偽書魔法少女アヤメ☆マギカ PSEUDEPIGRAPH PUELLA MAGI AYAME MGICA 作:ジャックノルテ
あれから数週間・・・。
私は朱奈と様々な街を渡り歩いていた。
同じ街には一週間以上、滞在しない様にしてトラブルを避ける様にしていた。
余り1つの場所に滞在を続ければその街を縄張りとする《魔法少女》に見つかる恐れがあった。
1度、朱奈が眠りに付いている間に魔女退治を行っていると、その街を縄張りとする《魔法少女》と遭遇した事があった
「何者でしょう?ここは《こちら》の縄張り。そのグリーフシードを渡す訳には行きません!」
武器であろう杖を私に向けて来た《杖の少女》が私に向かって宣言したのを聞きながら、頭の中で私は既に対策を定めていた。
正直、こんな少女を相手に戦う気にはなれなかった。
「このグリーフシード。譲るから見逃してくれない?」
言うと同時に私は《杖の少女》にグリーフシードを投げ付けた。
驚いた《杖の少女》だったが右手でグリーフシードを受け止めた。
「何を!?」
「明日にはこの街を出て行くわ。それで良いでしょう?」
一方的にそう語ると私は夜の公園を後にした。
次の日に私と朱奈がこの街を出て行くまで背後から視線を感じたけれど無視した。
街を出て行くと私への視線は途切れたので、どうやら約束は守られたらしかった。
殆どの《魔法少女》はグリーフシードを目当てに戦っている。
グリーフシードは《魔法少女》にとっては最も優先して手に入れなければならない。
ソウルジェムが穢れてしまえば《魔法少女》は魔法を使う事も出来なくなってしまう。
ならば、もし《他の魔法少女》と遭遇下としても、グリーフシードを譲れば殆どのトラブルは解決出来ると見て問題は無いと考えられた。
「綾女ちゃん。あれを見て!」
朱奈の声を聞いて私は考え事を止めて朱奈の見ている方向に視線を合わせた。
そこには大きな観覧車のある遊園地が見えて横に通り過ぎて行く。
「遊園地ね。次の駅が最寄りの駅みたいだし・・・。次の駅で降りましょう」
「うん!」
朱奈が笑顔で返事をしたのを見て私達は降り支度を始めた。
私と朱奈は今、特急列車に乗って旅を続けていた。
気の向いた駅で降りて暫く過ごすとまた新しい街へと移動する。
既に何度も繰り返している移動の方も常に変わった景色が楽しめると思うと期待を抱く事が出来た。
遊園地の最寄り駅で降りた私は朱奈と一緒に駅にある案内板を見て今夜の宿を探す事にした。
幸いこの駅の周りには3ヶ所のホテルがあったので直ぐ近くにある公衆電話から予約の電話を入れてみると直ぐに予約が取れた。
旅を続けていてホテルに宿泊する際には事前の連絡をした方が泊まり易い事を覚えた私はなるべく事前に連絡を行ってからホテルに向かう様にしていた。
「朱奈。3時間程、時間が余ったから遊園地に行って見ましょうか?」
「本当!?本当に良いの?綾女ちゃん!」
「ええ。良いに決まっているじゃない」
幸い今日は休日なので私と朱奈が真昼間から出歩いていても問題は無かった。
朱奈と手を繋いで私は遊園地へと向かった。
「綾女ちゃん」
「どうしたの?朱奈」
歩きながら朱奈が話し掛けて来たが少し恥ずかしそうに俯いている。
きっと手を繋ぐのが恥ずかしいと言いたいのかも知れなかった。
でも私には離すつもりは無い。
だから朱奈が繋いだ手の事を伝えて来たとしてもはぐらかそう。
「その・・・。手を繋ぐの・・・。恥ずかしいの・・・」
「そう?私は朱奈と手を繋ぐのは嬉しいわ。だって大切な人の温もりを感じられるのよ。とても良い事じゃない」
朱奈は私の言葉を聞いてハッとした表情を見せた。
「だからね・・・。恥ずかしがる事は無いのよ」
笑顔を作って私は伝えて見た。
「うん」
朱奈が小さく頷いた時、遊園地の入り口が見えて来た。
チケットを2枚購入して私達は遊園地に入園した。
多数の人々が行き交い楽しげな雰囲気に満ちたこの場所で朱奈も目を輝かせていた。
「ねえ。朱奈。どの乗り物に乗りたい?」
「えーと」
朱奈は少し考える仕草を見せると観覧車を指差した。
