頭が揺さぶられるような痛みに目を覚ますとそこは薄暗い洞窟のような場所だった。頬に痛みが走る。まったく気が付かない間に意識が沈んだため高畑先生の無音拳であろうと予想できる。そして捕まった私は幽閉されたのだろう。
そんな私の状態は腕を後ろで縛られ、足も身動きが取れないように足首から膝まで縛られている。
「まるで囚人だな。」
ため息をつき上半身を起こす。
状況は芳しくない。ガンドルフィーニ先生を人質にし危害を加えた。それに恐れく勝手に麻帆良に入ったってことになっているんだろう。それも世界樹の真前にだ。世界樹が魔法世界側からみても希少価値は高い。それを狙っての侵入ってことになってそうだ。
「いやそれよりここは何だ?私は死んだ筈だ。それなら天国なり地獄なりそれなりの所か?それとも
この中で可能性の高いのは完全なる世界だ。私は一度偽物とは言えかかったことがあるがあれはこんな物ではない。あれは心地のいい夢、自身の願望。自身の妄想の叶う幻惑魔法と言っていいものだ。
これが心地のいい夢?私はいつからそんなМっけを持つようになった?ならこれは完全なる世界ではない。なら天国か地獄か?それもあり得ない。今回会った人物は全員生きている。
なら何だこの状況は?何かが引っ掛かる。
そんな考え事をしていると、この洞窟唯一の入り口である鉄格子が重たい音を立て開いた。そこから現れたのは緊迫した表情のガンドルフィーニ先生と高畑先生だった。高畑先生はポケットに手を入れいつでも攻撃できる状態だ。この状況を見るだけでも私は歓迎されていなんだと思ってしまう。
「着いて来てもらうぞ」
ガンドルフィーニ先生はそう言い二の腕のを掴み立たせ、足の拘束を解く。拘束を解くときも終始私の行動の一つ一つに気を張り巡らせる高畑先生。元担任にこんな風に殺気立たれると悲しものだ。
私の隣にガンドルフィーニ先生、その後ろに高畑先生という形で歩かされ、さらに地下に下りていく。現在の場所は恐らく世界樹の地下だろう。
どれ程歩いたか分からないが一つの扉の前にたどり着いた。その扉を開くと部屋の中心に机と椅子そして、一つの水晶が置いてあった。椅子に座らされ両足を椅子の足に繋げられ、背中を椅子の背に繋げられる。私を繋げ終わると部屋から出ていく二人に私はため息をつく。これから始まるのは尋問なのだろう。そして恐らく相手は学園長、そして大勢の魔法先生を証人にするために部屋に集めているのだろう。
なんて予想をしていると私の前にある水晶が光だし予想通り学園長の声が聞こえた。
捕まえたという一人の女性見たときは私は衝撃が走った。あまりにも普通すぎたのだ。ただの一般人にしか見えなかった。こう言っては悪いが大魔法と言える転移魔法が使えるようには見えないからだ。何かの間違いかと思ったがガンドルフィーニ君が組伏せられたと聞いたとき見かけでは分からないものだと改めて思った。
「して、彼女はどうしておる?」
「ここ三日眠り続けていましたが先ほど目覚め何かをブツブツ呟いている模様です。それとガンドルフィーニ先生と高畑君が例の部屋に連れて行く様です。」
何かを呟く。彼女の状況判断は適切とは言い難かったか判断の速さと危機察知能力高いものと思うそんな彼女はガンドルフィーニ君を組伏せた時不味いと呟いたと報告されている。そしてガンドルフィーニ君や高畑君を見た時に驚いていたと。彼女は何かを知っている。ガンドルフィーニ君はまだ駆け出しではあるが実力はある、しかし彼はまだ有名ではない。そんな彼を知っている風だった。何か不味いものを彼女は知っているのかも知れない。魔法先生を証人として集めようかと思っていたが少人数、それも当事者だけにした方がいいかもしれんな。
「今回関わった魔法先生以外はすまぬが席をはずしてくれぬか?」
そんな儂の言葉に動揺が広がる。それもそうだ集めたのは儂本人。それをいきなり帰れというのだから。強引に話を進めることは出来るが今回の女性の件で不信感が魔法先生の間に広がっている。そんな状況下でどこの手の物か分からない彼女の話を話すのはあまり得策とは言えない。
「・・学園長言えない事を今回の彼女は知っているとお考えなのですか?」
そんな事を明石君が聞いてくる。その言葉を聞き再び動揺が走る。知られてはいけない事、ナギの形見ともいえるネギ君、それに世界樹の地下に封印されている
「儂はそう考えおる」
短くそう答えると、空気が張り詰めるのを感じる。普段は飄々した雰囲気の儂とは違うのだろう。知っていることによっては消さねばならない。元老院のクソジジイ共に知られれば息のかかった者がさらに増えるだろう。それはならない、有ってはならない。儂の築いた地位はこの国の為、後ろ指をさされながら泥水をすすり築き上げた地位。奴らに容易に渡す訳にはいかない。
