偽書魔法少女アヤメ☆マギカ PSEUDEPIGRAPH PUELLA MAGI AYAME MGICA   作:ジャックノルテ

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2015年6月21日
一部、古い文章を一度にドラッグしての変換ミスが多かったので修正しました。
ミスが多くて申し訳ありません。


第25話 あなたにもう一度会いたい

 

 見滝原市の五郷地区(いつさとちく)で《浅古小巻》と遭遇してから数ヵ月後・・・。

 私が朱奈を作り出してから既に3年が経過していた。

ある日、体調を崩した朱奈は熱を出して寝込んでいた。

私は泊まっているホテルで朱奈の看病をしていた。

幸いホテルには後、5日程、宿泊する予定だったので問題は無かった。

「大丈夫?朱奈」

「うん。大丈夫」

私の声に朱奈はそう答えていましたがまだ苦しそうだった。

そっと私は朱奈の頭を優しく撫でてあげた。

「ねえ。綾女ちゃん。お願いがあるの・・・」

「なあに。朱奈」

「眠るまで手を握って・・・。わたし・・・。怖いの・・・」

「良いわ。握ってあげるわ」

答えながら、私は自身の左手で朱奈の左手を握って上げた。

それを感じた朱奈の顔に表れていた苦しみは少し和らいだ様でした。

暫くして朱奈は眠った。

眠る朱奈の顔を見ながら私は思ってしまった。

(私が死んでも朱奈は1人で生きていけるだろうか?)

私の手を握って眠る朱奈を見ていると、私はずっと心の中に抱いていた難問を朱奈に話さなければならない事を感じ取っていた。

右手で朱奈の左手を握り直すと私は左手からソウルジェムを出現させた。

宝石の部分が赤と青、半分に分かれて輝く私のソウルジェム。

朱奈を愛する私。

キュウたんの為に戦う私。

私の持っている二面性を象徴するかの様な二色に輝くソウルジェム。

しかしその輝きはソウルジェムに溜まったグリーフシードを使っても落ちない穢れによって弱々しくなっていた。

表面には無数の傷が走っている。

その傷も《浅古小巻》と遭遇した時よりも増えていた。

魔力を使えば使う程、ソウルジェムの表面の傷は深くなり枝分かれして行った。

(そろそろ私も終わりみたいね。キュウたん)

私がテレパシーで呼び掛けるとホテルの窓枠の影から私と朱奈を見ていたキュウたんはテレパシーで返事を返して来た。

(どうやらそうみたいだね。君のソウルジェムはそろそろ限界だよ)

(後、どれ位持つかしら?)

(精々2週間と言った所かな)

(そう・・・。それまでにやる事が出来たわね)

私は朱奈との別れを覚悟し始めていた。

だからこそ私は朱奈にある事を問い掛けなければ行けない。

それは・・・。

 

 

私が死んでも朱奈は生きてくれるのか?

 

 

私はどうしてもその答えを知りたかった。

(そうだ。キュウたん。1つ約束をしてくれない?)

(なんだい綾女?僕は出来る範囲なら約束を守るよ)

キュウちゃんは感情を伴わない声でそう答えてくれて私は安堵した。

(私が《魔女》となる時にキュウたんが居合わせたら私が最後に目を閉じたら《綾女。今までお疲れ様》と言ってくれない?)

(訳が分からないよ。けど君が望むのなら僕はそう言ってあげるよ)

(ありがとう。キュウたん)

キュウたんが私の満足する返答を返してくれたので私は安堵していた。

でもこう言ったキュウちゃんとの会話も後、僅かしか出来ないと思うと私の心に少し寂しさが過ぎった。

 

 

 

