偽書魔法少女アヤメ☆マギカ PSEUDEPIGRAPH PUELLA MAGI AYAME MGICA 作:ジャックノルテ
その点をご注意下さい。
取り戻した!
私の愛する存在をこの世界に取り戻した!
でも・・・。
「取り戻せたのは・・・。記憶だけね。何か器に入れないと記憶は水の様に流れて海の様な円環の理に帰ってしまう・・・」
私はこの虚空とも言える空間から再編中の世界を見つめた。
記憶を入れる器となる少女を探す為だ。
なるべく円環の理を刺激しない少女が良い。
年の近い同姓の肉体ならば記憶も馴染み易いだろうと言う打算もあった。
不意に視線を感じた。
感じる筈の無い人間の視線。
「あり得ない!誰なの!」
思わず私は狼狽してしまった。
今、この宇宙は私の思いに沿って二度目の書き換えが行われている。
それを感知しているのは私とインキュベーター、巻き込まれた邪魔者が2人だけの筈。
私以外にこの場所を感じられる者はいない筈!
意識を視線の方向へ向けると同時に、視線を放っている人間を魔力よって強引にこの場所へ引き寄せた。
それは顔馴染みの少女だった。
と言っても以前の私が行った時間遡行によって私と出会った記憶を失っている為、私とは初対面だった。
「朱奈・・・。そう・・・。あなただったのね」
この場に引き寄せられた朱奈は目を閉じて気を失っている。
自分に向けられた視線が朱奈の持つ《呪いの右目》が原因だと悟り私は安堵を覚えた。
決して円環の理が予想外の動きを見せた訳では無いからだ。
「さて・・・。どうしようかしら・・・」
朱奈の事を見ながら私は考えていた。
《呪いの右目》さえ排除すれば朱奈はこの場を感じる事も出来なくなる。
けれど何か私は引っ掛かりを覚えていた。
朱奈にはまだ他の使い道がある様な気がしたからだ。
魔力で朱奈の心と体を探ってみる・・・。
「これは!?」
心と体を探った結果に私は驚いていた。
知っていたが驚きを隠せなかった。
朱奈は誕生して3年程しか経過していない。
かつて筒地綾女の願いによって朱奈は10歳の肉体と精神を持ってこの世界に生まれた。
それは奇跡によって成された事であり普通ならあり得ない誕生だった。
以前の私はインキュベーターからその事を聞いてはいたが、重要視していなかった。
大して役に立たない情報だからだ。
けど今は違う。
13歳の肉体と精神を持っている朱奈であったが、その魂に蓄積された情報は3年分しか存在しない。
それなら私の愛する者の記憶は14年分もある。
朱奈に14年分の記憶を注入すれば朱奈として生きた3年分の記憶は完全に失われるだろう。
口頭が無意識に吊り上るのを私は感じ取っていた。
後は朱奈の意識を誘導して14年分の記憶を受け入れ易くさせるだけ・・・。
「誰・・・?見えないけど誰かいるの?」
突如として朱奈は覚醒して言葉を喋った事に驚きながらも私は説得と言うよりも意識を誘導する為の言葉を与えて行く事にした。
私の言葉には魔力が込められ人の意識をある程度、誘導する事が出来る。
「ねえ。あなた、家族に会いたくないの?」
私の言葉を受けて朱奈の意識が戸惑いを見せたのが分かった。
「わたしに家族はいないの・・・。いても記憶が無いから分からないの・・・」
最後の言葉には悲しみの感情が交じっていたが気にする事無く私は言葉をかけ続けた。
「私があなたの記憶を戻してあげる。私はあなたの家族が何処にいるのかも知っているわ」
私の言葉を聞いて朱奈の意識は更に戸惑いを深めた様だった。
「どうしてそんな事が出来るの?あなたは誰なの?」
「私はね・・・。《魔法少女》よ。筒地綾女と同じ。あなたの記憶を戻す様に依頼されたのよ。その準備が今、整ったのよ」
咄嗟に作った言い訳だったが朱奈の心は疑う様子を見せなかった。
「記憶が戻ったら今までの記憶はどうなるの?」
「残るわ。でも一週間位は元の記憶の方が強いから旨く思い出せないかも知れないけど、いずれ全てを思い出すわ」
朱奈の心は揺らいでいた。
だから私は更にもう一押しする事にした。
「あなたの家族があなたの帰りを待っているわ。ほら、見えるでしょう?あなたを愛する強い母親に優しい父親。あなたを慕う可愛い弟もあなたを待っているわ」
言葉通りのイメージを私は魔力を使って朱奈の頭に送り込んでいた。
それは私が愛する存在の持つ家族との思い出の一部。
朱奈の心は私が見せた記憶を自分の失われた過去だと錯覚し始めていた。
「さあ。始めましょう。大丈夫よ。どんな結果になっても私はあなたを家族の元へ送り届けるから」
「うん。あの・・・」
「どうしたの?朱奈?」
「わたしを・・・。わたしを忘れないで・・・」
まるで私の行おうとしている事を見透かした様な言葉だった。
心の動揺を抑え私は朱奈の頭に私が愛する存在の14年分の記憶を注ぎ込んだ。
「大丈夫よ。私は決してあなたを忘れないわ。お帰りなさい。まどか・・・」
既に朱奈の魂は私が愛する存在、鹿目まどかの記憶に押し潰されバラバラとなって二度と目覚める事は無い。
鹿目まどかの記憶に従って朱奈の肉体も鹿目まどかの肉体へと変化して行く。
最も肉体の変化は私が魔力によって助力を行っていたが・・・。
朱奈の魂を犠牲にした事に私は後悔をしていない。
結果的に朱奈が心から欲していた家族を与えたのだ。
本人がもうそれを感じる事は無いが朱奈の願いは叶えていた。
一人の少女を犠牲にして、今度こそ私は愛する存在、鹿目まどかをこの世界に取り戻した。
この話が完全に番外編となっている理由は朱奈の持つ《呪いの右目》の処遇が決まっていない段階で考えた話だからです。
また《新編叛逆の物語》以降に物語が作られた場合に統合性が取れない事が明白だったので没にしていました。
朱奈をまどか復活の為に器としてしまうと言う展開が残酷過ぎてやり過ぎたと思い封印していた物語です。
なお悪魔ほむらの視点で書いています。