偽書魔法少女アヤメ☆マギカ PSEUDEPIGRAPH PUELLA MAGI AYAME MGICA 作:ジャックノルテ
「ここは・・・。何処?私は・・・。朱奈。ここは何処なの!?」
気が付くとわたしは見知らぬ場所に、たった1人で立ち竦んでいた。
わたしは赤いスカートにフリルの付いた白いシャツに黒いコートを着て小さなリュックを背負っていた。
これらの服やリュックにも見覚えは無かった。
リュックの中にある荷物を見てみたけれど他の服にも見覚えが無かった。
周囲を見ると見知らぬ道が広がり、夕日が背後にある公園を照らし付けていた。
血の様に赤く輝く空と公園に見えている黒い闇が恐怖心を煽った。
混乱と恐怖からわたしの体に震えが走った。
「怖い・・・。わたし・・・。ここにいたくない!」
この場にいる事に恐怖を感じたわたしは1人で街を彷徨い続けた。
やがて街を彷徨い続けたわたしは駅前の公園で泣いている所をお巡りさんに見つかって保護された。
その後、わたしは児童養護施設へと送られる事になり施設で三日間を平穏に過ごした。
けれど平穏は直ぐに終わりを告げた。
日付が変わって金曜日となった瞬間にわたしの右目に施された呪いが発動した。
「痛い・・・。何なの!?」
右目の痛みを訴えるわたしを施設の人達は心から心配してくれた。
けれどわたしに引き寄せられた《怪物》によって施設の人達は次々と殺されて行った。
(後にわたしはその《怪物》が《魔女》や《使い魔》と呼ばれる事を知る事になる)
目の前で繰り広げられる残酷な行為にわたしは目を背けて現実逃避する事しか出来なかった。
日付が変わると同時にその場所は元の施設へと戻ったけれどわたしだけが取り残されてしまった。
恐ろしくなったわたしは慌てて自分の荷物を纏めるとその場から逃げ出した。
まだ寒い時期だったけれどわたしは1人で街を彷徨った。
誰かに迷惑を掛ける事を恐れたわたしはなるべく他者と関わらない様にして過ごそうとした。
持っていたリュックには何故かサバイバルに関する本が一冊、入っていてわたしはその本に書かれた内容を元に外で過ごす事を覚えた。
けれど都合良くそう言った本が入っている事にわたしは違和感を覚えていた。
もしかしたらわたしは記憶を無くす以前から放浪していたのかも知れないと感じていた。
一週間後・・・。わたしはまた《怪物》を引き寄せていた。
同じ事が二度も続けば嫌でも認識しなければならなかった。
わたしは一週間に一度、《怪物》を引き寄せてしまう悪い子だと・・・。
だからわたしはなるべく人と会わない様に放浪する事を続けた。
わたしは自分の所為で誰かが《怪物》に殺される事を悲しんでいた。
だから放浪し続けた。
子供であるわたしが放浪を続ける事が出来たのは、リュックに入っていたサバイバルに関する本の知識と持っていた財布の中に10万円以上のお金がチャージされた電子マネーと30万円もの大金を持っていた事が大きかった。
昼間はずっと彷徨って夜に眠る時には林や橋の下、団地等のベランダの下でビニールシートに包まって眠りに付いた。
そうした行動を取って殆ど見つかる事が無かったのは一重に運が良かっただけだとわたしは思っていた。
けれど何度目か《怪物》の作り出す異空間に閉じ込められた時にわたしは《怪物》と戦う少女を目の辺りにした。《魔法少女》だ。
その時はわたしを気に留める事も無く去って行った。
でも次に会った時には《大剣を持った魔法少女》の方もわたしの事に気が付いていた。
「あんた、何者だい!この間も結界に閉じ込められていただろ。その右目から出る魔力は何だ!あんたも《魔法少女》か!」
武器である大剣を向けて来る《大剣の少女》にわたしは何も言う事が出来ずガタガタと震える事しか出来なかった。
