偽書魔法少女アヤメ☆マギカ PSEUDEPIGRAPH PUELLA MAGI AYAME MGICA   作:ジャックノルテ

30 / 54
第12話 何か問題があるかしら?

《使い魔》を《魔女》に育てる、言わば養殖を試みてから3日が経過した。

 実験は主に夜に行い昼間は朱奈の勉強を見たり、遊んだりして気ままに過ごしていた。

 朱奈が寝静まった時を見計らって私は部屋を出る。

 街中を歩いて適当な人間を見つけては、停止の種を差し込んで動きを強引に止めるとホテルの屋上まで跳躍し屋上に隠してある牢に入れて《使い魔》に捕食させた。

3日間で数人の酔っ払いやガラの悪い人を男女の分け隔て無く牢に放り込んで《使い魔》に捕食させると《使い魔》の魔力が上昇するのを感じ取る事が出来た。

 特に一昨日、若い女性を食べさせた時に生じた魔力の上昇率には目を見張る物があった。

 昨日の夜にキュウたんと交わした会話を思い出してみる。

「ねえ。キュウたん。もしかして《魔法少女》としての素質を持った少女を食べさせた方が《使い魔》を《魔女》に成長するのを速められるんじゃないかしら?」

「そうだね。《使い魔》を《魔女》と言う親と同じ姿に成長させるにはやはり《魔法少女》としての素質を持った少女を捕食させるのが効率的かも知れないね」

 感情の無い瞳でキュウたんが私に答える。

 今は私の真横で同じ様に《使い魔》を閉じ込めた牢を見つめている。

「この近くに素質を持った少女はいないの?」

「そうだね。いるのは確かだよ。もしかして《使い魔》に食べさせるつもりかい?」

「何か問題があるかしら?」

 キュウたんに問い掛けた時、自分の表情が硬くなったのを感じた。

 感情を持たないキュウたんにそんな事をしても無意味だと分かってはいたが・・・。

「ふーん。別に綾女が行いたいと言うのなら構わないよ。僕と同じで代わりとなる少女は幾らでもいるからね」

「居所を教えて頂戴。早速、《使い魔》に食べさせるわ」

「これがその子の居所だよ」

 私の求めに応じてキュウたんはテレパシーで私の頭に居所の地図と相手の顔のイメージを送って来た。

 直ぐに跳躍を繰り返した私は《魔法少女》としての素質を持った少女の居所に向かった。

 そこは学習塾であり多くの子供達が帰路に着こうとしていた。

 目的の少女を見つけると気付かれない様に後を付けた。

 少女が友人と別れて1人になるのを見計らうと停止の種を投げ付ける。

 倒れ動けなくなった少女を抱えると再び、跳躍を繰り返してホテルの屋上に戻った。

「やあ。速かったね。綾女。首尾は上々の様だね」

 ホテルの屋上に残っていたキュウたんは私が少女を連れて来た事に驚きはしなかった。

「じゃあ早速、食べさせるわ」

 私は無造作に牢に少女を入れた。

 暫くすると牢に閉じ込めた《使い魔》の魔力が急激に上昇して行った。

 それもただ上昇するのでは無い。

 これまでのパターンでは《使い魔》は人間を捕食すると魔力が上昇していた。

 けれど《魔法少女》としての素質を持った少女を捕食した《使い魔》の魔力は上昇を止めなかった。

 1時間後には捕獲した時の2倍の魔力を見せていた。

この現象を見て私は《使い魔》の養殖に関しては諦めが付いた。

私の魔力量ではこのまま《使い魔》の魔力が上昇を続けた場合、押さえるのが難しいと感じる事が出来た。

第一に《使い魔》を牢に封じ込める為の魔力の使用量自体が私の計算よりも多かった。

予備のグリーフシードを持っていたとは言え《魔女》と2、3回、戦える程の魔力の消耗では割に合うとは良いがたかった。

そして今日。

牢の中で《使い魔》は《魔女》へと成長して牢を破ろうと暴れ始めていた。

深夜のホテルの屋上でキュウたんと2人で《魔女》が牢を破るを待っていた。

「そろそろね。キュウたん。十分データは取れたと思うから今日、《魔女》を倒すわ」

「そうだね。十分にデータは収集したし《魔女》と化しているからグリーフシードを孕んでいるんじゃ無いかな?まあそれは倒さないと分からないけどね」

私の隣でキュウたんはそう答えた。

戦いになるとキュウたんが肩に乗っていると気が散るので今日は降りて貰っていた。

既に目の前にある牢からは押さえられない程の魔力が滲み出ていた。

「それは倒せば分かる事よ。来たわね!」

