偽書魔法少女アヤメ☆マギカ PSEUDEPIGRAPH PUELLA MAGI AYAME MGICA 作:ジャックノルテ
SIDE 巴マミ
熱があるのに無理をして長い話を終えた朱奈さんはそのまま眠ってしまった。
眠った朱奈さんの頭をそっと撫でると私はベランダの方に向かった。
既に彼?がベランダ来ている事は独特の気配から把握する事が出来た。
そのままベランダに向かうと私の目の前に一匹の白い生物が赤い瞳で私を見つめていた。
「キュウべえ。待たせたわね」
私はそう言いながらベランダのドアを開いた。
「やあ。マミ。どうやらお客さんがいる様だね」
そう言って入って来たのは耳が長い猫に似た不思議な生き物、キュウべえだった。
キュウべえこそが少女達と契約を行い、この世界に幾多の《魔法少女》を生み出している存在だった。
私はキュウべえの僕と言う言葉使いから男の子として接してきたが僕?と称しているが本当に性別があるのかも定かでは無い。
「ええ。だから聞きたいんだけどあなたは《魔女》を引き寄せる朱奈と言う少女の事は知っていたの?」
私は真剣に話したけれどキュウべえは無表情なままだった。と言うよりも表情を変える事が出来ないらしい。既にその事には慣れていたけれどももう少し表情豊かでも良いと私は感じていた。
「僕も《他の魔法少女》から朱奈の事は聞いてはいたよ。ただ朱奈はここ二ヶ月、行方不明だったから僕も見滝原に朱奈がいるのは知らなかったよ」
無表情なキュウべえと視線を合わせながら私は質問を続ける事にした。
「そうなの・・・。じゃあ朱奈が《他の魔法少女》に監禁されて虐待されていたのも知らなかったのね?」
念を押す様に私はキュウべえを見つめた。
その赤い瞳には何の感情も感じ取る事が出来なかった。
人間であれば動揺して瞳が大きく見開かれる事があるだろうがキュウべえはポーカーフェイスのままだった。
「そうだね。知らなかったよ。朱奈は毎週、金曜日に結界に閉じ込められて姿が見えなくなるからね。でも僕にとっては《魔女》を引き寄せる朱奈の存在は珍しいけど僕の役割には余り関わりの無い存在だからね」
キュウべえの言う役割とは魔法少女の素質がある少女を見つけて奇跡と引き換えに契約し魔法少女とする事だった。
勿論、契約後もグリーフシードの処理や《魔女》や《使い魔》の能力を推測すると言ったアフターサービスも行っていたが・・・。
けれどキュウべえの返答に正直、私は不快感を感じ取っていた。
「まあ冷たいのね・・・。でもキュウべえの役割に関わりが無いってどういう事?」
少し呆れた様に言葉を返した私だったがキュウべえの言っていたその一言が気になった。
「そうだね。朱奈には《魔法少女》としての素質が無い。この子は《魔法少女》になる事は決して出来ない」
キュウべえは朱奈の寝ているベッドの方を見つめて私にそう答えた。
「《魔法少女》には決してなれない。ならキュウべえ。あなたは朱奈の右目が何で《魔女》を引き寄せるのか解らないの?《魔女》の引き寄せを止める方法は無いの?」
「そうだね。何故、朱奈が《魔女》を引き寄せてしまうのか僕にも理由は解らない。ただ朱奈の引き寄せは彼女の右目に施された《呪い》から生じる魔力が原因みたいだ。その魔力のお陰で朱奈は結界に取り込まれても《魔女》や《使い魔》に襲われずに済んでいる。だから右目を取り除けば恐らく引き寄せは止まると思うよ」
キュウべえは無表情のまま私の方を向いて答えた。
「右目を取り除くって他に方法は無いの?」
反射的に答えながら私は出来るなら自分が朱奈を救いたいと思っていた。
だが右目を取り除くとなるとそれは自分には到底、出来ない事だった。
私の魔法では右目を取り除く事が出来ても再生させる事は出来なかったのだ。
出来ない事も無いが朱奈に大きなトラウマを与える事になってしまう・・・。
それに右目を取り除ば必ず病院の世話にならなければならず、私と朱奈は別れなければならなかった。
けれどそれは嫌だと私の心は叫んでいたがそれを押し止める。
「それこそ奇跡しか無いんじゃないかな」
キュウべえは事も無げに私の質問にそう答えた。
「奇跡・・・」
それこそもう起こり得ない物だった。
他人の為に奇跡を使ってしまえばその人はその分、不幸を背負う事になってしまう。
ふと私の脳裏にかつて自分と共に戦った《1人の魔法少女》の事が浮かんだ。
佐倉杏子・・・。
彼女だったら朱奈をどうするのだろう?
ふとそんな事を思ったが私にはどうするのか分かっていた。
昔の彼女ならともかく悪い噂を聞いてしまう彼女ならば朱奈を《魔女》を引き寄せる道具として使ってしまうだろう。
だからこそ私が朱奈を守らなければならないと私は心に誓いを立てていた。
(私は朱奈を守って見せる・・・)