儂はもう一度謝り刀子君以外いなくなるのを確認し水晶に手をかざす。そこに一人の女性を映し出す。オレンジ色の髪を後ろに束ね丸眼鏡の奥は諦めた様な冷めた目をした一人の女性が座っていた。
「お主がここに侵入してきた女性かの?」
重たい口を開き水晶の向こう側の女性に優しい口調で話しかける。冷めた目を水晶に向け驚いた様子を見せない。達観している。儂が女性に向けた印象だった。その女性は何を思ったのか貼り付けた様な薄っぺらい笑顔を浮かべた。
『えぇそうです』
短くそう答えると続けて言葉を紡ぐ。
『気が付いたら世界樹の前に倒れていました。』
「・・倒れていた?」
この時話の主導権が握られたと感じた。しかし話してくれるならそれに越したことはない。
『はい。倒れる前、つまり〝世界樹〟の前に現れるまで私は此処とは違う場所に居ました。』
「ほぉ、その場所はどこじゃ?もしかしたら帰れるかもしれぬぞ」
勿論帰す気はないが形式としてそう問う。もちろん彼女も分かっている様にその話を笑って流す。
『その場所で私は同業者のサポートとして相談役をしていました。もちろん話せませんよ?プライベートな相談もよくされていたので』
「その年で相談役かの、随分と優秀じゃたんじゃの」
ここまでの会話で分かったのはこの人物は麻帆良に詳しいこと。麻帆良の卒業生あるいは関係者の同業者である可能性。
『あぁ言い忘れました、私の名前は
「長谷さんかの、儂はここの学園長の近衛近右衛門じゃ」
偽名を名乗るあたり知られたくないことが多そうだ。いや、この状態に警戒しているのは当たり前か。どこの手の者か分からない以上下手なことは出来ない。しかし元老院に感ずかれる前に今回の件は片付けないといけない。やはり儂から切り出すべきじゃろう。
「それで?倒れる前はどうしていたんじゃ?」
少しの間を開け考える様な顔する。その顔は真剣で今までのは戯言であったかの様な雰囲気になる。
『・・未来からの逆行って信じます?』
真剣な雰囲気の彼女が切り出したのはそんな戯言だった。鵜呑みにする訳ではないが仮にそれが真実だとしたらいつの時代から来たことになる?
「俄かに信じられぬな。仮にそれが真実だとしてなぜそれを今話す?」
話の流れから分かるが、そんなモノはやはり戯言だ。彼女は何かを知っている。それは確かだ。それが未来の知識なら確かにまかり通る。が、やはり信じられないのが現状だ。
長谷は苦笑いをしそりゃあそうだと言いそうな顔をする。分かってた上でのこの発言か信用に足るだろうか?
『今話したのはあくまでも仮説の一つです。その仮説の為に一つ質問させてください。今は何年?』
仮説の一つ。つまり二個ないし三個は仮説として立っているのだろう。
儂は机の上に置いてある卓上カレンダーに横目で確認し正確な曜日まで教えた。
「1993年六月の十三日水曜日じゃが?お主の仮説はあっとるかの?」
水晶の向こうで考える様な顔をする彼女は、これからの身の振りようを考えてるようだった。もし彼女の仮説が本当なら手元に置いておきたい。
『・・あいつが・・ならやっぱり・・そんなオカルト・・』
何を言っているのか分からないが彼女の中の仮説はどうやら本物の様だ。もしもこれまでの流れが全て演技なら彼女は名女優になれる。やはり鵜呑みにするものじゃないな。
「それで話を戻しますが、倒れる前はどうしていたんじゃ?」
このままでは蛇足になってしまうそう考え話を戻す。
『私はとある人に自室で殺されました。そして気が付いたら世界樹の前に居ました。』
「殺された、か?やはり俄かに信じられぬな。お主は現に生きとるんじゃから」
『今から話す話は私が未来から来た事を信じている前提で話を進めます。――』
彼女の語った内容はある常軌を逸していた。悪魔落ちをしたネギ君に縊り殺された事。火星のテラフォーミング計画。そして――
「・・造物主」
どこでそれを知ったのか知らないが彼女の話が真実ならネギ君はナギに劣らない英雄と言う未来を歩むことになるのだろう。それはあまり喜ばしとは言えない物だった。どうしても孫の顔が浮かんでしまうからだ。
「・・お主の話はどうしても信用ならんの。そこでじゃお主の話を信用に足る様に一つ話を聞かせてくれぬか?ネギ君の未来に起こる事件を、その話次第で手を回そう」
手を回すといったのも真実ならである。それにもし彼女の話が本当なら元老院の手には余りある。それに腹の探り合いは厭きた。
「なに、老い先短い爺のたわ言じゃよ、付き合ってくれ」
彼女の今の状態からそんな事を言われても信憑性はないだろうが所詮戯言だ。
そこから彼女の話す話は、今までより信憑性の一番高い言葉だった。
『ネギ君の住む村は生まれて三年の月日で元老院の手によってネギ君を残し壊滅します』
なんだかな~