『紅い華の詩』
……先に叫ばせて下さい。
胃が痛ぇぇえええええええええええええええ!!
……失礼しました。
はい。祝☆第一回地雷投入の回です。あれだけ躊躇っていたにも拘らず、「もうどうにでもなーれ☆」とか徹夜テンションというかとりあえずランナーズハイ☆なテンションは危険極まりないですねほんとにもう!!
…………重ね重ね、失礼いたしました。
一段降りるような気安さで50メートルもの壁上から飛び降りたレイフォンを見送り、思わず呼吸を止めて一拍、慌てて眼下にレイフォンの姿を探す。
無事ではあるだろう。とんでもない間抜けでなければ。そして案の定、見つけた姿は兵士を捕まえた巨人の腕を切り落としたところだった。どうやら顔を見せる気は無いらしい。外套のフードを
その姿を見てとりあえず息を吐き、数歩後ろに佇んでいるレンに目を向けた。何故か、少女はここに残っている。
「お前は行かないのか」
「行かないわ。――もうすぐデモンストレーションが始まるのだもの。民衆の為に。そうでしょう?」
最後の問いと同時に、空気から滲み出るようにして見知らぬ人影が顕れた。
【Arma 04:xO rre sarla rudje rawah/.】
一瞬、ヒユウかとも思ったが、色彩を見てすぐに違うと判断する。
紅蓮の髪に、夕陽のような赤い眸。煤けたように黒い肌に、白い襤褸布のような衣を纏っている。
ふわり、と。音も無く降り立った男は何度か瞬くと、つい、とレンに視線を向けた。
「――メザーランス。ヴォルフシュテイン卿は」
「中で災獣相手に遊んでいるわ」
「……そうか。なら、丁度いい」
そう言ってから、男はこちらにも視線を向ける。だが一瞥し、眼を細めただけですぐに視線を逸らした。街を見渡し、足元の壊れた門を見る。
「……一時的にだが、」
男が声のみを向けて、問いかけて来た。
「閉ざして構わないか」
「――具体的には?」
「災獣は通れないが、人間は通過できる。見た目には何も無い。ただ『運良くしばらくの間、災獣がやって来ない』というように見えるかな」
「その心は?」
「単なるデモンストレーションの一環だ。民衆に解りやすく、単純明快にしたい。その為の舞台作りだ。――三ヶ月は維持しよう。この期間は、俺からの返礼だ」
つまり、壁内に残る連中の安全も、ある程度は保証してくれる、と。
「――至れり尽くせりだな」
思わず皮肉げに呟けば、男は少し振り向いて肩越しに視線を寄越した。
「返礼だと言った。これに関しては我が王からは渋い顔をされたくらいだ。非公式にヴォルフシュテイン王からは頭を下げられた。それに関しても我が王は頭を抱えたがな」
―――― 一瞬、言っている意味が解らなかった。が、次の瞬間には理解する。
どうやらコイツは、ヴォルフシュテインの関係者では無いらしい。
「待て。お前は何処の――」
「サーヴォレイドだ。……少し離れていろ」
ひたり、と歩いた足の音で、男が裸足であることに気付いた。というか、色々と言いたい格好である。身嗜みくらいはきちんとするのが常識だろう。
思わず眉をひそめ、睨むように見つめた先で、男はそっと息を吐き、天を仰いだ。
『―― sYAnAsA ut Legions_SARWOLAID ag tYAhNkAtA du ahjeas /. 』
レギオス・サーヴォレイドと同期し、承認を求める
ぞわり、と。
大気が動いた、ような気がした。
何か、圧倒的な質量を持つモノが傍で動いたような、そんな感覚。だが、あたりを見渡しても何も無い。遥かな稜線、あるいは地平線まで見渡せる景色が広がっているだけ。
『 Zarathustra =>lAnNc.aA Lgions=SARWOLAID ag jLYNzAt cenjue hymme li hymmnos /. 』
ツァラトゥストラからレギオス・サーヴォレイドに接触。現行システムの書き換えを実行
視線を男に戻し、ついでレンに目を向ける。レンは僅かに首を傾げた後、ややあって頷いた。
「――これは、『ヒュムノス』と呼ばれる言語。神性語のひとつね。――神霊は、神性語と音律で他の神霊とコミュニケーションをとるの。単語ひとつに込められる情報量がとても多いから、情報処理が追いつかない人間種が殆どなのだけど、その神霊同士のコミュニケーション方法を疑似成立させる為に作られたのが『ヒュムノス』だと云われているわ。――今では、古代の技術を使うために謳われることが殆どね」
