偽書魔法少女アヤメ☆マギカ PSEUDEPIGRAPH PUELLA MAGI AYAME MGICA 作:ジャックノルテ
○Aパート
「さっちゃん。何処に行ったんだろう?それにここ何処だろ?」
わたしは知らない街の中を彷徨っていた。
ここが見滝原市と言う場所なのは知っていたが2・3回しか来た事が無く地理には疎かった。
悪い事に一緒に見滝原市に来てくれたさっちゃんとも人ごみの中ではぐれてしまった。
だからさっちゃんを探している事に違いは無いが他にも探している人がいる。
どんな顔や姿をしているのかも分からない。
けれど、わたしより年上の少女だと言う事だけは分かっていた。
この世界を守る為に戦っている《魔法少女》は、きっと何処かにいる筈なのだから。
街が夕焼けに染まったのを見ながらわたしは探し続けた。
《魔法少女》に会ってどうしても尋ねたい事があるのだから。
けれどさっちゃんも《魔法少女》も見つからずわたしは途方にくれて公園のベンチに座っていた。
「さっちゃん。何処にいるの・・・」
思わず涙ぐみそうになり下を向いてしまっていた。
「朱奈・・・!」
突然、わたしの名前を呼ぶ声を掛けられた。
思わず正面を向くとそこには長い黒い髪が印象的なお姉さんが、わたしも知っている見滝原中学校のかわいいと評判の制服を着てわたしを見つめていた。
お姉さんを見た瞬間、わたしの中に何か違和感を覚えた。
かつて《呪いの右目》を持っていたからなのか、わたしは人一倍、何かの違和感を感じ取る事が出来た。
その違和感が何なのかは分からないけどお姉さんとわたしは初対面の筈だった。
「お姉さんは誰?わたしを知っているの?」
「そうかも知れないわね」
お姉さんの眼つきはわたしが見る初めての物だった。
何か視線に違和感を覚える・・・。
もしかして・・・。
「あの!お姉さんは《魔法少女》何ですか?」
その質問にお姉さんは一瞬、顔をしかめました。
けれどすぐに表情を直すと笑みを浮かべながらわたしの質問に答えました。
「そうね・・・。そうなのかも知れないわ・・・」
はっきりとした返答では無かったけれどわたしにはお姉さんが《魔法少女》もしくは《魔法少女》と大きな関わりを持っていると感じられた。
薄い笑みを浮かべながらお姉さんはベンチに座ったわたしに近付いて来た。
耳に下げたイヤリングが妖しい輝きを見せわたしの視界に印象的に写った。
「あの・・・。出来たら教えて下さい。円環の理について」
わたしは必死に頭を下げて頼み込みました。
「どうして円環の理について知りたいの?」
「そこにわたしの大切な人がいるからです・・・。わたしは・・・。出来るなら・・・。人生を終えたら、そこに行きたいんです!」
そう言ってわたしは大切な人である綾女ちゃんの事を思い出していました。
わたしは頭を上げてお姉さんの方を向きました。
お姉さんは少し怖い笑みを浮かべてわたしを見つめていました。
「そう・・・。円環の理に・・・。そこに行きたいのなら強く願う事ね」
「強く願う?」
「ええ。何かを成したいのならそれだけ強い気持ちを抱かないと駄目よ。何者にも遮れない強い思いを。躊躇ったりしない事を」
お姉さんにそう言われてわたしは自分の気持ちについて考えてみた。
円環の理について知りたいのは、そうだけどまだまだ生きている途中で気持ちが定まっていないと思う。
「わたし・・・。まだ自分の気持ちがはっきりしないけど・・・。もっと強く願う事にする!」
「もしかしたらあなたは円環の理に行けるかも知れないわね・・・。けれど大切な人を心配をさせては駄目よ」
そう言ってお姉さんはわたしの頭を撫でてくれました。
けどその瞬間に私はまた違和感を覚えました。
それは恐怖感に似たものでした・・・。
お姉さんがふっと上を見上げたのを見てわたしもつい上を見上げてしまいました。
その瞬間、わたしの心に夜の闇への恐怖やさっちゃんと逸れてしまった事への恐怖と後悔が広がった・・・。
さっちゃんが心配しているかも知れない。
そう思って視線を正面に戻すとお姉さんはいなくなっていました。
空を見ると夕焼けが街を照らして・・・。
この場所が怖くなったわたしは直ぐにその場を離れた。
とにかくさっちゃんに会いたかった。
1人でいるのがとても怖かった。
だからわたしは必死に走ってさっちゃんを探した。
人生を生き抜くという綾女ちゃんとの約束があったけどわたしはとても弱くて1人で生きて行けなかった。
だからわたしは必死に走った。
「朱奈!」
その時、真横の路地からわたしを呼ぶ聞き覚えのある声が響いた。
紫色の髪を揺らしてさっちゃんがわたしに向かって走って来た。
「さっちゃん!」
怖くて怖くて泣きそうになっていたわたしは、堪え切れずに涙を流してさっちゃんの元へ走った。
少なくともさっちゃんは今はわたしと一緒にいてくれるから・・・。
○Bパート
その日、私は大切な人との再会を果たして一人で夕方の公園に向かっていた。
心は歓喜に満ちて私は楽しげな足取りで、公園の道を歩いていた。
