《紅魔館》
血を彷彿させる様な紅い色の煉瓦の様な物質で構造された、見る者によっては禍々しさを感じさせる巨大で立派な館である。
広く無限に広がる晴天とは随分とミスマッチなその館の、中に入れば室内の広さも見た目通り期待を裏切らないだろう。
「咲夜、まだ博麗神社から宴会の知らせはこないわけ?」
「はい。天狗からの新聞は届き次第随時、確認しているのですが……そのような知らせは書かれていませんでした」
そんな紅魔館のとある一室、1人の女性と1人の幼女が居た。
髪は銀髪のボブカットに両方のもみあげ辺りから、先端に緑色のリボンをつけた三つ編みを結っており、衣服はメイド服を着込んでいる、美人に分類されるであろう女性と、その女性の銀髪よりも若干青みがある銀髪をした長さ的にセミロング程度の緩いウェーブのかかった髪にナイトキャップを被った背中に翼を持つ容姿10歳前後の幼女である。
メイド服を着る女性の名は十六夜 咲夜。
此処、紅魔館の主であるレミリア・スカーレットの従者であり、メイド長だ。
そしてその咲夜を従えるレミリア・スカーレットこそ、この幼女なのだ。通称おぜう様だ、可愛い!可愛い!可愛い!の3Kを兼ね備えた吸血鬼だ。あっ、吸血鬼入れたら4Kだ!!やったね!!
険しい表情を浮かべながら、机に置かれた新聞《文々丸新聞》を手に取らずに目だけで確認するレミリア。
そのレミリアから三歩ほど距離を置き、背筋を伸ばし姿勢良く立つ咲夜。
二人は今、博麗神社から宴会の知らせが届かないという現象について話をしている最中だ。
基本、博麗神社で宴会を開く時は、霊夢が射命丸文という天狗にお願いして、文が作成している新聞《文々丸新聞》に宴会開催のお知らせという記事を書いて貰い、様々な場所に配達してもらうのだが、どういうわけか何時もならもう届いてもいいころなのに、何日間待とうがその開催のお知らせの記事がある新聞が届かないのである。
流石に可笑しいと思う手前、わざわざ博麗神社に足を運び
霊夢に宴会を開催しない理由を聞きに行くというのは己のプライドが許さないレミリアは頭にハテナを浮かべるだけだった。
そして同じく咲夜も疑問を持ってはいるが、完全で瀟洒という意味の分からないプライドにより、自分の意思では行こうとはしなかった。
「全く……こっちは既に宴会に必要な物は用意出来ているのに。せっかく霊夢や魔理沙達が喜びそうな高級且つ飲みやすいお酒を用意したのに、これじゃ意味ないじゃない」
置かれた新聞を乱暴に手で掴み、眉をひそめ書かれた記事を適当に読み漁りながらぼやき出すレミリア。
新聞に書かれた記事はどれも目移りする様な物では無かった。
気になる記事をあげるとするなら、最近人里に住む子供達の間ではモノマネが流行っているらしいと書かれた部分だけだ。
子供達の遊びをわざわざ記事にするなんて、とうとうネタ切れかと思いそんな記事を書くなら、宴会の知らせを早く載せろと我が儘な思いを馳せた。
「ふふ……お嬢様、楽しみなんですね?博麗神社でおこなわれる宴会が」
「は、はぁ!?そ、そんなわけないじゃない……私はただわざわざ用意したお酒が無駄になるのが嫌なだけよっ!
へ、変な勘違いしてる暇があるなら、さっさと博麗神社にでも行って霊夢から話を聞いて来なさい!!」
「……はい、かしこまりました、お嬢様」
「……う〜」
溜め息と共に手に取った新聞をぶっきらぼうに机へと、放り投げるレミリアを見て優しく笑いながら咲夜が一言。
レミリアはその言葉を聞いた瞬間、いつかの月の如く己の顔を赤く染め座っていた椅子から勢い良く立ち上がり、激しく同様しながら大きな声量で必死に言い訳をした。
そしてどさくさに紛れて言い訳の後に、私の代わりに博麗神社に行って欲しいと同義の意を含む一言を咲夜へと言い放つとレミリアは腕を組み、勢い良く椅子へと座り直した。
咲夜はそんな自分の主を、見ながら優しく微笑み部屋を後にした。
咲夜が部屋を出たのを確認したレミリアは、両手で顔をうずめ足をジタバタと動かし1人悶えるのだった。