~香霖堂~
チンクル達は香霖堂にやってきた。
その外装は瓦屋根の目立つ和風の一軒家。但し入り口はドアで、窓は障子。隣には大きな倉がある。
外には様々な物が無雑作に置かれている。
「相変わらず閑古鳥が鳴いてるわね。」
「お客なんて偶にしか来ないからな!」
「それは商売人としてどうなんでしょうかねぇ…。」
チンクルも商売人としてどうなのかと思うが、働いてなかった自分が言える立場では無かった為、黙秘した。
「まぁそれより、中に入ろうぜ。」
魔理沙がドアを開けながら挨拶する。
「おーっすこーりん!お邪魔するぜー!」
「本当に邪魔をするなら帰ってくれ。」
男性の呆れた声が中から聞こえる。
そんな魔理沙の後に入ったチンクルは、少し驚いた。
店内には様々な物が置かれているが、チンクルが本の世界に居た時に見かけた物があった。
「おや?お客さんを連れて来たのかい?」
「そうだぜ!と言う訳でツケは帳消しだぜ!」
「そんな訳ないだろう。」
「ちぇっ。」
拗ねる魔理沙はほっといて、男性は自己紹介をする。
「始めまして、僕は森近霖之助と言う。」
その外見は銀髪ないし白髪のショートボブ(後ろ髪はあまり長くないので厳密なボブカットとは少し違う)に一本だけ跳ねあがったくせ毛(いわゆるアホ毛)がある。瞳の色は金色で眼鏡をかけており、眼鏡は下だけ黒い縁がついたやや楕円形の物を着用。黒と青の左右非対称のツートンカラーをした洋服と和服の特徴を持っている服装で、首には黒いチョーカーを付けている。
一言で表すならイケメンと呼ばれるだろう。
まぁチンクルは自分が逆立ちしてもイケメンに成れない事は承知しているので、別段嫉妬する気が起きなかった。
チンクルは自己紹介をする。
「なるほど、君がチンクルか。しかし、新聞に書いてあった通りの顔だね。天狗が面白おかしく書いたのかと思ったよ。」
余程信憑性が無い新聞なのだろうかと、チンクルは思った。
「あややや、心外ですねぇ。私は膨張はしますが捏造はしませんよ?」
「膨張もするんじゃないわよ。」
「それよりこーりん、私の八卦炉は直ったのか?」
「やれやれ、昨日の夜に八卦炉の修理を頼んだんだろ?まだ修理は終わってないよ。」
「えー、こーりんなら1日で終わらせられるだろう?」
「僕は河童じゃ無いから、1日では無理だ。それに、何を喰らったらこうなるんだい?」
「……えーと。(チラッ)」
「………そういえば、新聞にはチンクルの顔を見た女性は発狂染みた行動に出るんだっけ?」
「……いや、その……あはは……。」
「はぁ、チンクル。君が魔理沙と初めて出会った時に何か衝突があったとは思うんだが、その時何かをしなかったかい?」
チンクルは思い当たる節があった。
「……なるほど、チンクルの持つ武器を使い八卦炉を落したのか。」
「いやーあの時は必死でなぁ…。」
「自業自得と言うだろうが。」
「不可抗力だぜ。」
「まぁ良い。チンクル、君が使った武器を見せてくれないか?」
そう言われたチンクルは、パチコンを霖之助に見せる。
「………ほう。」
パチンコを手に取り、観察する霖之助。
チンクルは不思議そうに霖之助の挙動を見る。
「ああ、チンクルさんは程度能力を知らないのですか?」
文が思い出したかのように尋ねる。
チンクルは程度能力の事は霊夢から聞いているが、いまいち理解できてなかった。
「程度能力と言うのは個人に宿る能力ですね。人や種族によってありますが、幻想郷に住む人達なら何かしらの能力を持っていると考えて良いでしょう。」
「補足を入れるなら、霖之助さんの能力は『道具の名前と用途が判る程度の能力』。まぁ「名前」と「用途」しか分からないらしいけど。」
「僕の能力談義をするのは構わないが、もう少し程度の能力について説明してあげた方が良いと思うぞ。」
パチンコを調べ終え、チンクルにパチンコを返す。
「霊夢が言った様に、使用方法は解らないんだ。恐らくそのパチンコは玉を飛ばす為の玩具であり武器だね。」
「玩具なのか?オッサンのパチンコって?」
「元々は的当てなんかに使ったり、農作物を荒らす害獣などを追っ払う為に作られたみたいだけど。しかし……。」
「しかし?」
「そのパチンコは普通のパチンコじゃない。魔法が掛かっている。」
『えっ?』
「3人が気づかないのも無理は無いな。その魔法にはチンクルが使う瞬間に魔法が発動する、引き金タイプの魔法が掛けられている。使わない間は唯の玩具として見られない。」
「はー、本当に凄い魔法なんだぜ……。」
「これは記事にすべきか……いや、数少ないチンクルさんの攻撃手段をバラすのも……。」
「もしかして、それが魔理沙の八卦炉が直せない原因?」
「そうなるね。」
霖之助の声が店内に響いた。