その時、公園のベンチに座る一人の少女の姿が目に入った。
少女を見て私は驚いてつい小さく声を発してしまった。
「朱奈・・・」
その少女、朱奈は私が行った再度の世界改変以前の世界で出会った少女だった。
《魔女》や《使い魔》を引き寄せてしまう《呪いの右目》を持つ少女・・・。
だが目の前にいる朱奈の右目からは呪いを感じ取る事が出来なかった。
代わりに何からかの繋がりを感じ取る事が出来た。
私の声を聞いた朱奈は私の方へ驚いた顔を向けた。
「お姉さんは誰?わたしを知っているの?」
そう朱奈に問われて私はどう答えようかと一瞬、考えを巡らせ答えた。
「そうかも知れないわね」
そう言って私はベンチに座る朱奈に近づいた。
私の答えに朱奈は嬉しそうな顔をして私にさらに質問をして来た。
「あの!お姉さんは《魔法少女》何ですか?」
その質問に私は一瞬、顔をしかめたがすぐに表情を直した。
目の前の朱奈に自分の心理を読まれる事が無いとは思ったが私は自分の心を隠す為にあえて笑みを浮かべたのだ。
心を隠す笑みを・・・。
「そうね・・・。そうなのかも知れないわ・・・」
「あの・・・。出来たら教えて下さい。円環の理について」
朱奈はすがる様に私を見つめ頭を下げた。
私は朱奈の質問に答えるかどうか少し悩んだが、以前の世界の朱奈に行った行為を思い出しちゃんと答える事にした。
「どうして円環の理について知りたいの?」
「そこにわたしの大切な人がいるからです・・・。わたしは・・・。出来るなら・・・。人生を終えたら、そこに行きたいんです!」
そう答えて朱奈は顔を上げた。
私には朱奈がどうしてそこに行きたいのかを推理してみる事にした。
朱奈を生み出したのは、確か筒地綾女と言う《魔法少女》だった。
以前の世界で朱奈はその筒地綾女によって記憶を失わされたとインキュベーターから聞いた。
そして記憶を取り戻した朱奈は大切な人の事を思い出せたと私に語った。
つまりは円環の理にいる大切な人は《魔法少女の筒地綾女》と言う事になる。
そこで私は朱奈の右目から出ている繋がりが円環の理に繋がっている事を感じ取った。
この繋がりはもしかしたら筒地綾女との繋がりなのかも知れなかった。
朱奈はこの繋がりの作用によって呪いを失っている様でもあった。
そしてこの円環の理との繋がりを持つ以上、朱奈は死した後に《魔法少女》では無いが円環の理へと向かえるのかも知れなかった。
だがそれよりも問題なのはこの円環の理との繋がりだ。
この朱奈が持つ繋がりがこれ以上、見滝原に存在すれば私にとって良くない事態が起きるのは容易に想像がついた。
この問題を解決する簡単な方法は朱奈の殺害、もしくは存在自体の完全な消去だが朱奈が円環の理に導かれた場合の影響を考えると殺害の実行は躊躇われた。
でもそんな事をしなくてもただ朱奈をここから離れさせれば良いだけだった。
だから私は発する言葉に軽い暗示を込めて朱奈に言った。
「そう・・・。円環の理に・・・。そこに行きたいのなら強く願う事ね」
「強く願う?」
朱奈は少し困った表情を見せた。
「ええ。何かを成したいのならそれだけ強い気持ちを抱かないと駄目よ。何者にも遮れない強い思いを。そしてためらったりしない事を」
それは私の偽りの無い気持ちでもあった。
朱奈は少し考えてからゆっくりと答えを出した。
「わたし・・・。まだ自分の気持ちがはっきりしないけど・・・。もっと強く願う事にする!」
そう語る朱奈の顔には懸命さ見せていた。
それを聞いた私は朱奈に最後の言葉をかけた。
「もしかしたらあなたは円環の理に行けるかも知れないわね・・・。けれど大切な人を心配をさせては駄目よ」
そう言いながら私は朱奈の頭を撫でた。
撫でながら私は夕焼けの空を見上げながら朱奈の心に軽い恐怖と後悔を与えた。
夜の闇への恐怖や1人で勝手にここまで出歩いてしまった事への後悔を・・・。
朱奈は夕焼けの空を見つめて後悔の念を募らせていた。
私はそして瞬時に朱奈の側から離れて近くの樹木の陰に隠れて朱奈を見つめた。
ベンチの上で困惑の表情を見せた朱奈だったが直ぐに少し怯えた表情を見せるとそのまま公園から走り去って行った。
その様子を私は満足げに見ていた。
「あなたはもう関わらない。私の世界にはもう・・・。その代わり・・・。人としての人生を歩みなさい」
私が施した軽い恐怖と後悔はすぐに消える。
けれど朱奈には見滝原に近づかないと言う暗示をかけていた。
だからもう朱奈は二度とここには現れない。
ただの人間としての人生を歩んで行く。
私や《魔法少女》とは関わる事の無い平凡な人生を・・・。
朱奈が走り去るのを見つめた私は夜の公園に向かって軽い足取りで歩を進めた。
END
これにてあやめ☆マギカは最終回です。
このエンディングのBパートに登場する少女は悪魔となった暁美ほむらです。
当初は別のエンディングを構想していましたが統合性の問題からボツにしました。
機会があればIFルートとして公開しても良いかもしれません。
では偽書シリーズ第二弾でお会いしましょう。