自由の向こう側   作:雲龍紙

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『さあ、力溢るる落とし子よ』



※まだちょっとR15臭があります。が、前回分に比べるとユウの思考のせいでいろいろ台無し。
※しかし油断するとレイフォン×ユウっぽい風味の何かに横からぶん殴られます、はい。
※腐向けではあるけど、BLかと訊かれたら首をひねる感じです。LOVEと言える成分は今のところ存在していません。

※と言う訳で、苦手な方はブラウザバック!!





【viega 02:hyear, pauwee, dius bister diasee.】

 

 駆け抜けた風が触れた情報の中から、災獣の波動を探し出す。

 一瞬、感じ取ったその気配の許には、ただの【狼呀】とするには少し独特な気配もあった。他の【狼呀】よりも昏く、重々しく、そして冷たく鋭い気配。

 

「――見つけました」

 

 それだけ告げて、雨の中を走り出す。一拍遅れて追って来る気配を後ろに感じながら、片手を懐に入れて錬金鋼を取り出して勁を流した。

 

「――【restoration(レストレーション)】」

 

 青い輝きと共に剣の柄のみが現れる。正確には剣の柄と、そこから連なる、幾千、幾億とも知れない極細の鋼糸。それを向かう先に見える尖塔に向けて伸ばし、固定して跳躍しながら柄に巻き取るような要領で勁を操作すれば、走るよりも確実に速く距離を稼げる。

 原理はともかく、やっていることは『壁』の中の立体機動装置とやらとさほど変わらないので万が一、見咎められてもどうにかなるだろう。

 

 塔の上に立ち、視線を巡らせる。

 

 眼下に広がる、暗い雨夜の街。反応を掴んだあたりを見渡し、民家の隙間に忘れられたように一本の樹と花々が咲いている場所が目についた。その樹は朧に金色の燐光を発している。流石は【黄龍】――――いにしえの昔には『中央の大地を統べるもの』と云われた神獣の名を冠する存在だと、脳裏をかすめた。

 

 強まる雨脚の中、遠雷が近付いてくる音がする。

 

「――急がないと、こっちまで撃たれそうだね」

 

『レイフォンっ!!』

 

「わかってる。――『見えてる』よ」

 

 冷やりとした笑みを口の端に乗せれば、レンはそっと口を噤んだ。

 

「あれは、見せつけてるつもりなのかな。そうだとしたら、ちょっとどころじゃなく頭の可哀想な、救いようの無い、愚昧で憐れな男だったのだと思うことにする」

 

 あれはどんなに弱っていようと【狼呀】だ。気を抜き、油断し、隙を見せれば――確実に、首を喰い千切られるだろうに。

 

 ―――さて。

 

 今から、あの男をどのようにして消し去ってやろうか。

 

 

 

 

【viega 02:hyear, pauwee, dius bister diasee.】

 

 

 

 

 

 艶然と微笑んでやった後、再び圧し掛かって来た男を時折、微かに恥じ入るような、あるいは怯えるような仕種でもってさり気なく牽制しつつ、そっと周囲の気配を探る。

 この男――もとい災獣は気付いていないようだが、周辺には雨だというのに金砂のような光が舞っていた。いや、気付かせないように自分に意識を向けさせているのだが。

 

 ――この光景には、見覚えがある。小さな柔らかい微光。これは小精霊だ。

 

 誰も詩など謳っていない以上、これは近くに大精霊以上の神霊がいるのだと判断する。というか、見事にこの一画にしか姿を見せていない以上、目印役になっているのだろう。

 

 冷たい雨のせいか、思考はだいぶ明瞭になっていた。だが、この状況で熱を失うとか、逆に生命が危ういと自分でも思う。

 せめて、もうちょっと動ける時だったなら、と思うも、それは顔にも態度にも出さない。いま曝していいのは、この男に『自分の手管によって乱れて媚態を曝しかけているのを、必死に堪えようとしている』と思わせて満足させるような反応だけだ。――でも、それもそろそろ精神的にも勿論だが、純粋に体力的にもキツイので、助けてもらいたい。

 この小精霊たちの反応的にも、大物が近くにいる筈なのだが。ついでに確実に気付いているだろう、とも思う。というか、そもそも気付かない筈が無い。

 

 ふと、微かに雨脚が弱まった。同時にふわりと風が流れる。

 

 一撃必殺――とするには、自分が邪魔か。あとついでに、ここは『壁の中』である。協定上、ここでコイツを散らしてしまう訳にもいくまい。

 

(――仕方無い、か……)

 

 ものすごく、気が進まない。が、毒を喰らわば皿までと云う。この弱った身体でどこまでオラクル細胞の活性化に耐えられるかわかったものでは無いが、まずは少しの間でいい。戦闘時のように動けなければどうにも出来ない。そして幸か不幸か、自分は【狼呀】であり、コイツは災獣だ。

