偽書魔法少女アヤメ☆マギカ PSEUDEPIGRAPH PUELLA MAGI AYAME MGICA 作:ジャックノルテ
わたしが退院する前日の朝・・・。
目を覚ましたわたしの枕元にはわたしの荷物が入ったリュックが置かれていた。
このリュックはマミさんの家に置きっぱなしになっていた筈。
きっとマミさんがわたしに届けてくれたのかも知れなかった。
「マミさん・・・。ありがとう・・・」
突然、置かれていたリュックの事を看護士さんに聞かれた時にはこれは無くしていた自分のリュックで朝、起きたら枕元に置かれていたと伝えてみた。
看護士さんや施設の人は不思議そうな顔をしていたけれどそれ以上、追及して来る事は無かった。
○
あれから二ヶ月近く経過しました。
わたしは風見野市にあるグループホーム(地域小規模児童養護施設)に引き取られるとそこから風見野中学校に通う事になりました。
グループホームの人達はわたしが記憶喪失だと知っても暖かく迎えてくれてわたしは家族と言う物がこう言った物かも知れないと感じました。
学校に通う事になったわたしは自分の正確な年は分からなかったけれどわたしは13歳と称していました。
綾女ちゃんと初めて会った時は10歳だったからわたしにはここ3年間の記憶しか無い事になります。
だから学力検査を行って中学校一年生レベルの学力があると認められてわたしは記憶にある中では始めて学校に通う事になりました。
初めて通う学校は戸惑う事も多かったけれど回りの人達がわたしの事を助けてくれました。
わたしはいつか恩返しをしたいと心に願っていました。
友達も出来ました。
友達の中でもクラスメートの《さっちゃん》は一番の親友だとわたしは言う事が出来ました。
その日もわたしは風見野中学に向かっていました。
何だか空模様が悪い様に感じられるけれどわたしは真っ直ぐに風見野中学を目指しました。
校門を抜けて昇降口に入ろうとした所で紫色の髪を揺らす《さっちゃん》が出て来た。
《さっちゃん》はこの間、怪我をして腕に包帯を巻いて頬にもバンソーコーを付けたりと傷だらけでした。
傷の理由を《さっちゃん》は「酷い勢いで転んだからや」としか語らなかったけど、わたしはそれ以上、聞き出す事が出来ませんでした。
「あれ?さっちゃん。どうしたの?忘れ物?」
「違うで。朱奈。今日は休校や。隣の見滝原市にスーパーセルとか言うとんでもない台風がくるみたいやから臨時休校って事や。速く帰った方が得えで」
ショートカットの《さっちゃん》の髪を揺らす程、風が強くなっている事をわたしも感じていました。
「そうなんだ」
そう答えながらわたしは《さっちゃん》と並んで一緒に昇降口から折り返しました。
わたしや《さっちゃん》と同じ様に臨時休校の事を聞いた他の生徒達と一緒にわたしは校門を抜けました。
既に校門には何人かの先生が登校して来る生徒に臨時休校を伝えていました。
「朱奈。風も強いしウチが送ったる」
「うん・・・」
《さっちゃん》に促されて一緒に歩きながらわたしは気持ちの中にモヤモヤした物がある事に気が付きました。
「ねえ。《さっちゃん》・・・。スーパーセルが来たら見滝原はどうなるのかな?」
「どうなんやろな?まあ大変な事になる事だけは確かや無いんか?隣町のウチ等にまで影響があるんやからな」
少し強くなった風を浴びながらさっちゃんはそう答えたけどわたしの中で不安が広がっていました。
何故かこの風はわたしの不安を煽っていた。
(どうしてなんだろう?)
そう思ったわたしはこの嫌な感じが《右目の呪い》で感じていた物と似ている事に気が付いた。
(もしかして・・・。この台風は《魔女》の仕業なのかな?)
