東方珍来流   作:牙の道化師

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~類は友を呼び 本は人を繋ぐ~

~人里~

 

時間を潰す為にチンクル一行は人里にやってきた。

 

早朝とは言え、幻想郷に人里の朝は早く仕事に精を入れている様だ。

 

「朝から活気がありますねぇ。」

 

「あんたももう少し仕事に対して、誠意を持って行動しても良いと思うわ。」

 

「私は毎日、誠意と敬意を持って新聞を作っていますよ。」

 

「ないない。」

 

「いや魔理沙もだから。」

 

「私は仕事と言うより魔法の修行だからな。そういう霊夢だって職務怠慢だぜ。」

 

「お賽銭を入れに来る人が居なければ仕事のしようもないでしょう?」

 

そんなやり取りの後、チンクルが何かの建物を見つける。

 

「ああ、鈴奈庵ですね。」

 

「確か……貸本屋で、主に外の本を扱っているのよね。」

 

「大丈夫なのか?借りたら帰ってこないかもしれないんだぜ?」

 

「それ完全に鏡を見た方が早いと思うんですがそれは。」

 

「激しく同意せざる得ない。」

 

チンクルも頷く。

 

「どーいう意味だ。」

 

そんな寸劇もそこそこに、鈴奈庵に入っていく。

 

 

中はごく普通の本屋と言った感じで、立ち読み等が可能な立地だった。

 

奥にカウンターが見え、一人の少女が本を読んでいる。

 

どうやら何かのお話を元にした書物らしい。

 

「おーい、お客様だぜー。」

 

「いや、お客様ならもう少し遠慮しなさいよ……。」

 

呆れた声を上げる霊夢。

 

そんな声に反応したのか、少女が顔を上げる。

 

「あ、いらっしゃい……ま……せ……。」

 

少女の声が途切れる。

 

『あっ』

 

その反応に物凄く心当たりがある2名。

 

「どうかしましたか?」

 

まだチンクルの顔面の恐ろしさを知らない文。

 

そして……少女は本を垂直に立て始める。

 

「ちょっと!何でそんな事してるのよ!」

 

「………ぴぃぃいいいい!」

 

「やばい、ついに発狂する奴が出て来たのぜ。」

 

「いや今まで(私含む)も発狂していたと思うんですが。」

 

「それでもある程度は理性的だったろ?今回は完全に拒絶しながら発狂してやがる。」

 

「でも発狂してるからと言って、何か危害を加えてくる訳でも無いのよね。」

 

そう霊夢が言った瞬間、少女が積み上げられた本の横から上半身を出す。

 

手には何かの本。

 

チンクルは反射的にパチンコを構えた。

 

「くくくっ喰らえ!」

 

少女が本を開くと、開かれたページから黒い蟷螂の様な存在がチンクルに襲い掛かる。

 

「なっ!?」

 

「オッサン!」

 

焦る声が聞こえる中、チンクルは冷静にそして素早くパチンコを放った。

 

放たれた玉は少女の本。

 

「きゃっ!?」

 

玉が少女の持つ本に当たる。

 

衝撃が少女を襲い、手から本を落した。

 

その時、本が閉じられた為に黒い蟷螂は掻き消えた。

 

「……そういえば、まだ攻略して無かった女性が居たわね。」

 

「……ああ。」

 

「それで?目の前で歯をカチカチ鳴らしているこの人はどうしますか?」

 

文の指摘通り、少女は震えている。

 

「ひっ!?」

 

これから何をされるか解らないが、酷い事をされてしまうのかも知れないと感じている様だ。

 

そんな少女にチンクルは、贈り物をする事にした。

 

1つ目はブックカバーカバーを少女に渡した。

 

「……これは……本の劣化を防ぐ前掛けですか?」

 

少女の震えが止まった。

 

続けて2つ目はメロメロ文庫(全9巻)を渡す。

 

「これ外の世界の本ですか?外見は大人の雰囲気を漂わせてますけど。」

 

以外に興味がある様だ。

 

3つ目で終了かなとチンクルは思いながらピカリンペンを渡した。

 

「凄い!書いた所が光ってる!」

 

少女と対話できるようになった。

 

 

 

 

「申し訳ありませんでした!」

 

開口一番、少女が謝罪する。

 

「まぁ今回は仕方なかったとおもうから許してあげるわ。」

 

「いや何様なんだよ……。」

 

「お客様じゃないですか?」

 

「金も無いのにか?」

 

「チンクルから貰うから。」

 

チンクルは落ち込んだ。

 

そんなやり取りの後、少女が自己紹介をする。

 

「改めまして、私は本居小鈴と申します。この鈴奈庵の店主をしてます。」

 

チンクルはどういった本を取り扱ってるのか聞いてみる。

 

「基本的には外から流れてきた本を取り扱ってますね。少ないですけど印刷と製本も行ってます。 阿求ちゃんが執筆している幻想郷縁起は、鈴奈庵で印刷と製本をしたんですよ。」

 

「へー、そうだったんだ。」

 

「知らなかったぜ。」

 

「いやまぁ、私は以前取材をした事があるので知ってましたがお二人も少しは知っておいても良いんじゃないでしょうか?」

 

『だが断る。』

 

「そうですか…。」

 

そんな会話をしていると、後ろの本棚から小鈴とはまた違った少女の声が聞こえてきた。

 

「小鈴ー。この本は何処にあるのー?」

 

「あ、ちょっと待ってね。すいません、ちょっと行ってきます。」

 

そう告げ、小鈴は少女の下に向かう。

 

「この声は……。」

 

「ああ、そう言えば居たな。」

 

チンクルは首を傾げる。

 

「ほら、こーりんが言ってただろ。新しい本が入荷したから人里に居るって。」

 

チンクルは霖之助との会話の内容を思い出し、納得した。




・ブックカバーカバー 大切なブックカバーが汚れないように掛けるブックカバーの為のカバー。

・メロメロ文庫 ゴージャスでロマンティックな、大人向けの恋愛小説。展開は全部同じ。
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