黒狼狐己録 -Life Harboring-   作:ふーか

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 鈴仙…人外である以上、貴女も犠牲になるのだよ…ふふ…(暗黒微笑

 ちょっとした短編。次回は…苦労者の兎さんに、ちょいと暴走していただこうかしら。

(※今更追記)
(※基本的に、人間(…?)である霊夢や魔理沙達は、主人公と性的な絡みはありません)


◇その後 黒い狼と幻想郷◇
◇ 兎と黒狼 (上)


 明け方。ふわふわと空を渡る少女が一匹。黒い尻尾を振りながら気の向くまま…

 

「…あ~、暇だ」

 

 勿の論、私である。昨日の夜中から続く椛の虐め(性的に)から逃げるように家を飛び出したはいいが、行く先などあるはずもなく。地底に行くのもいいかも知れないが、燐が次に会ったら遊ぼうと思いきり淫らな表情をしながら宣告してきたため、得策ではない。自殺行為にも程がある…。ならば紅魔館は? そう考えるが、吸血鬼姉妹に血を寄越せとねだられる為、あまり行きたくない。フランはいい。だがレミリア、何故私の血をとる。貴様等人間以外は駄目ではないのか。

 ならばと思い当たるのは竹林だが、妹紅に会えるという保証は無いし、あそこにある診療所(?)的な建物には未だ行った事がない。妖精や兎に絡まれるのも、正直面倒だ。

 

 ふらふらと空を行ったり来たりしていると、気付かぬ内に一件の神社の前へと到着した。あまり来ることはないが…折角だ。賽銭を入れて行ってもいいかも知れない。以前貧乏巫女にした、賽銭の約束も出来ていないし、丁度良いだろう。

 

「…一万円でも入れときゃいいか」

 

 …小銭入れを忘れた。

 普段あまり人里に行かない私に、金というものは余るに余るもので。変な話、具現化を使えば金なんて湯水のようにある訳だが…そんなことはあまりしたくない。そんな訳で、旧都で色々稼いだりする訳だ(困っている者を見かけ、少し手助けした結果に貰えることが殆ど)。でも…正直言って、幻想郷で金を持ってても使い道なんてあまりないのよねぇ…

 

「ていうか…あの巫女はまだ寝てるのか。まったく、悠長だねぇ…」

 

 萃香か燐、ヤマメ辺りの口調が移った気がする。

 懐から乱雑にお札を取り出すと、ぽいと賽銭箱に放り込んだ。一万円札、千円札、何を入れたかは興味がない。適当に放り込んだ、それだけだ。

 

「…あ、狼戈。此処に来るとは珍しいわね」

「…貴女がいるのも珍しいんじゃないかな、鈴仙」

 

 最後に会ったのは何時だったか…鈴仙・優曇華院・イナバ。だから長いってば。

 相変わらず女子高生のような制服に身を包み、よれよれの兎耳を風になびかせながら、とことこと此方に歩み寄ってくる。どうでもいい話だが、鈴仙の尻尾は触ったらどうなるのだろう。

 

「どうしたの?お賽銭でも入れに来たの?」

「師匠から霊夢に届け物。…中身は知らないけど」

 

 ごそごそと鈴仙が取り出したのは、小さな小包。師匠…それが絡んでいるならば、粗方薬の類いだろう。中身に見られて恥ずかしいものが無いという確証はない。こういうのは覗かないのが、暗黙のルールだ。私だって、媚薬に関して見せびらかされたら本気で激怒する。

 

「あややや、狼さんと兎さんが揃ってますね」

「…ああ、煩いのが来た」

「失礼な。笑ってくださいよ狼戈さん、写真が撮れないじゃないですか」

「撮・る・な」

 

 鈴仙と揃って溜め息ひとつ、どう追い返すか目線で会話する。文は帰る時は潔く帰るが、帰らぬ時は本気でしつこい…ならば、無理矢理追い返す迄である。

 

「“跳兎„ラビッツワルツ」

「いきなりですかっ!!」

 

 鈴仙が掲げるスペルカードと、私の掲げるスペルカードが交差する。重なったカードは一枚の絵となり、綺麗な模様を写し出した。

 数週間程前。皆ともっと仲良くなれたら…そう考えている最中、ふと卓上に置かれたスペルカードが目に入ったのだ。前の世界で頻繁に見た、合わせると形が出来るネックレス…それが浮かんだ瞬間に、やりたい事が一瞬でまとまった。スペル…連携。二人(?)だけで作り出す、たったひとつの弾幕。一枚のカードに二人で絵を描き、それを半分に切ることで、それは出来上がる。それが揃った時に、本領を発揮する私達のスペル。

 

 宿すは兎。兎の円舞曲、お見せするとしましょうか。

 

「あら、可愛らしい弾幕」

「あ、霊夢。この天狗潰すからちょっと待っててね」

「なんで潰されること前提なんですか!? わっ!!」

 

