偽書魔法少女アヤメ☆マギカ PSEUDEPIGRAPH PUELLA MAGI AYAME MGICA 作:ジャックノルテ
タイトルに偽書と付けているのはどんなにこの作品が良い出来となったとしても所詮は偽書に過ぎないと言う意味です。
第1話 魔法少女が怖い
ぼくはカラフルな闇の中でうずくまっていた。
闇は真っ黒な筈なのにカラフルと言う表現はおかしいと言う人もいるだろうけれど、ぼくにとってここはカラフルな闇だった。ここは怖気を起こす狂気の空間。《魔女》の結界なのだから。
カラフルな闇の中でぼくは恐怖に怯えていた。
怯えながら座り込んでいたぼくの目の前で《使い魔》と呼ばれる化け物が目の前で人間を捕食していた。
人間の肉体を切り刻んで食べ易い様に加工して捕食しているのだ。
ぼくが恐怖するのは自分が襲われてしまうからと言う恐怖では無い。
何故ならぼくは《使い魔》や《魔女》に襲われる事は決して無かったから・・・。
それでも目の前で誰かが死ぬと言う平凡な日常の中に存在しない異常と感じる出来事にぼくの心は何時まで経っても慣れる事は無かった。
(何度、見ても怖い・・・。ここから逃げ出したい・・・。でも・・・。やらなきゃ・・・)
そう思いながらぼくは怖いけれど、ゆっくりと目を開いて目の前の景色を直視した。
既に《使い魔》はこの結界に取り込んだ2人の人間の捕食を終えていた。
1人は刺し殺されもう1人はそのまま捕食されていた。
恐る恐る身体を動かし四つん這いになると目立たない様にぼくは《使い魔》に捕食されて殺された人の死体に近寄った。
死体は仕事帰りと思われるスーツ姿の中年女性だった。
刺し殺された中年女性の死体をぼくは一生懸命の力を出して引っくり返して仰向けにした。
大きな音がしたけれど近くにいた《使い魔》は気にも留めなかった。
これから行う行為に対してぼくの心に罪悪感が芽生えたけれど必死に意思を強く保って僕はそれを押し退けた。
(だって・・・。こうしないと僕は生きていけない・・・)
やりたくは無かったけれど、心を決めたぼくは死体の着ているスーツの中を探った。
死体が持つ嫌な感触がぼくの指に感じられた。
今まで同じ事をした経験的に財布は上着の胸ポケットとズボンのポケットの二ヶ所に入っている事が多かった。
スーツの胸ポケットに財布が入っていた。
ぼくは恐怖に震えながらも中年女性の死体が切るスーツの胸ポケットから財布を抜き取った。
これが良識的には行っては行けない盗みと言う行動である事はぼくも理解していた。
けれど・・・。
ぼくにはこれを行わなければ生きていけない理由があった。
その時、バン!バン!と連続で火薬が炸裂した様な音がした。
反射的にぼくは死体の上に重なって様子を伺った。
ぼくの目の前に白い銃身の長い銃を構えた《黄色い髪のお姉さん》が立っていた。髪を縦ロールにしておりぼくより年上なのは明らかだった。
「《使い魔》・・・。もう既に人間を捕食した様ね。でもこれ以上、そんな事は許さないわ!」
そう言いながらその《黄色い髪のお姉さん》は駆け出しながら続け様に次々と取り出した銃による銃撃を《使い魔》の周囲に放った。
応戦しようとする《使い魔》だったが既に勝負は決していた。
最初に放った銃撃と後から放った銃撃は全て《使い魔》の周囲に放たれ、銃撃の行われた銃弾の後からまるで植物の芽と茎を髣髴とさせる黄色い糸が瞬時に生えると無数の方向から伸びて《使い魔》を縛り上げたのだ。
走りながらその様子を見て取った《黄色い髪のお姉さん》は躊躇無く持っていた銃を捨てると胸元の黄色いリボンを解いて右手に握った。右手に握ったリボンが生き物の様に躍動したと思うと巨大な銃へと変化した。
「ティロ・フィナーレ!」
《黄色い髪の少女》が巨大な銃を構えながらそう叫ぶと巨大な銃の先端から黄色い光が解き放たれて《使い魔》を消滅させた。
《使い魔》が倒された瞬間に結界は崩れて回りの風景は僕が昨夜に駆け込んだ資材置き場に戻った。ぼくが《黄色い髪のお姉さん》の様子を見る為に覆い被さっていた中年女性の死体も消えてぼくは地面に倒れ込んでしまった。
「っ・・・。痛い」
頬を地面にぶつけたぼくが思わず声を上げて顔を上げると《黄色い髪の少女》と視線が重なってしまった。《黄色い髪のお姉さん》は少し驚いていたが微笑を浮かべるとぼくに語り掛けた。
「あなた?大丈夫なの?」
声を掛けられてぼくは《黄色い髪のお姉さん》が僕の方に心配そうな表情をして歩み寄って来るのに気が付いた。
その瞬間にぼくは結界に閉じ込められていた時に感じていた物とは異なる恐怖に身を縮ませてしまった。それにぼくは死体から盗みを行ってしまっている・・・。ぼくはただこの場にいたくなかった。
「うぅ・・・。やだ!」
無意識の内にそう叫んでぼくはその場から駆け出していた。
「待って!」
《黄色い髪のお姉さん》がそう叫んで僕に手を伸ばしたけれどぼくは目の前にあったドアを開くと目の前に広がる道を全力で走った。《黄色い髪のお姉さん》は追って来なかった。
けれどぼくは《黄色い髪のお姉さん》への恐怖でここが何処なのか分からないままにぼくは夕方の街を走っていた。死体から盗んだ財布を握り締めながらただ走り続けた。足が痛くて走れなくなるまで走り続けた。
やがて公園に辿り着くとぼくはベンチに座り込んだ。
(ぼくは・・・。ぼくは魔法少女が怖い!)
そう思いながらぼくはベンチに座って息を整えようとしていた。
○
朝日が昇って夜が明けようとしていた。
公園に設置された遊具の中で一夜を明かしたぼくは目を覚ますと直ぐに歩道の隣を流れている小川の対岸にある林の中に身を隠した。
今日は平日である為にぼくの様な子供が学校に行かないでいると不信に思った警察の人に補導されるし、最悪、保護されてしまう・・・。
そうなってしまったら警察の人にまで、ぼくは迷惑を掛けてしまう・・・。
ぼくよりも大きな石や木の根元に隠れるようにして腰を降ろすとぼくはようやく一息、付く事が出来た。
「それでね、あの後、すごい事になったんだって」
その時、少女の声が聞こえて来てぼくはそっと木の根元から様子を窺った。
小川と隣接している補導を3人の少女が歩いていた。
青いショートカットの少女とピンク色の赤いリボンをした少女、それにとても綺麗な緑の髪の少女が仲良さそうに歩いていた。
「わー。さやかちゃん。その事だけは言わないで!」
「あら私(わたくし)は聞いてみたいですわ」
「お願いだからこれ以上、聞かないで!」
たわいの無い会話を心から楽しむぼくより年上に見える3人の少女の表情は楽しげに歩道を歩いていた。
その様子がぼくにはとても羨ましかった。
ぼくにはとても望む事が出来ない幸せな日常を生きる人々の姿がぼくの瞳に写っていた。
決して叶わない願いを抱いてしまった事を自覚した時、ぼくは無意識の内に両目から涙を流していた。
「うぅ・・・」
涙を流したことが少し恥ずかしくてぼくは膝の中に顔を埋めて世界から目を背け自分を慰める事しか出来なかった。
「ぼくも・・・。友達が欲しい・・・」