偽書魔法少女アヤメ☆マギカ PSEUDEPIGRAPH PUELLA MAGI AYAME MGICA 作:ジャックノルテ
幕間1 こんな所にもあなたはいたのね
SIDE 暁美ほむら
(今回のズレは2週間。やっぱり私が時間を逆行して新たな時間軸に辿り着く日は、その時に残された魔力量によって数日程、ずれている・・・)
そんな事を考えながら私は雨夜の見滝原を歩いていた。
この時間軸に来て手始めに私は見滝原市の郊外にある在日米軍の駐屯地から多数の銃器を奪い取っていた。
魔力による攻撃手段を持たない私には銃器が必須の攻撃手段だったからだ。
(これで当面は大丈夫ね。そして私の知る限り3つの最大のイレギュラーには手を打った)
3つの最大のイレギュラーとは見滝原市と風見野市に存在する3人の《魔法少女》としての素質を持った少女達である。
私はこの内の2人とは敵対し1人とは共闘したが、3人が契約する事だけは私にとってはありがたく無い事だった。
幸い顔と名前は知っているので探すのにそう時間は掛からなかった。
《白い魔法少女》となる1人目は白女と言う、私でも知っている有名なお嬢様学校に通っており探すのは簡単だった。
夜中に白女に忍び込みパソコンに保存されている生徒の住所録から自宅を割り出せば直ぐに見つける事が出来た。
この時期、五郷(いつさと)地区にある自宅で塞ぎ込んでおり私がその姿を確認した時には自宅に出現した《使い魔》に捕食されて命を落としていた。
今までの時間軸でそんな事は起こらず契約を行う前に私が直接手を下していたが、その必要が無くなり正直、手間が省けたと感じていた。
他の時間軸においては予知魔法を持って後述する《黒い魔法少女》と組んで私を苦しめたが、この時間軸ではそんな事も無かった。
ある時間軸に置いては契約を行っておきながら何の行動も起こす事、無く私に殺された事もあった。
「それが正しいと信じているのね・・・」
そう言って《白い魔法少女》は抵抗する事無く私に殺された。
まるで私に殺される事を望むかの様に・・・。
《黒い魔法少女》となる2人目は私が転入する見滝原中学の3年生であり、先述した事と同じ様に夜中に見滝原中学校に忍び込んで住所録に目を通している場所を割り出した。
この時期、既に契約しており、私の知らない《斧を持った魔法少女》と戦って勝手に相討ちとなり、ソウルジェムを破損して死亡した。
死体は発見されたらしく街頭テレビのニュースで理由の分からないままに死亡したと伝えられていた。
《黒い魔法少女》も《白い魔法少女》と同じく他の時間軸では私が殺害する事が何度か会った為、やはり手間が省けたと私は思っていた。
《幼い魔法少女》となる3人目は放っておいても問題は無かったが契約された場合の事を考えて手は打った。
住んでいた自宅に3人目とその家族が巻き込まれない様に、拳銃と手榴弾を設置して手榴弾を爆破すれば良いだけだった。
私が通報した警察と消防の現場検証で手榴弾と拳銃の破片が見つかり3人目の両親は逮捕され3人目は警察に保護されていた。
3つの最大のイレギュラーには手を打てたが過去に私は他の時間軸においては更に強力な《虹色の魔法少女》と戦った事もあった。
《虹色の魔法少女》の顔は知っていたが名前は偽名を名乗った為に直ぐに探す事が難しかった。
けれど《虹色の魔法少女》は一度だけ現れて以降の時間軸に現れる事は無かった。
理由は分からないが現れないのならば現れないに越した事は無いし現れたら現れたで倒せば良いと思っていた。
この3日間の行動を思い返しながらも本来の退院よりも2週間前は《魔法少女》としての私が始めて訪れる時間だった。
(余りにズレが大きくなれば私の知る流れとは変わってしまい救える者も救えなくなる・・・)
私がそんな事を考えていた時、大きな魔力を感じ取った。
《魔女》の持つ魔力だ。これほどの大きさならば《使い魔》である筈が無く《魔女》である事は確実だった。
(魔力は少しでも多い方が良い・・・)
私は戦う為の判断を一瞬で行うと左手にソウルジェムを出現させると結界の方向へと足を進めた。
暫く歩くと人が余り立ち入らなそうな資材置き場が見えて来た。
回りに人がいない事を確認すると私は躊躇う事無く《魔法少女》としての姿に変身すると結界に入り込んだ。
《魔法少女》となった私の左腕には盾が装備されている。
この盾には様々な武器を詰め込まれ任意の状況で頭に思い浮かべた武器や物を取り出す事が出来た。