○

私の体は限界に近づいて来た。

身体は旨く動かない。

魔法も旨く使う事が出来ない。

魔力を温存する為に私は一日の大半をベッドの上で横になって過ごしていた。

「綾女ちゃん。具合が悪いの?大丈夫?」

「大丈夫よ。朱奈。ちょっと疲れただけだから・・・」

私を心配する朱奈の表情が私の心を痛めていた。

つい先日の金曜日に朱奈が《魔女》を引き寄せた。

でも、私はもう戦う事すら出来なかった。

一日待って朱奈から《魔女》が離れるのを待つ事しか出来なかった。

そんな私を・・・。

《魔女》から助けられなかった私を・・・。

 朱奈は責める事も無かった。

 ただ両目に涙を溜めながら私に寄り添っていた。

「朱奈。遅くなって・・・。御免なさい」

「良いの。綾女ちゃんが来てくれたから良いの・・・」

 謝る事しか出来ない私を朱奈は責める事も無かった。

 朱奈は私の変調に気が付いているのかも知れなかった。

 でも朱奈はその事を質問して来る事は無かった。

 そして2週間後・・・。

 キュウたんの言う私が人間。

否。

《魔法少女》でいられる最後の日が来た。

 覚悟はしていた。

 色々な準備もした。

 まだやって置きたい実験もあった。

 様々な事に心残りを抱きつつも私はせめて朱奈と過ごす最後の時間を後悔無く迎える為にある場所へと向かっていた。

 リンドウ市の郊外にある山林地帯。

朱奈の生まれたあの山林地帯から程近い所にある朱奈が始めて目覚めた公園に来ていた。

この公園は広く様々な花が植えられており四季による変化が楽しめる場所と比較的、有名な場所でもあった。

昼下がりに色とりどりの花が咲き誇る花の中を熱の下がった朱奈と私は歩いていた。

「綺麗な花・・・。でも、どうしてわたし、ここにいたのかな?何をしに来たのかな?」

 朱奈は自分がここで婦警さんに保護された事を疑問に思っている様だった。

 でも実際には朱奈には過去の記憶なんて無い。

 ここにいるのは私のミスが原因に過ぎない。

「きっと花を見に来たのかも知れないわ。これだけ綺麗なんだもの。誰だって見たくもなるわ」

 ごまかしの言葉を告げてしまう自分に私は嫌悪を覚えた。

 でも本当の事を告げる事は決して出来ない・・・。

人気の無い場所でベンチを見つけ朱奈と一緒に座った。

「少し早いけどお昼にしましょう」

「うん」

そこでコンビニで買ったお弁当を広げた。

私はおにぎりを三つにクリームパンをデザートにしていた。

朱奈はチョコパンやジャムパン、生クリームを使ったパンにおにぎりを1つ買っていた。

ペットボトルのお茶を飲みながら私はこれが人としての最後の食事になる事を改めて感じていた。

(最後の晩餐と言うのも悪くは無いわね)

 人生の最後に何を食べたいか?

 私にも好物が合ったがそれを食べようとは思わなかった。

 季節柄、手に入らないと言うのもあるが、最後だからと言って特別なモノを食べるのに違和感があったからだ。

 何時でも食べられるモノを最後の食事にする。

 私が最後まで私でいる為に。

横を見ると朱奈は生クリームを使ったパンを食べて口の周りにクリームを付けていた。

「朱奈。口の周りにクリームが付いてるわよ」

私はそう言って左手の人指し指で朱奈の顔からクリームを拭うとそのクリームをそのまま舐めた。

いつもより甘さを強く感じた気がする。

「ありがとう。綾女ちゃん」

満面の笑みでそう答える朱奈を見つめて私の心が再び揺らいだ。

今から朱奈にしようとする質問は朱奈の心を苦しめるかも知れない。

けどもう時間は無い。

この質問は朱奈自身にとっても避けれらない困難でもある。

うろ覚えだけど昔、私が見ていたドラマでこう言う台詞があった。

 

「親が子供に与えるべきは苦い教訓である」

 

私にとって朱奈はそれまでの人生と決別して、残りの、《魔法少女》としての人生に彩りを持たせる為に願いによって生まれた愛する存在である。

愛しているからこそ私は朱奈には重く苦い教訓を朱奈に課さなければならない。

覚悟を定めると朱奈に言葉を掛けた。

「朱奈」

「綾女ちゃん」

私と朱奈は互いに相手の事を同時に呼んでしまった。

お互いに驚いて思わず沈黙してしまう。

「朱奈からで良いわよ」

「ううん。綾女ちゃんからでも良いよ」

私は少し考えて答えた。

「私の話は長くなりそうだから朱奈から言って」

 これから私が話す事は朱奈を悲しませる。

 悲しんだ朱奈が自分で切り出そうとしていた話を再開出来るか不安だったので先に朱奈に話す様に促した。

その言葉を聞いて朱奈は少し悩んだけど喋り始めた。

「わたしね。綾女ちゃんと一緒に旅して凄く楽しいよ」

「それは良かったわ」

 正直な所、朱奈が旅暮らしで大きなストレスを感じる事が無かったのにホッとしている。

 けどもし、朱奈が望んだなら私は何処かの街を守る《魔法少女》になる事も厭わなかっただろう。

「でもね・・・。わたしの頭の中にある記憶は戻らないの。だから時々、凄く不安になっちゃうの。本当は自分には最初から何も無かったんじゃないかって・・・」

私は何も言う事は出来なかった。

その言葉は私の隠している事の核心を付いていた。

朱奈はもしかしたらじゃなく無意識の内に真実に気が付いていたのかも知れない。

最初から自分には記憶も過去も無いと言う事に・・・。

「ずっと自分が暗闇の中で怯えている様な気がしていたけど・・・。綾女ちゃんと出会って・・・。わたし・・・」

 朱奈は一度、言葉を切ると俯いた。

 けれど意を決したかのように顔を上げると再び語り出した。

「最近は記憶なんて無くても良いと思えるの。記憶が戻らないで欲しいともわたしは思っちゃうの」

 以外な朱奈の答えに私は驚き、そのまま質問をぶつけた。

「どうしてなの?」

「もし記憶が戻ったら、綾女ちゃんを好きでいる今のわたしじゃ無くなってしまう気がするの。だからわたしはもう記憶なんて要らない。綾女ちゃんと過ごした日々の記憶だけがあればわたしは綾女ちゃんが大好きな《朱奈》のままでいられるから・・・。だから綾女ちゃん。わたしを助けてくれてありがとう。わたしに朱奈と言う名前をくれてありがとう」