「――これは、ユウが撃ったやつと同じなのか?」
「同じ技術を使用しているけれど、あのひとはユウとは違うわ。だって、あのひとは都市だもの」
「……とし?」
思わず再び男を見やり、つま先から頭まで眺め、異色ではあるものの人間の形であることを確認する。後方から、小さく少女が笑う声が聞こえた。
「あのひとは残紅都市サーヴォレイドの意識体、とでも言えばわかるかしら。それでも理解が及ばないのなら、移動する都市の操縦者だとか、あるいは砲台の砲手だとか、そういう風に認識すればいいわ」
「……なんとか、理解した」
「来るわよ」
その言葉に思わず胡乱げにレンを見る。風と戯れる少女は心底楽しそうに、軽やかに笑ってみせた。
「一介の【詩紡ぎ】とは比較にならない。存分に畏れ、伏すと良いわ」
『 Was ki wa enter_HYMMNOS/1x01 >> yehar Legions=SARWOLAID en xest Infel=Phira E05 > pat Zarathustra = ZzzIII YEE XIXA. 』
「(変数)ヒュムノス」をサーヴォレイドに入力。
インフェル・ピラ イプシロン伍号機を経由、ツァラトゥストラへ解放せよ
何かを唱える男の声が途絶えた、その一瞬の空隙。
「――構えて」
軽やかに笑う少女が告げて、一拍。
世界が、音に震えた。
EeeE bIIImMyyY Zam sbiiy yEm I EIE I EEY EE III EI YAaaAIIYA !!
高々に謳われた最初のそれは、何故か慟哭であるように聞こえた。翼をもがれた鳥のような、あるいは罅割れた硝子のような、悲痛な叫び。
それでいて――なおも、あたたかい。温もりの残滓が溶けた、黄昏のように。
xU rre wAwAjEnNcU dius sphaela sarla /.
聴こえる■■の詩
xU rre kLYAvUn.rA Dyea hynne /.
抗う■の聲
突然降り注いだ声とも音ともつかない旋律に、眼下の兵士たちが狼狽えるのが見えた。エルヴィンの指揮で即座に持ち直しているようだが、動揺は拭えない。――自分は二度目と云うことと、すぐ傍にタイミングを告げてくれるレンがいるので混乱は無いが、エルヴィンは初めての筈だ。流石、としか言いようが無い。
若干の混乱の中で、独りだけで鮮やかに巨人を狩り続ける影がひとつ。――確認するまでも無く、レイフォンだろう。他は少なくとも2、3人で斃している。
Rre echrra li mun en omnis ruy, rre chs 0 en 1 syec zaarn.
其れは無にして全の■、0にして1の海
Ma zweie wa xest anw ciel.
私は世界を■■する
xU rre sphaela cUzA zz raudl ciellenne /.
■■を形亡き■■へと変換する
Ma num wa cexm gatyunla.
そして私は ■われた場所に立つ
キシ、と氷が軋むような音が、唄に混じって耳に届いた。音源を捜し、足元の壁に開いた穴――かつては扉のあった場所からであるのに気付く。
キシ、キシ、と断続的に続く微かな音は、だが徐々に大きくなっているようだった。
rre rudje kapa shwep en nille werllra.
涙に似た■は甘く
van famfa - xO rre zess zLYAzYAxLYE /.- ware shellan.
羽ばたいても - ■ってあげる - 硝子の中
10メートル級の巨人が、その空間を通過しようとしていた。だが、何かに抵抗されているかのように、動きが鈍い。――例えるなら、向かい風に煽られているような。
hyear reen, rre teyys hymme spiritum.
さあ 耳を澄ませ 魂が遺した響きに
男は歌いながらその巨人を一瞥し、軽く片腕を振って見せた。一拍遅れて、ごとん、という音と共に巨人の首が地面に落ちる。
あまりにも呆気ない結末に思わず瞠目し、男と巨人を交互に見た。
男は、相変わらず歌い続けている。何事も無かったかのように。まるで、邪魔なものを排除しただけだと言わんばかりの態度。――いや、まさしく、その程度の認識なのだろう。
xU rre wOwAjEnNcU dius hynne /.
聴こえるのは 神の■
xLAY rre lEnNcAaU arcursye fwillra /.
