世界はいつもふざけたエンディングを用意してやがる。
私は理解した
右足を膝から下に掛けて喰われ、左腕は曲がらない方向に複雑に曲がっている。出血量も激しく、眩暈がし視界が霞む。
最悪だ。裏方担当の私が何でこんな目に。いや理解している、見たらいけない物を見た。知ったらいけない事を知った。分を弁えない行動をした。いくらでも私の過ちは出てくる。ただ私はあいつの力になりたいからその障害を取り除こうとした。しかしこのざまだ、私はもうじき死ぬのだろう。
こんなことなら信用するんじゃなかった。
こんなことなら恋するんじゃなかった。
「ち、く・・しょ」
駄目だ、思考が定まらない。昔の事がどんどん流れてくる。走馬灯だと理解した時には何も知らずにバカやって楽しんでいた時が浮かんだ。戻ることのない過去は無情に過ぎ去った。徐々に近づく死と、部屋に反響するあいつの足音は荒々しく私を探しているようだった。
空気が抜けるような音がすると部屋の扉が開き、獣の様な姿のあいつが見えた。昔見た暴走状態ではなく心から変わり果てた、本物の悪魔。
「よぉ、ネギ先生・・ずいぶんな、姿だな・・」
皮肉と呆れ混じれにそう言うが、私もそんな事言えた義理ではない。何とか自室まで逃げたが結果として見つかった、意味がない。
獣の様な呻き声を上げながら私に近づき頭をつまみ持ち上げた。万力のようにギリギリと力を入れ、私は声にならない声を上げふと思った。何でこいつは泣いているんだと。
あぁ何だ抗てんじゃないか。
そう思うと私の思考は途絶え、そこには泣き叫ぶ様に叫ぶ獣がいた。
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頬を伝う風。遠くから聞こえる喧騒。尾行をくすぶる草の香り。懐かしく感じる感覚に見舞われ、重たい頭を起こす。助かったのかと疑問が浮かんだがあの状態だどう頑張っても助からない。ならここは天国か。
そんな事を思ったが鼻で笑い、バカバカしい思いながら吹く風に右腕で目元を隠しながら見るとそこには昔懐かしい景色が広がっていた。
「ま、ほら・・」
なぜ。ただそう思った、私は確かにあの時死んだ。恐らく頭蓋骨粉砕と出血多量で即死だっただろう。あの状態で生き残れるのは私の知る限りエヴァンジェリンぐらいだろう。ならこれはやはり天国なのだろう。
頭が痛い。魔法なんてもんに関わっていたんだ、ある程度の事には動じない積もりだったが天国なんてあるとはな。
「死んだん、だよな」
私は死んだ、どう足掻いてもバカらしいほど呆気なく死んだ。そう思うと怖くなった。体が震え、吐き気がする。ある程度の死線は超えて来た積りだったが自分の死は別物らしい。体を抱え、小さく縮まり自身と周りとの体積を小さくする。自分を守るように、殻に籠る様に。
震えが止まるまで待った。どれだけの時間が経ったのか分からないが気持ちが落ち着くまで体を抱いた。落ち着きを取り戻したからか分からないが、視線を感じた。数は三つ。私を見定めるように全身を見られている感覚。
「監視、にしてはハッキリとした敵意があるな」
私は舌打ちをし、その場から離れるために商業部に向かった。場所が麻帆良で間違いなければ私のいた場所は、世界樹の幹の下。商業部は比較的近くにある、それに今は昼時。ざわついた話し声が聞こえていたから恐れく生徒が居るだろう。
だいぶ昔の記憶を掘り下げながら私は目の前にある階段を下りていく。
その魔力が現れたのは突然だった。空間を切り取った様に何もない所から突然と現れた。転移魔法で現れた訳ではない。麻帆良には麻帆良全土を覆う結界があるため直接乗り込むには魔力を帯びた媒体が必要だ、悪意のある魔力は世界樹が嫌うため世界樹の魔力による上書きをされてしまう為、実質的に悪意なしでの転移はほぼ不可能に近い。仮に転移できるような者が攻めて来たのなら、それは学園が火の海に沈むことを意味する。
魔力の持ち主が現れ、少しし学園長からの緊急招集が掛かった。