満面の笑みといつしか嬉し涙が朱奈の瞳から溢れていた。

心に思いも掛けない喜びが走っていた。

でも同時に暗い気持ちも走っていた。

(私はもう・・・)

鈍くなりかけた決心を新たにすると私は私の伝えたい事を伝える事にした。

「ありがとう。朱奈。とても嬉しいわ。私からも話をするわね」

「うん。綾女ちゃん。何を話すの?」

涙を拭いながら朱奈は私の話を待った。

この笑顔を曇らせる事に躊躇いを感じてしまう・・・。

でも・・・。

伝えなければ更に朱奈を苦しめてしまう・・・。

私は心を決めると告げた。

もうこれ以上、迷う事は出来ない。

 

 

「朱奈。私は・・・。もうすぐ死ぬわ」

 

 

朱奈に対して直球に伝えた。

嘘、偽りを混ぜる事無くただ真実だけを告げた。

「えっ。綾女ちゃん。何を言っているの?」

 朱奈の表情には大きな混乱が広がり始めていた。

「どうしてそんな事を言うの!?」

 珍しく大きな声を上げるのを聞いて私は・・・。

 分かり易く説明する事にした。

「知っての通り、私は《魔法少女》よ。あなたを守る《流浪の魔法少女》。でもね・・・。もうすぐ私の命は燃え尽きてしまうの・・・」

私の言葉に朱奈は押し黙った。

「嘘だよね?綾女ちゃん?」

 必死になって朱奈は私の腕を掴んで来た。

 不安を紛らわせる為に何かにすがろうとしている様に見えた。

 でもこれは覆せない真実。

私は黙って首を振った。

「そんな・・・。嘘だって言って!綾女ちゃん!」

そう言いながら朱奈は右腕で左肩を抑えた。

それは朱奈がひどい悲しみに襲われた時に行う癖だった。

暫く沈黙の後に朱奈が落ち着いたのを見計らって私は説得を続ける事にした。

「朱奈・・・。私はあなたより先に生まれたの。だから生物学的にはあなたより必ず先に死ぬ事になるわ。その時が来たのよ」

「嫌だよ。わたし、綾女ちゃんと会って3年しか経って無いのに?もっと綾女ちゃんと一緒にいたいよ!」

朱奈の瞳にはいつしか悲しみの涙で溢れ表情も悲しみに満ちていた。

私の心も朱奈の流した涙の数だけ苦しんでいた。

「朱奈・・・。《魔法少女》である私は、あなたの前で《魔女》に殺されていたのかも知れない。そうならなかったのは単に運が良かっただけなの。それに人は何時か大切な人との別れを経験しなければ行けない。だから」

「そんなの嫌だよ!わたしは1人になりたくないよ!わたしを1人にしないで!もうわがままな事を言わないしもっと良い子になる。ちゃんと勉強もするし記憶なんて無くても良い。だからわたしを置いていかないで!うわぁああああああ!」

そう言って朱奈は泣き始めた。

泣き崩れる朱奈の頭を胸に抱き寄せた。

そして黙って頭を撫でた。

「朱奈は良い子ね。でも駄目なのよ。私の命はもう・・・」

私の言葉を聞いても朱奈はただ泣き崩れていた。

一、二時間は泣き続けたのだろうか・・・。

泣き続けた少しは落ち着いた様子を見せていた。

頃合と考えて私は再び説得を始めた。

「朱奈・・・。私が死んでも生きていなきゃ駄目よ」

私は朱奈に言い聞かせる様にそう言いました。

「やだ。1人で生きていたくない・・・。わたしは1人でなんて生きていたくない。綾女ちゃん・・・。わたしを置いてかないで・・・。死ぬのならわたしも連れて行って!」

そう言った朱奈の顔は悲痛に満ちていた。

心に大きな衝撃を受けた私は始めて朱奈に対して怒りを覚えた。

(どうして?私の望みなのに。朱奈が生きる事が私の望みなのに!)

 天を仰ぐと空は夕焼けに染まっていた。

 抱いた激情を言葉にして思わず朱奈にぶつけていた。

「何を言っているの朱奈!私はあなたに生きていて欲しいのよ!」

衝動のままに大声を上げて朱奈に強い言葉を浴びせてしまった。

私に初めて怒鳴られた朱奈はショックの余り固まり怯えていた。

途端に私の心に後悔が過ぎって私は冷静さを取り戻すと、出来るだけ優しく語り掛けた。

「私はあなたを連れて死ぬ事は出来ないわ。朱奈・・・。どうして生きようとしないの?私はあなたの未来を願っているのに・・・」

「だってわたし・・・。1人でいたくないから・・・。綾女ちゃんと一緒にいたいから・・・」

私の言葉に対して朱奈は小さな声でそう答えるのが精一杯だった。

(このまま話しても何も変わりそうには無い)

