自由の向こう側   作:雲龍紙

61 / 63

【elmei xaln was teo uc yahe clar 】
 『全ての扉に言葉の鍵を』


 前回同様、セラフェノ系の言語です。




 …………あ。
 此処まで来てしまったという事は……そのうち、『神留る夢』の方も引っ張って来ないといけませんね……。う~ん……。ここでも構成が……(悩)





【stig 05:elmei xaln was teo uc yahe clar 】

 

 

 手にした剣を軽く振って肩に担ぐ。

 

「で?」

 

 遠慮を切り捨てたらしい夜刀に合わせて、とりあえずは自分も遠慮はしないことにした。意識を切り替え、改めて確認する。

 

「お前に、この状況を打開する手はあるか?」

 

「伝手ならあるな。――手が無い訳でも無いが、あまり分がいい賭けにはならんだろう。正直、人類保全計画には途中からの強制参加だったから、あまり詳しいことは聞いてないし、ゼロ領域についても良く判らない」

 

「……なんか、すげぇ壮大な単語が出て来たな」

 

「今は関係ない。……いや、問題はゼロ領域――この空間そのものではなく、オーロラ粒子の方か。幸い、俺は元々覇道の神格。よって影響自体は相殺されるが――相互作用、という部分においては問題がありそうだ。あるいは、相乗効果」

 

「あー……結論は?」

 

「……お前がいるなら、無茶できない、と言ったところか」

 

「――――そうきたか……」

 

 どうやら、ここで一番の足枷は一応人類に分類されるオレであったらしい。思わず嘆息し、肩をすくめる。

 

「……んじゃ、離れても平気なんだな?」

 

「――それが、俺への気遣いなら、不要だ。だいたい、こいつらも俺が欲しいのであって、別に殺そうとは思っていない。排除したいとは思ってるかもしれないがな」

 

「それは、具体的にどう違う?」

 

「――味方につけるか、精神を縛って封じ、人形にする。あるいは理性を失わせて狂わせ、禍津神に堕とす。それらが達成できない時、どこか別の空間に押し込んで封印する。消滅させるのは、現状ではどう足掻いても不可能だし、ただ消滅させるのは惜しい――――よって、現段階で消滅を狙って殺しに来ることは在り得ない」

 

 ――物凄く、離れるのが心配である。

 

 というか、その状況は、もしかしなくてもオレがコイツを見つけた時の状況ではないだろうか。だとすると、あの時、あの状況の裏では、こいつらも糸を引いていたということだろうか。

 そうであるならば――手を抜く理由も、退く必要も感じない。だが、同時にこいつら――【狼面衆】だけでは、不可能であっただろう、とも思う。つまり、更なる黒幕は他にいるという事だ。

 

「有効だと断言できる策は無いが、伝手ならある」

 

 繰り返す夜刀の言葉に、思わず胡乱げに瞬く。改めて夜刀を見遣れば、彼は軽く肩をすくめて見せた。

 

「とりあえずは、時間稼ぎだな。――本来は得意分野なんだが、ゼロ領域で流出する訳にもいかない。よって、さっきまでと対処方法は変わらない。……が、待つだけでも時間はかかるだろうし、こちらからも詠んでみるか」

 

「……とりあえず、オレは戦ってればいいのか? この数相手にお前を守りながらってのは、だいぶ骨が折れるんだけど」

 

「――出来ないのか?」

 

 ただ単純に訊き返してきた夜刀は、きょとん、というような顔をしていた。――非常に、珍しい。それに、こう……下手に挑発されるよりも、だいぶ効果があると思う。

 

 深く息を吐き、軽く首を振って夜刀より3歩、前に出た。

 

 

「――【restoration:02】」

 

 

 流す勁を微調整して、手にしていた剣を身の丈ほどもある片刃の大剣へと変える。もう一度、ぐるりと周りを見渡し、目前の敵に跳び掛かった。

 

 

 

 

 

【stig 05:elmei xaln was teo uc yahe clar 】

 全ての扉に言葉の鍵を

 

 

 

 

 

 目前に迫った狼面衆の首を飛ばし、そのまま右から躍り掛かって来た3人の狼面衆をまとめて薙ぎ払う。遠心力を利用して背後に振り返りつつ大剣を引き戻し、振り下ろされる白刃を防いだ。

 

 一瞬の拮抗。

 

 それを軽く嗤って力任せに弾き返す。ついでに首を狙って回し蹴りを当てれば、骨の折れる音と感触が伝わった。

 一通り近付いてきた奴らを斃したのを確認し、軽く息を吐いて夜刀の方へ振り返る。

 

 

Ulma Ivis sheon rien-c-soa

 黄昏の鐘を鳴らしましょう

 

 

 滑らかな旋律が聴覚を撫でた。視界の先で紅蓮の髪が炎のように揺れ、不用意に間合いに入ったらしい狼面衆が地に頽れるようにして沈む。

 

 ――そういや、あいつ……

 

「……あれでも、武神なんだっけか……」

 

 出逢いのせいで、どうにも過保護になっている自覚はあるのだが。それでも、武器を持った複数相手に徒手空拳で立ち回るというのは、出来れば止めてもらいたい。こっちの心臓に悪い。――機械仕掛けの心臓だが。精神衛生上、好ましくない。

 しかも、だ。

 

 

kui-chen-uia zen-yy-nr noh-iar-ne kyu-la-du;

 砕けた星の 欠片を集めて…

jen-fa-uia zen-yy-nr nay-nei-ne sye-iy-du;

