も恐らく異常無し、脚力は…まあ試せないとして。今のところ妖力と一部の能力のみが使用不可…能力的にも関連性はあまりないだろうし、益々訳がわからない。

 

 結局、さとりの言葉通りとりあえずの様子見で処置をすることになった。私の特性もしっかり理解してくれているようで、一部の面子は部屋に残ったまま…

 

「…ごめんね、燐。仕事もあるのに」

「あたいの仕事は…まあ誰でも出来るさ。それに、今は自分の心配をしなよ」

 

 燐が燃料となる死体を運び、それを空が燃やして火力を維持する…普通に可愛らしい妖怪達だが、やってることは結構恐ろしいものである。仕事だし、幻想郷だし、仕方ないけども。

 燐の優しさに、複雑な感情になって苦笑した時、勢いよく扉のドアが開かれた。何奴。

 

「狼戈っ、大丈夫!?」

「…ビックリした。ヤマメ? 別に大丈夫だけど…なんで此処に?」

「私は何でも知ってるよ…? まあ、冗談はさておき。体は?」

 

 私の状態を見てとりあえず安心したのか、口調自体は落ち着いたようだ。

 妖力、能力共に使えない…そう話すと、ヤマメも苦い表情をした。彼女自身、私の体質に自我を奪われかけた経験がある。故に危惧するのも理解出来る。それに…自分自身が襲ってしまうという可能性もあるのだから。もしあの時…ヤマメの自我が戻らなかったのなら。私は…どうなっていたのだろう。

 

「…ま、それ以外は普通だよ。大丈夫」

「可愛い反応もいつも通りかい?」

「うん…ってこら。今は冗談で言っていいとこじゃないよ」

 

 笑みが溢れる室内。楽観的に考えられれば、楽なのだろうけどなぁ…

 

「私は暫く此処にいようかね」

「え? でも、ヤマメにも仕事が…」

「気にしない。私に出来るならなんでも言ってよ。…恩返しもしたいし」

 

 最後にボソッと言った言葉は聞こえなかったが、満面の笑みを見せる彼女を追い返す訳にもいかず、了承した。燐が安堵と共に部屋から出て行ったのは、ヤマメを信用しているからだろう。ヤマメ自身は病気を操ることがなければ、人間にとってもそこまで恐ろしい妖怪ではないし…(土蜘蛛と聞いただけで大概震えるだろうけど)。実際、かなりフレンドリィな子が、地底には多い訳で。旧都の住人は、私に対して心を開いてくれているし。付き合い方次第さね。

 

「じゃ、早速お願い聞いてくれる?」

「ん、勿論。ばっちこい」

「…何か、話そ? 退屈で泣いちゃうよ私」

「…その程度なら、喜んで」

 

 談笑が響く室内。それは何時も通りと言えばその通りの、普段の日常…これからどういう運命を辿るのか、狼はまだ、知る由も無く…

 

 

 

 

「そのものが無い?」

「ええ、全く」

 

 己の主と地霊殿の主の会話を聞きながら、目を瞑る。先程から話されるものは深刻なものばかりで、やはり今すぐにでも狼戈のところに行くべきか、と考え始める。狼戈自身は大丈夫だからと言っていたが、やはり心配なものは心配だ。

 

「あの子からは妖気を感じない。使えないのではなく、根本的に無いのよ」

 

 耳を疑う、主の言葉。先日会ったばかりの狼戈からは、相も変わらず強大な妖力を感じた。確かに先程の彼女からは微塵も妖力が感じられなかった…かと言って、神力や霊力がある訳でもない。だがその体質はそのまま…簡単に言えば、もうお手上げ状態だった。

 二人が話している最中、どうしたものかと思考に耽る。お手上げと言っても、やらなければならないことはあるだろう。だが…護るにしても、彼女にとっては此処が安全だろう。場所の安全さは八雲の屋敷が一番だが、失礼ながら主は何を考えるかわからないし、私自身無防備な狼戈と過ごして、自分を抑えられる自信がない。

 炊事や家事に関してもそれこそ私の出番等ないだろうし、逆に狼戈なら、きっと進んでやりたがる。どう考えても…私には出番がない。

 

「…藍さん、一緒に居てあげてください。それが一番助けになりますから」

 

 気付けば、さとりの赤の瞳は私を見ていた。横目にちらりと此方を見て、さとりは言葉を続ける。

 

「少しでも、あの子を支えるものは多い方がいい。精神的にも」

 