 それが今の朱奈に抱いた私の素直な感想だった。

朱奈の目の前で私が死ねば朱奈はきっと後を追おうとするのだろう。

私はそんな事を望まなかったしそんな事になって欲しくも無かった。

本当なら朱奈には私の最後を看取って欲しかった。

けれどその願いは叶いそうには無かった。

朱奈に生きて貰う為にはこれしか方法は無かった。

私は左手に《魔法の種》を出現させようとした。

だが《魔法の種》は出現しなかった。

残された魔力では生成出来なかったのかも知れなかった。

けれど私には今、どうしても《魔法の種》が必要だった。

だから私は残りの命を削ってでも《魔法の種》を作りたかった。

何もかもを削っても良い。

今この時だけでも出現させて欲しい。

強く願い・・・。何かが削れた感じが私の中を駆け抜け私は最後の《魔法の種》を出現させた。

その《魔法の種》は《命令の種》(アポイントシード)。

今回使うのは《メモリー》の魔法を組み合わせた改良版で内部に仕込んだ私の命令に従った効果を発揮する。

内蔵した命令は・・・。

 

 

筒地綾女に関する全ての記憶を失いこの公園を出て生きる事

 

 

私にとって最も辛い魔法だった。

「朱奈。ごめんなさい」

「綾女ちゃん?」

私の言葉に驚いて顔を上げた朱奈の額に《命令の種》を仕込んだ。

その瞬間、朱奈の瞳は虚ろな物となりベンチから立ち上がると、そのまま私の前から離れて行った。

去り際、意識は無い筈なのに朱奈の瞳から一筋の涙が流れていた。

それを見て私の中に様々な思いが駆け巡った。

私は泣いた。

誰もいなくなったベンチの上で久しぶりに泣いた。

1人で泣きじゃくった。

「ごめんなさい。朱奈。こうするしか無かったのよ」

私はその日、愛する者から自分に関する記憶を失わせた。

それは私自身に向けられた愛との別れでもあった。

でも私は永遠に朱奈を愛し続ける。

例え朱奈が私の事を忘れたとしても・・・。

○

 

 夜の闇が公園を覆った。

私の座るベンチには外灯の明かりが照らしていた。

泣けるだけ泣いて気の済んだ私はベンチでぼんやりとしていた。

私の前を数人の人が通って行ったが、誰も関心を抱く事は無かった。

むしろ余りにも悲しげな様子に関わるのを避けたのかも知れなかった。

けど、私は今、孤独に過ごしたかったのでそれでも良かった。

(大丈夫かい?)

不意に感情を伴わないテレパシーが私にかけられた。

私の隣には何時の間にかキュウたんが座っていた。

「あらキュウたん。来ていたのね」

涙を拭いながら私は声を掛けました。

(これも僕の役割の1つだからね。君が《魔女》となる所を見届けさせて貰うよ)

 キュウたんはそう言って私の顔を覗き込んできた。

 そうだ・・・。

 私はこれから《魔女》になる。

 どうせならそれまでキュウたんと過ごすのも悪くは無いだろう。

「ねえ。キュウたん」

 なるべく優しくキュウたんに語り掛けた。

 せめてこれまでの感謝をキュウたんには示したかった。

(なんだい?綾女)

 赤い瞳をキュウたんは向けて来る。

 相変わらずガラス球の様な瞳で何の感情も無い。

「《魔女》になるまで話し相手になって貰っても良いかしら?」

(構わないよ)

 相変わらず感情の無い反応を見せるキュウたんに苦笑しながら私は話し始めた。

「それじゃあ・・・。私とキュウたんの出会いから振り返りましょうか」

(うん。あの日も夕方だったね。そして綾女に《魔法少女》の事を詳しく説明したのは夜だったね)

「ええ。今でも思い出すわ。その次の日に私は《魔法少女》としての真実を知ってしまった・・・」

 今から大体、3年前のあの日・・・。

 私はキュウたんと出会い己の願いを知った。

 だから私は・・・。

 中学校卒業と同時にキュウたんと契約して《魔法少女》となった。

 同時にそれまで名乗っていた名前を捨てて筒地綾女と名乗り愛する存在である、朱奈を願いの対価としてこの世界に誕生させた。

《流浪の魔法少女》として《魔女》や《使い魔》を引き寄せる《右目の呪い》を持った朱奈と私は各地を旅した。

 旅の過程で私はキュウたんと共に魔法を使った様々な実験を行って来た。

 他にはキュウたんにとって都合の悪い《魔法少女》を殺害するアサシンとしての役割も果たした。

 これまでの思い出をキュウたんと喋りながら思い出していた。

「そうね・・・。色々な事をしたわね・・・。ねえ。キュウたん。瑞光璃阿のソウルジェムを使った実験はどうなったの?」

 既に数ヶ月前に私は瑞光璃阿のソウルジェムを実験の為に手放していた。

《魔女化》させた訳では無いが今はまだ実験の答えが出ていない。

 取るに足らない実験でもある為、詳細は語らない。

 いずれキュウたんが答えを出すだろう。

(特に変わりは無いよ)

