偽書魔法少女アヤメ☆マギカ PSEUDEPIGRAPH PUELLA MAGI AYAME MGICA 作:ジャックノルテ
あれから一日が経過した。
キュウたんからの報告で朱奈は警察に保護されて事情聴取を受けた後に近くにある施設に送られた事が分かっていた。
迎えには行きたかったが今の私ではその資格が無い事も強く感じていた。
《魔女》や《使い魔》に対して遅れを取らない《魔法少女》としての力を私は求めていた。
だから私はこの周辺を自主的にパトロールして《魔女》や《使い魔》を探していた。
そして今日、《使い魔》を見つけ退治した。
朱奈に会いたいと願う強い意志が昨日よりも私を強くしていた。
「まだまだ。もっと強くならなきゃ・・・」
呟きながら私はテントへと戻って行った。
夕闇が周辺に立ち込めていたが魔力で強化された目ならば問題無く歩く事が出来た。
「おかえり。綾女」
テントの前にはキュウたんが待っていた。
「キュウたん。ちょうど良いわ。少し話したい事があったのよ」
「なんだい?」
私と一緒にテントに入り込んだキュウたんに私はこの前から気になっている事を話す事にした。朱奈の事は気掛かりだけども焦っても仕方が無い。
「実は・・・。私、キュウたんと初めて結界に入った時から変な感じがするのよ」
「どんな感じだい?」
腰を降ろした私と向かい合う様に座ったキュウたんに私は慎重に言葉を選んで伝えた。
「そうね・・・。何と言えば良いのかしら?キュウたんと会う前にも見た様な・・・。そうね。懐かしさの様な物を感じるのよ」
「懐かしさか・・・。もしかしたら綾女は僕と会う前にも結界に入っていたのかも知れないね。良ければ調べてみるけど良いかい?」
キュウたんの瞳が私を覗き込む様にした時、私はその言葉に引っ掛かりを感じた。
「調べるってどうやって調べるの?」
「簡単な事だよ。綾女の魂をソウルジェムに変化させた時点で綾女に関する全ての記憶を僕は持っている。だから綾女の記憶を調べ直せば分かる事だよ」
「そう言えばそうだったわね。じゃあお願いするわ」
分かっていたけれども少し不快感を感じたのはこの際、脇に置いといてキュウたんに先を促した。キュウたんの瞳が持つ赤い輝きが増して行く。
「分かったよ。これは綾女の記憶だから言葉で説明するよりもテレパシーによる映像を見た方が速いと思うけど良いかい?」
どうやらキュウたんはテレパシーによる映像で見せてくれるらしい。
「良いわ。見せてみて。興味があるわ」
「じゃあ行くよ」
キュウたんの瞳から輝きが増すと私の視界にある風景が歪んで行った。
気付くと私は道を歩いていた。
誰かに手を引かれて歩いていて視線も低くて違和感を覚えた。
その時、手を引いている人の顔が見えた。
私の母だった。
どうやら小さい頃の私の記憶だと言うのは分かった。
けれど見覚えが余り無いのは自分では殆ど覚えていない領域の記憶なのだろう。
暫くすると私と母は少し大きな公園に辿り着いた。
既に公園には母親と同じ家族連れが着ていた。母親が他の主婦達と井戸端会議を始めるのを見て過去の幼い私も周りにいる子供と一緒に遊び始めていた。
同年代の子供とボール遊びをしているとボールが植え込みに転がって行ったのが見えた。
幼い私はボールを追い駆けて行った。
小さな私の身体は植え込みの下をすり抜けてボールの元に辿り着いた。
幼い私がボールを拾った時、周囲の風景が歪んだ。
結界だと今の私は直感していた。
けれど過去の幼い私は戸惑いおろおろとしているのが映像からも分かった。
人が持つ恐怖感を煽る様な暗い空間で私は立ち往生をしていた。
ふと目の前に何かが飛んで来ていた。白くて大きな口を開いたお化けの様な怪物が私に向かって飛んで来ていたのが見えた。
