偽書魔法少女アヤメ☆マギカ PSEUDEPIGRAPH PUELLA MAGI AYAME MGICA   作:ジャックノルテ

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【挿絵表示】

試験的に個人的なイメージの作中地理のイメージを掲載しました。


第4話 目障りなのよ

「ふふ。また動いたわ。この子はきっと外に出たがっているのね」

 晴れ渡る空の下で私の声に同調するかの様に光り輝く球の中で《私が生み出した少女》はその身体を動かした。

 と言ってもただ無意識に手足や身体を僅かに動かしただけである。

 その身体は数時間が過ぎただけで私が見た所、2歳から3歳には成長していた。

 たった数時間であり得ない成長速度である。

 ただ手足を動かしただけであるが既に私はこの子に愛情を抱いていた。

 契約と言う奇跡によって条件付けられていたとは言え、この子に愛情を抱けるかどうか私は自信が抱けずにいた。けれど私は既にこの子の一挙一動に夢中となっていた。

 これが愛なのかも知れなかった。相手の一挙一動に自分への喜びを抱ける。

 私は今、愛を感じているのかも知れなった。キュウたんが奇跡と言う名の約束を守ってくれている事を証明していた。

「そうだね。これは人間の胎児が抱く反応その物だね」

 キュウたんの反応は私の予想通りだったが私はあえて突っ込まなかった。

 と言うよりも胎児の反応を知っていると言う事は人間の身体を除き見る事が出来るのだろうか?

 恐らくそうなのだろう。ここまで的確に言い当てているのだから。

 正直、今までキュウたんと過ごしてこう言った反応を示す事にも私は慣れていた。

「綾女。聞いてもいいかな?」

「良いわよ」

 質問を投げ掛けて来たキュウたんに対して私は了承した事を伝えた。

 私にはキュウたんが自分に理解出来ない事を質問して来るのは普通の事とも言えた。

「君は子供が欲しかったのかい?それとも母親になりたかったのかい?」

 キュウたんの質問に思わず私は苦笑した。

「ふふっ。どうしてそうなるのよ?」

「君はこの女の子を奇跡で生み出した。ただ僕にはそう言った感情的な考えが上手く理解出来ないんだ。だから質問してみたけどどうなのかな?答えられないのなら無理に答える必要は無いよ」

 少し考えて私はキュウたんに答えました。

「そうねえ。子供が欲しかった訳でも無いし母親になりたかった訳でも無いわ。私は残りの《魔法少女》としての人生を共に過ごす伴侶が欲しかったのよ」

 私の言葉にキュウたんは更に首を傾げていた。

「けど大抵の場合は異性の伴侶を求めるんじゃ無いのかな?何故、年下の少女なんだい?」

 正直、ここからは余り他人には話したくない話題でもあった。

 けれど人間では無いキュウたんなら話しても良いかも知れない。

「キュウたん。ここから話す事は誰にも話せないと誓える?」

「誓えるよ。綾女が秘密にしたいなら僕は誰にも話さないよ」

 暫しの沈黙の後、意を決した私は言葉を紡いだ・・・。

「それはね・・・。私が異性を愛せないからよ。キュウたんにはまだ話して無かったけど私は昔、男性の変質者に襲われた事があるの。手を掴まれて車に連れ込まれそうになったけれど、その時は警察の人が私を直ぐに助けてくれたけど・・・。それ以来、私は異性を恋愛対象として見る事が出来なくなったのよ。勿論、異性の人にも立派な尊敬に値する人がいるのは分かっているわ。けれど私はもう異性を愛せないのよ」

 私の告白にキュウたんは黙って耳を傾けていた。

「私がこの子を作り出したのはそう言う事よ」

 そう言いながら私は自分の愛する女の子に関して思いを巡らせた。

 この子が10歳で誕生するのには訳がある。

 家を出て行く前にも私も一応、上辺だけの付き合いをしている同性の友達がいた。

 ある時、誘われて友達の家に遊びに行くと友達は赤ちゃんを見せてくれた。

 自分の弟だと言っており私にも抱かせてくれた。

 でも正直な話、友達のお母さんが赤ちゃんをあやす様子等を見ていて私は赤ちゃんを育てられないと感じさせられた。あやしたりオムツを替えたりミルクを飲ませたりと手間が多過ぎて耐えられないと感じていた。

