夢を目指す魔道士   作:シュトレンベルク

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ここから急展開、というかオリジナルルートに入ります。


思い出す魔道士

数日後、学校ではとある事件が起こっていた。

 

「侵入者、ね……」

 

「どうやらその様ですね。しかもこれは崩壊現象の跡……ですね」

 

セイはミラやリリスと共に現場を訪れていた。ただ窓ガラスが割れているように見えるそこからは、魔力暴走――――崩壊現象の残滓が感じられた。その時、アラタたちが現れた。

 

「うわ、なんだこれ……」

 

「崩壊現象の跡だよ」

 

「崩壊現象って、確か俺やユイが起こしたアレか?」

 

「そうです。今回もあなた方のどちらかがやったのではないですか?」

 

「それはないだろう。二人が崩壊現象なんて起こしたら、こんな生半可な規模で治まる訳がないからな。それに、この魔力痕は……」

 

「図書館の物と同じ可能性が高い、ですか……」

 

「……?」

 

その後、セイたちは図書館に向かい、アラタとユイ、そしてアリンは教室に戻った。そして教室に戻ったアラタはアリンに訊いた。図書館で何かあったのか、と。すると、レヴィが後ろから現れた。

 

「お化けが出るんすよ」

 

「きゃあっ!?」

 

「うわっ!?」

 

ユイはお化けという単語を怖がりアラタに抱きつき、アラタは急に現れたレヴィにびっくりしつつ、ユイの柔らかな感触を楽しんでいた。その後、アリンに頬を抓られていたが。

 

「それで、お化けが出るってどういう事なんだ?」

 

「……実は図書館によく通っていた双子の姉妹がいたの。二人はとても研究熱心で、いつも仲良く魔道の研究をしていたわ。

昨日みたいな雨の日、その日も図書館に行って研究していた。でも、何かがあって双子の姉の方が行方不明になったの。そしてそれから後、昨日みたいな雨の日には双子の姉の幽霊が……」

 

「きゃぁぁぁぁぁっ!」

 

「まあ、そんな訳っス」

 

「そうなのか……にしても意外だな。魔物は大丈夫なのに、お化けは怖いのか?」

 

「魔物は可愛いけど、お化けは怖いの!」

 

「そうか……?まあ、良いや。俺たちも調査に行こうぜ!」

 

そしてアラタたちは図書館に向かった。図書館に到着すると、魔力の残滓などを探すために歩き回っているセイと何か話しあっているリリスとミラ、そして寝ているアキオの姿があった。

 

「おーい、リリス!」

 

「……アラタ?どうかしたんですか?」

 

「邪魔をしに来たのなら容赦しませんよ?」

 

「いや、一応疑われてる俺たちも傍にいた方が良いんじゃないかと思ってさ。調査の邪魔はしないからさ。良いだろ?」

 

「む……まあ、良いでしょう。くれぐれも邪魔しないでください」

 

「分かってるって。……あれ?あれってセリナか。おーい、セリナ!」

 

「あ……アラタさん」

 

「何してんだ?こんなところで。あ、もしかして取材か?」

 

「えっと、私は……」

 

セリナが答えようとした瞬間、図書館内に莫大な魔力反応が発生した。その魔術は結界内にいる人物を特定座標へと強制的に転移させる物だった。その場にいた全員が抗いきれず、転移させられた。

 

アラタたちは正史の通り、リーゼロッテ・シャルロックとの邂逅を果たした。セイは一人分断され、何処とも知れぬ場所でとある一人の少女と顔を合わせていた。そう――――春日聖という少女と。

 

「久しぶりだね、レイ。こうして会うのは十年ぶりぐらいかな」

 

「………………」

 

セイはセイの事をレイと呼ぶ目の前の少女に見覚えはなかった。精々、アラタがアリンに似ていると言っていた少女か、と思ったぐらいだった。

 

しかし、魂は違った。目の前の少女との想い出が内から溢れてきていた。セイが失っていたビブリア学園に来るよりも以前(・・・・・・・・・・・・・)の記憶が、雪崩のように流れこんでくる。