言ったと同時に牢が破られる。

結界が広がり私とキュウたんを包んで行く。

念の為にホテルの屋上には《魔法の種》を使った防護壁を張っておいたので《魔女》の発生させた結界の影響は屋上に留まり朱奈に悪影響は無い。

結界に包まれた私の目の前には全身を骨で飾り立てた、言わば《骨の魔女》が立ち塞がっていた。

まず箒の穂先を《骨の魔女》に向かって発射して見た。

私の箒の穂先は柄にあるトリガーを握れば二段階に分かれて鋭く尖った穂先を標的に向かって発射する事が出来る!

用心の為に二段階の内、一段階目だけを発射した!

だが《骨の魔女》の全身を覆う骨は私の箒の穂先を受け付けなかった。

外見からある程度の予想をしていた私は驚く事無く次の手を打つ。

既に思考は次の手を選択して実行に移していた。

「ならこれはどう!」

叫び全身に巡る魔力を使って強引に運動能力を最大まで上げた。

一歩は多大な跳躍となり一気に《骨の魔女》の懐まで入った。

一気に箒の柄に腕力を集中させると《骨の魔女》の胸を箒の柄で思いっきり突いてみた。

だが手応えを感じられなかった。

「ッ!」

同時に《骨の魔女》の腕が迫って来たので跳躍して《骨の魔女》の脇から逃れて相手から距離を取った。

(手応えがまるで感じられなかった・・・。つまりは《骨の魔女》の急所はあの場所では無いと言う事かしら?)

そう思っていると《骨の魔女》は次々と全身を覆う骨を投げ付けて来た。

どうやら全身を覆う骨は離れた相手を攻撃する武器となるらしい。

 交わしても次々と《骨の魔女》は次々と新たな骨を投げ付けて来る。

 避けるのは簡単だがこう数が多いと煩わしかった。

 それに最近、少し髪を長く伸ばし過ぎた。

 髪が跳ね回って視界を右往左往して鬱陶しい。

(明日、絶対に髪を切ろう)

 そう心に決めて再度、《骨の魔女》に向かって私は跳躍した!

「これで終わらせるわ」

再度、《骨の魔女》の懐まで近付くと今度は拘束の種=《アーレストシード》を右手から放って無数のロープを出現させ《骨の魔女》を縛り上げた。

《骨の魔女》を縛り上げたのを確認すると今度は左手に持った箒の柄に魔力を集中させた。

そこへ赤と青の入り混じった私の魔力を帯びた炎が形成された。

この炎は私の魔力で構成されており大抵の物は焼き切る事が可能だった。

「これでどうかしら!」

そう叫びながら私は右手から伸びるロープに赤と青の炎を纏わせて《骨の魔女》に浴びせた。

《骨の魔女》は私の炎で全身を焼かれ苦しむ様子を見せていた。

追い討ちを兼ねて私は箒の穂先を無造作に大きく振った。

穂先から起こった風は私の魔力を帯びた突風となり赤と青の炎を更に大きく燃え上がらせる。

赤と青の炎の勢いは増して《骨の魔女》を苦しめて行く。

何度か繰り返す内に《骨の魔女》の悲鳴は聞こえなくなり結界は崩壊した。

後には《骨の魔女》の孕んでいたグリーフシードだけが残されていた。

魔力をかなり消耗した私は少し疲れた足取りで落ちていたグリーフシードを拾い上げた。

直ぐにソウルジェムを浄化するとキュウたんの方へ向き直った。

「やっぱり割に合わないわね。《使い魔》の養殖は。少しはプラスが多いと思ったんだけど・・・」

「そうだね。綾女の魔力量では確かに割に合わないね」

キュウたんは隠す事無くはっきりと言って来た

その言い方はやはりキュウちゃんに感情が無いと言う事を象徴し、相手への配慮等、何一つ無いはっきりと事実だけを伝える物言いだった。

少しムッとしたけれどこれがキュウたんの持ち味だと考えて私は矛を押さえた。

「でも綾女。君のお陰で貴重なデータが収集できた。感謝するよ」

「まあ私とキュウたんの仲だから良しとするわ」

キュウたんからの感情を伴わない感謝に少しだけ安堵している私がいた。

(物事をただありのままに告げるキュウたんだから信用出来る・・・)

思いながらふと上を見上げると今夜は空が澄んで星が良く見えた。

「ねえキュウたん。幾つか質問して良い?」

屋上にある段差に座り込むと星を見ながら質問をキュウたんに投げ掛けて見た。

「なんだい。綾女?答えられる範囲でなら答えてあげるよ」

そう答えるとキュウちゃんは私の膝に乗っかって来た。

仄かな暖かさは感じるけれど余り重さは感じなかった。

やはりキュウたんには重量が無いのだろうか?