「そうなの。せめてキュウたんにとって良い結果に繋がると良いのにね」

(そうだね。最終的に、どうなるかは、まだ判断は付かないよ。最後の時まで観察をしてから答えを出す事にするよ)

「そう。その時、私はもういないだろうから、キュウたんに任せる事にするわ」

(分かった。僕にとっても興味深い実験だから観測を続けるよ)

「それで良いのよ。キュウたん」

 それから私とキュウたんは再び雑談を開始した。

 これが最後の雑談だと思うと心に再び寂しさが起こった。

 やがて私は再び涙を流し始めて喋れなくなったが、落ち着くと再び会話を再開した。

「私ね・・・。こうなって始めて解った事があるわ」

(何をわかったんだい?)

「《魔女》になるのって怖いと思っていたけど今は・・・。怖くないわ」

(どうしてだい?)

 意外な返答にキュウたんは首を傾げていた。

 相変わらずの反応だ。

「《魔法少女》の魂たるソウルジェムがグリーフシードへと羽化して《魔女》となる。だとするならばそれは、ある意味では生まれ変わるとも言えるんじゃ無いかしら?随分とご都合主義な考え方だけど・・・。そう考えるともう怖くは無いわ」

(そう言う考え方もあるんだね)

「死ぬ事が無いキュウたんには解らないかも知れないわね」

(じゃあ綾女。僕からも質問をしてもいいかな?)

「なあに。キュウたん」

(どうして朱奈の記憶を消して別れたんだい?)

「それはね・・・。朱奈は、私が死んだら自殺すると言ったからよ。私は朱奈に生きていて欲しかった。だから朱奈が生きる為に私に関する記憶を全て消去したのよ。本当は《右目の呪い》を解いてあげたかったけど・・・。私にはそんな魔力も残ってなかったわね」

(そっか。理解は出来ないけどそれが綾女にとっては必要な事だったんだね)

「ええ。そうよ。そうだわ。キュウたんにお願いがあるんだけど?」

(なんだい?僕に出来る範囲なら実行してあげるよ)

「キュウたんは朱奈の事をこれからも見ているんでしょ?」

(そうだね。奇跡によって生まれた朱奈はとても興味深い存在だ。たとえ《魔法少女》にはなれなくても観察する対象なのは変わらない)

「それなら朱奈と私の事を調べようとしている《魔法少女》が現れたら、私と朱奈が死亡した時点で私と朱奈に関する全てを話しても良いわ」

(何故、話しても良いんだい?)

「私と朱奈が死亡した後なら私達の全てを話したって構わないわ。キュウたんは契約した《魔法少女》の詳細を基本的には了承が無い限り話さないから私と朱奈の事なら私は了承するから話しても構わないわ」

(分かったよ。じゃあ綾女と朱奈の事を調べようとする《魔法少女》がいたら話す事にするよ)

「ありがとうキュウたん。最後にキュウたんに伝えたい事があるのだけれど」

(何を伝えたいんだい?)

「あなたは私にとって最高にして唯一の友達よ。たとえあなたに感情が無くてもその事は私の中で永遠に変わらないわ」

(ありがとう。光栄だよ。綾女)

「たとえキュウたんが、私に隠し事をしていてもね」

 私の前で初めてキュウたんは身体を狼狽したかの様に硬直させた。

 どうやら私が言った言葉は図星だったらしい。

(・・・。気が付いていたのかい?)

「ええ。何時からか、気が付いていたわ。《他の魔法少女》を観察すると尚更、気が付いちゃうわね」

(そうか・・・。なら綾女には話すけど君には本来、《魔法少女》としての資格は無かった。けれど僕たちインキュベーターは《魔法少女》としての資格を一定の基準の元で定めている。その基準を時代や社会情勢に合わせて調整する為に時には本来、資格を持たない少女を《魔法少女》にして基準の再確認を行う事もあるんだ。君の2色に輝くソウルジェムがその証とも言える。2色に輝くなんて現象自体が希少だから分かり易いからね)

「そうなの。自分以外に2色に輝くソウルジェムを持った《魔法少女》と会った事が無いのよ。気が付かない方が可笑しいわ」

 私は少し笑ってしまっていた。

(綾女。君は怒っていないのかい?)