ところがわたしの目の前で突如として《大剣の少女》は誰かと話すかの様に自分の脇に向かって次々と言葉を言い続けて行く。
「何だって?へー。これが《魔女を引き寄せる呪いを持った少女》なのか。確かにお前の言う様に捕まえてアタイの物にしちまった方が良いよな!」
そう言って《大剣の少女》は乱暴にわたしを抱えると何処かに向かって飛んで行った。
《大剣の少女》によってわたしは何処かの倉庫と思しき場所に閉じ込められてしまった。
その時は分からなかったけれどわたしの首には魔法で作られてと思われる首輪が付けられてわたしは倉庫から出ようとする事も出来なかった。
倉庫の扉は非情に重くてわたしの力で開く事が出来なかった。
《大剣の少女》は何日間かの食事を纏めて与えてくれたけど、ずっとわたしを倉庫に閉じ込めていた。
食事をわたしに持って来た後は言葉を交わす事無く直ぐに去って行った。
逃げる事も出来ないわたしは大人しくする事しか出来なかった。
長い時間を1人で過ごした。
金曜日になるとわたしの呪いが引き寄せた《魔女》を《大剣の少女》が倒している内に他の《2人の魔法少女》が現れた。
《大剣の少女》とは既に知り合いらしかった《杖の少女》、《鞭の少女》と対峙した《大剣の少女》はお互いに武器を向け合ってピリピリとした雰囲気を見せてながらも言葉を交わしていた。
けれど暫く言葉を交わすと何故か3人でわたしの前にやって来た。
「良いか。アタイ達はこれから3人でお前を管理する。お前の呪いで引き寄せる《魔女》を倒してアタイ達がグリーフシードを得られって寸法だ。その代わりにアタイ達がお前に餌をやる。文句は無いだろ!」
威圧する様に武器を向ける《大剣の少女》にわたしは小さく頷く事で自分を守る事が出来なかった。
突然、《鞭の少女》が手に持った鞭でわたしを締め上げ体の自由を奪った。
「大人しくした方が良いですよ・・・」
聞こえるか聞こえないかの声で《鞭の少女》はそう呟いたのを聞くと同時に《杖の少女》がわたしの前に歩いて来た。
同時にわたしの顔を右側からそっと掴み上げると右目を覗き込んで来た。
「これが呪い。《こちら》にとって便利な物であるのは確かだけれども、もっと良い使い方がある筈」
《杖の少女》がそう言ったと同時に私は右目に痛みを感じた。
最初は余り痛くなかったけれど徐々に痛みは酷くなり、わたしはそのまま意識を失ってしまった。
○
わたしが目を覚ますと知らない部屋のベッドに寝かされていた。
「気が付いたのね」
ふと脇を見ると私服姿となっていた《杖の少女》がソファーに座って本を読んでいた。
視線を本に落としたまま話を続ける。
「ここは《こちら》の隠れ家ね。今日からここであなたを管理するわ。この部屋からは《こちら》の魔法で出入りは制限されているから出る事は出来ないわ。その代わりここの家具は自由に使って構わないわ。《こちら》の言う事を大人しく聞くのであれば食事も与えます」
それだけを言うと《杖の少女》はそのまま立ち去って行った。
わたしは窓やドアを開こうとしたけれど開く事が出来なかった。
わたしには分からないけれど魔法によってわたしはこの部屋に閉じ込められてしまったのだった。
それからわたしは1人でこの何処か分からない部屋で過ごす事になった。
部屋の広さは2DKでわたしは普段は本や雑誌を読んだりテレビを見たりして過ごしていた。
家具は一通り揃っていたし《鞭の少女》は来る度に雑誌や本を大量に持ち込んでそのまま置いて行っていた。
そのどれもが読み終えたからいらないと言う物だったが・・・。
わたしは《大剣の少女》や《鞭の少女》、《杖の少女》達の名前を知らなかった。
