黒狼狐己録 -Life Harboring-   作:ふーか

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ど、どうしよう…っ。
前話からずっとグダグダが続いていて…

ネタも何もないからでしょうか…申し訳ない。

タイトルですが、(上)~(下)の一区切りごとに「◇」「◆」と色を変えることにしました。


◆ 突然の来客 (上)

「あ~…うん。あ?」

 

 結局、何が起きたのかわからないまま過ぎた夜。熟睡する慧音に、私に抱き付いたままの妹紅。頬をつついてみると、妹紅が小さく唸った。何年生きてようが、やはり少女は少女か。可愛らしいものだ。いやまぁ、多分私もなんだろうけどさ。

 

「…ねぇ、妹紅。起きてよ…ひゃっ!? や、やめ」

 

 寝ぼけているのか、わざとなのか。更に強く抱き締める妹紅に、少し色めいた声をあげてしまう。あれからあまり時間は経っていないんだ…敏感なんだから、察しては貰えないだろうか。

 

「もこたんっ!!」

「ん…? あぁ、おはよう…狼戈…って」

 

 私を見るなり赤くなる妹紅。理由はわかる。原因もわかる。だが、その原因は君らだ。決して…私が悪い訳ではない。恐らく。きっと。多分。

 

「…服」

「…真っ赤になられてもねぇ…? ていうか、君達が脱がしたんでしょうに」

 

 強引に脱がしたのは誰だ。

 

「…ごめん、その、えっと…」

「あ~、うん。もう、いいよ。慣れてるって」

 

 化けるでサラッと着衣を終了させた後、妹紅に風呂の場所に加え、慧音を起こすように告げて部屋を出る。風呂に入って貰う間に、朝御飯を作っておくとしよう。最近、誰かが私の家に泊まりに来るときはこの流れだ。というか…まともに、ただ泊まりに来てくれるだけのお方はいないのだろうか。…きっと、フラン辺りなら普通に来てくれるはず。血はおいといて。

 

「…あ、そういえば。私レミリアに血、あげたっけ」

 

 思い出したように呟き、記憶を遡る。だが…あの弾幕ごっこ(殺し合い)のことがあまりにも印象に残っており、思い出せない。まあいいかと軽く流し、お菓子と料理を平行して作る。さて、ゆっくりと自炊するとしましょうかね。

 

 

◇◆◇

 

 

「こいし、まだかなぁ…」

 

 正午を指す時計を眺めつつ、ただただその時を待つ。慧音は授業があるから、と謝罪と礼を告げて帰って行った。しかも、律儀に食事の皿まで洗って。真面目なのはいいが…人が別に良いって言っているのだから無理にやらなくてもよかったのに。妹紅も同じように謝って、感謝して帰っていった。また来るとは言っていたが…きっと、暫くは来ないだろうな。真っ赤になっていたし。

 

「…誰かいますか?」

「ん…こいし…かな?」

 

 声を聞いて、少し違和感を感じながらも扉を開ける。確かにこいしに似た声だが…こいしなら場所も知っているし、さらりと入ってくるはずだ。だが…確認をとる上、その声は暖かみのあり、こいしと比べればほんの少し低い声。何かが化けていたら蹴っ飛ばしてやろう…そう考えて来客の正体を見れば、其処には予想もしていなかった妖怪がいた。

 

「…良かった、合ってた。久しぶりね、狼戈」

「え…え、えぇ!? さ、さとり様…!?」

 

 微笑むさとり。来客の正体…それは間違えようもない…私の主の姿だった。

 

「え、えっと…その…」

「どうしたの? 都合でも悪かったかしら…?」

「い、いえ!! とんでもない…」

 

 突然の来客に、ただ狼狽えるしか出来ない。久々に会えて、本当に嬉しいのだが…本当、唐突過ぎて、頭が理解していない。それに…どんな対応をしたらいいのか。私は…私を家族のように一緒に住んでくれた主の館を、ほぼ無理矢理に飛び出したのだ。伝えるものは伝えた。だけど…

 

「…狼戈の人生は狼戈のもの。気にしなくていいの」

「で、ですけど…」

「それに、もう私は貴女の主じゃない。普通に接してくれていいのよ?」

 

 表情から全てを読み取られてしまったようで、的確な指摘を受ける。やはり…敵わない。

 

「…はい。でも、接し方はこれで慣れてるので気にしないでください」

「そう? 狼戈が良いのなら良いのだけれど」

 

 何百年も敬語で話してきた相手に普通に話せというのは、やはり無理があった。逆に(ふざけた時以外で)敬語で椛と接しろと言われたら、此方も違和感しか感じない。まあ、慣れてるもので。

 

「…お姉ちゃん!?」

「…こいし?」

「あ、来た。今日はこいしが来るって約束してて…」

 

 慌てた心境に追い討ちをかけるように現れたこいし。何故か焦りを感じつつもさとりに説明をしていると、ふとさとりがくすっと笑った。可愛い。

 

「と、とりあえず紅茶でも…どうぞ、寛いでてください」

「そう? なら、お言葉に甘えるわ」

 

 机を囲む椅子にかけて貰い、紅茶のポットや茶葉を準備する。準備をする最中でちらちらと見られていることに気が付いたのか、折角座ったさとりが此方へと歩いて来た。私、何か変なことしたかしら。

 

「な、なんですか…?」

「…今日の狼戈、なんかおかしいよ?」

「…そうね、何か…変」

 

