東方珍来流   作:牙の道化師

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彼は紳士的ですから


~意外!それは記憶の忘却不可~

~人里の茶屋~

 

チンクル達は茶屋で一息付く。

 

先ほどの女性―――上白沢慧音はこれまでの経緯を聴いていた。

 

「なるほど。その不思議な力で守られた建物事幻想入りした訳か……。どうりで見慣れない訳だ。」

 

少なくともチンクルの外見は顔も相まって不審者である。

 

他の服を着ても余り変わらない気もするのだが。

 

「まぁ見た目はこんなだが悪い奴では無いぜ。」

 

「顔は未だに慣れないけど。」

 

少女2人はフォローする気0で返答をする。

 

「……私が言えた義理では無いがもう少し柔らかくだな。」

 

「もぐもぐ。」

 

チンクルとルーミアは団子を食べている。

 

「はぁ……。まぁ、当人が気にしないのならそれで良いか。」

 

「そうそう。何を言われても懐が広くて深いのがオッサンなんだぜ。」

 

「案外大人よね、そういう所。」

 

見た目は小さいのにね。

 

 

 

 

茶屋を出て、再びチンクルはラブプッシュ祭りを開催するかと思われたが。

 

「いや、流石に殆どの女性は居ないぞ。」

 

「家に篭っちまったか。残念だったなオッサン。」

 

「いや別に残念でも無いでしょ。元々は物とかを投げられないように先手を打っていただけだし。」

 

それならそれで助かった表情をするチンクル。

 

ラブ屋の商品はそれなりの数があったが消耗品の上、購入ができない状態であるため消費を抑えたいのが本音だ。

 

「う~ん……それが無くなると色々ときついんだぜ。」

 

「そうよねー。」

 

「わはー」

 

「何とかする方法は無いのかチンクル?」

 

チンクルは考え込んで、ふとある事を思い出す。

 

鞄を開け、ある物を取り出す。

 

ピンク色の本。

 

「何それ?」

 

「お~……!何だか知らんが凄い魔力を感じるのぜ。」

 

「その本に何かあるのか?」

 

チンクルは少し長くなるから何処かの建物で話したいと言う。

 

「ふむ……そうだな。阿求の家が近かった筈だからそこにしよう。丁度用事もあった事だし。」

 

「用事って?」

 

「なに、教材の参考がてら何か資料を借りるつもりだったんだ。」

 

「へ~。どこかの魔法使いとは大違いね。」

 

「失敬だな。私も借りているんだぜ。」

 

「死んでから返すと言うのは言い訳にしかならんぞ。」

 

「ますます失礼だぜ。オッサンも何とか言ってくれよ。」

 

チンクルは白い目で魔理沙を見る。

 

「う……その顔と目で見ないで欲しいぜ。」

 

「現行犯だったものね。」

 

 

 

 

~稗田家~

 

チンクル達は阿求と言う人物が住んでいる屋敷に到着した。

 

「相変わらずでかいわね。」

 

「まぁ稗田家は名家だしな。ごめんください!」

 

慧音が呼びかけると中から侍女が出てくる。

 

「あら慧音先生。それから……。」

 

侍女がチンクルを視界に移す前に贈り物を渡す。

 

「あらご親切にどうもありがとうございます。ささ、中へどうぞ。」

 

上機嫌で侍女は中へ案内する。

 

「……条件反射で渡してたな。」

 

「本能なのかもねー。」

 

 

 

中に入り侍女達に会うたびに贈り物をするチンクル。

 

そのお陰で何とか済んでいた。

 

「でもそれが無くなると大変じゃないのかー?」

 

「何とかしないとこの先生き残れない気がするのぜ。」

 

チンクルはあのピンクの本を、魔理沙の魔法で何とかできないか尋ねる。

 

「流石に難しいな……。その本がただの本じゃないのは解るがどういう物なのかによるしな。当てがない訳でも無いからそっちだな。」

 

魔理沙はどうにかできる人物に心当たりがあるようだ。

 

チンクルは胸を撫で下ろす。

 

そして、ある部屋の前で止まる一行。

 

「ここに当主の阿求が居る。阿求、入るぞ。」

 

「あ、慧音さん。どうぞ。」

 

襖を開く慧音。

 

「あら皆さん御そろい……で……。」

 

笑顔で迎えた阿求の顔が強張った。

 

チンクルの顔を見たからなのが原因なのだが様子が違った。

 

いつもなら悲鳴を上げられるか物が飛んでくるかなのに、そんな素振りを見せない。

 

不意に、阿求は立ち上がり木の柱の目の前に立つと―――

 

 

 

 

 

頭を打ち付けた

 

 

 

 

 

『………は?』

 

 

 

 

 

「忘れなきゃ……忘れなきゃ……忘れなきゃ忘れなきゃ忘れなきゃ忘れなきゃ忘れなきゃ忘れなきゃ忘れなきゃワスレナキャワスレナキャワスレナキャワスレナキャワスレナキャ―――」

 

 

ガンガンガンガンッッッッ

 

 

躊躇も戸惑いも無いと言わんばかりに頭を打ち付けていく阿求。

 

「ハッ!いかん!」

 

これには慧音も焦り、阿求を羽交い絞めにする。

 

「離してください!忘れないといけないんです!」

 

「だからと言って頭を打ち付ける奴があるか!」

 

そんなやり取りを見ている4名。

 

「あの阿求があそこまで取り乱すなんてねー。」

 

「オッサン、何とかしないと阿求が失血死しちまうぜ。」

 

流石にそんな展開は嫌なので贈り物をする。

 

1品目は万年筆。

 

「……匠の技を感じますね。」

 

違いの解る阿求。

 

2つ目はイチゴの掛け軸。

 

「甘い香りがしますね。」

 

好感触の様だ。

 

最後の3つ目は溺れる魚。

 

「これは……精巧に作られていてそれでいて作成者の遊び心と深い意味のある作りですね。」

 

阿求と対話できるようになった。

 

 

 

 

 

その後、軽い手当てを受けた阿求が謝罪する。

 

「ご心配とご迷惑をお掛けしました。」

 

「気にするな。こちらとしてもあんな事態になるなんて予測もできん。だから気にしなくても良い。」

 

「しかし……。」

 

チラッ

 

阿求の視線の先にはチンクルが部屋の隅で体育座りをしている。

 

どうやら自分の顔の所為で阿求が物理的に傷付くとは思いもしなかったらしい。

 

「本当に顔と性格が一致しないわね。」

 

「オッサンは自分が痛い目にあっても気にしない性質なのにな。」

 

「優しいからしょうがないのだー。」

 

チンクルとしては自分が被害を受ける事には慣れているが、誰かが犠牲になるのを嫌らしい。

 

数分ぐらいチンクルを慰める事となった。




・イチゴの掛け軸 水墨画でイチゴが書かれた掛け軸。イチゴの良い匂い付き

・溺れる魚 得意だと思っても、時には失敗する事もある
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