 さとりに励まされ、小さく頷く。少しでも出来ることは…ある。助け助けられの彼女だ。私にとっては、恩しかないのだが…思い返せば命も、心も救われているのだな、私は。

 良い主を持ったな、そう思いつつ扉に手をかける。背後からありがとうございます、と小さく聞こえた。心を読まれるのは、案外面倒なものでも嫌なものでもないな。

 狼戈との思い出や日常を振り返りながら、長い廊下を歩くのだった。

 

 

 

 

「…い、いや、賑やかにも程が…」

「まぁまぁ、いいじゃないか、ね?」

 

 共同部屋は、何故か人口密度が酷いことになっていた。どうしよう、逃げたい。

 

「まぁ、騒がしいのはいつものことだけど…にゃぁぁ!? こ、狐火鴉!!」

「えへへ~、狼戈さんの尻尾はもっふもふです~」

 

 何時もの面子(燐と空、狐火鴉)にヤマメ、目を閉じたさとり妖怪に、化け猫と九尾と、煩い程の賑わいをみせていた。相変わらずいない己嵐達、何故何時もいないのだろう。動物達は気まぐれに動いているし、其処まで忙しい仕事でもないはずだけど。

 

「別に私は大丈夫だから、そんなに心配しなくていいのに」

「単純に狼戈と居るのが楽しいのさ。なんなら、パルスィも呼んで来ようか?」

「いや、別にいいよ。また今度会いに行くし」

 

 気まぐれに談笑しながら、密かに考え事を始める。

 妖気が使えない…それは、何回も言うが完璧な無防備。傷を受ければ回復は早められないため自然治癒を待つしかないし、力も無くなる。正直、脚力のみで大岩を割るくらいは出来ると思うが、それでは足りない訳で。身を守る術がいるのは、考える必要のない事実。せめて具現化が扱えればいいのだが…武器無しでは色々と限界があるもので。

 

「ねぇ、狐火鴉。私に扱えそうな武器って無い?」

「…狼戈さん、何でも軽々と扱うじゃないですか。具現化って出来ないんですよね?」

「うにゃ」

 

 少し考え込む狐火鴉。妖夢に頼み込んで一本寄越せっ!! というのも出来るが、申し訳ないし、幽々子に色々されるだろうしで却下する。脚力を生かせるような武器はないだろうか…。

 

「…狼戈さんって、妖力無しだと“手数„が一番の武器ですよね。

 後、脚力と動体視力が相極まって、“避けつつ攻撃する„というのが上手です。

 それに、狼戈さんの速さなら他方向から翻弄出来るのでは?

 全て含めて…軽く短く、且つ両手それぞれに持つものと相性がいいかと。小刀みたいに」

 

 冷静且つ的確な意見に、私のみならず興味を持っていた者全員が唖然とする。私以上に私のことを知っているということにも驚きだが、此処まで考えているとは思っていなかった。狐火鴉が自ずと差し出した小刀を両手に構えて、剣身を見据える。

 

「…狼戈さん、全力で振ってみてください」

「ん…りょーかい」

 

 傍らの卓上から、置かれた林檎を手に取る。数回上に放り投げた後、右手の刀を口にくわえ、強く上に放り投げた。「?」を頭上に浮かべる空達に、真剣に見詰める狐火鴉。少しふざけるつもりだったが、こんな眼差しで見られたらそれも出来ない。

 宙を舞う林檎は空中で一旦静止し、思い出したように床へと迫り始める。だいたい自分の胸辺りまで来たとき、口にくわえた刀を落とした。

 

「逆輪」

 

 宙に浮いた刀を逆手に掴むと同時にそのまま縦に一閃、右手を上に上げた力を流し、左の刀で更に縦に一閃。そのまま斜め半回転、右手を元に、左手を逆手に持ち変え、横に二閃。そのまま地面に落ちた林檎は、落下の衝撃と共に、思い出したかのように九の破片と散った。

 

「いまいち、だね。最近扱ってなかったし」

「剣先が全く見えませんでした。軌道すらも見れたか危うい…化け物ですか?」

「人間からしたら、私達なんて皆化け物でしょ」

 

 確かにと頷く狐火鴉。小刀を返そうとすると、大事に持っておいてくださいと一言言われ、無理矢理渡されることとなった。私が一部の調整を行ったのを除き、綺麗に手入れされている。普段から刀など使わないだろうに、真面目過ぎるのかね、この子は。

 

「…あれ? 何で皆私を変なものを見るような目で見てるのさ」

「…お前、何処まで何が出来るんだ? もう底無し沼と一緒だな」

「わ、私は沼じゃないもん! 敢えて言うなら果てしない空だもん!! こら、笑うな!!」

 

 突撃した結果、尻尾にくるまれて終了した。夜に行われるような強く淫らで優しい力とは違い、とても暖かみを感じる。いや、まぁ、夜と比べるのはおかしな話なのだが、ね。よくよく考えれば、此処にいる全員に私は犠牲となっている。このぉ…!!

