五話
夢ではなく本物、目の前の館は本物の紅魔館。
新は再び戻ってきた。紅魔館へと、門の前には門番の美鈴がいる。相変わらず寝ているようだ。
「僕は本当に戻ってこれたんだ、紅魔館でまたあの日々が蘇るのか!」
「ん?どちら様ですか?」
すると新の声に気づいて美鈴が目を覚ました。
「お久しぶりです、美鈴さん」
「なんで私の名前を知ってるのですか?まさか曲者!?」
「忘れちゃったのですか?新ですよ、新藤新です」
「そんなはずありません!いくら似ていても別人です。何故なら新さんはもう十年も前に亡くなっているのですから」
「ちょっと待ってください、僕が死んだのは十年前なんですか?でも僕がここに転生したのは死んでから一週間しかたってないのに」
「兎に角あなたはこの館に一歩も入れさせません!」
新は考えた。どうしてこんなことになっているのかを。だがすぐに答えは出ずレミリアに会うことだけしか頭になかった。
「悪いんですがお嬢様に用があるので無理にでも通らせてもらいます!」
新は姿を変えて狼になる。そして跳躍をして一瞬で館の裏庭に入ることに成功する。
「しまった!侵入を許してしまうとは、兎に角お嬢様に伝えなくては」
美鈴は急いでレミリアを呼びに紅魔館へ入っていった。
一方裏庭に入った新は元の姿に戻り裏庭から正面へ回ろうとしたときに立派な墓石がたっているのが彼の目に止まった。新はその墓石に近づいていく。よく見ると綺麗に管理がされていて花まで供えられている。
そして墓石の字を読んだ。
「新藤新ここに眠る」
それは新が死んだ時にレミリアが建てた墓だった。
新はそこで膝をつき泣いた。
「お嬢様、こんな僕のために豪華な墓石を立ててくださったのですね。本当にありがとうございます」
すると後ろから聞き覚えのある声がした。
「そこのお前、この高貴な吸血鬼であるレミリアスカーレットの屋敷に侵入するとはいい度胸だな今すぐ八つ裂きにしてやる」
「お嬢様‥‥」
ものすごい剣幕をしたレミリアが新のところへきたのだ。その後ろには美鈴とパチュリーと新の知らないメイド姿の少女が一緒だった。
だがレミリアは振り返った新の顔を見た途端表情が一転して驚きの表情に変わる。
「え‥‥う、嘘っ‥‥あ、あなたは‥もしかして‥‥でも‥‥新は‥‥もう‥‥」
新は立ち上がって一礼をする。
「お久しぶりですレミリアお嬢様」
「あなた‥新‥‥なの?」
「はい、新藤新でございます」
するとみんな驚いたように動かなくなった。最初曲者だと言ってた美鈴も信じられないと言った顔をしていた。そんな中レミリアが走り出した。そして新に抱きついた。だが急に飛びつかれたので新は態勢を崩して倒れてしまった。レミリアは新にまたがる形で乗っていた。
「新!!本当に新なの!?」
「もちろんですよ、死んでから私は転生することができまして。その時に記憶も引き継がれたのでこうしてお嬢様の元へ戻ってきたのです」
それを聞いたレミリアの目から涙が流れる。その姿を見ればひと目で喜びの涙だとわかる。
「そうだったのね。あなたがフランに殺されてしまってからずっとあなたを思って泣いていたの。だってあなたは私が愛した人なんだもの」
「私もお嬢様のことをずっと考えていました。人里から戻ってきてからしました話の途中に見せたお嬢様の笑顔に私は心を射抜かれましたから」
「ねぇ、新、またここで一緒に居てくれる?」
「もちろんです、そのためにきたのですから」
「ありがとう」
礼を言われた後にレミリアは新にキスをした。新もレミリアの愛を受け止め抱きしめる。こうして動き出した運命の歯車は仕事を終えたようにその運命を導き出した。
「お嬢様、もう一度私を召使いにしてください」
「もうその必要はないわ。あなたは私の愛する人。ずっとそばにいてくれるだけでいいの。仕事も大丈夫よ」
「じゃあ私は…」
「これからは紅魔館の住人よ、自由に過ごしていいのよ」
「ありがとうございます」
「もう、死なないでよね、あなたが死んじゃってから紅魔館は大変だったんだからね」
「すいませんパチュリー様」
軽く笑いながらパチュリーはいった。
「まぁまたこうして戻ってきてくれたんですから良しとしましょうよ」
美鈴は明るく盛り上げようとして言った。
こうして新は再び紅魔館に受け入れられた。今度は召使いではなく紅魔館の住人として、そしてレミリアの恋人として住まうことになった。
「あのひとついいですか?」
「どうしたの?」
「そちらのメイドさんはどなたですか?」
「申し遅れました。私は10年前にお嬢様の従者になりました十六夜咲夜です」
「自分は進藤新です。レミリアお嬢様の召使いをしていた者です」
自己紹介も済んだので新は疑問に思っていたことをレミリアに聞いた。
「お嬢様自分は何年前に死んだのですか?」
「あなたが死んじゃったのは、十年前よ。あなたが死んで数ヶ月後この子が盗賊として館に忍び込んできてね。能力もあったし殺すのはもったいないと思ってこの館で働かせることにしたのよ」
「そうだったんですか。これで全部納得しました」
「なら良かったわ。それじゃあ館に戻りましょう。あなたの部屋はずっと残ってるから使っていいわよ」
「ありがとうございます」
こうして新は再び紅魔館に舞い戻りレミリアの恋人として住まうことになつた。
新が再び紅魔館に住まうことになってから早くも一月経っていた。紅魔館には新が死ぬ前の活気を取り戻していた。妖精メイド達も賑やかになった。みんな仕事に身が入ってテキパキ働いている。
自由と言われた新は新で一つだけ大切な仕事があった。それはレミリアの吸血である。
彼は月に一回レミリアに血を提供しているのだ。それ以外は庭の手入れやら妖精メイドの手伝いなどもやっている。
今日はちょうどレミリアが新の血を吸う日だ。この日の夜もレミリアの部屋に二人きりである。
「レミリアお嬢様に血を吸われるのはこれが二度目ですね」
「そうね、またこうしてあなたの血が飲めるなんてね、嬉しいわ」
「自分はお嬢様にまた会えただけでも幸せです」
「嬉しいこと言ってくれるわね」
レミリアは新の頬にキスをした。それから左側の首筋に噛みつき血を吸い始めた。
やはり二度目でも噛みつかれるときは痛いもので新は顔を歪めた。
数分間レミリアは新の血を吸い続け、満たされたようで新から離れた。
「やっぱりあなたの血は美味しいわ。本当に戻ってきてくれてありがとう」
「いえいえ」
「それとひとつ、敬語使うのやめていいわよ」
「いや、ですが…」
「恋人同士なのに堅苦しいのは困るでしょ、私だってあなたと二人きりのときは甘えていたいの」
「本当にいいんですね?」
「えぇ」
「それじゃあ…レミィ愛してるよ」
「ふふふ、私も愛してるわ」
今宵二人は互いに唇を重ねて抱き合った。その愛が本物であることを確信させるほどに長い時間続けた。そして二人はそのままベッドで眠りにつき共に夜を過ごした。次に目が覚めたのは次の日のお昼頃だった。