※R15指定。だと思います。
※前半と後半のギャップ・温度差に注意!
※腐向け。BLというと語弊があるので腐向けで。
※そういう訳なので、苦手な人は逃げて下さいね。
『いま、力の境は開かれて在る』
とおく、遠く。深い意識の水底から、幽かな旋律が泡沫と共に浮き上がって来るような。
――ああ、これは。
顔も知らない母が、自分に残してくれた、遠い母の故郷の旋律だ。誰に教えられるでもなく、本能的にそれを知っていた。遥か昔に詩で塔を造り、維持し、守り育んできた女神が謳う、塔を形作る為の―――今もなお、母の故郷を支える詩。
そう認識した瞬間、ふっと意識が何処かへ引っ張られるのを感じた。軽く腕を引かれるような、そんな気安さで。思わず引かれるままに意識を向ければ、次の瞬間には広大な花畑の中にいた。
広い蒼穹と、地平線まで広がる花々の世界。薄桃色や黄色、淡い青の色とりどりの花々が咲き乱れ、渡るそよ風に柔らかな薫りが漂う。
その、中に。
緑の髪の少女が、翡翠色の翅を揺らしながら謳っていた。時折、踊るようにくるりと身を翻せば、妖精のような翅も陽光を弾いてきらりと輝く。
Wee yea ra knawa pirtue anw murfanare.
妖精は人の愛を知りました
Wee apea ra warma, en yehar lusye der crannidale yor.
それはとても温かく、分かち合うことで美しい光を放ちました
Was zweie ra ferda pirtue sarla, sos ridalnae infel yor.
妖精は謳うと決めました 自分に愛をくれたかけがえのない人のために
Was ki ra crushue ee arka dia, fandel murfanare cenjue pauwel.
偉大なる大樹を紡ぎます 数多の想いを力に変えて
その可憐さに見入っていると、ふと琥珀色の目と視線が合った。キラキラと目を輝かせて近寄って来る。
「わあ! ここに人が来るのは久しぶり!! あれ、でも――あなたは男の子なんだね。男の子のレーヴァテイルは初めて見たよ!」
――レーヴァテイル、というのは確か、【詩紡ぎ】の古い名称だったはずだ。そして、その名称が出てくるということは、この少女は相当――長生きの筈である。
そこまで考えて、はたと気付いた。この少女は、もしかすると。
「……【碧珠天】?」
「うん! 外の人たちはそう呼ぶね。私はフレリア」
やはり、母の故郷――【翠ノ塔】の女神であらせられるらしい。
まさか、こんなに無邪気で可憐な女神だとは思っていなかった。だが、同時に納得する。こんな女神だから、今もなお、塔の世界を紡ぎ続けていられるのだろう。
あのね、と今度は心配そうな顔になって告げる。
「この塔は私だから、私の処にいる子たちは、わかるの。――でも、あなたは、此処にはいない」
そっと差し伸べられた手が、優しく頬を撫でた。
「きっと、すごく遠くから、来ちゃったんだね。――でも、こんなに遠く、身体から心を離しちゃ、ダメだよ。あなたもレーヴァテイルだから、ちゃんと『此処』に繋がってる。だから、安心して?」
独りじゃないよ、という女神の言葉が、何故かとても心に沁みた。
【viega 01:iem, aulla irs pauwel gkgula.】
――――土砂降りの雨が、肌を打つ。その感覚で、ほんの僅かに、意識が浮上した。
僅かに目を開く。霞む視界に、ある意味では見慣れたものが映った気がした。
人間の形を、無くしたもの。
【狼呀】は人間としての遺体を残さない。それは大半が任務中に喰われるか――【アラガミ化】して、こんな風になるからだ。
自分たち【狼呀】の、行きつく先が、そこにいた。
(――カナギたち、は……)
どうしたのだろう。
雨に打たれている、ということは、ここは外か。そして目の前には災獣がいる。ということは、自分は連れ出されたのだろう。いわゆる、『お持ち帰り』というやつなのだろうか。
(……というか、この状況は――ほんとに何……)
目の前の災獣は少なくとも、すぐに自分を食べるつもりは無いような雰囲気で――――囮とか、人質とか、そういうことなのだろうか。そうであるなら、それでいい。最悪なパターンはこの災獣に食われることだ。