「わたし・・・。電車に乗った時に見た観覧車に乗りたい!」
「良いわよ。朱奈。2人で乗ってみましょうか」
「ありがとう。綾女ちゃん」
朱奈の手を引いて私は観覧車へと歩を進める。
途中で一緒に歩く朱奈が私との歩幅の違いから少し駆け足になっていたのでペースを落とした。
朱奈と2人で歩く時、私の普段の歩幅は大き過ぎる。
なるべく歩幅を小さくしなければならない。
列が出来ていたけど30分程で観覧車に乗る事が出来た。
「うわー。凄く高い」
高さが増すにつれてはしゃぐ朱奈を見て私はここに来て良かったと思った。
日が中天に昇る時間帯であり周りの景色が良く見えていた。
「あっ。綾女ちゃんあれを見て!」
朱奈に促されて朱奈の指差す方向を見つめるとそこにはくっきりと高い山が見えた。
(あそこには何があるのだろう?)
素直な疑問を私は抱いていた。
「綺麗な景色ね」
「うん。わたし、こんなの始めて見た!凄く綺麗!」
朱奈の言葉を聞いて思い浮かんだ。
記憶の無い朱奈にはこの世界のあらゆる事が《初めて知る事》になるのだろう。
だからこそ私は朱奈に色々な事を体験させたいと思った。
色々な事を経験して朱奈はきっとより良い生き方を見出せるのかも知れないのだから。
○
宿泊予約をした時間に私と朱奈ははホテルの入り口である自動ドアを潜った。
ロビーのソファーに朱奈を座らせると私は1人で受付に向かった。
これから行う事はなるべく朱奈には見せたくない。
「すみません。一週間程、泊まりたいんですが?」
私はなるべく相手に警戒心を抱かせない様に微笑を浮かべて受付の人に話し掛けた。
「はい。部屋は開いておりますが・・・。すみませんがお客様は未成年でいらっしゃいますよね?保護者の方はいらっしゃいますか?もしくは身分証を」
受付の人は当然の反応を返して来た。
幾ら背が高くても成人している様には見えないのだろう。
手っ取り早く解決をする為に左手に魔力を集中する。
「私の言うとおりに泊まらせてくれれば良いのよ」
告げると同時に左手から《魔法の種》を精製して受付に投げ付けた。
《魔法の種》の種類は命令(アポイント)。
一瞬だけ受付の人はふら付いたが直ぐに姿勢を正すと手続きに入った。
「かしこまりました。宿泊する期間は一週間でよろしいのですね?お部屋の方はどういった部屋を?」
大人しく受付の人は部屋のリストを私に示した。
「この部屋で良いわ」
一番安い2人部屋を選んで前金を支払い私はルームキーを受け取った。
「朱奈。行くわよ」
「はーい」
私と朱奈は手を繋ぐとエレベーターに乗って四階の部屋に向かった。
部屋に入ると私たちは荷物を降ろした。
「綾女ちゃん。このホテルにはどれ位、泊まるの?」
「そうね。一週間ほど泊まる事にするわ。しばらくはここで体を休めましょう。それに・・・」
「?」
違和感ある言葉の切り方をした私に朱奈は少し困惑を見せていた。
「また明日、遊園地に行って遊びましょうか。まだまだ乗ってない乗り物があるんだから」
「良いの?綾女ちゃん?」
「私だって朱奈と遊びたいんだから良いに決まっているじゃない」
そう言って私は朱奈の頭を撫でた。
撫で心地の良い頭でついつぎ撫でてまう。
普通の子供だったら子ども扱いされていると感じてしまうだろうが朱奈は私の愛情表現を素直に受け入れていた。
それがきっと朱奈が私に抱く愛だと私は感じていた。
○
深夜。朱奈が眠りに付くと私は1人でホテルを出た。
今夜は朱奈が《魔女》や《使い魔》を引き寄せる時では無い。
けれど私の思い描く実験には最適だと思えていた。
既にその為の魔法も準備してある。
路地裏に入って暫く歩いて周囲に人の気配を感じない事を確認すると私は声を出した。
「キュウたん。いるんでしょう?出てらっしゃい」
「やあ。綾女。久しぶりだね」
私の声に答えるかのようにキュウたんが目の前にある非常階段から飛び降りて私の肩に降りて来た。
降りて来た時に少し衝撃があるかと思ったが私の身体にはまったく衝撃が無かった。
(キュウたんには重量が無いの?)
