自由の向こう側   作:雲龍紙

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 いつも…この時間帯、眠くなって困……る…zzz




【Arma 04:Fhyu nha, hartes won fayra anw inferiare fwillra.】

 

 

 ――曇天の向こうで陽も沈んだ時間。

 

 水溜まりの水を飛ばしながらガラガラと駆ける馬車の中で、リヴァイは眉間に皺を寄せて向かいに座る青年――ユウを睨むように観察していた。

 

 

 

【Arma 04:風、誘う 火に恋う灰の愛しさを】

 

 

 

 初見から判っていたことではある。コイツは自然体に見えても隙が無かった。話し方や物腰からはふわふわしているようにも感じられるが、実際にはかなり鋭いうえ、頭も良く回る。つまりは今朝聞いた『肩書き』のすべては確実にそのまま『実力』で取ったものだろう。『兵士』なのか『指揮官』なのか、はたまた『参謀』タイプなのかまでは把握できないが、十中八九かなりの切れ者であるのは間違いない。

 その証左として、今のところ隙らしい隙は無かった。せいぜい見つけられたのは『見せるための隙』である。要は実際の戦闘ならば『罠』であり、会話であるならば『相手の警戒心を和らげる』類の戦術的なものだ。今朝ポロポロと零していた情報も『相手に聞かせて混乱させる』為のものだろう。いずれも初めて見聞きする情報であれば、情報過多で混乱する人間の方が多い。

 

 事実、イルゼ・ラングナーはその情報量に踊らされていたが――あれはあれで、ワザと乗っていたのではないか、とも考えられた。理由は全く不明だが。

 

「……それで、お前さんは何をそんなに熱心に見ている」

 

「街並み?っていうのかな。こう……普通の街並みって見たことなかったから」

 

 なかなか楽しいね、と言ってふわりと笑う。

 『普通の街並み』ってのはどういうことなのか。『外』にはこういう街は存在しないのか、非常に疑問ではある。

 だが、それよりも気を引いたのは。

 

「犯罪者を回収に向かう割に、得物も持参しないのか」

 

 昼間、わざわざ俺を隠れ蓑にしてまで確認に出向いた結果、やはり結果は『黒』だったらしい。向こうの視線が解かりやす過ぎるほど露骨に、自分の半歩後ろに立つコイツに向けられていた。他の訓練兵の視線が悉く自分に向けられる中、目立たないよう行動していたコイツに向けられる視線は極々僅かで、だからこそ逆に目立ったのだ。

 しかし、なんだって向こうはコイツが追手だと即座に判断できたのか。

 その点を訊いたところ、コイツは小さく笑って背中を見せた。正確には、背にある紋章を。……それは、あれか。つまり、最初に訓練兵側に背を向けて立っていたのは、それを見せて反応するかを試したのか。そしてあちらさんは、見事に罠に掛かったと。

 そんなやり取りを思い出しながら、武器について訊いてみる。すると、青年は少し困ったような微笑を浮かべて、小さく首を傾げて見せた。

 

「一応、あるよ? ただ、こんな市街地でというか……一般市民が多い『壁』の中で出すのも考えものかな、と。ついでにいうと、正直、回収に行く相手は素手でも問題無い筈だし。ただ、下手すると家出人2名と意見の相違でぶつかる可能性はあって、そうなると俺の能力でもかなり厳しいから、逃げるなり何なりは自己判断でよろしく」

 

 その言葉に、隣に座るイルゼ・ラングナーはぎょっとして固まったようだった。少しばかり大げさな反応に目を細める。

 

「……その反応は何だ、イルゼ・ラングナー」

 

「……兵長。この人、目の前で巨人を7体あっさり倒して消してます……」

 

「――――ほう」

 

 情報の真偽は判らないが、真実であれば相当な実力である。エルヴィンが聞いたら目の色を変えて口説きに掛かったかもしれない。

 

「立体機動装置を駆使して、ならば兵長も同じことが出来るかもしれませんが……この人、生身で装備は剣一本、正面から特攻してました……」

 

「いやいや、ちゃんと背後に回ったりはしてたよ! 攪乱したりしながら」

 

「でも正面から向かっていきました」

 

「それは向こうから歩いて来たんだから当然だよね!?」

 

「普通、調査兵団の人間でも巨人7体相手に真正面から特攻する奴はいない」

 

 思わず突っ込むとユウとやらは口元を押さえ、顔を逸らす。どうやらやっと本物の隙を曝したらしい。

 「あ~」とか「う~」とか言っているが、誤魔化されてやる気も無い。

 

「それで、イルゼ・ラングナー。コイツの戦闘能力はどうなんだ」

 

「とりあえず、兵長と同じ戦果はあげられると思います。方法や手段は異なるでしょうけど」

 

「……むしろ純人間種の人が【狼呀】の身体能力と並ぶってどういうこと、って言いたいよ俺は」

 

 ふと青年を見る。肩を落として項垂れている姿は、隙だらけに見えた。――この隙は、本当に本物に見える。

 

「その、【狼呀(ろうが)】というのは?」

 

 隙を見せたのだから、答えてもらおう。そう思いながら問えば、青年はチラリと赤い目を向けて微かに笑った。その反応に眉を寄せる。

 