 次に私は別の友達とそのお姉さんと買い物に付き合った事があった。

 そのお姉さんは私よりも三つ年上だったけれど会話をしていて正直、両親や兄さんと同じ様に私には味気無い会話としか感じられ無かった。

 また更に別な友達とお祭りに行った時、友達は10歳の妹を連れて来ていた。顔や仕草は私の好みでは無かったけれどお姉さんを慕う様子だけ私は好感を得ていた。

 正直、それから私は気が付いたら自分に10歳位の私を慕う妹がいたらと言う空想を抱く様になっていた。時を経て空想の妹は百合や同性愛を知ってから年下の少女に移り変わっていたけれど・・・。

「私は自分よりも年上や同年代の女性よりも自分より年下の少女が欲しかったからじゃないかしら。それなら私が姉の様にも振舞えると言うのもあったかも知れないわね」

 自分の考えを纏めると私はキュウたんに伝えた。

 実際の生活においても私は家族の中で一番、年下であり親しい後輩等もいない私はお姉さんと言うシチュエーションに憧れていた。

「ふーん。じゃあ君は妹が欲しかったのかい?」

「まあそうとも言えるわね。私には妹や弟がいなかったし親しい後輩もいないからね。でも朱奈は妹では無いわ。私の愛する人生の伴侶よ」

「そう言う考え方もあるんだね」

 キュウたんは私の考えが理解は出来ないようだった。

 それでも良いと私は思う。

 本当の意味で他者を理解出来る人間なんていないのだから・・・。

「そう言えば私と同じ様な願いをした魔法少女はいないの?」

 この子を生み出してから思った疑問でもあった。

 何でも願いが叶うのなら私と同じ事を願う《魔法少女》がいてもおかしくは無い筈である。

「そうだね。詳細は話せないけど確かに同じ様な願いをした《魔法少女》は過去にもいたよ。ただ綾女の様に細かい願いでは無かったけどね」

 感情を持たない癖に皮肉めいた調子でキュウたんはそう答えました。

「そうだったわね。キュウちゃんは中立的な情報の提供をする事は出来ても他の《魔法少女》がどういった願いをしたのかは言えないんだったわね」

「そうだよ。僕たちは一応、君たちの概念で言うプライバシーをそれなりに尊重しているからね」

 キュウたんの言葉に私は納得しなかったけど他の《魔法少女》の願いを聞くつもりは無かった。

 聞いた所で私にプラスになるとは思えなかった。

「さて・・・。じゃあキュウたん。私の魔法を見て貰っても良い?」

 瞬時に左手の中指に装着されているソウルジェムの指輪を宝石型に変化させると私は《魔法少女》としての姿に変身した。

 全身の右側を青に、左側を赤に染めて左右非対称な服装を身に纏った私の《魔法少女》としての姿。

 そう言えば顔がどう変化したのかを見ていない為、鞄から手鏡を取り出すと顔がどう変化したのかを見てみる。

「へー。瞳の色が赤と青に。髪の毛だけじゃ無くて目まで変化するとは思わなかったわ」

「それは僕もだよ。正直、目の色や髪の色を変化させるなんて魔力の無駄使いとも言えるからね」

 キュウたんの言葉に思わず顔をしかめたのを私は自覚した。