反対に3人はわたしの名前を知っていたけれどわたしの名前を呼ぶ事は殆ど無かった。
3人の《魔法少女》にとってわたしは結局、道具に過ぎなかったのかも知れなかった。
毎日の食事に関しては《杖の少女》や《鞭の少女》、《大剣の少女》が分担して持って来てくれていた。
《大剣の少女》は食事を持って来ると直ぐに出て行く事が多かった。
けれど《杖の少女》と《鞭の少女》は時々、この隠れ家に泊まって行く事もあった。
その時にわたしは《魔法少女》や《魔女》、《使い魔》に関する事を教えてくれる事もあった。
暇つぶしに教えてあげると言っていたけれど、教えてくれた理由はわたしに契約を行う能力が無いと断言できるからだと言っていた。
わたしが契約を行えない理由は《魔法少女》との契約を取り持つキュウべえと呼ばれる生物の姿を見る事が出来ないからだと言っていた。
実際の所、わたしにはキュウべえの姿は見えなかった。
だからわたしは《魔法少女》として契約を行う事も出来なかった。
わたしがこの部屋に来て四日目に《杖の少女》はわたしの持つ《呪い》の使い方に関する事を教えてくれた。
わたしの右目に施された《呪い》は一週間に一度、近くに存在する《魔女》と《使い魔》を強制的に引き寄せてしまう強力な物だった。
けれど《呪い》に魔力を注ぎ込む事によって一週間に一度しか発動しない《呪い》を任意のタイミングで発動させる事が可能となった。
3人で共同戦線を張る関係上、この能力は非常に有効的だと《杖の少女》は語っていた。
何故ならグリーフシードが欲しければ《魔女》を引き寄せて3人で倒して手に入れれば良いだけの話なのだ。
暫くして《杖の少女》はわたしの《呪い》を使って《魔女》を呼び寄せると言い、わたしを連れて《大剣の少女》、《鞭の少女》と夜の公園で合流した。
「行くわよ」
《杖の少女》の言葉と同時にわたしは右目に生じた痛みで意識を失った。
意識を取り戻すと誰もいない隠れ家に寝かされている。
そんな事を何度か続けているとある日、隠れ家を訪ねて来た《大剣の少女》は酷くイライラしているのかいきなりわたしの頬を叩いて来た。
余りの痛みにわたしは泣き出しかけたけれど《大剣の少女》は、直ぐに出て行ってしまった。
部屋には《鞭の少女》もいたけれど《大剣の少女》を止める事は無かった。
「止めるつもりは無かったですよ。《我々》の同盟関係はお互いの事に口を挟まないと言うのもあります。勿論、度が過ぎた暴力ならば止めますが・・・」
《鞭の少女》は漫画雑誌に目を落としながらそう呟いた。
こう言った事が続いて、否が応でもわたしは自分が《3人の魔法少女達》にとって《呪い》を持った便利な道具に過ぎないと言う事を思い知らされた。
あくる日に《大剣の少女》が《杖の少女》と一緒に隠れ家に来た。
「今日からこの服に着替えな」
そう言って《大剣の少女》が渡して来た袋の中を見ると中には男物の服が入っていた。
「でも・・・。これ男の子の服じゃ・・・」
「アタイが着ろって言ってんだから着ろ!」
怒気を含んだその発言に恐怖を覚えたわたしは素直に着替える事にした。
Tシャツを着てズボンを履き、パーカーに袖を通した。
「ふーん。やっぱその髪型じゃ違和感があるな。髪も切った方が良いか?」
「《こちら》の都合に合わせるのなら切った方が良いでしょう。反対はしない」
「じゃあ、切るか」
《大剣の少女》は《杖の少女》と話し合って一方的にわたしの髪型の事を決めるとわたしの髪を切り詰めた。怖くてわたしは抵抗する事も出来なかった。
「似合ってるじゃないか」
《大剣の少女》はそう言って笑っていた。その横で様子を見る《杖の少女》も薄く笑みを浮かべていた。
夜になって1人、部屋に残された、わたしは洗面台の鏡を覗いた。