 鈴仙は(多少は動くが)固定銃座、私は縦横無尽に駆け回り、相手の周囲360度から弾幕をばら撒く。鈴仙の銃弾のような弾幕に、私のウサギ型のカラフルな弾幕が合うかと言われたら、正直あんまり…可愛いからいいと逃避してみる。相手が逃げれない弾幕はルール違反故、そこまで過度にはばら撒けないが…それでも、兎が宙を駆け巡る光景は、まさに幻想だと思うんだ。

 

「痛い!?」

「当たった? 流石に色んなとこから飛んできたら対応しきれないよね」

「しみじみとしないでください…ああ、本気で痛い」

 

 …駆け巡る兎が、対象に全員突撃していくのは、果たして可愛いもんかね。

 

「さ、帰れ。写真撮らないならどうぞ、ごゆっくり」

「…なんで私にだけそんなに冷たいんですか!?」

 

 ぴょんぴょんと不規則な動きをしながら跳んでいく為、きっと中々に避けにくいだろう。ましてやそれが全方向から来るのだ。速度があまり無いとはいえ、やはり鬼畜である。

 

「…もういいですよ。仕事もありますし、帰ります…」

「なんで来たのさ。まったく、写真を撮らないなら別にいいんだけどねぇ」

 

 まだ撮ってないじゃないですか!! と呆れたように小さく怒鳴る文を笑い飛ばす。私自身、文を嫌っている訳ではない。ただ写真を撮られることがあまり好きではない私にとって、少し苦手意識を持っているだけなのだ。カメラを取り上げられれば、普通に対応出来るのだが。

 

「ん~、なかなかね。鈴仙」

「あれだけばら撒いて何故平然としてるのか私にはわからない」

「そいつは化け物よ。気にしたら負けだわ」

 

 おい腋巫女、だれが化け物だ。

 私が睨むのを気にも留めず、平然と鈴仙から包みを受けとる霊夢。先に紙が付いた棒(お祓い棒?)を片手に、さっさと神社の中へと戻って行った。私に対する扱いといい素振りといい…確かに、今まで私は邪魔しかしていない気がする。されど私は、他の輩のようにしつこくやった記憶はない。賽銭を入れたことを後悔しつつも、溜め息ひとつ、鈴仙を見据える。

 

「…な、何? あんまりじろじろ見ないでよ」

「いや…可愛いなって」

 

 何の予兆も無くダイレクトに言った為か、鈴仙の頬が紅潮していく。完全に真っ赤になった鈴仙をにやにやしながら見詰めていると、遂に怒ったのかキッと此方を睨んだ。

 

「や、やめてよ…べ、別に私は…」

「可愛い」

「うぅぅ…!! 狼戈、あんまり虐めると怒るわよ」

 

 別に虐めるつもりなど更々ないのだが。

 真っ赤な鈴仙を宥めつつ、いつの間にか登っていた朝日を眺める。今日も幻想郷の一日が始まる…だが、帰るのが憂鬱だ。流石に追っては来なかったものの、きっと帰った途端に押し倒されるに違いない。いくら狼同士だからって、毎晩毎晩襲われるのは流石に勘弁して欲しい。キスやハグならまだ許す。限度を知れ限度を。

 

「ほらほら、涙目になってないで。ね? むぎゅっ♪」

「ひゃっ!? いきなり抱き付かないでよ!! ち、ちょっと…」

 

 身長が低い訳ではない鈴仙。それに私が抱き付くと、親子か仲の好い姉妹のように見えるかも知れない。頬を擦り付ける私に鈴仙が苦笑したのは、何を思ってだろうか。そもそも私が抱き付いたり笑ったりすると、だいたい皆が母親のような笑みで見てくるのだが。

 

「…と、ともかく。もう離してよ。誰かに見られたらどうするの?」

「別に私はそういう感じの娘って思われてるから、気にしなくていいよ」

 

 これは果たして自虐でしょうか。

 涙目になってくる鈴仙に流石に可哀想かと思い、苦笑しながら離す。鈴仙は再度此方をキッと睨み、溜め息を溢した。苦労の溜まってそうな表情…やはり苦労人なのだろう。一日くらい変わってあげてもいいかも知れない。もっとも、生真面目な彼女は断りそうだが。

 

「えへへ、鈴仙。疲れたら私のところに来てね? おもてなしするよ」

「なんで急に…も、もう帰るわ。じゃあね」

 

 しっかりと挨拶はする辺り、嫌われてはいないらしい。兎さん可愛い。

 ふわふわと飛んでいく鈴仙を見送りつつ、賽銭をちらと見てから飛翔する。あまり逃げ続けると、逆に恐ろしいことになる。大人しく…帰るとしようか。一時の空中散歩…私はそれを、まるで死刑を告げられたような気持ちになりながらも、ゆっくりと楽しむのだった。

 

 

 …元気に誤魔化して帰った結果、案の定夕方まで搾り取られたのは、ここだけの話。

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