 

「ねぇねぇ狼戈、折角だから遊ぼうよ!!」

「この流れで言うかい、空。まあいいけどさ、夜の遊びとか言わないでね?」

「夜の遊びだよ?」

 

 ああ、うん。可愛いよ? 首を傾げて頭上に「?」を浮かべる空はとっても可愛いよ? だが、ちょっとまて。なら尚更こんな状態で出来る訳ないだろう。快楽を受けたら、尚更私逃げられないではないか。

 

「い、いや…ちょっと、慰めというか、なんというか…」

「…そっか。ん、ありがとう。でもまぁ、私はいいよ、また今度で」

 

 空も空で、彼女なりに考えてくれていると知った。本当に、子供っぽくて可愛いというか。こいしも似たような感じだけど。だが、快楽は丁重にお断りしておく。

 

「…精神の安定をもたらすとも言うけど、狼戈にとってはどうなんだろうね」

「そんな知識いらないっての。私にとっては逆効果だってば。…多分。

 あぁ、君らにとっては私の抵抗が逆効果でしたね、はい」

 

 私が皮肉たっぷりの視線で全員を見たあとにそう告げると、全員揃って明後日の方向を向いた。誤魔化しても無駄だ。貴様等は私に対してドSだ。

 

「…本当にダメ? なんなら、燐達と一緒に…」

「集団で犯す気かっ!? わ、私は、玩具じゃ…ない…もん…」

 

 私の反応を見て興奮し始めたのか、全員の視線に淫らな雰囲気が追加される。これは…逆に自ら身を差し出した方が良いのだろうか。私の予定では、明日とある狼さんに犯されるであろう予定が入っているのだが…無防備な状態で二日連続、快楽を受けろというのか。

 

「…これって、全否定したら無理矢理全員から遊ばれるパターンかな?」

「ん~…まぁ、そうだね。狼戈は私のものだよっ!!」

 

 はしゃぎ始める空を、虚無感で満たされた心で見つめる。既に光を無くした瞳が見つめる先には、私を弄ぶ輩の影しか見る事が出来なかった。

 

「…こんな非常事態でも、私は犠牲になるしかないの?」

「…ごめん、狼戈。無防備と知ると尚更…独占欲が湧くんだ」

 

 ヤマメの素直な言葉に、頭を抱えて唸る。密かに“殺してでも„自分のものに、と考える者がいない…一応、それだけで少しは安心出来た。その自分のものにする形は違うが、な。どうしようか…一人、一人位ならば、まだ許容範囲だ。最終手段として紫特製媚薬を使うという道もあるが、これは…まだやり返していない藍や空が相手になった時に使うとしよう。

 

「わかった、わかったよ…」

「…いいの?」

「良くない。一人だけ…一人だけならいいよ。全員相手にしたら私壊れる」

 

 全員の相手をしたら、本当に心も体もぎゅっとしてどかーん状態になってしまう。

 

「…私は狼戈様と、普通に一緒にいたいです」

「ふぁぅ…橙は私の味方だよぅ…」

 

 傍らでぴとっと寄り添った橙を抱き締め、頬を擦り寄せる。擽ったそうに、幸せそうにする橙に、私は独占欲が湧いた。でも、違う…お願いだから貴女は藍に甘えてくれないだろうか。貴女の主は、眼前で私を巡って論争している九尾様なのだから。ああ、もう眠たい。寝て全てを忘れたい。眠ったらきっと明日の朝が酷いから寝ないけども。

 

「最近一緒にいないのは…」

 

 其処まで言って、自分で墓穴を掘ったと後悔する。ヤマメとは交流が無い訳ではない。彼女の家にまで行くこともあった。燐や空、狐火鴉とこいしは同棲故に頻度も何もない。橙とは以前やられやり返しと一悶着起きたし…つまり、必然的に…

 

「…私、だな。なんだ、狼戈…素直に指名したらよかったのに」

「い、いや、そういう訳じゃなくって…あ、あはは、やっぱりダメ…」

 

 にじり寄ってくる藍に、冷や汗が浮き出る。視線も逸らせず、気分は死を待つ獲物のようだ。視界の隅には苦笑や嫉妬を浮かべる表情しか見えず、助けよう等とは考えていない。橙に限ってはどうせなら自分も参加しようかという表情をしているし、もう…散々だ。