 

それと同時に、生物としての限界を超えている量の魔力を生み出す心臓が鼓動を強くしている。目の前の少女を求めている何かが、強くセイを刺激してくる。

 

莫大な魔力が心臓にかけていた魔術を打ち破るべく、鼓動を加速させる。それは余波として現実に流れ出した。セイの髪が白くなり、かけられていた眼帯が外れたそこからは血よりも朱い瞳が現れた。セイは知らないが、それはかつてレイと聖が別れた時に見せていたのと同じ色だった。

 

「……ああ、久しぶりだ。またこうやってお前に会えるとは思っていなかったよ、聖」

 

「ここまでは本当に長かった……あなたが行方不明だって知った時の私の気持ちが分かる?」

 

「俺は今でもアレが間違っていたなんて思わないよ。それよりも聖、お前が俺と他の者たちを分けたのには何か理由があったんじゃないのか?」

 

「……どうしてそう思うの?」

 

「決まっている。俺の知っている春日聖という女がそんな事をする訳がないと確信しているからだ。お前はそんな無駄な事をする奴じゃない。俺はそう思っているんだが、違うか?」

 

「……変わったね、レイは。昔とは全然違う」

 

「変わらざるを得ない理由があるからな。それは、お前も同じだろう」

 

「それも気付いちゃうんだ。……私はあなたを福音探究会(イシュ・カリオテ)に誘うように言われてる。私たちと一緒に来てくれない?魔王に世界を滅ぼさせないために」

 

「……なるほどな。お前のいる組織がどういう集団なのか、大体分かった。だが、俺の答えは(No)だ。俺は、お前と一緒の道を歩むことは出来ない」

 

「……そうなんだ。それはやっぱりアラタさんのため?」

 

「いや。俺がこの道を選ぶのはお前らのため(・・・・・・)だよ、聖」

 

「……え?それはどういう……ッ!?」

 

聖がそう口にした瞬間、魔とは対極の位置に存在する聖の力がレイの肉体から爆発するように溢れ出した。魔とは対極の位置に存在する故に、それは在るだけで魔の力を持つ者にダメージを与える。

 

「ッ!俺が表に出るのはまだ時期尚早か……邪魔なんだよ、抑止力風情が!」

 

レイの左眼が青色に変わり、髪の色も三割ほど金色に変わり始めた。今まで抑えられていたセイの中にいる英雄の力が急激に活性化され、レイの力に対抗し始めていた。

 

莫大な魔の力と聖の力の衝突によって空白地帯となった肉体に、術式が奔った。英雄もレイも術式が奔り始めた事で漸く気付いた。それほど些細でしかし確立した存在となっていたセイの存在に。

 

色欲(ルクスリア)のアーカイブに接続。テーマを実行する!」

 

それはこの世界でトリニティセブン以外は至っていない境地。故に誰もがセイもその境地には至っていないと思っていた。誰もそんな事は言っていないのに。セイが一度も使わなかったが故に、至っていた境地。その名も――――秘奥義(ロスト・テクニカ)

 

 

色欲(ルクスリア)魔道極法(ラスト・クレスト)――――無限絶界(アエシュマ・デーヴァ)

 

 

それは別世界――――終焉世界へ渡る法。色欲(ルクスリア)にのみ赦された魔道極法(ラスト・クレスト)によって肉体を別世界に飛ばした。聖はそれを黙って見ている事しか出来なかった。事態が急速で動いていた為、反応する暇もなかった。

 

「私たちのため……?レイ、あなたは一体何をするつもりなの?」

 

『聖、今は退きましょう。これ以上、ここにいても仕方がありません』

 

聖の手元にあった魔道書『イーリアス断章』、通称イリアが立ち尽くしている聖にそう呼びかけた。聖はイリアを顔元まで持ち上げ、申し訳なさそうに言った。

 

「……ごめんなさい、イリア。あなたを彼に返す事が出来なかったわ」

 

