偽書魔法少女アヤメ☆マギカ PSEUDEPIGRAPH PUELLA MAGI AYAME MGICA 作:ジャックノルテ
SIDE 巴マミ
「一体、何だったのかしら?」
立ち去って行く見知らぬ《魔法少女、暁美ほむら》の後ろ姿を見つめながら私は大きな困惑を感じていた。
学校帰りに街の中をパトロールしていて《魔女》の魔力を感じ取ってこの資材置き場に来たのだが急に《魔女》の放つ魔力が消滅した。
同時に《魔法少女》の魔力を感じ取り私は警戒しながらこの場に来て見た。
《魔法少女》の魔力を感じ取った時は佐倉杏子の顔が浮かんだが感じ取った魔力は初めて感じる物だった。
そのまま魔力の感じられる方向に進んでみると《魔法少女》と思しき《黒い髪の少女》が幼い少年に拳銃の様な武器を向けているのが見えた。
思わず私はリボンの拘束魔法を発動させ《黒い髪の少女》が握る拳銃の様な武器の銃口から少年を逸らさせた。
少年の安全を第一に考えての行動だったが旨くいって良かったと私は思っていた。
《黒い髪の少女》が持っている武器が飛び道具ならば少年を傷付ける事も可能だったが《黒い髪の少女》はそれ以上の攻撃を行わなかった。
けれどその後、《黒い髪の少女=暁美ほむら》は謎めいた言葉を言い残して私と少年の前から立ち去ってしまった。
「私は暁美ほむらよ。巴マミ。忠告するわ。あなたはその子にこれ以上、関わらない方が良い。そうしないとあなた死ぬ事になるわ」
暁美ほむらが私に向けた言葉に対する疑問は心の中で膨らむ一方だった。
初めて会う筈の《魔法少女》の筈なのに何故、私の名前を知っていたのか?
何故、こんな少年に拳銃の様な武器を向けていたのか?
しかし今は目の前にいるこの少年を助ける事が先決だった。
右手で握っていたマスケット銃を下ろし《魔法少女》としての服装を解くと巴マミは見滝原中学の制服姿に戻り怯える少年に歩み寄った。
少年の警戒心を和らげる為に出来るだけ優しい表情を心掛けた。
心の内にある疑問を私は心の奥にしまい込んだ。
戦闘の直後では自分でも気が付かない内に険しい表情をしている時があり助けた人達を驚かせてしまった時もあった。同じ失敗は繰り返したくない。
「あなた・・・。だいじょ」
声を掛けようとして驚いた。
その幼い少年は1週間前に《使い魔》の結界から助け出された後、私の前から逃げ出した少年だったのだ。
その時はきっと結界での出来事や私に驚いて家に帰ってしまったのだと思っていた。
結界から助け出された人達が驚いてその場から離れてしまうのはよくある事だったからだ。
私がそんな経験をしたのも一度や二度では無い。
「あなた・・・。無事だったのね。でも、どうして私から逃げようとしたの?」
目の前の少年は怯えていた。
その怯え方は尋常ではなかった。
まるで目の前の人物に命を奪われかねないと言う恐怖に捕らわれている様だった。
私は質問の答えを諦めてひとまず、この少年をここから連れ出す事にした。
この場にこれ以上、留まるのは余計なトラブルを巻き込む恐れがあった。
何と言っても堂々と他人の土地に不法侵入をしている。
街を守る為とは言え正直、余り良い気分では無かった。
「とりあえずここから出ましょう。ここじゃ話は出来ないわ。ひとまずあなたを家に送るけど家は何処?」
私が右手を差し伸べながらそう言った時、少年は瞼を閉じるとその場に崩れ落ちてしまった。
「あなた!大丈夫!?」
その少年は顔を赤くして気を失っていた。
直ぐに駆け寄った私は右手で少年の額に手を当ててみた。
平熱とは思えない熱さを感じた。
「・・・!この子、熱があるのにこんな場所に」
よく見ると少年も倒れた足元にはビニールシートが敷かれ、少年はダンボールで身体を包んでいるみたいだった。
まるでニュースで見たホームレスの様な事を幼い少年がしているとは思えなかった私は少年がきっと家出でもしたのだろうと思った。
直ぐに少年を抱えるとそのままビルを出た。
俗に言うお姫様抱っこの形を取っていたが普通は男性が女性を抱えるのだが、私もこの自分より年下の少年が自分を抱えられるとは思えなかった。
(変な考えはやめないと)
ビルを出ると私は意識を集中すると魔力で強化した脚力で跳躍し、そのまま街中を目立たない様に自宅に向かい跳び抜ける。
(熱があるのにあんな場所にいたなんて・・・。この子、もしかして家族を魔女に・・・。だとしたら放っておく訳には行かないわ)
私は目立たない場所を選んで自宅までの道を駆け抜けて行った。
マンションの入り口から入るとこの少年の姿を誰かに晒してしまう事になる為に私は《魔法少女》としての跳躍力で私の部屋のベランダに降り立った。
幸いベランダの鍵は壁にあるスイッチを押せば開く事が可能だった為に直ぐに部屋に入る事が出来た。
気を失った少年を部屋の真ん中に寝かせると少年の姿を改めて見た。
男の子にしてはとても可愛らしい顔をしている。
けれど着ている服は汚れが目立っていた為、服を脱がせて着替えさせなければならなかった。
そこで私は気が付いた。
この子はこんなに可愛い顔をしていても男の子だ。
私が異性の裸を見たのは幼い頃に父親とお風呂に入った時が最後だった。
異性の身体の事は学校の授業で知識としては知っていたが、間近で本物を見るのは初めてだった。
ましてや幼い少年の体等、見た事は無かった。
「仕方が無いわよね・・・。こんな汚れた服装のまま寝かせる訳にも行かないものね・・・」
少し頬を赤らめたかも知れなかったが、意を決した私はバスタオルを持って来ると床に敷いてその上に改めて少年を寝かせた。
「それじゃあ・・・。行くわよ」
きっと私は物凄く神妙な顔付きをしていたと思った。
葛藤はあったけれどこの少年を助ける為には仕方の無い行動と私は思う事にした。