 

「ほら、おいで。優しくしてあげるから」

「ぅぅ…んぅ…」

 

 壁を背に、ずるずると腰を落とす。辺り一面黄金色…自分が一人ならいいとは言ったものの、後悔しかない。よく考えればさとりの部屋に逃げれば回避出来ると考え付いたはずなのに…

 

「では、狼戈はいただいていくよ」

「むぅ…行ってらっしゃい」

 

 平然と送る場面じゃないぞ、空。お願いだから助けてくれよ。

 抵抗空しく、先程いたばかりの一人部屋へとお姫様だっこで連行。私一人用のシングルベッド…正直なことを言うと、“一人で„使うことがあまりない。全て私を襲う輩が悪い。ワタシワルクナイヨー。シャンハーイ。

 

「久しぶり…だな」

「…むぅ」

「そんなに怒らなくてもいいでしょう? 私だって寂しかったのよ?」

「口調変えても惑わされないよ」

 

 服の中にするすると入っていく黄金色の尾に、顔色ひとつ変えず反論する。まだくすぐったい程度で、快楽は伴わない。はらりと上半身が晒され、下着も剥がれた。

 

「あれ…おしまい?」

「全身脱がされたいのか、そうかそうか」

「…これが言わせたかっただけか、この九尾」

 

 露骨ににやりと笑う藍。下半身の衣服にも尾が入り込む。何かと無駄に肌を愛撫する尾にびくびくしながら、気付けば全身裸状態。キスやハグで終われば、此方としても嬉しいのだが…そうはいかないようで。

 

「あぅ…っ…」

「…反応の可愛さは相変わらず、だな」

 

 …褒められたと見ていいのだろうか。

 久々に体を襲う、九重の快楽。それぞれが拘束、愛撫、強姦と、様々に役割をこなす。それに加え藍自身の四肢に口。私がもし男だったら、きっともう生きていない。吸い殺されるのがオチだろうな。色々と。

 

「ふふ…狼戈が女で良かったな?」

「んぅ…男だったら接し方も違…っ」

 

 会話の途中で口に舌を捻込むな。

 重なっていく快楽の渦に、少しずつ意識が薄れるのを感じる。いつもの如く、ただただ喘ぎ声を上げて身を委ねるしかない。そう考えた時、強く手に握られた丸いものの存在を思いだし、にやりと微笑んだ。

 

「えへへ…」

「…?」

「…たまには仕返ししないとね」

 

 藍が行動を起こすより素早く、無理矢理自分の口に丸薬を放り投げる。噛み砕かれたその中含まれる成分は、段々と正常な精神を蝕んでいく。一時的とはいえあまり使わないが…それでも。やられっぱなしは性に合わない!!

 

「…狼戈、まさか」

「えへ…大丈夫だよぉ? 夜に酔わせてあげるだけだから…」

 

 即座に自我を放り出し、自らの欲に、従順に従う。目には目を。歯にははを。性技には性技を。さぁ、ご主人様? 可愛い反応を…見せてくださいね?

 

 

 

 

「は…ぅ…」

「ご主人様、もう終わりなの? ほらほらぁ…まだ夜は長いんだよぉ?」

 

 妖気も何も無いというのに、私の抵抗をものともしない狼戈。私自身、かなりの力で弾こうとしたが、容易く流されてしまった。彼女のリミッターはどうなっているのか、本当によくわからない。

 

「ろう…か……離し…」

「だぁめ…♪ 夜が明けるまで離さないよ」

 

 強く、きつく抱き締める狼戈。その力は恐ろしい程に強く、素どころか、妖気を少し込めてもびくともしない。もう快楽で力が入らなくなってきており、尾では抵抗が出来なくなってしまった。

 

「でも…ダメだよぉ……狼戈…っ」

「お喋りな口は塞いじゃおうかなぁ? ふふ。れる」

 

 執拗で、粘着質で、甘い狼戈の舌。その間も漆黒の尾が私の中を這い回る。喘ぎ声も、荒い息も、全て狼戈の口へと消えていく…

 

「…我慢なんてさせてあげない」

「ひゃ…っ!!」

 

 全ての動きが激しく、強く、執拗になる。かろうじて耐えていた快楽に、いよいよ逆らえなくなってしまった。諦めて身を委ねた瞬間、体の力が全て抜けていくのを感じる。

 

「あ…ぁぅ…ぅ」

「んる…れる。えへへ…」

 