そこには乱雑に切られた短い髪形のわたしが男の子の服装をし写っていた。
「わたし・・・。こんな格好・・・。したくない・・・」
そう呟いたけれど《大剣の少女》達が決めた事に歯向かう勇気をわたしは持っていなかった。
布団の中に戻るとわたしは1人で涙を流していた。
次の日に家を訪ねて来た《鞭の少女》はわたしの服装を見ていぶかしんだけれど特に何も言わなかった。でも要望を伝えて来た。
「ぼくって言ってみて」
「え・・・。ぼっぼく・・・」
そう言って返事をすると《鞭の少女》は少し笑った。
「これからは自分の事をぼくと言った方が良いですよ。その方が似合ってます」
引きつった顔で笑いながら《鞭の少女》はそう告げて来た。
わたし、じゃなくてぼくはもう《3人の魔法少女達》に反抗する気が無かったので素直に従う事にした。
時々、言い間違えるけれど、わたしは、わたしじゃなくてぼくになった・・・。
本当は女の子なのに男の子の服装をして男の子の様な喋り方をする・・・。
ぼくのそうした喋り方を見て《大剣の少女》と《杖の少女》も笑っていた。
理由は良く分からなかったけれどそうしたぼくの姿が面白かったのかも知れなかった。
ぼくの心は傷付いたけれど・・・。
《3人の魔法少女達》とぼくの生活は続いた。
生活が続く中で《3人の魔法少女達》はわたし、じゃなくてぼくに食事を届けるついでに部屋の中に三つある、それぞれが個人で使っているロッカーに時々、お金を入れているのを見る事があった。
ぼくには良く分からなかったけれど時々、財布を入れている時もあった。理由は知らなかったけれどその理由をぼくは直ぐに知る事になった。
金曜日に《大剣の少女》によってぼくは公園に連れて行かれた。
《呪い》を発動させたぼくは《魔女》を引き寄せてしまい結界の中に多数の人々を取り込んでしまった。
《呪い》が定期的に発動する金曜日だと、ぼくは意識を保っていられた。
一緒に結界の中に入った《大剣の少女》は、ぼくの事を睨みつけながらこう言った。
「おい。今日からお前は結界の中で死体を見つけたら財布を取って来い。お前は《使い魔》や《魔女》に見つかっても攻撃されないんだろ?アタイ達がやると《魔女》を刺激しかねないからお前がやるんだ!」
「でっでも・・・。怖いよ」
ぼくがそう言った時、目の前で人が《使い魔》に殺害されるのが見えた。
思わずぼくは目を背けたけど瞬時に《大剣の少女》は《使い魔》を倒していた。
ぼくに大剣を向けて《大剣の少女》は言った。
「さあ。やれ。死体の中から財布を捜すんだよ!言っとくが死なない程度に痛め付ける位なら他の2人から了承を得ているんだからな」
大剣の切っ先を向けられたぼくに選択の余地は無かった。
ぼくはとても嫌だったけれど殺された死体に近付いた。
買い物帰りの主婦らしくわたしはまずズボンのポケットを探って見たが財布は無かった。
次に上着のポケットを探って見ると財布が入っていたので取り出すと《大剣の少女》に差し出そうとしたが《大剣の少女》は受け取らなかった。
「邪魔だからここを出るまでは、持ってろ」
その結界の中で数人の死体を見つけたけれど財布を持っていたのは二人だけだった。
後の人達は体が半分以上、《使い魔》に捕食された後で財布を見つける事は出来なかった。
《魔女》を倒して結界から出て隠れ家に帰ると《大剣の少女》はぼくから乱暴に三つの財布を取り上げると中からお金を取り出すと自分のロッカーの中にしまい込むとそのまま財布を持って出て行ってしまった。
これ以降、ぼくは金曜日に結界に取り込まれると自主的に死体から財布を取る事が習慣になってしまった。