「でも理想の姿で戦うと言う事で得られる精神的なモチベーションを考えれば無駄とは言えないけどね」

 今のキュウたんの言い方は感情が分からないなりに謝罪しているつもりらしい。

 私はそう受け取る事にして魔法がどう言った物か試す事にした。

 昨日は契約を行った後、直ぐに眠りに付いたので魔法を試す暇も無かった。

「そう言えば綾女。武器は無いのかい?」

「あら?無いわね」

「困ったね。これじゃあ魔女退治も難しいね」

「キュウたん。どうしたら良いの?」

 私はわざと困った反応を見せて《キュウたん》の事を試す事にした。

 もしここできちんとしたアドバイスを出来ない様なら当てには出来ない。

「じゃあまず魔力で武器を生成してみよう。武器が無い事には戦う事も難しいからね。綾女。何でも良いから好きな武器を想像して見て」

「武器・・・」

 そう言われて私の頭に浮かんだのは警棒や拳銃と言った日常の中で一番、目にし易いと思われる警察官の持つ武器だったが、そうした武器が魔女退治に役立つとは思えなかった。

 前に結界の中で見た《道化師の様な少女》はボールを武器にしていた。ボールに何か思い入れがあるのか単にボールが好きなのか・・・。

 私には分からなかったけれどヒントにはなった。

 つまり自分が使いたいと思う武器を生成すれば良いだけの事だった。

(そう言えば私が見ていた《魔法少女》のアニメでは箒を武器に戦う子がいたっけ・・・)

 思考がそこに及んだ時、私は自分も《魔法少女》である事を思い直した。

(なら・・・。私も箒を武器にしよう。頑丈で《魔女》を叩きのめせる様な箒を・・・)

「キュウたん。イメージが固まったわ。どうすれば良いの?」

「じゃあ手に魔力を集中してみよう。利き手の掌に集中して見て」

 そう言われて私は素直に利き手である左手に意識を集中した。

 何かの流れが左手の掌に流れて行くのが分かる。

「そうだよ。それが魔力の流れだ。その感覚を忘れないで。もっと強くイメージをしてみて!」

 キュウたんの言葉を受けて私は更にイメージを強める。

 ハッキリとした形が浮かんだ瞬間、赤と青の光と共に私の掌にはビー玉の様な輝く球体が握られていた。

「これが武器なの?変ね。私がイメージした形とは違うわ」

「うーん。これはもしかしたら・・・。綾女。その球体を強く握ってみて」

 キュウたんに促されて素直に左手で握っていた球体を握り締めた、と同時に赤と青の閃光と同時に左手には箒が握られていた。

「これはどうなっているのかしら?」

「どうやら綾女の持つ魔法は《作り出す》と言う事に特化しているみたいだね。武器を言わば魔法の種として出現させて握る事で魔法を発動させるスイッチとする。出現させれば武器を精製する魔力が尽きない限りは綾女自信の魔力が無くなっても消える事が無い。これは魔力で精製された武器としては優秀だと思うよ。魔力によって具現化された武器は精神状態によって強度や威力が変わったりするけれど、綾女の魔法ならそんな事が無いから安心して使えるよ」