「わざわざつつかなくても、訊かれれば答えるよ。――別に警戒してる訳じゃないから」

 

「――それで?」

 

「君たちを、『人類・純人間種・西洋人系』と分類したとしよう。そうすると【狼呀】の場合は『人類・旧人間種・狼呀』って感じになる。『純人間種』っていうのは『人為的な遺伝子操作を一切していない人種』って感じになるかな。逆に『旧人間種』っていうのは『人為的に遺伝子操作をし、その影響が後世まで及んだ人種』で、『新人間種』っていう場合は『人為的な遺伝子操作は行われなかったが、時代の環境に適応して遺伝子情報が一部変化した人種』って具合になる、かな?――『遺伝子』っていうのが判らないと、この話はそこでストップしちゃうんだけど」

 

「……なんとか判るが。遺伝子ってのは操作できるモノなのか」

 

「普通は無理だね。――自分たちの存亡がかかってなかったら絶対やらなかっただろうって言われているし。要は単純に危険なんだよね。実際にどんな弊害が出るのかは不明のままやっちゃった感じだし」

 

「それで、どんな弊害なんだ」

 

「短命になる。君たちの平均寿命の半分以下。個人差はあるけどね」

 

 笑って肩をすくめる青年を眺める。イルゼ・ラングナーは絶句していた。

ガラガラと、馬車の音がやけに響く。

 

「――俺はそういう【狼呀】なんだけど、家出人の一人は【降魔】って云ってね。これはさっきの『新人間種』なんだけど、これが『外』の人間種では最強なんだよ。単純な戦闘だったらまず間違いなく、勝ち目は無い」

 

 しかも、とユウは困ったような笑みを浮かべて続けた。

 

「彼、【降魔】の中でもトップクラス――というか、名実ともに最高ランクの【降魔】でね。さらに【宝玉珠】って云う――まぁ、『外』での最高ランクの武器と一緒で、攻撃範囲とかもう、考えるのも嫌になるくらいだし。【降魔】の彼は眼が良くて他人の技を盗むのに長けてるし、元々疾いし、攻撃範囲が超長距離から近接距離まで何でも御座れなうえ、一撃が重いし。それに風属性の最高ランク【宝玉珠】となんて組まれた日には――……」

 

 深く――本当に深く、ユウは溜息を吐いた。「もう嫌だ」というような心の声が聞こえるような気がしないでもない。俺だってそんな面倒臭すぎる任務は嫌だと思う。しかもコイツは上から『どうせなら本当に死んでしまえ』と思われていることも知っている。間違いなく、嫌気も差しているだろう。

 

 ――――いっそ、本当に口説いて勧誘してみるのも良い気がしてきた。

 

 ふと、ユウの目つきが変わった。さわり、と風が流れる。

 

「―――これだからあいつらは…っ!」

 

 ユウの心の底からの叫びと同時に、凄まじい衝撃が馬車を襲った。横転する馬車の中、とっさにイルゼの頭を抱き寄せて庇う。

 

 

「【―― ttrw rA sss 】」

 

 

 ユウが何かを告げると同時に、一瞬の浮遊感。そしてふわりと、叩き付けられる衝撃も無く、横転した馬車の中で宙から降ろされた。

 

 ざっと状況を確認し、イルゼを離す。しゃがんだまま頭上に来ている扉を見上げ、ついでユウを見やった。

 ユウは困ったような顔で頬を掻いている。

 

「――状況説明」

 

「多分、攻撃か探査の余波を喰らっただけ、じゃないかな?」

 

 言いながらユウは立ち上がり、扉を見上げたまま少し思案した後、再び何かを呟いた。

 

「【 Was wol gagis bansh dand 】」

 

 バシン、と音を立てて扉が弾け飛ぶ。なかなかにシュールな光景だが、とりあえず楽に脱出できるようになったので、今は良しとした。

 

 ユウは軽く跳躍し、出入り口の縁に手をかけて懸垂の要領であっさりと外へ出る。その後、中を覗き込んで首を傾げた。

 

「手は貸した方が良い?」

 

「……いらん。離れてろ」

 

 幸か不幸か、立体機動装置は持ち込んでいる。他の兵団のやつに見つかると少しばかり厄介ではあるが、これだけ立派な『事故』ならどうとでも言い訳も立つ。

 

「でも、それを使うまでの高さでもないよ? ガスとか勿体無くない?」

 

「…………」

 

 結局、立体機動装置の入ったケースを先に引き上げてもらい、その後、手を貸してもらった。

 

 突風に吹き飛ばされたものの、幸いにも軽傷ですんだ御者に横転した馬車は任せ、立体機動装置を身に着ける。

 

「――追撃が無いから、さっきのは探査だったんだろうね」

 

「おい。あれがただの探査だってのか」

 

「うん。――今から俺が相手にするのはね、さっきみたいな自然現象を攻撃手段として使って来る【宝玉珠】を手にした、最高位の【降魔】だよ」

 

 だから、危なくなったら避難してね、と微笑むユウに思わずまた眉間に皺を寄せた。

 

 

 

 

 

 





 ああ……ユウが勝てる要素皆無だったくせに、いざ書いてみたらそうは見えない状況になった話が近付いてくる……。

 加筆修正待った無し、ですね☆


 そして書き下ろし状態になるのか……orz


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