黒狼狐己録 -Life Harboring-   作:ふーか

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お久しぶりですー。
本番は(下)からですよん…(にやり


“番外編„ Trick or Treat!!
◆ ハッピーハロウィン♪ (上)


「ハロウィン…ねぇ…?」

 

 猫(という名の橙)カレンダーを眺めつつ、溜め息を吐く。悪戯心を擽られるイベント…ではあるのだが、少し考えただけで憂鬱になった。藍や紫、椛や狐火鴉達に「お菓子くれなきゃイタズラするぞっ♪」などと言ってみろ。どう考えても、待つのはお菓子という名の快楽の地獄。いとも容易くイタズラする側が変わる。それ故…どうしようか、と考えているのだが…どうするべきだろうか?

 …橙のカレンダーは、本人に何度言われようと変える気はない。理不尽に襲われたが、変える気はない。変える気はない。マタタビに弱い橙が可愛いのだ…え? 自虐? はて……

 

「…よし、やろうか。何百年ぶりのハロウィンだろうねぇ…ふふっ♪」

「あれ…狼戈? どうしたのさ、可愛らしい笑い方して」

 

 …世間一般では気持ち悪いと言われるような企み笑いも、私がすると可愛らしい扱いらしい。嬉しいのかよくわからないが…それはどうでもよい。まず、一人目……っ!!

 

 

『お菓子くれなきゃイタズラするぞっ♪』

 

 

◇◆◇

 

 

「ふふ~…♪ 楽しみだね…♪」

「ちゃっかり乗り気だねぇ、椛」

「……なんで私まで」

 

 ふらふら下降する地底の入り口。椛と狐火鴉を巻き込み、楽しい(?)ハロウィンパーティが幕を開ける。まだ昼だが、地底にはきっと関係ない。私が出れば基本的には笑顔で対応してきれる。いつだったか…遥か昔は、お前みたいな者が~と迫害された訳だが…勇儀ともさとりとも面識がある故に襲う輩なんて居ないし、私の性格上皆好いてくれる訳で。意外に優しい妖怪ばっかりだ。

 

「…ていうか、私達なんでこれ着せられてるんですか…?」

「貴女…嫌がる私に貴女の服着せたわよね。他にも水着とか寝間着とかあと」

「あわわわわ…!! それ以上は言わないでくださいっ!!」

 

 可愛らしいではないか、ここちゃん。

 椛には魔女のような濃い紫の帽子や衣服を着させ、狐火鴉には吸血鬼のような露出度の高い衣服を(無理矢理)着せた。私は…不死鳥。胸と股から膝、肘から手先を紅のひらひらドレスで隠しただけのもの。私の能力の関係上、衣服と赤みを帯びた巨大な翼、孔雀のような幾つかの尾は仄かに輝き、発光している。はっきり言って、露出度が一番近いのは私なのだ。狐火鴉にとやかく言われる覚えはない。

 

「おやおやおや? 懐かしい顔が見えるねぇ…」

 

 第一村人発見…というのは冗談で。

 

「ほら、言うよ!!」

「なんで…私も……」

 

『お菓子くれなきゃ悪戯するぞー♪』

 

 …満面の笑みで告げた結果、ヤマメは目を丸くし、椛は苦笑、狐火鴉は大噴火というよくわからない状況と化した。原因が私であることははっきりわかっている。ハロウィンという行事が幻想郷しているのかすら調べずにやった行為。どうなるか粗方は予想していた…が……。少しショックかも知れないというのが本音だった。

 

「外の世界にはハロウィンって言うのがあるんだよ。子供達が妖怪に化けて民家を回るの」

 

 苦笑混じりに説明した結果、ふむふむと興味深そうに頷くヤマメ。暫し唸り声をあげた後、ちょっと待ってねと小さく残し、蜘蛛の巣(的な何か)へと消えていった。椛と顔を合わせて狐火鴉の肩をぽんと叩いていると、やけに騒がしい音と共にヤマメが転がり出てくる。何してるの、この娘。

 

「私にはあげれるお菓子はないからね…ほら、どうぞっ」

 

 ヤマメから投げるように渡されたのは、綺麗な紫色の星形マスコット。明らかに即席の、土蜘蛛の糸で作られたもの…顔を見合わせると具現化を発動させ、髪飾りのようにクリップをつける。同じように獣耳の根本に着けたあと、全員で顔を見合わせて笑い、大きく伸びをした。まだ一人目…

 

「さて…その“はろうぃん„って、誰でも参加出来るんだろうね…?」

「ふぇ? そりゃまぁ、勿論だけど…」

 

 ふふふ…と悪巧みするような笑みを見せるヤマメ。首を傾げた次の瞬間、ヤマメの衣服が一瞬にして蜘蛛の糸へと変わる。衣服が包帯のように蜘蛛の糸になった…一瞬でその意図を察し、同じようににやりと笑う。人数が多い方が…楽しいよね。

 

「…じゃあ、ヤマメも交えて旧都としようかっ!!」

「おーっ!!」

「…着替えたい」

 

 

◇◆◇

 

 

「お菓子くれなきゃ悪戯するぞー♪」

「おー、狼のお嬢ちゃんか。お菓子お菓子……ほら、これで良ければ」

 

