黒狼狐己録 -Life Harboring-   作:ふーか

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 知ってますか? 動物の尻尾って、性感帯が(自重

 さて…予定より早く完結を迎えそうです。
 早ければ七十話迄には終わるかも知れません。

 果たしてこの物語は…HAPPY ENDを迎えるのか…BAD ENDを辿るのか…
 まぁ、まだ少し先のお話です。ゆっくり、お楽しみください<(_ _)>

 …あややとの短編も入れるべきかなぁ(ゲス顔


六十二 夢と拍子抜け

 夢を…見ていた。長い長い夢…悲しいようで、楽しいような…でも、思い出せない。夢と夢が連鎖し、夢の記憶は薄れていく。夢は記憶、想像…私の夢は、何もないのかも知れない。虚ろで、空っぽで…だが、きっとそれでいいのだろう。逆に考えよう…もう夢が無い程に、幸せなのだと。私を大切にしてくれる家族がいて、親友がいて、仲間がいて。それだけで…もう幸せなはずだ。

 だが…何故か心の靄は消えない。皆に襲われて、精神的に苦痛だったこともある。ついていけなくて、逃げ出したくもなった。だが、それにはもう慣れた。嫌なことはないのに…何故、何故…?

 目覚めぬ私を見て、きっと皆は心配している。それだけで、充分なはずなのに…

 

 私は…きっと、誰からも、誰よりも愛されたい。愛されなければ生きていけない…それはきっと、“体質"のせいもあるのかも知れない。以前から何度も思っていることがあるのだ。皆から大切にされるのは、私ではなくこの体質ではないのか、と。これを聞いて、藍や勇儀は真っ先に否定してくれた。けれど、それすら…何処か、信じられなくて……

 

 …私がこの世界に来たことに、何か意味はあるのだろうか。

 勝手に死んで、ほぼ無理矢理にこの世界に来て、萃香や藍、紫に出会い、地底に住んで、椛達とも仲良くなって…だが、それに意味があるのか。そう聞かれると、もう何も言葉が浮かばない。楽しければそれが答えだと、亡き母は言っていた気がする。自分の信じる道を行け…ありきたりで、暖かい言葉。でも…私にそれを楽観的に捉えるのは無理だった。昔も、今も。

 千年、何百年という時を生きて、私は…何か変わったのだろうか。私は…何を出来たのだろうか。

 以前のように、暴走はしない。自分を見失うこともしない。だけど…内に秘め続けるには、重すぎる…重すぎるんだ。私の小さな心に…こんな記憶は。

 

「お姉ちゃん…」

 

 ふと、聞いたことのある声が聞こえた気がした。優しく、強い声色。幼い声は、更に大きくなって自意識へと呼び掛ける。

 

「早く…起きてよ……一緒に遊びたいよ…」

「フラン…?」

 

 反響し、消えていく声。些細でも、私を必要としてくれる声。聞きなれたはずの、他愛ない声…こんなにも簡単なことなのに。なんで…私は……。心に反芻していくか弱い声は、やがて大きくなっていく。

 

「…お姉ちゃん、大好き」

 

 心に響いたその声に、ゆっくりと靄に包まれて、真っ暗だった世界が開いていく。私が望んだ世界…私の大好きな場所、皆…それは、すぐ…目の前にあった。手を伸ばせば…届く距離に。

 

「…おはよう、フラン」

「っ!? お姉ちゃん……狼戈っ!!」

 

 しがみつき、泣き出すフラン。苦笑しながら頭を撫でていると、騒ぎを聞いてか部屋の扉が勢いよく開かれた。そんなに強く開けたら壊れてしまうではないか。

 

「狼戈…狼戈ぁ!!」

「むぎゅぅぅ…!? ちょっ、苦し…!!」

 

 飛び込んで来た椛に抱き付かれ、ベッドへと叩き付けられる。胸に顔を擦り寄せながらわんわんと泣く椛にそれでも狼か、と突っ込みをいれながらも、二人をあやす。どれだけ寝ていたか、それは私にはわからないけど…なんで、いつも私は忘れるのだろう。大切な者がいることを。

 

「狼戈っ、大丈夫か!?」

「藍…心配かけてごめんね? もう大丈夫…多分」

 

 涙を滲ませる藍に罪悪感を感じつつも、安心させるべく笑みを見せる。次の瞬間、どったんばったんと騒がしい足音に続き、燐や空、狐火鴉達が雪崩れ込んで来た。全員に泣かれてしまっては…空に迄泣かれてしまっては、私もう謝るしかないではないか。いや、空が特別って訳ではないんだけど…みんな大事。

 

「あ、あれ…? み、皆、そんな泣かれても…困るよ…」

「…狼戈さんの馬鹿」

 

 怒られた。

 涙目の狐火鴉を、無理矢理抱き寄せて撫でていると、黒い影が扉から覗く。ぐるりと中を見渡し、何かを見つけたかと思うと、ずかずかと入り込んで来た。

 

「やはり…此処にいたんですね」

「…あら文、いらっしゃい。早速だけど、椛が目的なら私も着いていくわよ」

 