自分は【狼呀】と【詩紡ぎ】の因子を保有している。災獣に食われるということは、この因子の情報を渡してしまうということ。そしてそれは、今後の近い将来において人類が不利になる要因になり得る。【アラガミ】と【汚染獣】は、その情報を取り込んで自分たちで再現してしまうのだから。
(――どう、すれば……)
思考が鈍い。身体は鉛のように重く、思うように動かせない。
はっ、と息を吐く。我ながら、ずいぶん熱っぽいな、と思った。下手すると肺炎か何かで死ぬんじゃないだろうか。
災獣が動く気配がした。閉じかけていた瞼に力を込めて、無理やり目を開く。災獣――ガハルド・バレーンの顔が目の前に在った。喜悦に歪む顔の双眸には、劣情が宿っている。
(――あ。これヤバい、かも……)
ガハルド・バレーンの顔が下りて来る。――ぬらり、とも、ざらり、ともつかない生暖かい感触が首筋を撫ぜていった。想定していなかった状況に思考が真っ白になる。一拍遅れて、ぞわりと鳥肌が立った。
(――実際のところ、因子の情報を得るだけなら……)
ただ食べる以外にも、方法はある訳で。最も確実なのは体液の採取である。が、流石にそれは遠慮したい。というか、こう、自分にはこんな特殊な形状をした相手とのプレイなんて趣味は多分無い。
ザワザワと、四肢から幾本にも枝分かれした触手が蠢き、両腕を拘束する。
(――どのみち、動けないから意味ないと思うんだけど……)
というかコイツは、まさか自分の意識が戻るのを待ってでもいたのだろうか。――何のために。自分が意識を失っている間、いくらでも自由に出来たはず。文字通り食べ尽くすことも、犯し尽すことも出来ただろう。――何故、それをせずに待っていた?
考えろ。動けないなら、考えるしかない。
そろり、と触手が動き、こめかみ、眼、耳、顎、首、心臓、肺、脇の下、と身体をなぞっていく。いずれも人体の急所に当たる。顔を見れば、眸に嗜虐的な色を覗かせて嗤っていた。――大人しくしていなければ、殺す、ということらしい。あるいは、実際的な意味で食われるのと、性的な意味で喰われるのと、どちらがいいか選ばせてやる、というつもりなのかもしれない。
――なるほど。つまり、コイツはそうとう、【降魔】である部分が残っているらしい。ならば。
僅かに隠し切れない怯えをチラつかせながら、唇を噛んで睨み付ける。そうしてから、無意識のうちに強張らせていた全身の力をそっと抜けば、男の顔は愉しげに哂った。
――幸か不幸か。自らを囮に、あるいは手札に駆け引きするのは、慣れている。
【降魔】である部分が多く残るなら、【狼呀】の中でも【詩紡ぎ】の因子を持ち、かつ【カムイ】でもある自分は、相当に珍しい、またとない甘美な美酒にでも見えるだろう。ならば、それこそを利用させてもらう。
男の顔が、再び近づいてくる。
諦めて受け入れるように瞑目すれば、唇に熱く湿ったものが触れた。ぬらぬらと唇を舐めるそれを迎え入れるように、僅かに口を開く。途端に貪るような激しさに変わった口付けの合間に荒く息を吐きながら、薄い寝間着の袖口や裾から容易く侵入してくる触手に朦朧とする意識を向けた。
「――っ、…ね、ぇ……」
激しい口付けと、執拗に全身を撫でまわされる感覚の中、喘ぐように掠れた声を出す。一瞬、拘束が僅かに緩んだ隙に片手を持ち上げ、そっと男の頬を撫でた。そのまま近くの触手を手に絡め取り、自らの口元に導いて何度か口づける。男からは、戸惑ったような気配。
その反応に、潤んだ目を向け、熱に浮かされて喘ぐ中、呟くように告げる。
「――あなた、ひとりで……たのしむ、つもり……?――ガハルド」
最後に、熱を孕んだ焦がれる眸に情欲の色を浮かべ、艶然と微笑んでやった。
一応、念の為、フォローしときます。
ユウは3割演技ですからね? あとの7割は体調不良。潤んだ目とか熱は体調不良が原因なので、ある意味演技では無いのです。
さて。今回のヒュムノスは『Hymmnos Chronicle』という二次創作ヒュムノスアルバムに収録されている『EXEC_VISIONDANCE_SOCKET/.』という曲からお借りしました。
もう、曲がね……優しくてあたたかくて、可愛らしくて……聴いた瞬間、「フレリアが、フレリアがいる!!」って……!!
そんな感じになったのも、良い思い出です。
あれからもう、2年ですか……年が過ぎるのは、早いですね……。