黒狼狐己録 -Life Harboring-   作:ふーか

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 いやはや、ちょっとグダグダしたかな…?
 次回は…久々に狐火鴉さんに暴走していただきましょうかね。

 次々回ですが、現在けーね先生辺りにしようか迷っています。
 …はっ!? 妹紅と慧音、お二方に暴走していただけば(ピチューン


◆ 紫の我が儘と (中)

 毛繕いする狼に、ぐでっと伏せる九尾の姿。もう悪臭はしていないが、藍はまだ惚けた顔をしていた。余程激しいものだったのか、少しつつけばビクッと体を震わせる程には敏感になっている。勿論、つつく度にその仕返しとして尻尾のプレスが飛んでくるが、その尻尾ですら触れば跳び上がる程だった。

 

「…狼戈…いったい、どうして…くれるんだ…?」

「がう。わぉーん」

「狼から人狼に戻ってくれ…何て言ってるかわからない」

 

 …やり過ぎたと言ったのだ。

 毛繕いは大事なことなのだ。燐も似たようなことを言っていたが…私のような妖獣が、いつも人型でいるとは限らない…夜に使う暴走時と比べ、大狼になる訳でもない、普通にただの狼だ。他の宿すを使ってみても、巨大化したりということはない。妖術辺りは余裕で使えるが…それでもやはり暴走程の力は出なかった。まあ、限られた時に使えるからこそのあの強さであり、そういつでも使えたら切り札ではなくなってしまう。

 

「ふぇ…そんなに怒らなくてもいいでしょ…いつも私がやられてることなんだからねっ!!」

「やるのとやられるのじゃ違うだろう…うう、立てない…」

 

 ふはは、いつもの仕返しだ。

 

「お楽しみ中悪いけど狼さん。ちょっと此方に来ていただけるかしら?」

「んにゃ? 紫が来るとは珍しい」

「珍しいも何もここは私の家よ」

 

 それもそうでしたね。空気過ぎて忘れてました。

 藍にまた後で、と短く告げ、紫の後をちょこちょこと着いていく。すると突然紫が私の手を掴み、強引に引っ張るようにして歩き始めた。悪意自体あるのかないのかよくわからない笑みを普段から浮かべているため、どういう心理状況なのかいまいち読めない。そのまま紫の自室らしき部屋に案内され、ぽてっとソファーに座らされた。訳がわからない。

 

「さて、狼戈。早速だけど…貴女、私との約束を覚えているかしら?」

「約束? やくそく…? さっぱりわからにゃい」

 

 あざといと言われても仕方ない気がする。

 記憶を少しずつ辿っていく。紫との約束…ここ数年で約束を交わした覚えはない。つまりは天狗の山の事件以前だろうか。でも、私が忘れるようなどうでもいいかくだらないような質問なんて…

 

「…あ」

「思い出したかしら? ふふ」

 

 ーー一週間くらいなら付き合ってあげるから…。ああ、そうか。冬眠というか、一週間抱き枕にされてやるというものか。成る程、微塵も覚えていなかった。

 

「え、い、いや、その、いきなり?」

「ええ、何か都合が悪いかしら?」

「…ん、ちょっと悪い。藍に伝言が…そだ。紫のせいで暫く遅れるって椛に伝えてよ」

 

 ーーじゃないとお断りだよ…そう告げると、渋々といった感じで隙間越しに藍に伝言を告げた。隙間の向こうからは藍の力のない声が聞こえた気がするが、きっと私には関係のないことだろう。ああ、昨日の夜の記憶が飛んでるなー、あははー。

 

「さて、これでいいわね」

「え~? やっぱりまだ…っ!? ん、ぐ…」

「残念、もう捕まえちゃったわよ?」

 

 背後からいきなり引っ張られたと思ったら、抱き締められていた。隙間の不気味な空間の中で、強めに抱き締める紫に少し息苦しさを覚える。

 

「ん…ぅ!! せめて向きは…変えさせてよ…っ」

「だぁめ。約束は約束…しっかり付き合って貰うわ」

 