 キュウたんは私が怒りを感じていると予想していたらしい。

 キュウたんの予想に反して私は怒りを感じてはいなかった。

「だって私は、奇跡で愛する者を作り出す事を願ったのよ。その奇跡が叶ったのにキュウたんを恨む訳が無いじゃない。私の中にあるのはキュウたんへの感謝の気持ち。だからキュウたん。私はあなたの望む《魔女》になるわ」

(そうか。君は本当に変わっているね。綾女)

「ええ。私は変わっているわ。《魔法少女》は希望を絶望へと変えた時に《魔女》へと生まれ変わる。けれどねキュウたん。私は絶望をしないわ」

(どう言う事だい?綾女)

 キュウたんは戸惑った様に首を捻っていた。

「私はね、キュウたんとの約束を守る為に《魔女》になるのよ。たった1つの契約と言う約束を守る為に。私は絶望じゃなくて約束を交わしたキュウたんの為に《魔女》になるわ」

そこまで言って私は左手の掌にソウルジェムを出現させた。

私のソウルジェムは赤と青の輝きを無くし既に黒く穢れていた。

表面に浮かぶ傷はもはや修復が不可能な事が一目瞭然だった。

(綾女。約束を守る為に《魔女》になろうとする。そんな《魔法少女》は今まで1人もいなかったよ。君は本当に変わっているよ)

「褒め言葉と受け取っておくわ・・・」

私にはもう喋る力も無くなってしまった。

意識が黒く濁って行く・・・。

視界が霞んで来た。

臭いや味、全ての感覚が薄くなって行く・・・。

(ねえ。キュウたん)

(なんだい?綾女?)

幸いテレパシーはまだ通じる事が出来た。

(約束を覚えているでしょう?)

(勿論、覚えているよ)

キュウたんからの返答に私は安堵を覚えた。

(綾女。今までお疲れ様)

私との約束を守ってキュウたんはそう言ってくれた・・・。

(キュウちゃん。今まで本当にありがとう)

そう心の中で告げて私は最後に残った力で瞳を閉じた。

 

○

 

SIDE キュウべえ

 今、キュウべえの前で《魔女》が生まれようとしていた。

かつて筒地綾女と言う《魔法少女》の抜け殻となった肉体の左手に乗せられたままとなっていた赤と青のソウルジェムは元の色が判別出来ない程に黒く穢れ大きな傷が表面に無数に走っていた。

と何の前触れも無くソウルジェムの表面が砕け散りその内部からグリーフシードが出現した。

グリーフシードからは穢れが際限なく広がり、グリーフシードを中心に穢れを具現化した肉体を持つ《魔女》が生まれた。

生前の筒地綾女の《魔法少女》としての姿を模り赤と青のマダラ模様をした《魔女》だった。

全身を布の様な物で覆っていたがその手足の長さは左右非対称だった。

良く観察すると分かるが体全体、つまりは全身が左右非対称に構成された身体を持っていた。

(これが綾女の変貌した《魔女》か・・・。この《魔女》の性質は《矛盾》。何だろう?この性質は一体?)

その性質はキュウべえが今まで感じた事の無い性質だった。

 

《矛盾》

 

 言葉どおりに取るのならつじつまが合わないと言う意味となる。

キュウべえが、その意味を計ろうと思考しようとした瞬間に《筒地綾女の変貌した魔女》は飛び去ってしまった。

直ぐにキュウべえは自分達の個々の端末が持つ視界のネットワークを駆使して《筒地綾女の変貌した魔女》の後を追った。

《筒地綾女の変貌した魔女》が向かった先にいるキュウべえの1体は直ぐに《筒地綾女の変貌した魔女》の元へと向かった。

(ここは・・・。《他の魔女》の結界?どうしてわざわざ、《他の魔女》の元へ?《魔女》は基本的に個々では敵対していながらもお互いの存在を認識している為に顔を合わせる事は無い筈なのに?)

考察を続けながらキュウべえは躊躇う事無く結界に入り《筒地綾女の変貌した魔女》の元へと向かった。

結界の入り口は魔力のぶつかり合いによって大きく揺れておりキュウべえ単体でも簡単に入る事が出来た。

結界の奥では《筒地綾女の変貌した魔女》がこの結界を作り上げた《別の魔女》を捕食していた。

既に《別の魔女》の身体は四肢を裂かれ原型を止めていない。

《筒地綾女の変貌した魔女》は《別の魔女》の身体を次々と捕食してグリーフシードをも捕食して行く。

 同時に内在している魔力が上昇しより左右非対称な姿へと変化して行く。

(なるほど。《矛盾》の性質とはこう言う事だったのか。それにしてもまさか《魔女》を捕食する《魔女》とはね・・・。こうなるとは思わなかったよ。綾女。君は《魔女喰らいの魔女》なんだね)

 そう言いながらもキュウべえは自身の言葉に違和感を覚えた。

 まるで《魔女喰らいの魔女》が綾女であるかの様に話したからだ。

(もしかして・・・。君が僕に植え付けた《感情の種》の影響かな?僕たちの中にはそのデータが今でも残っている。残していたデータが反応したのかな?)

 キュウべえがそう語っても《魔女喰らいの魔女》は答えない。

 当然の事だが目の前の《魔女》に話し掛けている訳では無いのだから。

そう思った時、《1人の魔法少女》が結界の中に現れて《魔女喰らいの魔女》に向かい攻撃を仕掛けた!

