西方十勇士+α   作:紺南

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こっそりと忘れていた分を投稿。


番外

川神の大扇島。

そこにある九鬼財閥極東本部に、現在世間を騒がしている四人――――その内の三人の学生の姿があった。

 

そわそわ、そわそわと落ち着きなくテレビに齧りついている源義経。

その横でマイペースに川神水を飲み、中年のような吐息を漏らす武蔵坊弁慶。

そして、そんな二人に優しい瞳を向ける葉桜清楚。

 

偉人のクローン。

そんな肩書を持つ三人は、今は東西交流戦の結果に夢中だ。

 

武神がいるのだから心配ないと諭す清楚と弁慶。

それは分かっているがでもやっぱり心配だと不安を露わにする義経。

 

結果、夜遅くにも関わらず三人はテレビの前に集合した。

――――余談だが、クローン最後の一人は熟睡している。

 

「ダージリンティでございます」

 

仕えていた老執事はそう言って、カップを二つテーブルの上に置いた。

清楚と義経は礼を言う。弁慶は文句を垂れた。

 

「ちょっとクラウ爺ー。私の分がないんですけどー?」

 

「おや、いるのですか?」

 

「いらなーい」

 

だらしなく笑う弁慶にクラウディオはやれやれとため息をつく。

いくら川神水と言えど、少しは遠慮してほしい物だ。

 

 

「は、始まったぞ……!」

 

「お。ようやく肴にありつける」

 

弁慶がぐいっと煽る。

本日何杯目になるか分からないそれを見かねて清楚が注意した。

 

「弁慶ちゃん、いくら明日がお休みとは言ってもほどほどにしないとダメだよ?」

 

「へーい」

 

メッと人差し指を立てての注意は非常に可愛らしい物ではあったが、当の弁慶は適当な返事と共にお替わりを注いでいるので、まったく効いていないようだった。

清楚は頬をふくらませて不満げな顔をする。

 

「さ、さすが武神……。あの人数を一撃で倒すとは……」

 

ぷるぷる震えて拳を握る義経は子犬みたいで可愛い。

弁慶の杯が進む原因だった。

 

「今の義経じゃとてもじゃないが勝てない……」

 

「震える義経。悩む義経。かわいい義経。これを見ながらきゅうっと一杯。……あぁ、格別ぅ!」

 

「もう、弁慶ちゃん!!」

 

何だかんだ言いながら、それぞれ交流戦を楽しんでいるようだ。

ここに与一が居ればもう少し賑やかになったのだろうが、今でも十分過ぎるほど和やかな室内。

 

微笑ましい。

クラウディオは微笑んだ。

 

クローンとして生まれた彼女たちが、こうまで真っ直ぐに育ってくれたのは喜ばしいことだ。

皆いい子で、少々問題点はあるにしても、それは年頃の子供ならみんなが持っているもの。

このまま何事もなく育ってくれれば、将来は英雄の名に負けぬ逸材へと成長するだろう。

10年後が楽しみな、未来を担う若者たちである。

 

そんな風に、クラウディオが未来に思いを馳せている横で、ふと画面がうつり変わった。

天神館の生徒が変わった格好の少女に圧倒されていた画から、見覚えのある少年が武神と対峙している画に切り変わった。

 

それのおかげで、一瞬前まで賑やかだった室内はしんっと静まり返る。

 

クラウディオはテレビの中に映った男の子をまじまじと見た。

彼が今の彼女たちを見たら何と言うだろうか。

彼の性格を考え、恐らく苦言を呈するのではないだろうかとクラウディオは思った。

特に、与一の相も変らぬ思春期ゆえの病気を知ったら苦笑いするだろう。

 

手に汗をかきながら応援する義経。

一転し、真剣な目で画面を凝視する弁慶。

懐かしそうにじっと少年を見つめる清楚。

その瞳が一瞬赤く染まったのは恐らく気のせいではない。

 

クラウディオはこっそりと嘆息した。

やはりまだ会わせることは出来ないようだ。

 

姿を見ただけで触発されている。

これで直接彼の気を浴びたらどうなってしまうのか。想像に難くない。

 

――――出来ることなら、もう少しだけ大人しくしていてください

 

それはどちらか一方への願いなのか。それとも双方に言っているのか。

どちらにせよ、夜空に流れ星は瞬かなかった。

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