 向かい合う形で、自分に押し付けるように抱く紫。背後から抱かれた状態ならまだ気が楽だが…目の前には紫の顔。体の各部位に紫の体が触れ、柔らかい感触が包む。当人は極上(?)の抱き枕を手に入れて嬉しそうだが、私としては非常に居心地が悪い。胸も足も、抱きしめられた結果押し付けられているようになっているのだ。悪い以外の何がある。更に加えて、ここは隙間の中。周りに浮かぶ目が不気味で仕方ない。

 

「ね、ねぇ、紫…この目はいったい……あれ? 寝てる」

 

 あまりに無防備に寝息をたてる紫。改めて見ると、本当に綺麗な顔立ちだと思う。私は…体型も身長も、声も何もかもがロリ化してるから…どちらかというと可愛いと言われるタイプだ。大人になりたい……

 

「…え? 私、一週間ずっとこのまま?」

 

 基本的に食事はあまり必要としないし、最悪具現化でなんとかなる。椛も藍がなんとかしてくれるだろう。問題はないが…退屈だ。当人はとっても幸せそうに笑顔で寝ているし…撮りたいところだが、抱き締められているぶん角度的に撮れない。チッ。

 

 どうせ抱かれているのだから…そう考えて、紫の背中に腕を回す。体格差があり、私が小さい故に抱き締めることは出来ないが、とりあえずぶらぶらとしているより、この方が腕は落ち着く。足は少し曲げて、楽な姿勢に。何かを間違えたり変なテンションにならない限りは体に触れられるというのはあまり得意ではない為に、抱かれた時は焦ったが…まあよしとしよう。

 

「…変な約束を受けちゃったよ」

 

 愚痴をひとつ、宿すを発動させる。九尾の力を宿しながらも、その獣耳と尻尾は黒のまま。紫をくるりと包むと、一瞬にやりとした気がした。

 

「…起きてるでしょ」

「……ふふ」

「絶対起きてるでしょっ!!」

 

 紫を包む尾でそのまま絞めてやろうと思いながらも、紫に強く抱きつく。相変わらずの甘ったるい匂い…でも確かに暖かみはあり、眠りへ誘うような、とても心地のよい程よい暖かさ…私も、眠くなっちゃった。

 

「…お休み、紫」

 

 返事は返ってこなかったが、ゆっくりと力を抜く。たまには…ゆっくりと眠るのもいいかも知れない。どこぞの妖怪のおかげで、気楽に眠る事が出来なかったもので…白い狼とか、白い狼とか、白い狼とか。

 一週間…小さく溜め息ひとつ、深く目を瞑るのだった。

 

 

◆◇◆

 

 

「んっと、準備は…もう出来たかな。そうだ、燐さん達も一緒に行きません?」

「あたい等は…流石に仕事を離れる訳にはいかないからねぇ?」

 

 丁寧に畳んだ衣服や小物、武器関係の用具を狼戈から貰った鞄に詰め込み、くるりと背負う。ベルトで固定してはいるものの、かなりの重さがある故に少し動くと左右に大きくぐらついた。荷物も確認完了…一度背負った鞄を置き、燐達と駄弁る。燐達はいつでも遊びに来られるし、私達もいつでも遊びに来れる。狼戈らしい場所に建てたと思う。

 

「燐さん、狼戈さん曰く何時でも大丈夫らしいので、暇なら遊びに来てくださいね」

「ん、勿論。お空も連れて突撃するよ。さ、さとり様にお伝えしておいで」

 

 肯定し、鞄を置いたまま部屋を後にする。さとりには以前から伝えてあること…挨拶をしてそのまま終わりだろう。勿論また何回も会いに来る予定だし…さっぱりしたものでいいと思う。会えなくなる訳ではないのだし。

 

「失礼します…」

「…狐火鴉。本当に行くの?」

 

 第一声、意外なことに、それは問い。彼女の種族上…答えなどわかりきっているはずなのに。

 

「…はい。狼戈さんは…私にとって第二の主のような存在ですから」

 