(ただしどれだけの物を収納が可能なのかは本人にも未だ解らない)
その中から使い慣れた大口径の拳銃を抜き取ると構えながら結界を進んだ。
階層にある道を塞ぐ使い魔に躊躇無く銃弾を浴びせ、銃弾の利き難い相手には時間停止の魔法でやり過ごすか、停止状態で邪魔となった相手は手榴弾を設置して爆破した。
結界の奥に潜むその《魔女》は始めて見る物だったが私は時間を停止させると多数の手榴弾を設置した。
時間停止を解除した瞬間に大きな爆発が起きて私は《魔女》を簡単に倒すと難なく倒すとグリーフシードを手に入れた。
結界は崩れその場所は元の資材置き場に戻った時、ガサリと言う物音がした。
私は反射的に銃を構えると物音の方向へ銃口を向けながら歩いた。
そこには汚れが目立つ黒い帽子と藍色の上着とズボンを履いた私より幼い子どもがビニールシートを敷き、身を包むダンボール箱から半身を起していた。
その見知った怯えた表情を見て私は表情を変える事無く呟いて銃口を下ろした。
「朱奈・・・こんな所にもあなたはいたのね・・・」
「あなたは《魔法少女》なの?ぼくを知っているの?」
恐怖の入り混じった朱奈のすがる様な瞳を見せた時、私の中にある感情が湧き上がった。
それは怒りだった。
どんな理由があろうとも自ら強くなろうともせず弱いままで誰かにすがろうとするだけの朱奈は昔の自分を思い出させてしまう。
私は銃口を改めて朱奈に向けると再度、威嚇した。
銃口を向けられたと理解した朱奈は怯えた様子でその場に固まった。
「ここであなたがいなくなれば・・・。私の救いたい人は助かるのかしら?」
それは目の前にいる朱奈に向けた言葉では無く私自身に向けている言葉だった。
確かに私は朱奈を知っている。
けれど朱奈を助けた所で私が本当に救いたいと願っている人が救われると言う保障は存在しなかった。
むしろ朱奈が見滝原市に存在し続ける事で、やっかいな事態が発生した事も一度や二度では無かった。
怯える朱奈は答える事が出来ずに戸惑い2人の間に暫く沈黙が訪れた。
けれど沈黙は突如として破られた。
「レガーレ!」
その馴染み深い声と同時に私の持つ拳銃に馴染み深い黄色いリボンが巻き付いたのを見た瞬間、私は躊躇する事無く拳銃を捨てて、その場から飛び退いた。。
「やめなさい。魔法少女が子供に危害を加える理由は無い筈よ」
馴染み深い声と同時に資材置き場を囲む塀の上に右手にマスケット銃、左手から黄色いリボンを構えた《黄色い髪の魔法少女》巴マミが立っていた。
「巴マミ・・・」
私は表情を作る事を忘れて本心から驚いていた。
恐らく巴マミは元々この結界に入り込む事になっていた。
恐らくは本来の時間では起こり得ないイレギュラーを自分が早々に引き起こしてしまった。
(このままでは、未来が変わってしまうかも知れない・・・!)
私の思いとは裏腹に目の前の巴マミは怪訝な表情でこちらを見返していた。
「あなた・・・。何故、私の名前を?何処かで会ったかしら?」
そう言いながらも巴マミは警戒心を崩す事無く手にしたマスケット銃の銃口を私に向けていた。
(この状態では何を言っても聞いてくれないわね・・・)
沈黙の中でそう考えた私は戦闘の意思が無い事を示す為に《魔法少女》としての姿を解いた。
「あなたの言う通りよ。巴マミ。この子に危害を加えても何も変わらない」
わたしはそう言って2人に背を向けて立ち去ろうとした。
「待ちなさい!私の質問に答えてないわ」
その言葉に私は歩みを止めると後ろを振り向いて巴マミの目を見てはっきりと言った。
「私は暁美ほむらよ。巴マミ。忠告するわ。あなたはその子にこれ以上、関わらない方が良い。そうしないとあなた死ぬ事になるわ」
そう言って私は今度こそ、その場から立ち去った。
背後に巴マミの視線を感じていたが攻撃される事は無いと確信していた。
正直な所、これ以上この場に留まりたくなかった。
けれど相も変わらず正義を行い続ける巴マミの姿に私は少し安心感を抱いていた。
文中で描かれるイレギュラーの正体は魔法少女おりこ☆マギカに登場する魔法少女達です。《白い魔法少女》は美国織莉子、《黒い魔法少女》は呉キリカ、《幼い魔法少女》は千歳ゆまを示しています。
なお本作品に登場する暁美ほむらはおりこ☆マギカでの経験を経たほむらだとしています。
織莉子やキリカ、ゆまがおりこ☆マギカ以降の時間軸に登場しない理由はほむらが何らかの手を打った為では無いかと私は想像しました。
本作品において書かれた描写が私の想像する何らかの手です。