新がレミリアの召使となってから早いもので半年が経っていた。もうレミリアの召使としては申し分ない仕事っぷりになった。
「新も随分いい仕事っぷりになったわね。安心したわ」
「全く持ってもったいないお言葉です」
「だってまだ始めた頃はいろんな妖精メイド達にいたずらされてたから途中で失踪でもするんじゃないかと思っていたわ」
「自分の意思はいたずら程度に屈するほどやわではありませんよ、ただお嬢様に恩を返すため、そう、この半年間お嬢様の為に働いてきましたから」
「まぁ今ではもういたずらなんてなくなったみたいね。いいことだわ。みんなに認められている証拠よ。これからもよろしく頼むわよ。私ももうあなたのことは信頼してるのだから」
「もちろんでございます」
「それじゃあ、今日は出かけましょうか」
「どちらへお出かけになられるのですか?」
「そうね、たまには人里へ行ってみようかしら」
「人里ですか…」
新は少しうつむいてしまった。レミリアがそれを察したようにフォローをする。
「そう言えばあなた人里の出身だったわね。ちょうどいいわ。今日行って家を借りていた大家に金を返したらどう?」
「ですが自分はお金を持っておりませんよ」
「私が出すわ。そして今は別のところで住んでいると話せばいいじゃない」
「よろしいのですか?」
「あなただからいいのよ。それじゃ準備をしなさい」
「かしこまりました」
そう言って二人は別々に部屋に戻り出かける準備を始めた。
しばらく時間が経ち、新が門の前に行くとレミリアが待っていた。
「お嬢様お待たせ致しまして申し訳ありません」
「ほら、いいから早く行くわよ」
「かしこまりました」
「行ってらっしゃいませお嬢様、新さん」
「門番頼むわよ」
「はい!」
こうして二人は人里へ向かうのだった。
まず向かったのは例の大家の家だ。半年経っているがその建物はほとんど変わっていなかった。ひとつ変わっていたのは新が住んでいた家の前に紙が貼られていたことだけだった。大家の家は新の借りていた家の隣だったので二人ともすぐに紙が貼ってあるのに気づいた。よく見るとその紙は随分前に貼られたようでところどころ破れたりしていた。
新はその紙を剥がして読んだ。
「新君へ
新君が居なくなってからすぐにこの家は壊されると言う話が浮上し論議になった。私は取り壊しに反対した。新君がまた戻ってこられるように、もし再び戻ってきたら私のところへ来てください。
大家より」
「つまりあなたの家はあるようね。でも私の召使いに自らなったのだからここへ帰ることはできないわよ?」
「えぇ、分かってます、だからこそ来たんです」
新は扉をノックした。
「客人なんて珍しいな。誰だ?」
すると中から大家と見られる男が出てきた。しかし新を見るなり固まってしまった。
「お久しぶりです。大家さん」
「新君じゃないか!この半年間行方不明になっていて心配したんだぞ!だが家は残ってる、また住むといいぞ」
「実は、僕は農作業をしていたところ妖怪に襲われて必死に逃げ延びた後倒れていたところを隣にいらっしゃるレミリアお嬢様に助けてもらったのです。今はその恩を返すためにレミリアお嬢様の召使いになりましてもうここには戻ってこないんです。たまたま人里へ来たのでこうして寄らせてもらったんです」
「そうだったのか。とても大変だったんだな。そちらのお嬢さんの召使いか、なるほど、君の選択は間違ってはないぞ。そのお嬢さんを見ればわかる」
「あなたはどうやら人を見る目があるようね。流石というべきだわ」
「まぁそれが私の取り柄でもありますから」
「それで大家さん本題に入ります。実は今日の本当の理由は家賃のことです。お嬢様の承諾を得て滞納していた家賃を払いに来ました」
「悪いが、それは受け取れねぇよ」
「なんでですか?」
「君は家賃を払わなくていいよ。昔のことを知っているから」
「いいのよ受け取って頂戴。これは新があなたに対する恩返しでもあるのだから」
「そう言う事です。だから受けとってください」
「本当に済まないな、君には苦だろうと思って家賃のことは言わなかったんだ。まだそれだけ若いのに金を奪うようなことはしたくなかったんだ」