幼い私は固まってしまったのか動けずにいる。
《魔女》か《使い魔》かは判別出来なかったが大きな口にある鋭い牙が幼い私に向けられようとしていた。
その時、幼い私の前に何かが降り立つとお化けの様な怪物を両断した。
悲鳴を上げて消滅するお化けの様な怪物から私を守る様に降り立った何かはその身を盾としていた。
「もう大丈夫だよ」
呆然としていると思われる幼い私の視界一杯に1人の少女が優しい笑みを浮かべていた。
俗に言う緑色をしたメイド服の様な服装をして三つ編みの髪型をした目の前の少女が《魔法少女》だと私は直感していた。桜の花と思しき装飾の施されたポールアックスを持っておりこれが先程のお化けの様な怪物を倒した武器なのは明白だった。
「だあれ?」
「私の事は良いの。ねえ。あなたは今、悪い夢を見ていたの。でも悪い夢はお姉さんが終わらせてあげたから、帰らなきゃ駄目だよ」
幼い私の質問に《メイド服の魔法少女》は答えずに私の頭を撫でてあやしていた。
すると周囲の結界は崩れて幼い私と《メイド服の魔法少女》は公園内の林に立っていた。
「おきてるのにゆめをみるの?」
「そうだよ。起きている時にも夢を見る事もあるの・・・。さあ。きっと家族が心配しているから帰らなきゃ駄目だよ」
《メイド服の魔法少女》は1つの方向を指差す。
「ここを真っ直ぐ行けば戻れるから・・・」
優しい笑みを浮かべ《メイド服の魔法少女》は《魔法少女》としての姿を解くと何処かの学校セーラー服姿となり私を見下ろす。
「うん。こっちにいけばいいの?」
「そうだよ。それで夢は終わるから」
幼い私は《メイド服の魔法少女》に促された方向に向かって歩き出した。
途中、何度も振り返りながら歩いていた。
《メイド服の魔法少女》は私に向かって手を振っていた。
私が母親の元に戻って振り返るとその場所にはもう《メイド服の魔法少女》はいなくなっていた。
「そう言う事だったのね。キュウたん。もう良いわ」
私がそう言うと同時にテレパシーによる映像は終わり視界が元のテント内に戻った。
「これは大体、何年前の記憶なのかしら?」
「そうだね。綾女が3歳位の記憶だよ。深層心理に刻まれた物だから覚えてないのも無理は無いよ」
「そうね・・・。今まで全然、思い出せなかったわ。彼女は誰なの?」
「彼女は椎名レミ。君と同じ《魔法少女》さ。今からちょうど12年前に活動をしていたんだ。勿論、もう生きてはいないけどね」
「そう」
キュウたんの言葉はある種の予想通りでもあった。
確かに私が3歳位の時に《魔法少女》となっていたのなら今頃はもう死んでいるか魔女化しているかのどちらかだろう。
「案外、知らない所で私も助けられていたのね」
苦笑をしながら私はキュウたんの方を見て呟いた。
「そうだね。でも大抵の人間は《魔法少女》に命を助けられても忘れてしまうか夢だと思うかの二択だね。《魔法少女》の戦いを現実と受け入れられるのは《魔法少女》と関わりを持った一部の人間だけだよ」
キュウたんの言葉は重く私の胸に響いていた。
「孤独と言う事ね」
「まあそう言う事だね」
キュウたんの返答を聞きながらもけれど私は違うと思っていた。私には朱奈がいる。
《呪い》を持った朱奈ならば私の戦いを現実と受け止めてくれるだろう。
私は孤独では無いと思いたかったのかも知れない。
今は孤独かも知れないけれど、私はいずれ朱奈を迎え1人では無くなる。
だから私は孤独では無い。
椎名レミは魔法少女かずみ☆マギカの4巻に登場するキャラクターです。
年数計算をすると12年前ならば彼女はまだ魔法少女として戦っていたので綾女と出会っていてもおかしくありません。