ふとそうした疑問が浮かんだけれど頭から締め出した。
正直、キュウたんの重量問題はどうでも良かった。
これから私が行う実験の方が重要だ。
「さて・・・。前から話していた実験を今日は行うわ。《使い魔》の位置は?」
「うん。《使い魔》の位置はこの先300メートル程、行った先だけど本当にやるのかい?」
キュウたんは私に念を押す様に私の目を見て来た。
キュウたんですらここまでの反応を示すと言う事はこれから私が行おうとしている事の残酷さを象徴しているとも言えた。
これから行う事は恐らく人間として確実に間違った事でもあるのだから。
「ええ。やるわ。《使い魔》を捕縛して人間を食べさせてどれ位でグリーフシードを孕むのかを確かめる実験。これはやって見る価値があると思うわ」
「君は他人が犠牲となる事になんとも思わないのかい?」
「そうね・・・。少しは悪いと思うけど出来ると解った事はやっぱりやって見る責任があると思うのよ。だからやってみるわ」
決意を込めた私の眼差しを見たキュウたんは特に驚きを見せなかった。
感情の無いキュウたんが驚きを見せる筈も無かったが、少し面白くないと私は感じた。
「綾女。君は本当に変わっているね。じゃあ僕も観察させて貰うよ」
「構わないわ。私とキュウたんの仲だもの」
答えると同時に私は歩を進めた。
左手にソウルジェムを実体化させて《使い魔》の位置を正確に把握して見る。
キュウたんの言った通り大体、300メートル程、先に《使い魔》の反応を感知した。
「しかし綾女。君のソウルジェムは変わっているね。こんな風に2色に輝くソウルジェムを生み出したのは君位だよ」
珍しくキュウたんが私自身の事を話題に振って来た。
確かに私はあれから《他の魔法少女》と出会った事もあったが私と同じ様な二色に輝くソウルジェムを持った《魔法少女》とは遭遇した事が無かった。
ただその事には別な理由も存在する様に感じられたが・・・。
思いに答える様に私のソウルジェムの赤と青の輝きは増して行く。
「そうね。まるで私の心を表している見たいね。いいえ。これは私の魂その物、だからこそこれが私の真の姿なのね」
答えながら反射的に考えを次に進めて見る。
ソウルジェムは私の魂その物。
ならばこの2色に輝くソウルジェムこそが私そのモノなのだろう。
《使い魔》の結界の入り口周辺で左手にソウルジェムを掲げた。
その瞬間に私の姿は右側を赤に左側を青と言う左右非対称の衣装に身を包んだ《魔法少女》としての姿に変わった。
「さて・・・。じゃあ始めるわ」
宣言を決めると同時に左手に《魔法の種》を作り出す。
種類は箒(ブルーム)!
