夜も明けいよいよ新の初めての召使いとしての仕事が始まろうとしていた。
新は朝起きるのが早い。目を覚ましたのは日が出てくる頃だった。
「よし、支度しよ」
昨晩のうちにユメに用意してもらったタキシードを着る。珍しい服装に最初は戸惑っていたが仕事が始まる頃にはだいぶ馴染んだようだ。
すると部屋にユメが入ってきた。
「おはようございます新さん。それでは今日からお嬢様の召使いとしての仕事が始まります。最初は上手くいかないと思いますが、なんとか体に覚えさせてくださいね」
「よろしくお願いします」
「それではお嬢様のところへ行きましょう」
こうして新はレミリアの待つ部屋にユメと向かうのだった。
ここはレミリアの待つ部屋。
二人はレミリアの前にいた。
「「おはようございますお嬢様」」
「二人ともおはよう、新には早速仕事に入ってもらおうと思ったのだけどまだ館の内部を知らないわよね」
「はい」
「とりあえず今日は館の全員に自己紹介と館の構造を知ってもらうことにするわ。それじゃあついてきなさい」
「はい」
「ユメは早急にみんなに大広間へ集まるように伝えてきて頂戴」
「かしこまりました」
ユメはそのまま皆を呼びに部屋を出た。一方新はレミリアに連れられて大広間へと向かう。
「これからみんなに自己紹介してもらうけど先に行っておくわ。この館には人間はあなただけよ。殆どは妖精ばかりだから最初はあなたにいたずらとかしてくると思うわ、まぁ認めてもらえればなくなると思うけど」
「つまりはお嬢様の召使いとして館の皆さんに認めて頂かないといけないのですね」
「そう言う事よ。まぁ難しいこともあるだろうけど頑張って頂戴」
「かしこまりました」
二人が話しているうちに大広間へ到着した。中にはたくさんの妖精メイドがいた。妖精たちがざわざわとしているがレミリアの一言でぴたりと止む。
「みんな、静まりなさい。これからみんなに今日からこの館で働くことになった者を紹介するわ」
「皆さん初めまして、私は今日からお嬢様の召使いとして働くことになった新藤新と言います。どうぞよろしくお願いします」
すると部屋の奥からこえが聞こえた。
「レミィが人間を働かせるなんて一体どういう風の吹き回しかしら?」
「どうもしてないわよ。彼が私に恩を返すと言うことで働きたいと言ったから受け入れただけよ」
「人間、あなたが自己紹介したから私もするわ。私はパチュリーノーレッジよ。私からあなたにひとつ言うわ。ここは人間が居れるようなところじゃないわ、今すぐここを立ち去ることよ」
そう言ってパチュリーは出ていった。
「全くパチェもあんなに毛嫌いしなくていいのに」
「あのお嬢様、自分はどうしたら…」
「大丈夫よ、気にしなくていいわ」
「わかりました」
「それじゃあみんな持ち場に戻りなさい」
レミリアが言うと妖精メイド達は皆持ち場に戻っていった。
「自己紹介も終わったことだからこれから館の構造を覚えてもらうわよ」
「はい」
レミリアと新は紅魔館内の各所を周り始めた。最初に向かったのは外の門のところだ。レミリアは日光に弱いため外に出るには日傘を差さなくてはいけない。新は日傘を持ちながらレミリアと共に門の前に立つ。
「お嬢様おはようございます」
「美鈴、今日も見回りは大丈夫?」
「はいお嬢様、今のところ怪しいものは現れておりません」
「わかったわ、報告ありがとう」
「そちらの方は今日から召使いになった方ですね。私は紅美鈴と言います。私はご覧の通り門番の仕事をしています。もし困ったことがありましたらどうぞ相談ください」
「ありがとうございます」
「さぁ次のところへ行くわよ。それじゃあ引き続き頼むわよ美鈴」
「はいお嬢様!」
こうして再び中へ入る二人。次に向かったのは図書館だ。
先ほど新はパチュリーにきつく言われたことを気にしているのか表情が不安げになっていた。
「ここが紅魔館の大図書館、ヴワル図書館よ。ここはパチェの管轄だから私もあまり口出ししないの。それじゃあ行きましょう」
「はい、お嬢様」
二人は中に入る。入った途端新は目を疑った。
目の前に広がるのは常識では考えられないほどたくさんの書物が並んでいる。本棚の全ては普通の人間の背丈をはるかに超えるものだ。
新が図書館に圧倒されているところに少女が現れた。