 災獣とは即ち、【狼呀】の『捕食対象』である。

 

「……っは、」

 

 思わず、という風に喘ぐような声を漏らし、相手の気を引く。よがっているかのように身を捩り、両腕を人間の形が残っている男の背中へと力なく伸ばした。そのまま上体を起こし、熱に浮かされているように男の名を呼ぶ。

 

「――――ガハルド」

 

 ザワザワと、触手が落ち着かなげに揺れる。だが、ここまでくれば、まぁ、成功だろう。というか、成功じゃなかったら流石に精神的に死ぬ。羞恥心と云うか、黒歴史的なアレで。

 

 舌で災獣と化している首を舐め上げ、一瞬、男が硬直した反応に思わずほくそ笑んだ。そうして甘えて、ねだるように、言葉を紡ぐ。

 

「――あなたのいのちを、わけてくれる?」

 

 口を開ける。首に噛みつき、僅かに喰い千切る。男の災獣が叫び声を発するのを聞きながら、僅かな血肉を無理やり飲み下した。――気持ち悪い。喉の奥を滑り落ちる感触も、それをする自分自身もどうしようもなく気持ち悪いが、この状況下、少しでも生存率を上げるなら、これしかない。

 

 ぞわり、と身体の奥で眠りかけていた細胞が活性化するのを感じる。一瞬でいい。この災獣から距離を取れるだけの時間と力を。

 

BURST(バースト)

 

 その声と同時に、【アラガミ】の素であり、【狼呀】を【狼呀】在らしめるオラクル細胞が活性化して力が身体にいきわたる。たぶん、この感覚は【降魔】の使う勁に似ているんじゃないだろうか。

 

 災獣が正気に戻るより前に触手を振り払い、低く跳躍して後退する。更に軽く跳んで近くの民家の軒先を掴み、懸垂の要領で屋根の上に飛び乗った。

 あとは、あれか。ついでに餌役でもしろとでも言うのだろうか、くそったれめ。

 

 周囲を見渡し、一番近い壁を探す。眼下に災獣となった男が追って来るのが見えた。

 

「……っ、本当に、クソッたれな職場だな」

 

 かつて『ようこそ、クソッたれな職場へ』と言った親友を思い出しながら一人呟き、屋根の上を走り出す。――おそらく、身体が動くのは1分弱。それまでに『壁』に届くかどうかは微妙な距離。だが、距離を稼ぐことは出来る。

 幸い、後ろの災獣も【降魔】を取り込んでいる。ならば、【狼呀】の自分とつかず離れずの距離を保ちながらも、ついて来るだろう。――幸い、と言って良いのかは良く判らないが。

 

 不意に、視界の端に自分と追走する影を捉えた。その影は風を操り、ふわりと自分の横に屋根を飛び移って来る。その姿を見て、思わず足を止めた。

 

「――――ここは、『遅い』と文句を言ってもいい場面だろうか」

 

「すみません。さすがにあそこまで密着されていると、手が出しづらくて」

 

 そう返した少年は、失礼します、と言うとごく自然に自分の後頭部に手を添えて、軽く引き寄せるようにして屈ませる。そして柔らかく口付けてきた。あっけにとられていると口腔に舌先で何か――硬いものを押し込まれる。

 その独特な匂いには、覚えがあった。カナギの作る丸薬の一種だったはずだ。甘いユリの花のような匂い。とりあえずそれを嚥下し、少年の手が後頭部から離れるのを待ってから身を離す。

 

「――【守人】に確実に飲ませろ、と言われました。解熱剤ではあるそうですが、少し強力なので、何度も服薬するのは勧めない、だそうです」

 

 ――つまり、何度も服薬するような羽目になるなよ、ということだろうか。

 何とも言えない心境で黙っていると、災獣の叫びが再び響いた。視線を向ければ、怒り心頭、といった様子でこちらを睨んでいる。

 

「……なるほど」

 

 小さく少年――ヴォルフシュテイン卿が呟く声が耳に届いた。

 

「――失礼します、【フェンリル】」

 

 軽く言って、そのまま自分を片腕で抱き上げる。そのまま肩で担ぎ、再び風と――おそらくは鋼糸を使いながら、壁を目指して走り出した。

 

「――え、あの!?」

 

「体重差云々に関しては、勁で身体を強化してるので問題ありません。というか、あなたは同年代の人と比べたら軽いんじゃないでしょうか。身長差云々についても、ヤエト――ウチの陛下で慣れてるので平気です」

 

 それとも、お姫様抱っこの方が良かったですか?とのんびりと訊かれて、思わず脱力した自分は決して悪くない、と思う。

 

 

 

 

 

 






 この後書きの欄を前にして、早くも30分が過ぎました。
 もはや何を書けばいいのか……。

 ここら辺のBGMはなんだっただろうか……もう、思い出せない……。


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