 どうやらこの地区を縄張りとする《魔法少女》が《魔女喰らいの魔女》を見つけて戦いを挑んだらしい。

しかし《魔女喰らいの魔女》は《魔法少女》の攻撃をただ受けた。

傷を負いながらもその様子はまるで関心が無いと言う様な様子でもあった。

そのまま《魔法少女》を相手にする事無く《魔女喰らいの魔女》はその場を飛び去って行った。

結界が崩壊する中、悔しそうな表情を見せる《魔法少女》と対照的にキュウべえは感情の伴わない目で結論を下していた。

(結界も《使い魔》も作らない。《他の魔女》の結界を奪う。《魔法少女》は相手にせず《魔女》だけを捕食するか。確かに《魔女》としては《矛盾》した存在だね)

 結論を下しながらもキュウべえは、取り敢えずは脇にいる《魔法少女》に対して警戒を促すべく話し掛ける事にした。

 

○

 

 何故、私の意志はあるのだろう?

 いいや。これは本当に私の意志なのだろうか?

 もう一度、自分の過去を思い出してみる。

 私は・・・。《魔法少女》の筒地綾女・・・。

 けれど最後の記憶に寄れば私は《魔女化》した筈だった。

 その時点で私の意志は消滅すると思っていた。

 なのに何故、私にはまだ意識があるのだろう?

 そもそもこれは本当に私の意志と言えるのだろうか?

 もしかするとだが・・・。

 ソウルジェムが変化してグリーフシードとなる。

 以前、《メモリー》と言う《魔法少女》に頼んでグリーフシードから絶望の記憶を抽出する事に成功している。

 つまりは・・・。

 今、存在する私の意志と言うのはグリーフシードの内部に残留していた筒地綾女の記憶が何らかの要因で結び付き擬似的に形成されたのでは無いかと想像してみる。

 そうするとこの私の意志は筒地綾女の意志では無く出来の悪い複製品と言った所だろう。

 最もここまでの想像が出来る時点で違和感が存在していた。

 もしかしたらソウルジェムがグリーフシードに変化した後も魂は、そのまま内在されたままなのかも知れないと考える方が自然なのかも知れない。

 自身の周囲が暗闇と言うのも私の孤独を引き立てていた。

 孤独であるが私はまだ正気とも言うべき精神状態を保つ事が出来た。

「朱奈・・・。あなたは生きているの?出来ればあなたにもう一度会いたい・・・。でも会っても、あなたは私を私だと気が付く筈が無いのに・・・」

 そう思いながら私は自分が感じる感覚に違和感を覚えていた。

 この暗闇の中で私の意志が覚醒してから常に何かを感じていた。

 それが何なのか始めは分からなかった。

 けれど時が経つに連れてその感覚ははっきりとしていた。

 身体が動いていると言う感覚だった。

 けれど私に身体を動かしている自覚は無い。

 なのに何故か私の身体は動いていると言う感覚を感じていた。

 どう言う事なのだろう?

 時折、起こる何かを食べる感覚と関係があるのだろうか?

