偽書魔法少女アヤメ☆マギカ PSEUDEPIGRAPH PUELLA MAGI AYAME MGICA 作:ジャックノルテ
「まずは順を追って話そうか。
僕たちの事を語ると僕たちはこの地球上の生物じゃあ無い。
君たちの言葉で言う地球外生命体と言う生物だね。
本来の名前はキュウべえじゃ無くてインキュベーターと言うんだ。
どうして地球にやって来たのかは、詳しく話すには君たちの概念が未熟だからある程度、噛み砕いて話すけど僕たちは宇宙の寿命を延ばす為に活動しているんだよ。
××××、君はエントロピーと言う言葉を知っているかい?
知らないか。じゃあ説明するよ。
水が蒸発すれば酸素が出来るのは知っているね?
でも水を蒸発させて酸素になる過程でそのエネルギーには必ずロスが生じるんだ。
水と酸素じゃ天秤が釣り合わないと言う事なんだ。
そしてこの法則は宇宙全体に置いても当てはまってしまう。
宇宙全体のエネルギーが減って行く一方なんだ。
宇宙全体の為に僕たちインキュベーターは熱力学に縛られないエネルギーを捜し求めてこの宇宙を出来るだけ探索したんだけど、その過程で見つけたのが君たち地球人類だ。
君たち人類を発見した時は驚いたよ。
僕たちの世界では極めて稀な精神疾患でしか無い筈の感情を種族全体が持ち合わせていたんだからね。
そんな種族が存在するなんて僕たちも思わなかったけどね。
ああ。ちなみに僕たちは感情を持ち合わせていないんだ。
感情がある様に見えるかも知れないけれど僕たちには感情は無いんだ。
僕たちは人類の事を長い時間を掛けて調査した結果、第二次成長期の少女の感情こそがエントロピーを覆すエネルギーとなると結論を下した。
契約と言う形で第二次成長期の少女を願いから生じる奇跡と引き換えに《魔法少女》へと契約させる。
《魔法少女》が抱いた希望が絶望へと変わった時、《魔法少女》の魂であり魔力の源であるソウルジェムはグリーフシードへと変換される。
変換時に出るエネルギーを回収するのが僕たちインキュベーターの役割だ。
つまりこれはこの宇宙の為である行動なんだよ」
私の部屋でキュウべえは長い話を終えました。
あの後、私とキュウべえは自宅に戻ると私の部屋でキュウべえの話を聞いていた。
幸い自宅には誰もいなかったので私はキュウべえの話を集中して聞く事が出来た。
けれどその話は私の想像を越えて物凄く壮大であり直ぐには理解が出来そうも無かった。
(まるでハリウッドの大作SF映画の様な話)
と言うのが私の正直な感想だった。
「××××。君は全てを見てしまったから僕もここまで話したんだ。隠す必要が無くなったからね。でも君が《魔法少女》になる道を選ばなくても僕は驚かないよ。今まで同じ事を知って《魔法少女》になる事を拒絶した少女は他にもいるからね。君はどうするんだい?」
「そうね・・・」
キュウべえの言葉に私はすぐに答える事が出来ませんでしたが、1つだけハッキリとしていた。
《魔法少女》はいずれ《魔女》と言う怪物へと変わってしまう。
「《魔女》になったらそれは死ぬと言う事なの?」
「君たちの概念で言えばそうなると思うよ」
私の机の上でキュウべえは尻尾を揺らしながらそう答えた。
死・・・。
それは人が避けられない絶対的な物。逃れられない終わり・・・。
人間、と言うよりは全ての命はどんな形であれ死ぬ。
考えると《魔女》になるのもある意味では死と変わらないと感じた。
この先にも《生きている事の幸せ》を見出せないならキュウべえと契約して《生きている事の幸せ》を奇跡によって掴み取った方が良いかも知れない・・・。
けれどそこまで考えて私は自問してみる。
(私の願う幸せって?)
今までの人生で私に足りなかった物は何だろう?
いつも私は1人だった。
私には真の意味での友達がいない。周囲に合わせた上辺だけの付き合いはしていたが・・・。
他の人間は上辺だけで人を判断し誰も彼も私の事を理解してくれるとは思えなかった。
昔、大勢の人間が正しいとを言っている事を違うと言っただけで非難を受けた。
誰もが私を非難した。
みんな、私が間違っていると言っていた。理解出来なかった。
以降、私は周囲に合わせて従順に振舞う事を学んだ。
(誰も私の本当の心を分からないのなら誰にも伝える必要が無い)
他者と付き合う上で私が学んだ事だった。
思い返して見ると私は両親からも愛されていると思えなかった。
両親は成績の良い兄に夢中であり兄の学費の為に遅くまで仕事をしていた。
学費を賄う為に私は高校を近場で安い場所に選択する様に求められてその通りにした。
正直、高校は何処でも良かったが・・・。
こうやって考えると私は誰からも愛されていない様に思えた。
私は愛されていない・・・。誰も私を愛してくれない。
人が人生において手にすると思われる愛を知らない。
じゃあ私は何の為に生きているの!?
愛を知る為に生きているんじゃないの!?
私は愛を与えたい!与えられたい!
「××××。どうしたんだい?顔が・・・」
キュウべえは私の表情を言いよどんでいた。
感情の無いインキュベーター=キュウべえには私の表情の変化が旨く読み取れない様だった。
きっと私は少し怖い顔をしていたのかも知れなかった。
どうしたら良いのだろう・・・。
私は・・・。
その時、頭に1つの考えが浮かんだ。
愛を与えたいのなら与える為の対象が必要・・・。
そう。それならキュウべえが起こしてくれる奇跡で《私を愛する人》を作り出してしまえば良いじゃない。
そうすれば私は愛を与え、愛を感じる事が出来る。
素晴らしい思い付きだと私は感じていた。
「××××。どうしたんだい?何か面白い事でもあったのかい?」
キュウべえの言葉から私は自分が笑っている事に気が付いた。
確かに私は自分の考えに笑みを浮かべていた。
どうせいずれは死に至る人生なら奇跡でも起こして好きに生きて死んだ方がよっぽど良いじゃない!
《魔法少女》となる決意を私は固めていた・・・。
私は私を愛する存在を奇跡によって作り出そうととしていた。
それは一種の禁忌かも知れなかったが私には関係が無かった。
どんな禁忌を犯そうと私は私を愛する存在を作り出す事に迷いは無かった。
「キュウべえ。私・・・。《魔法少女》になるわ・・・」
キュウべえの頭を左手で撫でながら私は初めて人生に迷いを感じなかった。
人生の楽しみを初めて見つけたのだと私は思っていた。