 いつか私がやったように、濡れた指を綺麗に舐めとる狼戈。見た目は純粋で優しい獣の少女だというのに、全ての動きが、見た目が、妖艶で淫ら…私では真似出来ないであろうもの。

 …何故だろうか。彼女に食われるというのは、全然気分が悪い気がしない。逆に何処か嬉しさ…幸福を感じる。普段自分からは消極的な彼女のことだ。それが拍車をかけるのだろう。

 

「…さぁて、本気でやろうかなぁ♪」

「……?」

 

 次の瞬間、狼戈の背から生え初むる漆黒の翼。九つに増える尾。その中には触手のようなものも見える。彼女の能力…宿す。まさか、こんな時に…

 羽毛に尻尾、爪に牙…様々なものに犯され、弄ばれ…永遠に続くような夜の時間は、まだ…始まったばかりなのだ。

 

 

 

 

「にゃ~」

「誤魔化しても無駄だぞ」

 

 風呂場で誤魔化せば逃げられると思ったが、効果はいまひとつのようだ。

 やり返したという事実は即座に燐達の耳に入り、お前も欲求不満ではないか、と物凄い視線で見られてしまった。今までの仕返しとして媚薬を使ったと説明したところ、納得はしてくれたが、きっと後々一部の輩が襲いに来るのだろうな。犯されに来るとかドMですか?

 

「…むぅ、しょうがないじゃん…今まで千年以上、ずっとやられっぱなしだったし」

「狼戈がやろうとしないからだろう?」

「は、恥ずかしくて出来ないよっ。媚薬の力を借りるからこそ出来たことなのに」

 

 先程から少しふらふらしている藍だが、怒りといった色は見えない。どちらかといえば、幸せそうな感じだった。

 

「狼戈がやり返した、ね…なんか想像出来ないねぇ」

「…お望みならば襲って差し上げますが」

「狼戈さん、恥ずかしいって言ってた割りにさらっと問題発言してます」

 

 てへっ。

 程ほどに体を洗い、浸かることなく部屋へ戻る。武器に関してというか、今日は予定が入っているのだ。予定の内容は…まあこの訳のわからない状態のせいで少し狂ったが。

 

「…あら、ヤマメ。まだ寝てたの」

「んぅ…狼戈、起こして」

 

 寝転がったまま目を細めて腕だけ差し出してくるヤマメ。悪戯心に火が点き、その手をかぷりと食べた。

 

「ひゃぁぁ!? な、何事っ!?」

「あむ、んぐ…ん? うまうま」

 

 幸せそうにかじる私を見て、ヤマメが今にも襲いそうな顔をしているが、気にせず口を離した。これ以上やったら本当に襲われる。

 ヤマメはしっかりと起こしておき、準備を始める。腰に差した小刀、お土産の林檎。手荷物はこれだけだ。からからと下駄を鳴らしながら、準備完了。一瞬で終わった。

 

「では、私は用事があるので」

「こんな時に? 大丈夫かい?」

 

 その「こんな時」に襲おうとした土蜘蛛に心配されても正直嬉しくないよ。

 

「…何処へ?」

「狐火鴉、早かったね。ちょいと椛のところに」

 

 ふむ、と顎に手をやる狐火鴉。少し何かを考えた後、きりっと此方を見据えた。何この子可愛い。仕草が可愛い。いや、いつものことなんだけれど。

 

「…わかりました。お気を付けて…何かあったら許さないからね」

「…うん、わかった」

 

 真剣に心配する椛に、強く頷く。そのまま地霊殿の外まで見送りに来た狐火鴉とヤマメ。どうせなら送って行こうか、とヤマメが言うが、断っておいた。はっきり言って…私に護衛をつけるのはただの愚策。理由は簡単なことだ…

 

「…じゃあね、二人とも」

「っ!! なっ…!?」

 

 私が全力で駆け出した瞬間、やはり驚愕の表情を浮かべる二人。私の速さは、元々天性。妖気等使わなくても、人間程度が目視出来ない程には速くなるさ。

 旧都を駆け抜け、橋を渡り、地上へ続く穴にまで到着する。確かに妖力がなければスピードは落ちる…爆発により推進力等を得ていたし、当然といえば当然か。

 地上へ続く穴…妖力がないから浮けない? 否、ならば駆けるだけだ。

 岩壁に下駄の歯を掛け、一気に加速。一瞬で駆け上がる。気付けば既に太陽が見えており、見慣れた風景が広がっていた。風が気持ちいい。

 

 さて、改めて妖怪の山へ…行くとしましょうか。

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