そこまで考えてわたしは思い出した。
そう言えばわたしを捕らえていた《杖の少女》が《鞭の少女》と話しているのを思い出した。
結界を必要としない大きな自然災害を引き起こす《最強の魔女》の事を・・・。
(確か《ワルプルギスの夜》って言っていた)
もしこのスーパーセルが本当に《ワルプルギスの夜》が引き起こした物だとすると・・・。
見滝原市にはマミさんと暁美さん、2人の《魔法少女》がいるのです。
2人に何か会ったらと思うとわたしはとても大きな不安を感じていた。
「朱奈。どうしたんや?」
立ち止まったわたしを見て《さっちゃん》も立ち止まるとわたしの様子を窺っていた。
「《さっちゃん》。わたし、行かなきゃいけないの!」
そう言ってわたしは見滝原市の方角に向かって走り出した。
「朱奈!待ちい!」
わたしの様子に驚いた《さっちゃん》もわたしを追い駆けて来ました。
「《さっちゃん》は来なくて良いから!」
「こんな時にそう言う訳には行かないやろ!」
わたしと《さっちゃん》は走り続けた。
必死に走るわたしを《さっちゃん》は黙って付いて来てくれている。
嬉しい反面、申し訳ないと思う部分もあった。
わたしの甘えとわがままに関係の無い《さっちゃん》を巻き込んでいるのだ。
必死に走ったわたしは見滝原市と風見野市の街境に達した。
けれど街境にはお巡りさんがパトカーに乗って待機しているのが見えました。
建物の影に身を隠す《さっちゃん》に習ってわたしも身を隠しました。
「どうしよう・・・。これじゃ見滝原に入れない・・・」
気を落とすわたしを見て《さっちゃん》は語り掛けて来ました。
「朱奈。どうして見滝原に行きたいんや?こんな時に行く事も無いやろ?」
《さっちゃん》に言われてわたしはさッちゃんから視線を外して恥ずかしそうに顔を伏せました。
けれど親友である《さっちゃん》に話さない訳にはいけませんでした。
「わたしの・・・。わたしの事を助けてくれた大切な人が見滝原市にいるの・・・。でも・・・。わたし、何か大変な物が迫っているって感じるの。だから・・・。教えてあげないと!今度はわたしが恩返しをしたいから!」
そう。わたしは走りながら感じていた。
もう無い筈の右目から《右目の呪い》と同じ様な疼きを感じていた。
必死に叫ぶわたしの言葉を《さっちゃん》は黙って聞いていましたけど急に立ち上がり強く言いました。
「分かったで。そんなに必死な朱奈を止める事はウチには出来へん。この場合、止めるのが普通なんやけどウチは朱奈の願いを優先させて貰うで」
「えっ?でも《さっちゃん》はどうしてわたしを助けてくれるの?わたしとは会ったばかりなのに・・・」
わたしからの視線を感じた《さっちゃん》は俯き気味に視線を外した。
いつも自信を見せている《さっちゃん》には珍しい事だった。
「ええから暫くここに隠れてるんや!」
強く《さっちゃん》にそう言われてわたしはその場にしゃがんで隠れる体勢を取った。
友達失格やなと呟きながら《さっちゃん》は建物の影から飛び出してパトカーの方に飛び出して行きました。
パトカーから降りた2人のお巡りさんは《さっちゃん》の姿を認めると《さっちゃん》を保護してパトカーで走り去ってしまいました。
周囲には誰もいない無人の状態だった。
見滝原に入るには今しかチャンスが無かった。
「《さっちゃん》・・・。ありがとう」
聞こえる事の無いお礼を呟いたわたしはそのまま見滝原市に入った。
暁美さんとの約束を破ったのは気に病んだけどわたしはどうしてもこの感覚を伝えずにはいられなかった。
何か大変な物が来ると言う感覚を・・・。
黒い風が降り続き周囲の物が突風で煽られる中、わたしは必死に前に進もうとしていました。
片目だから旨く進めなかったけれど一所懸命にわたしは進みました。
急に来る突風を避ける為に建物の影に隠れながらわたしは一生懸命に進みました。