 砕けた命の 色を重ねて…

mao-uia zen-yy-nr rei-ne uru-du;

 砕けた心の よすがを辿って…

 

 

 歌いながら、というのは……こう、なんというか、相手が居た堪れないような気持ちになる。同時に、本当に【剣守】なんか必要だったのか、とも思ってしまう。

 

 ――いや。ほんと、なんで【剣守】なんかいるんだろう。

 

 『表向き』の理由だけなら、納得できるのだ。要は、都市の核でもある【天剣】を最も的確に扱えるであろう人物が【剣守】となる、という話であるだけなのだし。だが、実際の『裏事情』を微妙に見知っている自分としては、こう――色々と突っ込みたい、気がする。

 とりあえず、討ち洩らしが夜刀の方へ向かう分には、対応できるようなのであまり気にしないことにした。

 

 

wa-fen-du pe-wez-iz-chai;

 世界を繋ごう

 

 

 ――――不意に、空間の気配が変わった。

 

「馬鹿な」

「馬鹿な」

「何故」

「何故」

「何故だ」

 

 口々に騒ぎ出した狼面衆の1人を、とりあえず大剣で叩き潰して悠然とあたりを見渡す。

 ふと。

 虚空を仰げば、遥かな天上の闇を引き裂いて、一条の天河が横たわっていた。空間自体も、さっきまでよりはるかに広くなったような感覚を受ける。

 夜刀は――ここに在る『神格持ち』は神性語でもって『世界を繋ごう』と謳った。つまりこの現象は、その一言に集約される。

 神霊が神性語で謳い上げれば、奇跡が起きる――というのは、何処の伝承だったか。『奇跡』と称するにはいくらか語弊があるものの、まぁ、間違ってはいない。良く『詩魔法サーバー』の効果と混同している者もいるが、『奇跡』を模倣したのは『詩魔法』の方だ。

 

 

wa-fen, tes, ye-ra jec, aru-yan, gin-wa-fen;

 空間 時間 可能性 融合 多元

a-z wa-fen-du chef-in yan=koh wa-fen-du refu;

 全ての世界を越える波動こそが この世界を救う

 

 

 さて。

 夜刀は、『よんでみるか』と言っていた。『呼ぶ』なのか『詠む』なのかまでは把握できなかったが、序詞がセラフェノ系言語だったことを考えると、おそらくは後者。【セラの民】の領域で名詠式と称される――いわゆる、召喚魔法のアレンジだろう。

 厳密には、『伝手がある』といっていたから、【セラの民】の領域を守護する神霊を呼ぶつもりなのかもしれない。何故か仲も良いみたいだし。

 

「――おっと、」

 

 状況を把握したらしい狼面衆がいっせいに走り出す。正面から向かって来た狼面衆を3人の胴を同時に薙ぎ払い、左側を通り過ぎようとした奴には鳩尾に肘を入れ、少し遅れて向かってきた奴は右足で蹴り飛ばした。同時に左袖に隠し持っていたナイフを数本取り出し、夜刀に迫る何人かの後頭部を狙って投擲する。

 結果は確認せずに再び振り返って適当に一閃し、追撃する狼面衆を牽制しながら夜刀の傍まで低く跳び退った。

 

「あー、……やっぱこいつら苦手」

 

 思わず小さく零せば、ふっと夜刀が笑う気配が背後でした。……あれ。普通に笑うのは、とてつもなく珍しい気がする。いや。それとも、あれか。実は俺だけが知らないとか、見ていないとか、そういう事だったりするんだろうか。それはそれで――自分が情けない。

 

 

fam-ne wa-fen-ny rei-yah-ea;

 遥かな世界にまで 届くように…

 

 

 闇を引き裂いた天の川から、天蓋を翻し、取り外すかのように夜の宙が広がった。蒼い黎明色のオーロラが揺らめく。

 その天上から降り注ぐかのように、夜刀への返歌が返って来た。

 

 

Isa da boema foton doremren

 さあ 生まれ落ちた子よ 

De peil, Ee dewl nec Zsary

 だいじょうぶ、泣かないで

Se wi lisya Sem memori

 わたしの歌を 聴かせてあげる

 

 

 予想していたよりも、はるかに幼く、軽やかで可憐な歌声。

 

 

En Zec pheno tis clar lu hem Eec shez,

 わたしの名前とわたしの歌が、あなたの翼にそっと触れ

ende cela sohit fel Zec nazal

 あなたの想いを祝福します

 

 

 ――まさか。

 

 

「――『世界の境界を超える』ということに慣れている知り合いがいるからな。向こうも見つけてくれたみたいだし、もう済むだろう」

 

「いや……いや。確かに、『名詠式』=『召喚魔法』=『界渡し』なんだろうけどな!?」

 

 この歌声の主は――色々と反則であると思う。こう――雑魚戦に創世神の一柱を引っ張り出すのは、どうなんだと声を大にして叫びたい。

 

 

C/ erch mihhiy, evoia valen tis ria elmei Ema.

 さあ 幾千にも織りなす 全ての意思に捧げる祈りの道となれ

 

 

 遥かな天上、宙に流れる天の川が揺らぎ、うねり、圧倒的な白い神威として突き刺さるように降り注いだ。

 

 

 






 ちなみに、Pixiv版で読んでた方には、「……あれ?」と思った方もいるでしょう。「なんか、抜けてない?」と。
 はい。一話分、抜いてあります。Armaの方ですね。ただ、これは後々でまとめる予定なので、削減した訳ではありません。
 ご安心ください。



  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。