 こいしの言葉が拍車をかけ、さとりがジト目へと変わる。口は笑っているのに目が笑っていない。本当に突然でどうすればいいのかわからないだけであって、やましい気持ちはまったくとしてないのだが…やはり、変だろうか。無理矢理にでもタメ口で話した方が良いのかな…

 

「別に…た、ただちょっと緊張してるだけだよ…」

「ん、そっちのが可愛いわよ、狼戈」

 

 悪気はないのだろうが……頬が紅潮していくのを感じ、顔を背ける。だがいつの間に此方に来たのか背けた先にもこいしがいた為、逃げ道を無くした。こいしさん、笑い方に悪意しかないんだが。

 

「さとり様…いや、さとりはなんで此処に?」

「狼戈の現状が気になったのよ。狐火鴉達も来ていたし、ちょっとくらいは地底を空けてもいいかなって」

 

 つまりは、心配して来てくれたようだ。タメ口に何のお咎めもなく、普通に接するさとりにやはり違和感を感じつつも、どうするかを考える。接客用のものは粗方揃えてあるし、もし泊まるにしても問題はない…まぁ、事前に考えるよりその場その場で判断した方が良いだろう。

 

「私は大丈夫だよ? 相変わらず夜はまぁ…襲われるけど」

 

 細い目でこいしを見詰めると、鼻唄混じりに即座に視線を逸らした。その様子を見て、さとりはふっと一息吐き出し、ちょいちょいと此方を手招きした。準備の終わったポットを置き誘われるがままにそちらへ赴く。

 

「どうかした? さと…り…」

「…相変わらず、良い匂い」

 

 近寄った瞬間に抱き寄せられ、抱き締められる。突然のその行動に思考が停止し、パニックと化した。こいしも流石に驚いたのか目をパチクリさせているし…やはり仕事から離れると、さとりでも羽目を外したいのだろうか。そう考えると…何も抵抗しないのが無難だろうな。でも…

 

「ん…ぐぅぅ…!! く、苦し、離し…!!」

「…あ、え? あ、ごめんなさい!! 私、つい…」

 

 何度も言うが、私自身の体は軟弱だ。さとり妖怪とはいえ、強く抱き締められれば最悪骨が砕ける。死にはしないけど…本気で痛い。戦闘の痛いと日常の痛いは全然違うもので。

 

「さ、さとり…大丈夫? なんだかおかしいよ?」

「…そうね、何故か…気分が落ち着かない。…私、外にいるわ」

 

 何かに急かされるように出ていくさとりを、ただ呆然と見送る。こいしと顔を合わせると、こいしも首を傾げた。もし…さとりに何か異常があるのなら。私は全力で助ける。以前、自分にそうしてくれたように…。

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

「……っ」

 

 下がらない心拍数を押さえ込みながら、狼戈の家の壁を背に、ずるずると座り込む。気分が悪い…心が霧がかっていて、何故か落ち着くことができない。この異常の原因はわかっているし、即座に解決することも出来る……出来るけど……

 

「…出来ない…っ」

 

 そう…出来る訳がないではないか。私を慕って、信用してくれているあの娘に対して。

 はっきり言ってしまえば、狼戈と過ごした数百年の間…私も何度か襲おうとしてしまった。それでも自分を無理矢理抑え込み、普通に、家族として接してきたのだ。だが…その反動もあるのだろう。どうしても…気がすまない。

 拍車をかける原因として、狼戈は心を読めない。それ故、本音はどう思っているのかがわからない…嘘を吐かない娘だとは知っている。だが、それが心中の言葉でない以上、本当の言葉とは限らない。つまり…嫌がられようが、本心ではないと考えられる。無理矢理だが…私はどうも理由をつけて実行したいらしい。どうすれば…

 

「…さとり? 大丈夫?」

「っ!! 狼戈……お願い、此方に来て…」

 

 表情に疑問を浮かべつつも、何の疑いもなく歩み寄ってくる狼戈に、罪悪感が込みあげる。だが、今の私は…自分を抑えることなど出来なかった。

 

「…さとり…ん…ぅぅ!? ん、ぐ」

 

 無理矢理に抱き寄せ、押し倒し、唇を奪う。その簡単な行為を我慢し続けた結果、欲が完全に自分を支配し、自我をほぼなきものにしていた。少し暴れる狼戈だったが、十秒もすれば大人しく、ただただ身を委ねるばかり。

 

「い、さ、さとり、んっ…や、め…」

 

 狼戈の言葉を微塵も耳にいれず、一心不乱に口を、舌を貪る。頬を赤くし、虚ろな瞳を浮かべる狼戈の心境は、いったいどういうものなのか…私には、わからない。

 

「ん…きゃっ!? あ、あれ…?」

 

 突如何かに全身を覆うように巻き付かれ、浮遊感が体を襲う。何事かと狼戈を見れば、ゆっくりと立ち上がって背中の土埃を払っていた。私に巻き付くものの正体は狼戈の尻尾…それも一本ではなく、九本。彼女の能力で増えたものだろう、手触りが恐ろしい程に良いものだ。

 

「…流石に、屋外はやめてね」

 

 一瞬冷静になった頭。ぁ…という小さな声が、無意識に溢れた。ゆっくりと私を降ろして手招きしたあと、家に戻っていく狼戈。唾液を拭って心を落ち着かせたあと、私も家へと戻る。今日の晩は…素直に地霊殿に帰ろう。このままでは…確実に迷惑をかけてしまうのだから。狼戈を想うなら、私は……

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