けれど私が抱いた関心は別な物だったので、ストレートにその事を質問して見る。

「キュウたんは地球外生命体なんでしょう?」

「そうだね。君達、人間の定義で言うならばそうだろうね」

「前から気になっていたのだけれどどうやって地球に来たの?」

前々から気になっていた疑問だった。

膝の上に乗せたキュウたんの答えは直ぐに帰って来た。

「うーん。それを説明するのは難しいかな?」

キュウたんからの答えは私が満足する物じゃ無かった。

質問を重ねてみる事にする。

「どうして説明できないの?」

「そうだね。まず君達、人類の宇宙に関する概念や知識が僕達、インキュベーターと比べるとまだまだ発展途上と言うのがあるし、人間がまだ未発見の原理や概念等もあるから説明が難しいと言うのが僕から伝えられる最大の答えかな?」

「ふーん。そうなんだ」

キュウたんの説明を聞いて私は少し納得した。

確かに未発見の原理や概念等が絡んでしまえば私が理解する事も難しいと感じられた。

でもやっぱりこれだけは聞いておきたい。

「やっぱり映画やマンガの様にワープとかを使ったの?」

「ワープと言う概念は僕たちも理解出来るけどそれとは違う方法で地球に来たんだ。ただ僕達も地球人が未発見の概念や科学的な知識を奇跡以外で人間に提供するのは禁止されているからね」

キュウたんからはこれ以上、聞き出せないと私にも感じ取れた。

だから質問を変えて見る事にする。

他にも気になっている事が山ほどある。

「そう言えばキュウたん。前に聞いたけど私たちの魂ってこのソウルジェムに収められているのよね?」

 そう言いながら私は《魔法少女》としての変身を解くと私服姿に戻った。

 左の掌にはソウルジェムが輝きを見せている。

「そうだよ。前にも説明したけど、とても便利でしょ?」

「そうね。でもこの身体って成長とかは《魔法少女》になる前とは変化は無いの?」

 生きていく上で気になる話題でもあった。

 不都合があるのなら今の内に知っておいて損は無い。

「特に変化は無いと思うよ。体の維持に魔力は使っているけどそれ以外では普通に成長や老化もするよ。最も魔力を使えばある程度、肉体の成長もコントロール出来るけどね。けど僕としては綾女の身体は今のままで良いと思うよ」

 セクハラとも取れる発言だったけれど性欲の無いキュウたんに告げても意味は無い。

 質問を続ける事にする。

「・・・。そうなんだ。じゃあナイスバディになるとかは?」

「まあ可能なんじゃ無いかな?でも僕に言わせれば訳が分からないよ。どうして人間の女性は体のプロポーションにそこまでこだわるんだい?」

「まあそれが女性と言う事だと思うわ。キュウたんには解らないでしょうけど」

そこまで言って私はふと気が付きました。

目の前にいるキュウたんに性別があるのかどうかを。

それは非常に興味をそそられる疑問だった。

「ねえキュウたん。あなたって性別あるの?」

私は何時に無く真剣な眼差しでキュウたんを見つめた。

(これで性別が無かったらどう接したら良いんだろう?)

 そう思う私だったけれど心配は杞憂に終わった。

「僕には性別なんて存在しないよ。ただ《魔法少女》は大抵の場合、僕達をオスと認識するらしいから自身の事を僕と称しているけど私とかワイに変えても構わないよ」

答えたキュウたんを見てキュウたんが俺!とかワイとか言い初めても反応に困る思えた。

キュウたんの一人称は僕のままで良いと思い伝える事にした。

「まあ私はそのままで良いと思うけどやっぱりワイとか呼ばせたりする子はいるの?」

「勿論いるよ。地域によっては方言を用いた方が意思の疎通には便利だしね。それに海外では勿論、当地の言語を用いて僕らはコミュニケーションを取っているからね」

そこまで話して私はふと気が付いた。

「もしかしてキュウたん。あなたって言語に詳しいの?」

「人間が使用する言語に関してはかなり詳しい方だと思うよ。何せ有史以前から人類と接触して観察を続けて来た訳だから今まで人類が使用した様々な言語を記憶しているよ。今は失われた言語を含めてね」