同時に左手には武器となる箒が現れ私は強く握り締めてその感触を確かめた。
いつも通りの強度を持った武器に安心感を抱いた時に肩に乗っていたキュウたんが声を掛けて来た。
「ねえ。綾女。どうして君の武器は箒なんだい?武器ならもっと強力な物もあるじゃないか?」
「確かに武器としてはイメージする物じゃ無い事は確かよね。でもね。わたしにとってはこれじゃないといけないのよ」
「何故なんだい?」
躊躇い無く質問を重ねるキュウたんに少し呆れながらも私は続きを話す事を選択した。
「それはね・・・。私が昔、見ていた魔法少女アニメに登場する好きなキャラクターが箒を武器にして戦っていたのよ」
その作品はコメディ色の強い魔法少女アニメだった事もあり箒が武器で何の問題も無かった。
最も武器と言うよりは道具として使っていたが。
「さて・・・。近くに何でも良いから人間はいないかしら?」
キュウたんに言うまでも無く呟き周囲の気配を探って見た。
すると近くに2人の人間の気配を感じ取る事が出来た。
早速、近くに移動して物陰から相手を見てみる。
いたのはガラの悪い2人の男だった。
「あれで良いわね」
呟きながらあんなガラの悪い男なら死んだ所で何の感情も抱かない。
誰も気にする事は無いと私は確信していた。
残酷な様だが生き物は全て弱肉強食。
強いモノが弱いモノの運命を蹂躙するのが摂理とも言える。
足音を響かせて躊躇う事無く自分の姿をガラの悪い2人の男の眼前に晒してみた。
2人の男は直ぐに私の姿に気が付くと同時にいぶかしんだ表情を見せた後に鼻の下を伸ばしたのが見えた。
「うん?お穣ちゃん。こんな所でコスプレかい?そんなら俺とデー」
《卑猥な目をした男》が話し終える前に私は前方に右手を翳し《魔法の種》を作り出し左に振った反動で投げ付けた。
《魔法の種》の種類は手裏剣×4!
その瞬間、上空に手裏剣が4本、出現したかと思うとそのままガラの悪い2人の男の両足を刻んだ。
「ギャアアアア!なっ何なんだこれ!?」
《いかつい容姿の男》がそう叫んだが私は無視した。
《卑猥な目をした男》と《いかつい容姿の男》が目の前で脚から血を流して倒れながら苦しみ悶えている。
(男が苦しむ様子ってつまらないわね)
それが私の素直な感想だった。
残忍な本性を表しているのかも知れなかった。
(《使い魔》に捕食させる前にもう少し魔法の実験材料にしようかしら?それが良いわね)
結論を出して思い付きのままに私は手近にいる《卑猥な目をした男》顔を右手で首を掴んで持ち上げた。
魔力で強化した肉体の筋力ならば人を1人、首から持ち上げる等、造作も無い事だった。
けれど魔法少女としての衣装に関する改善点も見つけた。
素手で触った醜い男の肉の感触が気持ち悪い。
次からは私の衣装に両手に薄手の手袋を追加しよう。
魔力で作った手袋ならば素手と触った感じは変わらない筈
思いを巡らして微笑むと同時に《卑猥な目をした男》に告げた。
「ありがとう」
「!?」
私の言葉に《卑猥な目をした男》が困惑したのが見えたが無視して左手で握っていた箒で《卑猥な目をした男》の胸に鋭く尖った穂先を刺した。
「アアアアアアアア!?」
耳障りだし心に不快感が生じたけれど無視する。
叫び暴れる《卑猥な目をした男》の顔を私は再度、力を込めた。
けれど両手と両足をじたばたさせ続ける。
「邪魔ね」
暴れる《卑猥な目をした男》の腕が邪魔だったので両腕と両足を私の箒の柄で力任せに叩いて潰しておいた。
ようやく《卑猥な目をした男》が大人しくなったので《いかつい容姿の男》が腕で身体を引きずっていたのが目に入り箒の穂先を三本撃った。
《いかつい容姿の男》の両手と腹に3本の穂先が突き刺さり呻き声を上げ身体を振るわせるだけだった。
「綾女。何をするつもりだい?」
それまで黙って私の肩に乗っていたキュウたんは質問を投げ掛けて来た。
「そうね。他者の傷を治す魔法の予行演習をして見るわ。この2人なら失敗しても構わないから良い練習材料になるでしょ」
「何故、そんな魔法が必要なんだい?」
「朱奈がケガをした時の為よ。私の身体は自分の魔力で再生出来るけれど朱奈はそうも行かないでしょ?」