「大家さんから本音が聞けてよかったです。短いあいだでしたが大変お世話になりました」
「新君、私はいつでも君のことを忘れないよ。そちらのお嬢さんのところで頑張るんだよ」
「はい!」
そう言って大家に礼を言ってから元の家を後にした。その後はしばらく人里を見て回ったりした後、紅魔館へ帰った。
「お嬢様、今日は本当にありがとうございました」
「気にすることはないわ、あなたいつも休みなく仕事してくれてるんだもの。労わなくては当主として顔が立たないじゃない」
笑顔で新に言うと彼は顔を赤くして一礼をした。
レミリアと話をし終わった新は残りの仕事を済まして部屋に戻っていた。
「お嬢様の笑顔、とても可愛らしかったなぁ。正直今日ほど嬉しかったことはないな。ずっとお嬢様と楽しく話ができたんだもん」
新はレミリアのことを考えた途端顔が赤くなっていった。
新は無意識のうちにレミリアに対して恋心を抱いていたのだ。だがそんなことは本人はまだ自覚していない。もう少し時間が経てば新しいことが起こりそうな恋の予感だ。
新が久しぶりに大家に会ってからかれこれ二週間が経った。
そしてここは地下室。この日はユメがフランの部屋へ赴き遊び相手となっていた。
「ねぇユメ、お人形さんで遊ぶの飽きちゃった。何か他に面白いものないの?」
人形遊びに嫌気がさしたフランはユメに別の面白いものがないか問いかけた。
「そうですね、ではフランお嬢様、今日は最近の出来事をお話しますね」
「最近の出来事?」
「そうです。実はこの館に新しく召使いがやってきましたのです。しかし妖精などではなく人間の召使いです。最初はおどおどしていましたが今ではバッチリ仕事もこなせるようになってきたのです」
「へぇ、人間を雇ったんだ。お姉様は何を考えてるんだろう」
「理由は美鈴さんが紅魔館近辺で倒れていたその人を助けてきたことから始まります。助けられたその人はお嬢様は命の恩人だから恩返しがしたいと言いまして、お嬢様が気持ちを汲み取るようにして召使いにしたのです」
「そうなんだ。なんかその人間に会いたくなっちゃった。ねぇユメ、今すぐ連れてきてよ」
「ダメですフランお嬢様、レミリアお嬢様からそうもうしつけられているのです」
「じゃあいいよ、直接行って会ってくるから」
「え!?ダメですフランお嬢様!!」
フランが手を握った瞬間部屋の扉が粉々に砕けた。そしてフランは地下を抜け出し一階へ向かって飛んでいった。
「まずい、今すぐお嬢様のところへ報告へ行かないと新さんが!!」
ユメも勢いよく部屋を飛び出しレミリアのところへ急いだ。
急に館の全員に悪寒が走る、妖精メイドは何事かと騒いでいる。フランに会った妖精たちは一瞬のうちに一回休みにされていた。
「なんだこの騒ぎは、兎に角お嬢様のところへ急がなくちゃ」
仕事中騒々しくなった館に疑問を持った新は何事かと思いながら急いでレミリアのところへ向かっていた。
一方レミリアはフランが地下を抜け出した事を既に察していた。そしてユメが部屋に来てレミリアに状況を説明しすぐに新が危ないと分かり二人で新の元へ向かった。
新はレミリアの部屋へ向かう途中の曲がり角を曲がってすぐに立ち止まった。
目の前には初めて見る少女が立っていた。
そして新はすぐにわかった。その後ろにたくさんの妖精メイドたちが倒れていて全て目の前の子がやったのだと。
「もしかしてあなたがユメの言ってた新しい人間の召使い?」
「えぇ、その通りです。ユメさんから聞いたということはあなたはお嬢様の妹様でございますか?」
「そうよ、フランドールスカーレットよ。あなたの名前はなんていうの?」
「私は新藤新と言います」
「ねぇ新、私と遊びましょ?」
武器のようなものをだし、笑顔で言うがその笑顔は新からすれば完全に獲物を見つけた狼のようなそんなことを思わせる笑顔だ。瞳の色は緋色に染まりそれを見た新に恐怖を抱かせた。
そしてこの時レミリアのことをずっと考えていた新の運命の歯車はついに動き始めた。
なかなか小説書くのって楽しいですよね。
見る見るうちに自分の考えた物語が文字化されていくのがたまらないと自分は思ってます。
それでは次回お楽しみに。