『謝らないでください、聖。別にあれが今生の別れという訳ではないでしょう。まだ機会はありますよ』

 

「そう、だね……今は戻ろう。私たちの目的はレイだけじゃないんだから」

 

聖はレイがいた場所を一瞥し、その場を離れた。レイが語った目的が一体何であるのかは分からない。けれど、自分は自分のやるべき事をやろうと思いながら。

 

異界とはいえ、莫大な魔力が炸裂すれば有能な魔道士には分かる。それが世界に七人しかいないトリニティセブンと膨大な魔力を持っている魔王候補ともなれば、尚更だろう。

 

「これは……まさか、セイ?聖は一体何をしてるのよ……」

 

リーゼロッテ・シャルロック――――リーゼは学園にいた頃、セイのパートナーだった。正確に言うならば、セイがリーゼの補佐をしていた。リーゼの事をセリナの次に理解し、世界で最もリーゼの隣に立ってきたセイの事をリーゼはかなり気に入っている。好いていると言っても良いほどに。

 

そんなセイを自分が所属する組織福音探究会(イシュ・カリオテ)に勧誘する、と言われた時は自分が勧誘するのだと思っていた。しかし、やるのは聖だと言われ荒れていたのだが、真摯に頼み込んできた聖を見てしょうがないと諦めたのだ。

 

だと言うのに、今のは間違いなくセイの魔力。さらに言うなれば、規模的に見て秘奥義(ラスト・クレスト)クラスの術式が使われた。という事は交渉は決裂したという事だろう。

 

「聖……後で覚えておきなさいよ。言い訳は聞いてあげるけど、赦すかどうかは別問題なんだからね」

 

かつての学友を圧倒しながら、リーゼはそう呟いた。まるでセイは自分の物だと言わんばかりに、その圧倒的な力を振るいながら。

 

一方、秘奥義(ロスト・テクニカ)を使用したセイは転移した崩壊世界にて、暴走する心臓を必死になって治めていた。

 

セイが繊細な術式操作によってなんとか堪えていた魔力の奔流が、無作為にセイの体内で暴れまわっているからだ。その圧倒的なまでの魔力は理不尽な暴力と変わらないレベルで周囲を破壊していく。

 

「が、あああああぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」

 

あまりにも強烈で激烈なまでの痛みにセイは死すら覚悟した。誰もいない、廃墟以外何もないこの場所で朽ち果てる事を覚悟した。しかし、それだけは嫌だと思った。

 

何もない。そう、この場所には何もないのだ。そんな場所で誰に知られるでもなく、ひっそりと朽ち果てるなど到底容認できる物ではない。それ以上に、自分はまだ何もしていない。世界に爪痕すら残せていない。そんな状態では死ねない。死にきれない。

 

その念がセイを抗わせていた。荒れ狂う魔力の奔流の中でも意識を保たせていた。しかし、意地だけでは、感情だけではこの状態を覆す事は出来ない。無駄に苦しむだけで、無駄に傷つくだけだろう。そう、何の助けもなければ(・・・・・・・・・)

 

「……う……ぁ…………」

 

何かがセイを励ますように、魔力の奔流を抑えにかかった。その何かに助けられ、セイはなんとか魔力の奔流の源泉たる心臓を制御下に置く事が出来た。そしてセイが顔を上げると、そこには背中まで届く長い黒髪の少女がいた。

 

「……まさかここに誰か来るとは思わなかったよ」

 

「………………ぁ」

 

「大丈夫……ではなさそうだね。どうやら魔力暴走は治まったみたいだし、後は身体の疲労かな?う〜ん、こういう時医療知識がないのは嫌になるね」

 

「………………君…………は…………誰…………?」

 

「ボクかい?ボクは……」

 

その出会いは運命なのか?それとも、その出会いは偶然なのか?それは誰にも分からない。けれど、その出会いはセイにとっての救いであり、セイにとっての変革の切っ掛けだった。

 

「ボクの名前はアナスタシア。アナスタシア=L。アナって呼んでくれると嬉しいな」

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