「おはようございますお嬢様、それとお嬢様の召使いさんですね」
「初めまして、新藤新と言います」
「私は小悪魔です。パチュリー様の司書をしています」
「小悪魔、パチェはどこにいるかしら?」
「パチュリー様でしたらあちらの書斎にいらっしゃいます」
「ありがとう」
小悪魔は一礼して仕事に戻った。新とレミリアはパチュリーのいる書斎に向かう。
図書館の奥、本棚のあいだを抜けていくと広い空間に出た。その真ん中には書斎がありたくさんの本が積まれていた。
「いったい何をしに来たのかしら?」
「そんなに怒らなくてもいいじゃないの」
「別に怒ってはないわ、ただちょっと体調が悪いから不機嫌なだけよ。用がないなら出ていって頂戴」
「はぁわかったわよ、まぁ用は済んだからね」
そう言ってレミリアは図書館を後にした。
新はパチュリーに一礼してレミリアについていこうとするとパチュリーに止められた。
「確か新だったわね。さっきは悪かったわ。ちょっとイライラしていて口が悪くなっちゃったわ、ただこの館は妖精が多いから人間が働くにはだいぶ苦だと思ったの。妖精っていたずら好きだから、気をつけるのよ」
「わざわざご注意ありがとうございますパチュリー様、それでは失礼します」
新は足早に図書館を後にした。
新が図書館を出るとレミリアが待っていた。
「お嬢様、お待たせ致しまして申し訳ありません」
「いいわよ、パチェと話していたのでしょ?何を言われたの?」
「妖精メイド達はいたずら好きだから気をつけなさいと言われました」
「なんだ、パチェも案外気に入ってるんじゃない」
「最初パチュリー様にきつく言われたときは正直言葉の圧力を感じました。ですがアドバイスをいただいたことで安心いたしました」
「それなら良かったわ。それじゃあ部屋へ戻るわよ」
「あのお嬢様、ひとつよろしいですか?」
「なにかしら?」
「図書館の横の方に地下へ続く階段があったのですが地下には何があるのですか?」
「それを言うにはひとつだけ条件があるわ」
「条件ですか?」
「えぇ、それはあなたの血を欲しいの」
「僕の血ですか?お嬢様が欲するのでしたら喜んで」
「そう、それじゃあ話すわ。この地下にはね私の妹であるフランがいるの。でも精神状態が不安定なあの子は危険だから地下に幽閉しているの。いつもユメともう一人の妖精メイドのソラの二人が順番にフランの世話をしているの」
「お嬢様の妹様ですか、と言うことはお嬢様のようにとても美しいのですか?」
新が質問するとレミリアは少し訂正するように答えた。
「そうね、フランは美しいわ。でも美しいって言うよりもかわいらしいと言った方がいいかもしれないわ」
「一度お目にかかりたいものですね」
「それはできないわ」
レミリアはすぐに否定した。その顔は新が初めて見る険しい顔だった。
新は理由を聞こうとしたが聞けなかった。するとレミリアが喋り出した。
「さっきも言った通りあの子は危険なの。会ったら多分初めて見るあなたと遊ぼうとするわ。でもあの子の遊びは簡単にあなたを殺すことが出来る。命を大切にするなら諦めなさい」
レミリアはそう言うと再び歩みを進めた。新は何も言わずそのままレミリアについていった。
部屋につくとレミリアに指示を出された。
「新、服を脱ぎなさい」
「え?あ、はい」
新はすぐに服を脱ぎ上半身裸の状態になった。レミリアも服を脱ぎ始め下着姿になった。そして二人は新の上に乗る形でベッドに横になる。
レミリアの体は小さく、新が抱きしめたらしっかり包み込めるくらいだった。
「少し痛いかも知れないけど我慢してね」
「はい」
するとレミリアは新の左の首筋に噛み付いた。激痛が走り新の顔が苦痛に悶える表情になる。しばらくレミリアは血を吸った後新から離れた。
「あなたの血はなかなか新鮮で美味しいわ」
「それは良かったです」
「今日の仕事はこれでおしまいよ。明日からは本格的に頼むわよ」
「かしこまりました」
吸血も終わり今日一日の仕事が終わったことをレミリアから伝えられた。新はレミリアが眠りについたのを確認して静かに部屋へ戻り、そのままベッドに横になり意識を手放した。
この作品は諸事情で時間がかなり飛んだりします。逆戻りとかはないのでご安心を。