 大 収 穫。

 旧都の妖怪全てを巻き込み、大袈裟にハロウィン巡り。そこまで派手にやるつもりはなかったが、ヤマメを筆頭に大騒ぎとなった。とある鬼から貰った飴玉を片手にはしゃぎつつ、次の獲物ーと探してみる。不死鳥姿だというのに、狼イメージが強すぎるのか狼の~としか言われないことに寂しさを感じるのは私だけの秘密。

 

「おやおや…だいぶ大騒ぎだねぇ。久しぶりに心地よい喧騒だ」

「勇儀姐!! お菓子くれなきゃ悪戯するぞー!!」

「ふむ、狼戈にされるならいいかもねぇ…? ふふっ、ほら、あげるよ」

 

 笑顔で渡されたのは、何故かなみなみお酒の入った一升瓶。目をぱちくりさせながらもお礼を捻り出し、丁度近くを通った狐火鴉(荷物係)に押し付けた。ヤマメや私達全員で分担してあっちこっちへ行っているが、見事に大繁盛である。でも…お願いですからお酒やお肉を渡すのはやめてください。

 パルスィやキスメ(初対面)も居たりはしたが、ヤマメが楽しそうにしていた為にそっとその場を離れた。旧知の仲に首を突っ込むのは、ただの愚か者さね。

 

「…さて、あともうちょっと遊んだら地霊殿に行こうかな」

 

 …よくよく考えれば、やってることは悪質なカツアゲである。気にしちゃいけない。

 

 

◇◆◇

 

 

「…ふぇぇ」

 

 ヤマメは勿論、椛と狐火鴉までもが旧都に残り、勇儀達と騒ぎ始めたために渋々と一人で来た地霊殿。これぞ本当の一匹狼…いや、今の私は不死鳥だけども。よく考えると、妹紅と地味に被っている気がする。あの娘は人間だけどさ。

 まず手始めに、と向かうのは見慣れた廊下。どういう反応をしてくれるのかとにやにやした笑みを溢しながら、長い廊下を歩く。誰かに出会うまでもなく到着するは嗅ぎ慣れた香りの部屋。入る前に、と聞き耳をたて、中の様子を探る。

 

「久々に会いたいんだけどなぁ…最近、あんまり来てくれないし…」

「狼戈には狼戈の都合と事情があるさ。まぁ…あたいも会いたいんだけどねぇ…」

「トリックオアトリート!!! お菓子くれなきゃイタズラすむぎゅぁ!?」

 

 徒歩で来た。

 挨拶早々飛び付いてくる地獄鴉の砲弾に押し倒されつつ、笑顔で挨拶を交わす。空の翼を撫でたり擽ったり悪戯しつつ、ハロウィンの続きを再開する。

 

「お菓子っ!! お菓子ないとイタズラするぞっ♪」

「あたいが狼戈に悪戯し…なんでもない。お菓子、ねぇ…これでいいかい?」

 

 燐が取り出したのは、手作り感満載の猫型クッキー。私が色々とやっていたことは、やはり親しい仲だった燐や空達は覚えてしまっているようだ。私がやることによって彼女達が学べるなら、私としては一切の不都合はないのだが。逆に嬉しい限りだ。模範になれるなら…

 

「んっ、ありがたくいただくよ~♪」

「えと、私は…ん……これ!」

 

 空にぽんと渡されたものは、黒い一本の羽。手触りの良い鴉の羽…

 

「結構前に狼戈が撫でた時に…ひとつ、落ちたんだ。折角だからとっといたの」

「え、嘘…。ごめんね…?」

「ううん、気持ちよかったからだいじょーぶっ!!」

 

 …本当に良い娘だよこの娘。出来ることならお持ち帰りしたい。

 赤い髪に黒い羽を飾り付けつつ、クッキーを腰のポーチに入れる。ハロウィンが何かを説明た後、いつものごとく日常駄弁り。粗方愚痴って愚痴られ、話して話されて満足した後、仕事がないという燐と空に手分けして貰って住民に仕掛ける。残された私のいく先はひとつ…

 

「……どうぞ?」

「失礼します……トリックオアトリート…お菓子くれないとイタズラするぞっ♪」

 

 入室を礼儀正しくしたことに、果たして意味はあったのか。

 席を立ったさとりに飛び付くように抱き付き、無邪気な笑みを見せる。一瞬困ったような顔をし、母親のような笑みを見せるさとりに頬を擦り付けつつ、ぴょんと離れてお菓子をねだる。

 

「…ケーキくらいしかないわよ?」

「ケーキっ!!」

 

 …私、幼いなぁ。

 渡されたフォークで卓上のケーキを頬張りながら、またハロウィンの説明を開始。優しく聞いてくれるさとりに思わず微笑みを見せながら、貰ったケーキを食べ尽くした。

 

「面白いわね…やっぱり、狼戈は可愛いのね」

「なっ…いきなり言われると照れるよ……えへっ♪」

 

 幸せな一時を過ごし、お礼。どうせなら椛や狐火鴉達も会わせたかったのだが、どうやらまだ来る気配がない。私も…参加するとしようか、旧都の宴に。燐達も誘うとしようか……

 

「Trick or Treat…さぁ、まだまだ…終わらないよ…」

 

 この宴が終わったら…次の獲物は……

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