魔法少女リリカルなのは~飛天の剣 リリカル剣客浪漫譚~ 作:fukuchan
「ん、ああ、寝ちまったのか。親に抱きしめられてそのまま寝るって、何歳だよ俺は。」
目を覚ました俺は気恥ずかしさを感じながら体をチェックする。よし、全快とまではいかないが、普通に生活する分には問題ないな。俺は布団から体を起こす。一日中寝ていたせいか、筋肉が凝り固まっていた。時計を見ると、夕食まではまだ時間があった。
「体ほぐしがてら散歩にでも行くかな。」
俺はパジャマを脱ぎ捨て、普段着に着替える。ほんとならジャージを着てランニングでもしたいところだが、今日はやめておいたほうがいいだろう。俺は玄関へ向かった。
「あら剣斗。起きたの?体はどうかしら」
途中でお袋に声をかけられた。さっきのことを思い出して、また気恥ずかしさを感じそうになったが俺はどうにか抑え込んだ。
「ついさっきね、体も万全とはいえないけど、普通にせいかつするぶんには問題ない程度には回復した。」
「そう、よかったわ。もう無理しちゃだめよ」
「わかってるって。あ、体ほぐしがてらちょっと散歩に行こうと思うんだけどいいかな。」
「いいけど、ほどほどにね。」
「了解、行ってきます。」
「行ってらっしゃい。」
いつものように挨拶をかわし俺は散歩に出かけた。散歩と言っても、家から十分くらいの場所にある海鳴商店街をぶらっとするだけなんだけどな。
「うーん、やっぱ体が動くっていいな。」
至極当然のことをいいながら俺は歩を進める。
「お、見えてきた見えてきた。」
そうこうするうちに、俺は目的地に到着した。
「さて、適当にぶらついて帰りますか。」
俺は当てもなく商店街をぶらぶらと歩く。
「お、剣斗君じゃないか。どうしたんだい?今日学校休んだって聞いたけど。」
「八百屋のおっちゃん。いや、特訓で張り切りすぎちゃってさ。」
「特訓てぇと、剣道のかい?」
「まあね。」
「頑張るのはいいが、あんま近詰めすぎんなよ。ほれ、これもってけ。」
おっちゃんは立派な大根を持たせてくれた。
「いいの?こんな立派な奴。」
「いいからもってけ、今日はそれ食ってしっかり休め。」
「ありがとう!おっちゃん。」
「いいってことよ。」
「あらあら剣斗君。体は大丈夫なの?学校お休みしたんでしょ?」
「魚屋のおばちゃん。大丈夫だよ、ちょっと頑張りすぎただけだからさ。」
「そう、ならいいけどあまりお母さんを心配させるんじゃ無いわよ。そうだ!!これ持っていきなさい。」
今度はおばちゃんが鯵を三匹くれた。
「わるいよ、こんな新鮮なの。」
「いいからいいから、お母さんにはいつもお世話になってるんだから。サービスよ。
それ食べたら疲れなんて吹き飛ぶわよ!!」
そんな感じで知り合いに会うたびにお土産お貰ってしまい、帰るころには両手で抱えるほどになっていた。商店街の人たちのやさしさに触れて、心が少しあったかくなった。
「でも、これは少し多すぎだな。前が見えん。」
荷物を捨てるわけにもいかないので、俺はしかたなくそのまま帰路に就いた。しばらく歩いていると、腹部に軽い衝撃が走った。
「キャッ!!」
しまった、ぶつかってしまったみたいだ。俺は荷物をいったんおろして、ぶつかってきた人をみた。なのは達と同じくらいの金髪の女の子だった。
「ごめん、大丈夫だった?」
俺しりもちをついてうつむいている少女に手を差し伸べながら声をかけた。
「あ、だ、大丈夫です。ごめんなさい、少し考え事をしてて。」
少女はそういうと、俺の手を取って立ち上がった。少女の顔を見て、俺は固まってしまった。
「あ、あの、大丈夫ですか?」
そんな俺を見て困惑したのか、少女が話しかけてきた。しかし、少女の言葉は俺の耳に入ってこなかった。それほどまでに、俺は動揺していた。だって、目の前の少女が香澄にそっくりだったから。
「かす、み?」
俺は思わずつぶやいてしまった。
「え?あの、えっと。」
少女は戸惑った表情を浮かべる。そんな彼女の顔を見て、俺は我に返った。
「ああ、ごめん。きみが知り合いによく似てたからびっくりしたんだ。」
「あ、そうだったんですか。急に知らない名前で呼ばれたから驚いちゃいました。」
少女は納得してくれたのか、ほっとした表情になった。
「いやほんとごめん。あ、俺は神谷剣斗、君は?」
「フェイト、フェイト・テスタロッサです。」
これが俺とフェイトの最初の出会いだった。
「それにしてもすごい荷物ですね。」
少女、もといテスタロッサはわきに置いてある荷物を見て目を丸くしていた。
「あははは、これのせいで前が見えなくてね。ごめんね、えっとテスタロッサちゃんだっけ。怪我とかしてない?