『今から呼ぶ者は直ちに学園長室に来なさい。繰り返します――』
呼ばれた者の数は四人。僕にエヴァンジェリン、ガンドルフィーニ先生と葛葉先生。恐らく今動ける戦力で一番高い確率で取り押さえることが出来る。
「先生!呼ばれたので行ってきます」
そう言い静止を無視し女子中等部に向かう。魔力はいまだに動いていないがいつ動くか分からない。最悪の事態に成らないために、スピードを上げ全力で向かう。
男子高等部から女子中等部まで直線にして約1.5キロ。今だからこそ思う、こんなに広い麻帆良が不便に感じるとは。一分一秒が命とりなこの事態にもどかしさを感じる。五分ほど経っただろうか、ようやくついた中等部の学園長室にノックをし入室の返事が聞こえ部屋の入ると苛立たように足を組みソファーに座っているエヴァンジェリンに焦りの色の見せ腕を組んでいるガンドルフィーニ先生。右手に刀を持ち普段のスーツ姿ではあるがこちらも焦りの色を見せている葛葉先生。
遅れたことを詫び学園長の前に立つと重たい口を開いた。
「皆、知っておると思うがつい先ほどこの学園に侵入者が現れた。数は一人いまだに世界樹の幹の元から動いてはいない。実力は未知数の為慎重に動いてほしい。」
「そんなことはどうでもいいじじい!なぜ私が動かねばならん!」
エヴァンジェリンは組んでいた足を戻し目の前にある机に足を叩き付けた。エヴァンジェリンはナギに約束を二年すっぽかされ荒れている中に今回の招集である。荒れるのも無理はない。
「すまぬがエヴァ急を要する。頼む、今回は力を貸してくれ」
学園長はそう言い頭を下げた。エヴァンジェリンは封印されてはいるが600年の積み上げてきた技術は本物の為その実力は弱体化していても主力メンバーと何の遜色もない。今回のこの編成はガンドルフィーニ先生も理解しているのか何も口にすることなく話は進んでいく。
「・・・じじい、報酬だ。それ次第で動いてやる」
「な、なんじゃ?」
学園長は息をのみ、緊迫の空気がその場を包んだ。
「確かじじいこの間、良酒が手に入ったて自慢してきたな。それをよこせ。それで、話を受けてやる」
「フォ!そ、それはk――「それでお願いしますダークエヴァンジェル!」――ガンドルフィーニ君!」
学園長の悲痛な叫びを遮り、代弁したのは正義を妄信するガンドルフィーニ先生だった。
エヴァンジェリン自身もその言葉に意外な物を見るかのよう驚き、バカにするように紡いだ。
「正義を妄信する貴様が、私を頼るとは意外だな。ガンドルフィーニ?」
「今は一大事だ、貴様と睨み合っている暇はない。学園長、出る許可をください!」
ガンドルフィーニ先生はそう言い机に両手を叩き付け決断を迫る。
学園長は、ガンドルフィーニ先生に気圧され名残惜しそうにエヴァンジェリンとの取引にうなずく。そして、話はようやく進展し、出撃に至った。
世界樹を知覚でき、相手に気づかれない様に距離を取り各自持ち場につき相手の情報を探った。
成人女性と思われる一人の女性は膝を抱えるように座っていた。肩を微かに震わせているには笑いを堪えているのか、泣いているのかは分からない。ただ言える事は油断ならないと言える事である。
女性はしばらくし何かを思ったのかその場を後にする様に商業部に足を運んでいく。つい先ほど四時限目を終え現在は昼の休憩時であるため、商業部には昼を食べる生徒と、遊ぶために移動する生徒が増えてきている。人の波に紛れどこかに移動されると見失ってしまう恐れがある。出来うることなら今すぐ抑えたいが敵がどれ程の実力かいまだ分かっていないため下手に行動することが出来ない。しかし、このまま一般生徒のいる所に紛れ込ます訳にもいかず決めあぐねていた僕を他所に状況は一変した。ガンドルフィーニ先生が捕えられたのである。
私は基本的に裏方だから直接的な戦闘は得意ではないが護身術程度にあの似非忍者に少し鍛えられた。ガサツな気配の消し方で私を監視していた奴を捕まえたがこんな事になるとは思わなかった。
何でこの先生若返ってんだ?