 …そう考えると、下手に襲うのも自重した方がいいのだろうか…? 主を無闇に襲うというのも…いや、無理だ。自重しろなんて出来る訳がない。

 

「そう…またいつでも遊びにいらっしゃい。歓迎するわ」

「…はい!! 行ってきます!!」

 

 最後は…笑顔で。短く終わった挨拶に、跳ねるように廊下を歩く。後は…狼戈のところに向かうだけだ。自分の…大好きな物の場所に。

 

「…あ、椛さん。終わりました。行きましょっ!!」

「…うん。行こっか」

 

 笑顔で答える椛に、荷物を背負って燐達に手を振る。やけにさっぱりとしたお別れ…まあ、やっぱりもう会えなくなる訳じゃないし…。

 建物を出た後にふと振り返ると、窓から小さく手を振るさとりの姿が見えた。その姿に深々とお辞儀をし、もう距離を離していた椛に追い付くように地を蹴る。私の実家はここなのだ…いつでも帰って来るさ。みんなで、また…

 

「…って椛さんっ、速いです!!」

「ん~? あらら、遅いよ狐火鴉」

 

 …駿足の白狼天狗に遅いと言われても、どうしようもありませんよ。

 

 

◇◆◇

 

 

「一週間借りてるっ!?」

「…ああ。なんでも、紫様が抱き枕にするとか…すまない」

 

 珍しく、狐火鴉が敬語も忘れて声を上げる。また会えると思って、意気揚々と来たというのに…この始末ではまぁ私でも怒鳴りたくなる。狼戈のことだ…どうせ断るに断れなかったか、仕方がないといった感じで了承したのだろう。お人好しにも程がある…そう言いたいところだが、狼戈がお人好しでなかったら…私達全員、嫌われているだろう。無理矢理襲われて、許す方が普通はおかしいのだ。改めて優しすぎると思う…その優しさも、私達を惹き付ける理由のひとつだが。

 

「…そうですか。わかりました。…後でじっくり頂くとします」

「……狐火鴉、貴女も結構言うんだね」

 

 さらりと問題発言だ。…まあ、仕方ない。その時は私も我慢するとしよう。最近はずっと独り占めしていたし…何より狼戈がそろそろ暴走しそうな感じだし。あの娘が暴走すると、能力含めて恐ろしいことになる…それこそ三日三晩立てなくなるような快楽に襲われるのだ。出来ればあまり暴走させたくない…。だが素の彼女になら襲われても…いや、何でもない。

 

「…で、紫様が椛達と居ろとのことだ。暫く世話をさせて貰うぞ」

「あ…うん。わかった…」

 

 はっきり言うと、食材も何もかも狼戈が揃えているため、世話など必要ないのだが…まあ受けられるものは有りがたく受けておくとしようか。

 

「…とりあえず、ご飯食べよっか」

「…そうですね。ああ、狼戈さん…どうしよっかなぁ…ふふ…」

 

 …ダメだ、この子かなり怖い。

 にやにやと悪意しかない笑みを浮かべながら、台所に赴く狐火鴉の背中を、藍と同じくただ呆然と眺める。ふと、ちらりと狐火鴉が此方を見て首を傾げた。この問題しかない言動が、狼戈が普段どんなことをされているのかをよく物語っている。地底の妖怪に、九尾や兎に狼果ては隙間妖怪にまで。きっと私なら耐えられない。

 

「…さ、さあ。何か、作ろうか…」

「はい、簡単なものなら作れますよ~」

 

 …うってかわって、恐ろしく笑顔だ。どうしよう、誘ったのは私だけど、着いて行けない。

 

「…藍さん、出来れば狼戈早く…」

「…ああ、そう思うが…紫様的に無理だ。我慢してくれ…」

 

 きっと狐火鴉も、狼戈が来れば落ち着いてくれるはず…そう考え、狐火鴉の言動に怯えながらも料理の支度をするのだった。

 

「…ふふ…♪」

「…こ、狐火鴉、ちょっと落ち着こう? ね?」

「え~? 私は正常ですよ? えへへ…♪」

 

 …私、逃げ出していいかな。

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