繋ぐのは ■の欠片
くい、と軽く袖を引かれ、レンを見る。レンは軽く微笑むと今し方、巨人が首を落とした門を指さした。
「――たぶん、あのひとの力なら、貴方も目視できるわ」
何を、と思ったところで、男の詩が終端を迎える気配。とりあえず、質疑応答は後にしようと目を向けた先。
―― xO rre pakz du manaf cAzO dand /.
我は生命を隔てる扉となる
詩の終奏と共に、門があった空間を埋め尽くすかのように光の線が奔った。複雑な文様を光跡で描き、宙に図や文字らしきものが顕れる。数秒で消えたそれらは、しかし確実に何らかの効果を齎したのだろう。
新たに入り込もうとする巨人は、その空間に足を踏み入れた瞬間、鋭い刃で断ち切られたかのように首を落とした。
「……何をした?」
「一時的に俺の領域とした。俺が許すもの以外は、通過できない」
ゆったりと瞬き、男は吐息を零して向き直る。サラサラと、紅蓮の髪が風に揺れた。
「――――無理に通過しようとすれば、斬首だ」
「……人間はどうなんだ?」
確認の意味を込めて、とりあえず訊いておく。この男は『俺が許すもの以外』と言った。つまり、実際の判定は『人間かどうか』ではなく、『巨人かどうか』でもない。『この男が許可するかどうか』という、完全に個人の任意である。
案の定、少し言葉を選んだらしい男は腕を組み、顎に手をやって考える素振りを見せた。
「……――――とりあえず、今現在、壁の内側にいる人間については問題無い。『外』の人間については設定していないから反応しないし、問題は災獣が人間に化けている場合だが、これに反応すると面倒事になるから今回は見逃すようにした。とにかく、現状で反応するのは巨人などの災獣だけだ」
「――そうか」
もっとも、それを信用できるかというと、また別の問題なのだが。
そんな風に考えながら、再び眼下にレイフォンの姿を探そうとした、その矢先。
外套を翻す音を立てて、レイフォンが壁上に戻って来た。降りて行った時とは違い、だいぶ血糊や砂埃といった汚れが目立つ。
というか、この姿はわざとなのだろうか。彼の戦闘能力を顧みれば、この短時間でここまで薄汚れることは無い筈だ。であるならば、やはりわざとなのだろう。
――長い旅の中で、戦い続けて
「――――レン」
手にした錬金鋼を何の感慨も無く手放し、感情の窺えない声で少女を呼ぶ。カツン、と足元に落とした錬金鋼は色褪せ、細かい亀裂が走っていた。
静かに歩み寄ったレンの頭に手を伸ばし、レイフォンはそっと藤色の髪を梳く。その髪をひと房すくい上げ、口付けを贈り、そっと囁くような声で命じた。
「――私に、剣を」
「……そんな顔しないで。あなたの役に立てて、嬉しいのよ?」
軽く苦笑し、少女はヒトの形をほどいて風を纏う大剣へと姿を変える。陽光の下で見るその大剣は、
「――サーヴォレイド公、……」
「領域は閉じた。これ以上は増えない。仕上げはわかるな?――民が望む英雄譚の一幕を演じて魅せろ」
「…………ご助力、感謝いたします」
僅かに首肯し、そして身を翻したレイフォンは再び壁上から身を躍らせた。
…………実は、ハーメルン版『自由の向こう側』だと、ほんとに此処にしか出て来ないんですけど、タグ付けなくてもいいですかね?ダメですか?あ、はい。ルールがありますもんね、仕方ないですね、大丈夫ですよ。え?SAN値ですか?別に気にしないでください。順調に削られていってますが、無問題です。順調なので大丈夫です。
もう、もう……っ
Rrha paks ga !!
…………。
……うん。少し落ち着きました。
今回の楽曲紹介です。
参考楽曲は『隻眼のエデン』と『Recordare』に収録されてる『METACORTEX』と『空想活劇』収録の『silence』です。ヒュムノス化した歌詞の参考にさせて頂きました。
いくつか諸事情により、ヒュムノサーバーに存在しない単語がありますが、それはヒュムノスとは別の架空言語から引っ張って来た単語であるか、創作した単語です。該当単語が無かったか、語感が合わなかったか、ニュアンスが違うかしたやつですね。
どれなのかが分かった人は、間違いなくヒュムノスクラスタだと思います。