私が不意を突き組伏せたのはガンドルフィーニ先生だった。この人は学園でも上位に数えられる実力者だ。そんな人は私なんかが捕まえられるほど弱くない。この先生の外見と言い何か違和感を感じる。
私を監視していた気配が集まってくるのを感じ私自身の今の現状が不味い物だと分かった。ガンドルフィーニ先生を組伏せなおかつ明らかな敵意。
「・・マズったな」
そう呟くと二つの気配が私の前に姿を現しさらに困惑する。若返った姿の高畑先生と刀子先生。実力者上位三人が集まった状況に私の顔が引きつるのを感じる。
あぁ敵意がビンビンだよ・・
最悪だ、最悪な状況だ。明らかな違和感に困惑するがそんなのは後回しでもいい。この状況は学園側と敵対している。これに吸血鬼チビが出張ってきた日にゃ明日の朝は拝めない。何とか切り抜かないと。
「・・敵対する積もりはないんだけど、信じてくれる?」
「・・流石に無理だろうね」
穏やかな口調でそんなことを口にする高畑先生はポケットに手を入れ今にも飛びかかってきそうだ。
ここはやられる覚悟で突っ込むか?いや、それは愚策だ。ここで生き残れる可能性はない。そもそも生きているのか私?まぁ何にしろガンドルフィーニ先生を人質に見逃してもらうしかないよな。
組伏せるガンドルフィーニ先生を高畑先生に対して盾になる様に首に腕をかけ気管を圧迫し上半身だけ起こす。ガンドルフィーニ先生の苦しそうな声が聞こえる。頭の中で謝るが私はこの場を切り抜けるので精一杯だ、この状況にエヴァが出張ってきたら本当に不味い。いやもしかしたらもう来ているのかもしれない。
「・・なぁ見逃してくれないか」
自身に自問自答するこんな事で良いのかと。だがこれしかない、これしか知らない。私は正義の魔法使いではないし、正義なんて名乗れる積もりはない。子悪党見たく汚く生き残ってきた。いつまでもネギ先生に頼って来た訳ではない。こんな状況自分で何とかしないと。
呼吸が速くなるのを感じる。こんな状況やはり成れる物じゃない。喉の奥に胃酸が上がってくるのを感じる。一人しかいない状況がこんなに辛いとは思わなかった。
ガンドルフィーニ先生の辛そうな声が両者の間に響く。そんな時である。圧倒的な強者の雰囲気、それを纏った人物が姿を現した。
「これはとんだ子悪党だ、こんな奴の為に私は出張ったのか?」
呆れた様な声色で私の後ろに佇んでいたのは、エヴァンジェリンだった。
「で、どうする娘。殺すか?」
嘲笑ったような顔をし当たり前のことを聞いてくる。この状況で殺すのは明らかに愚策。それこそ私の弁明の余地はなくなる。すべて分かりきっている。この状況になった時点で私には逃げ道はない。逃げ切る術も撒く術もない。どう見てもお手上げの状態だ。
「えぇ?どうするんだ娘?」
「はぁ・・分かったお手上げだ、大人しく捕まる」
そう言いガンドルフィーニ先生の拘束を解くと私の頬に高速で拳圧が飛んでき私の意識が遠のいていった。
僕の描く千雨は強くないよ。あくまでも護身だからね。
それでもこいつ強くねぇか?って思ったら言ってもらえると助かります。
誤字脱字、描写の指摘とうありましたらお願いします。