遊ぶことに決めたのはいいが新は少し引っかかるものがあった。
「遊び」
この言葉をフランはさらっと言ったが、フラン自身の遊びの本質は新にとっては最早死の言葉と取れる。妖精はどんなことがあっても一回休みになるだけで死ぬことはない。代わりにしばらく魂が抜けたように無気力感に襲われ、何もできなくなってしまう。だが人間の新はちょっとした深手が命に関わる。妖精たちを見ればわかる通り遊んだ結果完全に一回休みになっているわけだ。つまり裏を返すと人間が遊べばまず確実に死と隣り合わせだということになる。恐怖すら覚えたこの「遊び」をこれからやることに疑問を抱いたのだ。
「それじゃあ始めようか」
「わかりました」
承諾をした途端フランは新に飛びかかる。
一瞬怯んだが横に避けることによってなんとかギリギリで攻撃をかわした。
「意外と反応いいのね、安心したわ。すぐに壊れないようで」
「壊れる?」
その時新の引っかかっていたものがわかった。
これは新も楽しめる遊びではなく、完全にフランだけが楽しめる遊びなんだと。
「じゃあこれで行くよ。禁忌レーヴァテイン!」
フランは持っていた武器のようなものを構えると炎の刃が出てきた。
「こんなの食らったら確実に死ぬ…」
新の頭の中を死の戦慄が駆け巡る。
するとそこへレミリアとユメが到着する。
「お嬢様‼︎」
「フラン‼︎やめなさい‼︎」
「お姉様邪魔しないでよ。私は今新と遊んでるんだから」
そう言ってフランはレーヴァテインを構え、突きを繰り出した。
壁際にいた新に向かって突きが飛びレーヴァテインは壁に当たって砂煙をあげた。
視界が悪くなり状況がわからないレミリアとユメは焦っていた。
当然二人はフランの強さを知っているからこその焦りである。二人は状況がわからないためひたすら新が無事なのを祈っていた。
砂煙がだんだん晴れていきフランと新が見えるようになってきた。だがしかし、現実は非情であった。
レーヴァテインは新の腹をやすやすと貫き壁に刺さっていた。
「あ・・・・・お・・・・・お嬢・・・・・様・・・・・」
「新!!!!!!」
フランはレーヴァテインを抜いた。支えのなくなった新は力なく地面に倒れ込んだ。
レミリアはすぐに新の元へ駆け寄った。そして優しく抱きしめた。
「新・・・・・しっかりして!!」
「お嬢様、命を、助けてもらった、恩を、返せず、死んでしまうことを、どうか、お許し、ください・・・・・」
「嫌っ!死んじゃいやよ!だって、だって私は・・・・・あなたのことが好きだから!!」
「お嬢様‥‥私も、お嬢様のことが‥‥とても好きでした。お嬢様に会えて‥‥幸せでした‥‥」
新の目から涙がながれた。レミリアも同じく涙を流していた。そして、運命の歯車は動き出すと同時に新はレミリアに抱かれながら息を引き取った。
「新‥‥まさかこんな別れになってしまうなんて‥‥」
するとフランは呑気に呟いた。
「あーあ、ちょっとはいいと思ったけどやっぱりすぐ壊れちゃった」
「フラン、あなたいったい何をしたのかわかってるのかしら?」
「遊んでただけだよ」
「あなたは!私の大切な存在を奪ったのよ!軽い気持ちで新を殺したのよ!」
「いいじゃん、人間なんて他にもいるんだから」
「あなたは何もわかっていない。いくら他に人間がいても、新はこの人だけなのよ!ユメ、パチェを呼んでからフランを連れていきなさい」
「かしこまりました」
そう言ってユメはフランを連れていった。
レミリアは新の亡骸をずっと抱きしめ謝った。
「新、本当にごめんなさい。私の不注意であなたを死なせてしまった」
そして、次の日、新の亡骸は棺桶に入れられ紅魔館のみんなに見守られながら紅魔館の裏庭に埋葬された。そしてそこには立派な墓石が作られた。
その日紅魔館では優秀な召使いが居なくなりその死をみんなは重く受け止めた。レミリア、パチェ、美鈴の三人は特に良き関係を持っていたのでそのショックがとても大きかった。しばらく紅魔館は悲しみに包まれた。
新が死んでから一週間、ここはとある神界、ある神の前にひとつの魂が召還された。その魂は神に肉体を貰った。
「お主を転生させてやろう。だが、条件がある」
「条件ですか?」
「そうじゃ、その条件はお前が前に生きていた時の記憶を引き継ぐことじゃ」
「生前の記憶があるのですか。まぁそれはそれでいいです、それじゃあ転生してください」
「まぁ焦るな。転生させる前に力をやろう。形態変化を操る程度の能力だ。慣れれば自分の体も龍のようにすることも出来るはずだ。そして最後にひとつ、お前はもう人間ではなくなる。だからもう簡単には死ななくなったから。それじゃ行ってこい!」
神が腕を軽く振ると新は光の粒子となりそのまま神界をあとにするのだった。
転生先、とある神社の前に転生していた。境内は綺麗に掃除されていて神主の几帳面さが伺える。
「はぁ、転生、したんですか。前の記憶か、あれからどれくらいの年月が経ったんだろう。僕が妹様に殺られたあの時から‥‥」
ふと、ひとつの考えが頭の中を過ぎった。
「そうだ!前の記憶があるのなら、もしかしたら紅魔館に戻れるんじゃないか?やって見る価値はある!」
とある神社から勢い良く飛び出し、石段を飛び降り、森を抜ける。それも昔の状態では絶対にできないスピードで駆け抜けていた。
森を抜けると数キロ先に見覚えのあるものが見えた。それはかつて新が住んでいた人里だった。
記憶を頼りに昔レミリアと人里に来た道を思い出す。
「あっちかな」
能力を使い姿を変える。その姿は堅い鱗に覆われた龍の姿だ。強靭な翼を羽ばたかせ一瞬で人里の反対側まで飛行をして、降り立った。能力を解除して元の姿に戻る。そして辺りを見回しす。
「確かこの道を通って紅魔館へ帰ったんだよな、はぁ、レミリアお嬢様元気かなぁ」
心配しながら紅魔館へと歩いて向かう。
かれこれ二十分ほど歩いていくと湖が見えてきた。新の記憶にもある紅い霧の湖だ。
「ここだ、僕がお嬢様と歩いたところ、そして僕が助けてもらった場所だ」
新は急いで湖を迂回して反対側に向かった。
段々と近づくにつれて新の気持ちが高ぶっていた。その気持ちの高ぶりはレミリアにまた会えるという感情から来るものだった。
そして彼は立ち止まった。
目の前には新の記憶にしっかりと焼き付いている紅い館、紅魔館が堂々と待ち構えていた。