「なるほど。良いと思うよ」
《卑猥な目をした男》と《いかつい容姿の男》には私とキュウたんの会話は私の声しか聞こえない為に意味の分からない独り言を言っていると思われたかも知れないが、そんな事はどうでも良かった。
《卑猥な目をした男》を地面に寝かせて自分の右手を相手の傷口に翳して見る。
(魔力を注ぎ込み、傷を治すイメージで)
すると傷口から血が少し噴き出してきた。
翳した右手にも血が飛んで来たが魔力を注いでいた為に血が付着する事無く弾かれた。
「失敗したみたいね」
「どうやらそうらしいね」
「でもまだチャンスがあるわね。他の部分で試せば良いだけの話なんだから」
キュウたんにそう語ると私は再度、相手の傷を治す事を試みた。
今度は直接、魔力を注ぐのでは無く右手に傷を治すイメージを注いだ《魔法の種》を作り出し《卑猥な目をした男》の傷口に差し込んでみた。
また血が吹き出て《卑猥な目をした男》が悲鳴をあげたが無視した。
「また失敗したのかしら?」
「いや。そうでも無いみたいだよ」
キュウたんの指摘した通りに《卑猥な目をした男》の胸にある傷は治り始めていた。
「どうやらさっきの悲鳴は急激に傷が治った事に対する悲鳴みたいだね」
「じゃあ旨く行ったと言う事ね。後は微調整だけね。それはまた試す事にして始めましょうか」
そう言って私は拘束の種=《アーレストシード》を右手に精製して軽く潰した。
同時に私の右手から魔法の縄が精製されると《卑猥な目をした男》と《いかつい容姿の男》を縛り上げてしまった。
そのまま2人の男を引きずって私は《使い魔》のいる方向に足を向けた
2人の男は暴れる気力を無くしたのかぐったりしていた。
そのまま《使い魔》の結界へと入り込むと間髪入れずに《使い魔》が襲い掛かって来た。
地面を蹴って飛び上がりながら《使い魔》を観察してみる。
何の生物かは分からないが一見すると骨の様な《使い魔》でサイズも余り大きくなくこれから行う実験の実験台としては理想的と思った。
瞬時に魔力を強引に背後に噴出して《使い魔》との距離を詰めると右手で握っていたロープを放して《使い魔》に向けてこの時の為に用意した《魔法の種》を生成して投げた。
「監獄の種(コフィンシード)!」
瞬間的に魔力で精製された監獄=牢が出現すると《使い魔》をそのまま閉じ込めると牢は私の腰位のサイズに縮小した。
監獄の種は精製すると同時に目の前にいる生物を閉じ込め、持ち運びがしやすいサイズに縮小する効果を持っている。
これらの効果は《魔女》や《使い魔》が精製する結界の魔力を解析して得られた物だった。
もっとも《魔法少女》はいずれ《魔女》になる事を考えれば根本的には同じとも言えたが・・・。
監獄の種から作られた牢の上部には中に餌を入れたりする為の小さな蓋がある。
その蓋に任意の物を近づければ中に入れる事が出来る。
先程、落とした《卑猥な目をした男》と《いかつい容姿の男》を振り返ると2人は地面に叩き付けられてもはや虫の息に見えた。
「もう死ぬのなら私に役立って貰うわよ」
1人ずつ右手で首を掴んで牢の上部に近づけて中に入れた。
直後に2人の男の悲鳴が聞こえた様な気がしたが無視して蓋を閉めた。
「見事だね。綾女。まさかこんな魔法を作っていたなんて思っても見なかったよ」
感情を持たないとしながらもキュウたんは私を褒めている様だった。
「そうね。でもこれは《使い魔》限定の魔法ね。《魔女》になったらきっとこの牢を破って来るわね」
私の作った牢は《使い魔》レベルの相手ならば閉じ込められるが強度と時間を両立させた結果として《魔女》を閉じ込める程の強度は無かった。
また《魔女》を閉じ込められ無いと言う事は《魔法少女》の閉じ込めもよほど魔力が弱ってなければ容易では無いだろう。
「じゃあ暫くこの《使い魔》に人間を食べさせて飼育して見ましょうか」
「うん。これは僕にとっても興味深い実験だよ。綾女」
「そうね。私にとってもね」
私とキュウたんはホテルへの帰路に着く事にした。
勿論、忘れずに牢を右手に抱えて。
綾女の回想に登場する《杖の少女》は朱奈の章に登場した人物と同一人物かは不明です。