けど・・・。そんな《わたし》じゃなく《ぼく》と《3人の魔法少女》の日々は唐突に終わりを迎えた。
○
その日、ぼくがいつも通りに部屋で大人しくしていると激しくドアを開く音がして《大剣の少女》が入って来た。
ぼくに目をくれる事も無く水道から水をコップに注ぐと一気に飲み干した。
同時に《杖の少女》も入って来たが様子は変だった。
2人とも黙りこくっていた。普段ならば少しは会話をする筈なのに黙りこくっていた。
思い雰囲気にぼくも喋る事が出来ずに黙っていた。
「アイツはアタイ達を狙ってるんだな?」
《大剣の少女》が口を開いたけれど、その言葉は誰に向けられた物か、ぼくには解らなかった。
「ソウルジェムが目的だとも言っていた。その為に《こちら》を狙っていると・・・」
《杖の少女》が答えたがその言葉にはいつもの調子が無く弱々しかった。
「もうこっちは1人、やられちまったんだ。覚悟を決め」
《大剣の少女》がそう言った時、何かが頭の中を走った。
キーンと言う圧力の感じられる音がぼくの頭に鳴り響いたのだ。
「この二重に重なった魔力!アイツか!」
「ええ。もうここも知られていた様ね・・・」
《大剣の少女》と《杖の少女》は《魔法少女》としての姿に変身すると隠れ家を出て行った。
2人の瞳には何か決意の様な物をぼくでも感じ取れた。
隠れ家に取り残されたぼくは先程の会話を思い出していた。
《大剣の少女》が言っていた「もう1人やれらちまってんだ」と言うのは・・・。
きっと《鞭の少女》がやられたに違いなかった。
《3人の魔法少女達》は時々、ぼくを狙う《他の魔法少女》と戦う事があった。
でも相手は1人か2人で来る事が殆どで負ける事は無く、ぼくの知る限り《3人の魔法少女》は相手を追い返すに止めていた。
どれほどの時間が経過したのだろう・・・。
数分か数十分か・・・。ぼくは部屋の中で蹲って時計を見る事が怖くて体育座りをして顔を足に埋めていた。
突然、電気が消えた。
驚いて顔を上げたぼくは隠れ家に近付いて来る足音を聞いた。
カッカッカッ。
音を高く立てて威圧感の様な物をぼくは感じていた。
怖くて動けなかった。でも顔を上げて隠れ家のドアを見つめてしまうのは止められなかった。
バギイ!
とても大きな金属が無理やり引っ張られる音がして隠れ家のドアが無理やり開かれた。
逆光を浴びた《誰か》が、ぼくの事を見つめていた。
ぼくは逆光に思わず目を細めた時、《誰か》が喋り掛けて来た。
「へー。あなたが《魔女を引き寄せる少女》なんだ。何だか男の子みたいな服装をしてるのね」
声から女の人だと言うのが分かった。同時に電気が再び灯り入り口に立つ声の主の姿が明らかになった。
ポニーテールに赤と白を真ん中で分けたドレスを見に付け両手に形状の異なる刀と剣を握った少女だった。胸にはソウルジェムと思しき宝石を2つ付けていた事から《魔法少女》である事は明白だった。
「さて・・・。《ヒュアデス》の情報通りに三つのソウルジェムを手に入れました。あなたの事はどうしましょうか・・・」
口調と声色が変わった《ポニーテールの少女》に対してぼくは何も言う事が出来なかった。他人に自分の命が握られていると思うと怖くて動く事が出来なかった。
《ポニーテールの少女》はまるで誰かに相談するかの様に1人で口調と声色を変えながら喋っていた。
「決めたわ・・・。あなたの事は・・・」
ぼくをどうするのか決めたらしい・・・。
どうなるのだろう・・・。
死にたくない・・・。
「そうね・・・。あなたはスキくないから見逃してあげるわ」
「え!?」
笑みを浮かべて口調と声色の変わった《ポニーテールの少女》の言葉にわたしじゃなくてぼくは直ぐに受け止める事が出来なかった。
ぼくを見逃すってどう言う意味なのだろう?