けれど風が強くなるにつれて恐怖心が増して行き進むのに困難が伴って来た。
怖かったけれどわたしは一生懸命に進み続けた。
もう方角は分からない。自分のカンに従って進むべき方向を見定めてわたしは進み続けるしか選択の余地が無かった。
その時、不意に顔の右半分に何かが当たった。
右目が見えてない為にどうしようも無かった。
余りの痛みに悶絶したわたしが額に手を当てて見ると血が流れていた。
風で飛ばされた何かに当たって額を切ってしまったらしい。
「痛い。痛いよ・・・」
痛かったけれどわたしは行き先も分からないままに進み続ける事しか出来なかった。
歩調は弱ったけれど進む内に見覚えのある建物が目に入った。
確かマミさんの通う見滝原中学だった。マミさんとわたしのリュックを回収しに行った帰り道にマミさんは通っている中学校を教えてくれた。
門は開かれておりわたしは敷地内に入った。
頭から血を流していたわたしにはもうこれ以上、進むのが難しかった。
台風が収まるまでここに隠れていようかと思った。
壁際に隠れれば大丈夫かなと思いわたしは校舎の近くに弱々しい足取りで向かおうとした。
「おーい。こっちだ!」
急に知らない人の声を掛けられたわたしがその方角を見ると誰かがわたしの方に手を向かって来た。
リボンの形をした黒い髪飾りが印象的な大人の女性だった。
「ケガしてるじゃないか。速く避難所に入るぞ」
大人の女性はわたしの肩に手を掛けてわたしを支えて避難所に誘導して入って直ぐの所にあった椅子に座らせると「ここで待ってな。今、手当てをしてやるから」そう言って離れると直ぐに鞄を持って来ると、わたしの額の傷を手当てしてくれた。
周囲には避難して来た人が何人もいた。
消毒液が傷に染みて痛かったけれどわたしは我慢して耐えた。
「お譲ちゃん。どうしてこんな天気の中、1人でいたんだい?避難指示は出ていただろう?」
手当てが終わると大人の女性は気を使ってわたしに話し掛けているみたいだった。
わたしはどう言おうか悩んで直ぐに答えられ無かったけれど考えて答えた。
「あの・・・。わたし・・・。友達と避難していたらはぐれて・・・。それで・・・」
「そうか。でも・・・。体を大切にしなきゃ駄目だぞ。お譲ちゃんにも大切な人がいるだろう?お譲ちゃんが傷付いて悲しむ人だっている筈だろう。無茶をしたら駄目だ」
「はい。ごめんなさい・・・」
「あっ。泣くなよ。別に責めている訳じゃ無いんだからさ」
俯いたわたしの頭を大人の女性は撫でてくれた。
撫でられていてわたしは暖かさを感じられた。
もしかしたらお母さんと言うのはこう言う事が自然と出来る人なのかなとわたしは思っていた。
「それじゃあ、人を呼んで来るから待ってろよ」
再度、わたしの頭を撫でて大人の女性はわたしをその場に残して避難所の奥に向かった。
きっと市の役員か何かを呼んでくるのかも知れなかった。
どうしたら良いのだろう?わたしはマミさんと暁美さんを探して見滝原市に来たけれどこのままでは探せそうも無かった。
ここから黙って立ち去るのは助けてくれた大人の女性にも悪いし・・・。
「どうすれば良いんだろう?わたしどうしたら良いんだろう?」
わたしはそう呟きながら避難所の窓から外を見ていた。
黒い雲に覆われ風が物凄い勢いで流れているのが分かる。
その時だった。黒い雲に覆われた空が一瞬にして晴れ渡ったのです。
「何?」
晴れ渡った空の中心から無数のピンク色の光が出たのをわたしは
朱奈(しゅな)の章 完
文が途中で切れていますが意図的に文を切っています。
これにて朱奈の章は完結です。
最終回の描写からこの作品の時間軸が鹿目まどかがアルティメットまどかとなった時間軸と言う事が明らかになります。
次回の更新からは遂に主人公である筒地綾女の物語が始まります。
朱奈の章より約3年前から物語の発端が明らかとなります。
では次回をお楽しみに!