 病み上がり(?)で、即座に出ようとする私を藍が睨む。これ以上の心配をかけるのは確かに申し訳ないが、もし長い間椛が私を看ていてくれたのなら…それは、上から睨まれて当然の話かも知れない。されど、それでもし椛を処罰するというなら…命を懸けてでも止める。おかしな話、以前から覚悟していたことで。

 

「…無理には止めないわ。狼戈、妖力は?」

 

 さとりの言葉に、その場にいた全員が驚愕を浮かべてそちらを見る。だが妖気のことに関しての話題に、また全員の視線が此方に向けられた。

 

「…文、今外は夜?」

「はい、夜ですよ。それがどうかしました?」

 

 妖気があるのか…それすら確かめず、勝手に狐火鴉の腰から引き抜いた刀で自分の手首を切り裂いた。飛び散る鮮血に、私の体は…

 

『…っ』

「…行ってらっしゃい、狼戈。どうせ止めても行くのよね?」

 

 尻尾でフランを抱き寄せ、頬を擦り付ける。羨ましそうに見てくる椛や狐火鴉も纏めて抱き寄せて、体を使って抱き締めた。狼の姿では…抱擁等は出来ないもので。紅い瞳に大狼の姿…それは妖力の復活を意味する。

 

「…結局、この数週間の原因な何だろうね?」

「ん…私もよくわからない。変に追い込まれた記憶も無いし、病気も無いし…」

 

 変化を解いて、燐の問いに応える。結局のところ、私が倒れた原因などまったくわからない。検討も付かない。強いて言えば…以前より強くなった気がする。主に、心が…ね。何故だろう…不思議な夢だった。あんまり思い出せないけど…

 

「…みんな、ありがとう」

「急に改まられてもねぇ? ふふっ、此方こそさ」

 

 全員を見渡し、笑顔で告げる。姿は見えないが、紫特有の妖気も感じる。きっと、にやにやしながら聞いているのだろう。意地悪な隙間妖怪め。

 

「さ、行こう椛、文。フラン、ごめんね? これが終わったら…いっぱい遊ぼう?」

 

 頭をぽんと撫で、椛と文の手を無理矢理引っ張って部屋を飛び出す。返事は聞かなかったが、苦笑していた気がする。まったく、自由奔放なお姉ちゃんでごめんね、フラン。

 憂い顔の椛に何が起きても守る…そう告げると、少し赤くなってお礼を言った。素直で可愛いではないか。

 

 さて…早速行くとしようか。妖怪の山へと…!!

 

 

 

 

「目覚めてすぐにトラブルに突撃…狼戈らしいねぇ」

「全く、心配してたのに、何か拍子抜けですね。まぁ、嬉しかったですけど」

 

 何処かの狼に良く似た人形を抱える、吸血鬼の少女を後目に、燐の言葉に反応して愚痴る。先程から人形を大切そうに抱える少女は、確か…紅魔館で狼戈と戦っていた娘だ。フランドール=スカーレット、だったか。彼女も何かと大変だろうな、狼戈と一緒に居て。

 

「お姉ちゃん…」

「…狼戈さんはすぐ帰って来ますよ。とっても強いですから…」

「…うん、やっぱりお姉ちゃんらしいよ」

 

 燐とまったく同じ感想を述べるフラン。その表情は穏やかで、先程まで見せていた涙の影は見られない。種族、土地が違っても、自然に惹きつける…羨ましいというか、楽しそうというか…。

 

「原因、かぁ…私達も、もうちょっと控えましょうか」

「…そうだね。ちょっと負担を掛けすぎだもんねぇ」

 

 まぁ、止めるのはきっと無理だけどね…そう笑う燐。首を傾げるフランに、まだ知らなくていいと心で言い聞かせながら、苦笑した。まだ…早い。狼戈が一番最初に襲われたのが14歳だと、失笑しながら話していたが、まだこの娘には…

 

 他愛無い会話を繰り広げていると、事が過ぎた故かお腹が小さく鳴った。狼戈はいない為、時間以外の食事は各自で行わなければならない…別に、苦ではないけど。笑いながら燐達と台所へ向かう最中、折角だから暫く此処にいなよという、空の純粋無垢な言葉に、フランが狼狽えながらも了承した。空が先程から羽を擽って、フランが妖艶に声をあげているのは、見ないふりをしておこう。きっと二人とも、わかってやってはいない。廊下を歩く中で、ふと狼の鳴き声が聞こえた気がして、歩みを止めた。

 

「……狼戈さん、無事に帰って来てくださいね」

 

 届くはずのない、小さな小さな独り言。それは喧騒に阻まれて儚く消えていった。でも、きっと届いたはずだ。何時ものように、きっと、無事に…

 

 これから何が起こるのか、知る由も無く。私はまた歩き始めるのだった。




 結局のところ、狼戈が倒れた原因は何なのか。
 …長い夢。それは複雑で、思い出したくもない過去なのか、愛すべき家族達のものなのか。
 夢の果てに何を見るのか…それは、主人公にしかわからないのかも知れません…。
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