 キュウたんは私の魔法をそう説明していた。

 つまり私の武器である箒は一定の強度と威力を持った安全な武器と言う事らしい。

「出来るなら予行演習がしたいわね。近くに《使い魔》か《魔女》はいないのかしら?」

「うーん。生憎、近くには《使い魔》も《魔女》もいないね。探しに出た方が見つかるんじゃ無いかな?」

 そう言われて私は少し思案した。

 目の前で光る玉に包まれているこの子をこのままにして離れるのは正直、嫌だったが戦うと言う行為の予行演習も行いたかった。

 人間同士の喧嘩でさえ私はめったにした事が無かった。

 そう言えば前に1度、同級生と掴み合いの喧嘩になり思いっきり相手の顔を叩いた事がある。

 軽く叩いたつもりだったが相手よりも背の高い私が振り下ろした手は相手を倒れさせてケガをさせてしまった。

 その後、両親や教師に叱られるのが億劫だったので、以降は極力、暴力を振るわない様にしていた。

 要はお説教を聞くのが面倒くさかっただけだ。

「ねえ。キュウたん。私は《使い魔》と《魔女》を探しに出て見るからこの子を見ていて貰っても良い?」

「良いけど僕からのアドバイス無しで戦えるのかい?」

「やってみるわ。何事も初めてが肝心よ。頼むわね」

 そう言って私は《魔法少女》としての姿を解くと黒いコートを羽織ってビニールシートの壁を抜けて林に出た。

 暫く歩いて壁となっている藪を抜けると遊歩道に出た。

 幸い、人はいないので誰にも見つからずに森を抜ける事が出来た。

 キュウたんに教わった様にソウルジェムを出現させると左手で握り締め魔力を探って見た。

 特に反応は無い。

 とりあえず私は林の周りの道路を歩いて見る事にした。30分ほど歩いたけれどソウルジェムに反応は無かった。

「これ以上、ここから離れる訳には行かないわね」

 テントに引き返そうかと思い至った私が来た道を戻ろうとした時、不意に後ろからクラクションの音が響くとトラックが走って来た。

 私が道を空けるとトラックは私の前を走って行き荷台に乗っていた荷物が目に入った。

 余り良いとも言えない私の目にも明らかな廃棄物が積まれていた。

 そう言えばこの山林地帯には不法投棄が多いと聞いていた。

 この先にも不法投棄が良く行われている場所がある。

「もしかして」

 呟くと同時に私は走り出した。

 体が軽い。

《魔法少女》となって体と魂の繋がりが変わった為か前よりも速く走れた。

 いつもより速く走った私の目の前ではついさっき私とすれ違ったトラックに乗り込んでいた2人の男が不法投棄をしていた。

 正直、2人の男が何をしようと私は関心が無かった。

 けれど私とあの子が暫く過ごす山林地帯を汚している事だけは許せなかった。

 私はわざと足音を高くしてトラックに近付いて行く。

 不法投棄をしていた2人の男は私の事に気が付いた様だった。

「何見てんだ!向こうに行ってろ!」

 男の1人は威圧的な声で私にそう言って来た。

 今までの私ならトラブルを避ける為にそのまま立ち去ったかも知れない。

 けれど今の私は《魔法少女》。

 目の前にいる2人の男よりも遥かに強い力を持っているのは明白だった。

「目障りなのよ。目の前で不法投棄をされると」

 聞こえる様に大きな声でそう言って男達との距離を詰めて行く。

「ガキ!何言ってんだ?痛い目を見る前に消えろ!」

 男の1人が威圧的に拳を握り振り上げていた。

 1度、私が立ち止まると男達の表情に油断の様な色が見えた。

 同時に駆け出した私は近くにいた男の顔を狙って思いっきり硬く握り締めた左の拳で殴った。

 何か硬い物が割れる音がしたが気にする事無くもう1人の男に注意を向ける。

「ぎゃあああああ」

 悲鳴を上げて顔から血を流した男が倒れ込む。

「何しやがる!」

 もう1人の男が持っていた鉄パイプの様な物を私に向けて来た。

 威圧しているつもりらしいがそれを無視して近寄ってみる。

「来るな!」

 もう1人の男は叫んでめちゃめちゃに鉄パイプを振り回した。

 私は鉄パイプの動きを良く見た。

 その軌道が見えたと同時に右手で鉄パイプを掴んで動きを封じるとそのままもう1人の男と距離を詰めて腹を狙って思いっきり膝蹴りを行った。

 また硬い物と、今度は柔らかい物が砕けた音がした。

「っああああああ」

 もう1人の男はそのまま腹を押さえて倒れた。

「二度とここに来ないで」

 そう言い捨てると私はその場から離れた。

 暫くは2人の男が苦しむ声が聞こえたけれがどうでも良かった。

 殺しても良かったがここでの殺しは避けたかった。この山林地帯で殺しを行ってしまうと私が隠れている場所に人が来る危険性が増す事に私は気付いていた。

 その足で私は自分のテントに戻った。

「おかえり。綾女。収穫はあったのかい?」

 キュウたんはあの子から私に視線を移しながらそう言って来た。

 聞きながら私は苦笑する。

 知っているくせに聞いてくるなんて・・・。

「どうせ見てたんでしょ?まあ収穫はあったわね。暴力を奮う事にもう躊躇いは無いわ」

「そうなんだ。確かにそれはこれからの戦いに必要だね」

「ええ。これから《魔女》や《使い魔》と戦うのなら戦う事を躊躇っていられないわ」

 暴力を奮う事への躊躇いが私の中から消えて行った。

 それが増長とか傲慢とか言うのかも知れないけれど私は自分の暴力を肯定していた。

 

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