「あ、はい、大丈夫です。あと私のことはフェイトって呼んでください。」
「オッケー、フェイト。じゃあ俺のことも剣斗でいいぜ。あと敬語もなしな。」
「うんわかった。ケントよろしくね。ねぇ、ケント。よかったら荷物少し持ってあげようか?」
「いや、さすがに申し訳ないよ。」
「でも、さっきみたいにしてたら危ないよ。」
「それはそうだけどさ、フェイトの家の人とかは心配してないか?」
「それはだいじょうぶだよ、さっき少し遅くなるって連絡したから。」
「そうか、うーんじゃあ申し訳ないけど手伝ってもらっていいか?」
「うん!!」
フェイトは満面の笑みで答えてくれた。不覚にも、おれは少しドキリとしてしまった。ん?連絡したって言ってたけどどうやったんだ?携帯を持っているようには見えなかったが。俺がそう口にするとフェイトは焦ったようにアタフタしだした。
「え!?えっと、そのポケベルだよ!!」
「ポケベルってまたえらくレトロなものを。」
「あははは、よく言われるよ。」
「ふーん。ま、連絡が取れてるんならいいや。行こうぜ、フェイト。」
そういって俺たちは帰路に就いた。道すがら俺たちはいろんなことを話した。
「なあ、フェイトって最近ここらに来たのか?」
「うん、この間母さんの仕事の都合で引っ越してきたの。なんでわかったの?」
「海鳴はそう広くないからな、ご近所さん同士なら自然と顔見知りになるんだ。この商店街を利用してる人たちもほとんど知ってるしな。そんで、お前は見かけたこともなかったからもしかしてって思ってさ。」
「そうなんだ、すごいねケント!」
「いや、この辺の人ならみんなわかると思うぞ。」
「そうなんだ。」
そんなどうでもいいことを話しながら、のんびりと帰っていた。
「ところでケント、さっき私が知り合いに似てるって言ってたよね。誰に似てたの?」
「え?ああ、い、妹にね。」
俺は動揺を隠しきれなかった。しかし、フェイトは気にしたふうでもなく、会話を続けてきた。
「へぇ、ケント妹がいるんだ!会ってみたいなあ。」
「・・・・・・・」
フェイトに悪気がないことは分かっていても、その言葉は胸に突き刺さった。
「ケント?」
フェイトは俺を怪訝そうに見つめている。
「あ、ああ、正確には“いた”だけどな。」
「――!!ご、ごめんなさい!私その、知らなくて。」
事情を察したフェイトは勢いよく頭を下げてくる。
「いいよ、気にすんなって。もともと俺がふった話題だしさ。お前こそ、お母さんの都合って言ってたけど、そんな仕事してるんだ?」
俺がごまかすように質問すると、フェイトはわずかに表情を曇らせて答えた。
「科学者だよ、何を研究してるのかはよくわからないけど。」
「ごめん、なんか変なこと聞いちゃったかな。」
「ううん。そんなことないよ、ただ、最近母さん仕事が忙しいみたいであまり家にいないの、それが少し寂しくて。あ、でもアルフがいてくれるから大丈夫だよ。」
「アルフ?」
「えっと、お姉ちゃんみたいなものかな。」
「そっか、ごめんな。」
「いいよ、私も嫌なこと聞いちゃったからこれでお相子だね。」
「はは、そうだな。お、見えてきた、あれが我が家だ。」
やがて、我が家が見えてきた。
「えっと、ほんとにいいの?いきなり来たら迷惑じゃない?」
「大丈夫だって、親父もお袋も歓迎してくれるからさ。」
「ならいいんだけど・・・・・・。」
俺はフェイトに今晩家でご飯を食べていくよう提案した。フェイトは渋っていたが、俺が半ば強引に押し切った。いつも俺なら初対面の人間にたいしてここまではしない。でも、今は少しでも長くフェイトと一緒にいたい、そんな気分だった。
「ただいまー。」
俺は戸を開けて、家に入る。すぐに、お袋が出迎えに来てくれた。
「おかえりなさい、おそかってわね・・・・・・って、どうしたのその荷物?」
「いやー商店街のおっちゃんやおばさんがサービスだって。」
「あらあら、今度お礼を言わないと。」
「あ、お袋。そんなことより紹介したい人がいるんだけどいいかな?」
「構わないけど、新しいお友達?」
「まあそんなとこ。フェイト、入っていいぞ。」
俺はフェイトを招き入れた。
「は、はじめまして。フェイト・テスタロッサです。よろしくお願いします。」
お袋はフェイトを見て目を丸くしている。ま、そりゃそうだよな、俺もそうだったし。しかしお袋は俺のように固まることなかった。この辺は年季の差だろうか。
「あら、礼儀正しいのねえらいわ。私は剣斗の母、神谷香織です。よろしくね、フェイトちゃん。それにしてもびっくりしたわ、香澄にそっくりね。」
お袋はそう言ってフェイトの頭をなでた。
「えへへ、ケントにもそういわれました。」
フェイトは少し照れくさそうに答えていた。
「それでさ、おふくろ。フェイトの親御さん仕事が忙しくて家に帰れないみたいなんだ。だから、今日は家で晩御飯食べさせてあげたいんだけどいいか?あとフェイトのお姉さんも。」
「あら!大歓迎よ。ささあがってちょうだい。」
というわけで第八話でした。フェイトちゃんかわいいですね(笑)