 そう思いながらも再び時が経過した時、私の周囲はおぼろげだが映像が見え始めていた。

 始めは何の映像か分からなかった。

 けれど時が経ち、何かを食べる感覚を経て行くに連れて私の五感は戻って行き周囲の映像は色を増してはっきりと認識出来る様になり1つの推論を導き出した。

「これって・・・。もしかして《魔女》になった私が動いているのを感じているという事なのかしら?」

 この推論は確実に当たっているだろう。

 映像に出て来る私の腕は怪物の腕をしていたのだから。

 けれど私には五感が戻ったが身体を動かす事は出来なかった。

やはり私の意志はグリーフシードに突如として現れた副産物に過ぎず《私が変化した魔女》にとっては無駄な物に過ぎず切り離されているのだろう。

何を食べているのかもはっきりとして来た。

《私が変化した魔女》は《魔女》を捕食していた。

 始めは何の味も感じなかったが最近では血と鉄、砂を食べているかの様な食感を味わう羽目になった。

 とても不快だったが慣れるしか無かった。

 特にグリーフシードを捕食した時の味は筆舌にし難い。

 私には何かを選ぶ権利と言うモノが存在しないからだ。

 時々、《私が変化した魔女》を倒そうとする《魔法少女》とも遭遇した。

襲って来る《魔法少女》の中には見知った顔もいたが気にする事でも無かった。

正直、どうでも良かったが《私が変化した魔女》は《魔法少女》を相手にする事無く、直ぐに別の場所へ向かってばかりだった。

《私が変化した魔女》が何処へ向かっているのかは私には分からない。

 ただ私は何かを感じていた。

 まるで引き寄せられているかの様な感覚を私は感じていた。

 その感覚の正体が掴めないまま気の遠くなる様な時が流れた。

 朱奈の事を思う事で私は意志を保っているとも言えた。

「朱奈・・・。会いたい。あなたに会いたい・・・。でも会えない・・・」

 会いたいが会う事は出来ない。

 私の心には大きな矛盾が内在していた。

 矛盾はどんどん大きくなり私の心をかき乱して行く。

 心が・・・。

 魂が引き裂かれる様でもある。

 それから私は目の前に写る周囲の風景をただ流し見るだけとなった。

 何を見ても心を動かされない筈でもあった。

 でも心を動かされる物を私は見てしまった。

「朱奈!?」

 私の目の前には朱奈がいる。

 恐怖に怯える朱奈が存在している。

 今すぐ朱奈を抱き締め安心させたいと言う思いが芽生えたが直ぐに否定される。

 私の身体はもう《魔法少女》では無い。

 こんな醜くおぞましい姿で朱奈と会う事は出来ない。

 私の心が朱奈と再会する事を拒んでいると言うのに《私が変化した魔女》は朱奈に近づいて行く。

「どうして!?朱奈は《魔女》じゃない!?何故、引き寄せられるの!?」

 私の疑問は朱奈の右目を見た時に分かった。

《右目の呪い》が発動している。

「今日は金曜日なのね・・・。じゃあ暫くすれば大丈夫ね・・・」

 けど《私が変化した魔女》が朱奈に近付いた時に、その現象は起こった。

 突如として何かが逆流して来たのだ。

 目の前の風景がぐにゃりと歪んだのが感じられた。

「何が起きたの?」

 私は《私が変化した魔女》と繋がる五感から私が何かを喪失したのを感じ取った。

 けど私の意志は明瞭であり何を喪失したのかは分からなかった。

「何が起きているの・・・」

 言いながらも私は抱いた疑問の答えが直ぐに判明する事を予感した。

 予感は的中した。

《私が変化した魔女》は突如として暴れ出すと右腕で朱奈を掴み上げるとその鋭い牙を持って朱奈に噛み付いた。

 怯えていた朱奈の身体から頭が無くなり同時に血の味が口の中に広がった。

 その味が《私が変化した魔女》が朱奈を捕食したからだと感じた時、私の心を繋ぎ止めていた何かが壊れた。

 

 

「朱奈!?どうして!?そんな!?どうしてなの!?いやぁあああああああ!?私がどうして!?どうして私が朱奈を!?」

 

 

 泣き叫ぶ私の疑問に誰も答える事は無い。

 ただ私の叫びだけが、反響して私を更に苦しめる。

 苦しみと絶望の余りのた打ち回る私に呼応する様に《私が変化した魔女》は暴れ続けた。

 暴れ続ける《私が変化した魔女》の視界に《黄色い髪の魔法少女》が写る。

《黄色い髪の魔法少女》を見た瞬間に私は直感した。

 彼女は私と同じ怒りを持った人間だと。

 それを裏付ける様に《黄色い髪の魔法少女》は衝動のまま、必死に《私が変化した魔女》に攻撃を仕掛けて来る。

 きっとあの《黄色い髪の魔法少女》は朱奈を保護し助けてくれていたのかも知れなかった。

 だからこそ必死になって《私が変化した魔女》を倒そうと攻撃を仕掛けて来ている。

 私がそんな事を思っていると隙を付いて《私が変化した魔女》は《黄色い髪の魔法少女》の胸を左手の鋭い爪で貫いた。

 血を吐きながらも《黄色い髪の魔法少女》は巨大な銃を出現させると《私が変化した魔女》に向けて来た。

 膨大な魔力が巨大な銃に注がれているのが分かる。

《私が変化した魔女》も負けじと口に魔力を集中させて炎を放射しようとしていた。

《黄色い髪の魔法少女》は身体を貫く爪から逃れようとしていなかった。

 ただ怒りのままに《私が変化した魔女》を殺そうとしているのだ。

「そうだ・・。殺して・・・・。私を・・。殺して!愛した人を殺した、私を殺して!」

《黄色い髪の魔法少女》に対して私は懇願した。

 私を殺して欲しいと。

 もう私は思考したく無かった。

 本物かどうかも分からない、私の意志など消えてしまえば良い。

 今の私が抱く率直な本心だった。

 願いだった。

 その時、《黄色い髪の魔法少女》の攻撃と《私が変化した魔女》の攻撃がぶつかり合った。

 大きな魔力と魔力がぶつかり合って周囲を破壊して行く。

 同時に私の身体が焼けて消滅して行く感覚に襲われた。

 私の目の前では《黄色い髪の魔法少女》が私と同じ様な痛みを味わっているが見える。

 怒りのままに《黄色い髪の魔法少女》は魔力を注いで行く。

《私が変化した魔女》と繋がる五感から《私が変化した魔女》が押されているのが感じられる。

 けれどこのままでは《黄色い髪の魔法少女》も無事で済む筈が無かった。

 そこで私は《黄色い髪の魔法少女》が最初から相討ちになるつもりだったと確信した。

「あなたも・・・。朱奈を守れなかった責任を感じているのね・・・。良いわ。速く・・・。私を、殺しなさい」

 その言葉と同時に私の視界は真っ白に包まれた。

 

綾女の章 完

 




これで綾女の章は終りです。
と言っても連載はまだ終わりません(笑)
綾女と朱奈の物語はもう少し続きます。
次回、ある少女による世界の書き換えによって生じる、世界再編の章(仮題)が待機しているので楽しみにお待ち下さい!
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