「どうしたのですか?私たちはあなたを見逃すと言っているのです。ああ!荷物を纏めたいのですね。じゃあ直ぐに荷物を纏めて下さい。それ位は待って差し上げますから」
再度、口調と声色の変化した《ポニーテールの少女》は合点が言ったかの様に笑みを浮かべていた。
そう言われてもぼくは怖くて直ぐに動けなかった。
けれど《ポニーテールの少女》はこう告げた。
「私たちの気が変わらない内に荷物を纏めた方が良いよ」
ぼくは直ぐに怖かったけれど部屋の片隅に置きっ放しになっていた自分のリュックを持つと部屋にあるロッカーを見てみた。
何か役立つ物が入っていると思ったからである。
探って見ると数万円の現金がそのまま残されていたのを見てぼくは《ポニーテールの少女》から見えない様に取り出すと鞄に詰めた。
「終わったのですか?」
ロッカーを閉めると《ポニーテールの少女》が声を掛けて来た。
武器を握りいつこちらに向けてもおかしくないのが怖くてわたしは《ポニーテールの少女》の方を向いて素直に頷いた。
「そうですか。じゃあせめてもの情けでこの街から出して差し上げましょう。ここはもう直ぐ騒ぎになるでしょうから」
そう言いながら《ポニーテールの少女》は《魔法少女》としての姿を解くと私服の姿になった。
そのままぼくに近付くとぼくの手を握るとそのまま隠れ家を出た。
隠れ家を出ると《ポニーテールの少女》はぼくをお姫様抱っこの形で抱えるとそのまま街の中を跳躍した。
街の中を跳ね回る事にぼくは怖くて何も言う事が出来なかった。
怖くて視線をぼくの事を抱っこする《ポニーテールの少女》に向けてしまった。
《ポニーテールの少女》は自信に溢れた笑みを浮かべてぼくとは対象的だった。
ぼくの視線に気が付くと笑みを見せた。
ぼくがその笑みの意味を図りかねていると何処かの駅の近くに着地した。
殆ど衝撃無く着地した《ポニーテールの少女》は、ぼくをその場に下ろした。
「さあ。この駅からは多数の路線が行き来する、言わば分岐点ですからここから好きな所に行きなさい。この街から離れるのなら私はあなたの事を見逃してあげますわ」
《ポニーテールの少女》は余裕を感じさせる口調でぼくに語っていた。
「どうしてぼくの事を見逃すの?」
ぼくは自分が思い抱いた疑問を《ポニーテールの少女》に話さずにはいられなかった。
《ポニーテールの少女》は笑みを浮かべると答えた。
「それはね・・・。私はあなたのお陰で欲しい宝石が手に入ったからですよ。だからそのお礼にあなたを見逃すと言っているんです。正直、私はあなたに興味がありませんから・・・。まあ趣味の相違ですね。私は少女を飼う趣味が無いのですよ」
また口調の変わった《ポニーテールの少女》は、そう言ってぼくに背を向けた。
「明日、この街で会ったらどうするか分からないから逃げるなら今の内だよ」
振り返って笑みを見せた《ポニーテールの少女》は去って行った。
夜の街に消えて行った《ポニーテールの少女》の言葉を思い出しながらぼくは恐怖から逃れる様に走り出すと駅に向かった。
あの警告を信じるのならば、ぼくがこの街に居続けるのは危険だった。
だからぼくはリュックに入れっぱなしになっていた電子マネーのカードを使って駅から出る鉄道に乗り込んだ。行き先を確かめる事無く・・・。
それから・・・。ぼくは・・・。
○
「はっ!?」
ぼくじゃなくてわたしが目を覚ますと目の前にマミさんの顔があった。
マミさんと一緒にわたしは眠っていた最中だったらしい
じゃあわたしはマミさんと出会う前の事を夢で見ていた事になる。
それもわたしが怖くてマミさんに話せずにいる事を・・・。
マミさんの寝顔を見ていると嘘を付いているわたしがとても罪深く感じられた。
「マミさん・・・。ごめんなさい・・・。わたし・・・。怖くて、話さなきゃ行けない事を何も話せていないの・・・」
小さな声でそう呟いたわたしは布団の中に潜るとマミさんの胸に軽く頭を当ててみた。
マミさんは起きなかったけれどわたしは頭にマミさんの体温を感じられてとても安らかな気持ちを抱けた。
「マミさん・・・。わたし・・・。きっと悪い子だけど・・・。マミさんと一緒にいても良いんだよね・・・」
わたしの小さな呟きに眠っているマミさんは答えなかった。
でもマミさんの体温に包まれているだけでわたしは・・・。
落ち着いて眠る事が出来ました・・・。
《ポニーテールの少女》はヒュアデス、ソウルジェムを集めている、口調と声色が変わる、赤と白のドレスと無数の特徴があります。
彼女は魔法少女かずみ☆マギカに登場する双樹あやせ、ルカの双樹姉妹です。
イメージとしてはかずみ☆マギカに登場する以前の二人と言うシーンです。