「じゃあキュウたんは忘れると言う事は無いのね」

「そうだね。僕達は基本的に記憶の欠落と言う現象自体が存在し得ないからね」

膝に乗せたキュウたんの頭を左手で撫でながら私は思った。

忘れると言う事が出来ないのは感情を持つ生物にとっては残酷な事かも知れないけれど感情を持たない生物にとっては忘れないと言う事が基本的な事でありむしろ忘れると言う現象事態があり得ないのだろう。

けれど私はどの様な些細な事でも記憶をしてくれるキュウたんに好感を持っていた。

もっともその好感はパソコンがデータを自動的にバックアップしてくれるのが当たり前と言う感覚に近かったが・・・。

「ねえキュウたん。あなたは私の事を覚えていてくれる?」

「当たり前じゃないか。さっきも伝えた通り僕らには記憶の欠落は起こり得ない。だから綾女の事を決して忘れたりはしないよ」

「ありがとう。キュウたん。出来たら朱奈の事も忘れないでいてあげて」

「良いよ。朱奈も僕達にとっては興味深い対象だからね」

私はキュウたんの答えに満足した。

どんな事であれ誰かが忘れないでいてくれれば私達は生きていたと言う証を残せる。

それは人間だけが持つ魂の永遠性への願望かも知れないけれどキュウたんが私と朱奈の事を忘れないでいてくれる事を私は素直に喜んでいた。

 

次の日の朝・・・。

ホテルのレストランで食事を終えて部屋に戻ると私は椅子に座り朱奈が私の後ろに立っていた。

手にハサミを持って少し困惑した表情を見せている。

困惑した表情も愛らしいと私は感じていたが朱奈には悟られない様に顔には表さない。

朱奈に抱く愛情を否定するつもりは無い。

けれどこうしたふとした瞬間に抱く愛情を私は朱奈に隠して楽しんでいた。

ほんの小さな拘りに過ぎない。

「綾女ちゃん・・・。本当に良いの?」

「ええ。朱奈。やってしまって」

「うん」

そう言って朱奈は恐る恐る私の指示した頭の左側にある髪を切った。

それによって私の髪形は左右非対称となった。

左の髪の残った部分は丸く結び垂らしている。

そして右はストレートに伸ばしていた。

鏡で見ながら私は満足していた。

髪を切ったのは昨日の戦いの中で伸び過ぎた髪が目に掛かって邪魔だと感じたからだったけれど願掛けの意味合いもあった。

朱奈を守り戦い抜くと言う密かな願掛け。

悟られない様に私は笑顔を見せる。

「ありがとう。朱奈。これで私は満足よ」

「でもどうして綾女ちゃんは左右で違う髪形にしたの?」

「そうねえ。左右で違う髪形にしたのはこれこそが私の理想の髪型だからよ。人間は矛盾を抱えて生きているのだからそれを髪型に象徴させたのよ」

私の答えに朱奈は少し困惑している様でもあった。

どう言ったら良いのか分からないと言う表情を見せている。

「朱奈にはまだ難しいかしらね?」

私は朱奈に微笑みながらそう言った。

「うーん。ちょっと難しいけど。頑張って解る様になる!」

「朱奈は良い子ね」

 そう言って私は撫で心地の言い朱奈の頭を撫でた。

 そう言えば朱奈の髪を少し伸びている。

(少し切り揃えてあげた方が良いかも知れない)

「ねえ。朱奈。私の髪を切ってくれたんだから今度は私が朱奈の髪を切ってあげるわ。少し伸びているから丁度良いでしょう」

「綾女ちゃんが切ってくれるの?良いの?」

「ええ。私も朱奈の髪を切りたいわ」

 私の抱く素直な気持ちだった。

「綾女ちゃん・・・。綾女ちゃんの好きに切って・・・」

「ええ。朱奈に似合う様に私が切ってあげるわ」

 朱奈を椅子に座らせて今度は私が朱奈の背後に立つ。

 ハサミを持ちながら朱奈に似合う髪形を考える。

 でも朱奈ならどんな髪型でもきっと似合うに違いないと私は確信していた。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。