偽書魔法少女アヤメ☆マギカ PSEUDEPIGRAPH PUELLA MAGI AYAME MGICA 作:ジャックノルテ
SIDE 佐倉杏子
風見野市内にある寂れたビルの屋上に結界が発生していた。
その結界の入り口は大きく色を変えて点滅して中で戦闘が行われている事が明白だった。
結界の中では1人の《魔法少女》が結界の中で《魔女》と戦っていた。
赤い髪を揺らしながら魔力を帯びた赤い槍を《魔女》に向かって振り回す。
「貰ったあ!」
佐倉杏子の構えた赤い槍は彼女の気合と勢いに乗り《トカゲの様な魔女》の体を貫いた。
《トカゲの様な魔女》は、大きな悲鳴を生じさせながら体を崩して行き《トカゲの様な魔女》のいた場所にはグリーフシードが零れ落ちた。
「へへ。グリーフシード貰いと」
佐倉杏子は《トカゲの様な魔女》の体から零れ落ちたグリーフシードを嬉しそうに拾い上げた。
嬉しくない筈が無く彼女はグリーフシードを得る為に《魔女》と戦っていたのだ。
けれど拾い上げる直前に佐倉杏子は違和感を覚えていた。
「!」
佐倉杏子はグリーフシードを拾い上げた瞬間、目の前に魔法の防御壁を張った。
それは長い間、戦いで培った直感からだった。
ガギイ!
そこへ謎の腕の様な物が魔法の防御壁にぶつかって来た。
それは先程、倒した《トカゲの様な魔女》と同じ様な姿をした《トカゲの様な魔女》の腕だった。
どうやら別の階層に潜んでいたのだが仲間を倒された事でここに表れた様だった。
持っていた赤い槍を構え直すと佐倉杏子は新たに現れた《トカゲの様な魔女》に向き直った。
「やっぱりね。結界が崩れないから妙だとは思ったんだ。もう1匹《魔女》がいたとはね」
この結界の中にいた《使い魔》が人間を食べて《魔女》に成長したのか元々、《魔女》が2匹いたのか。
そんな事が頭を過ぎったが佐倉杏子は直ぐにそれを頭の隅へ追いやった。
そんな事はどうでも良かった。とにかく今は新たに現れた《トカゲの様な魔女》を倒す事が先決である。
「もう1匹、いるのからお前のグリーフシードも頂くよ!」
そう言って佐倉杏子は《トカゲの様な魔女》が魔法の防御壁を破るのを待った。
幸い、今しがた出現させた防御壁は意図的に効果は長続きしない様に張っていた。
《トカゲの様な魔女》が防御壁を破ったその瞬間に攻撃を仕掛ける算段だった。
バキイ!
遂に《トカゲの様な魔女》が防御壁を破った瞬間、佐倉杏子の前に《黒い影》が割り込んで来た。
「な!?何だ!?」
驚いた佐倉杏子が動きを止めてしまった。
それが戦闘において致命的な事だと分かってはいたが、反射的に止まらずにはいられなかった。
だが《トカゲの様な魔女》の振り下ろした腕は《黒い影》によって阻まれて佐倉杏子に届く事は無かった。
突如現れた黒い影を警戒して《トカゲの様な魔女》も離れた。
佐倉杏子も距離を取りながら新たに表れた《黒い影》を観察していた。
その《黒い影》は自分よりも高い身長だったが全身を赤と青の布の様な物で覆っていたが、その手足は左右で長さがバラバラで色もマダラ模様だった。
そしてこの全身から放出する魔力は佐倉杏子が常に戦っている《魔女》と同じ物だった。
「また新しい《魔女》なのか!?」
だが新たに現れた《黒い影=マダラの魔女》は背後にいる佐倉杏子に目を暮れる事も無く前方にいる《トカゲの様な魔女》に襲い掛かった。
《マダラの魔女》は腕も足も爪も牙も使って《トカゲの様な魔女》に攻撃を仕掛けていた。
機先を制された《トカゲの様な魔女》は殆ど抵抗する事の出来ないまま《マダラの魔女》によって一方的に叩きのめされていた。
驚く佐倉杏子の目の前で《魔女》同士の一方的な戦いが終わりを告げた。
そして《マダラの魔女》は《トカゲの様な魔女》を打ち倒すと鋭い爪で《トカゲの様な魔女》の体を引き裂きその鋭い口を持ってその体を捕食し始めた。
「なっ食ってやがる・・・。《魔女》が共食いを始めるなんて・・・」
余りにも凄惨な目の前の状況に思わず佐倉杏子は目を逸らした。
《魔女》同士で共食いを行う等、初めて見る事だった。だが武器である槍の構えは解かなかった。
《マダラの魔女》の捕食が終わった瞬間に勝負を決める。佐倉杏子はそう心を決めていた。
「!」
だが突如として結界の崩壊が始まった。
その瞬間に《マダラの魔女》は《トカゲの様な魔女》の落としたグリーフシードを長い舌で口に含むと結界の崩壊に生じた穴に向かって跳躍して飛び去ってしまった。
「待ちやがれ!」
叫び佐倉杏子も《マダラの魔女》を追ったが結界の外には既に《マダラの魔女》は逃げ去った後だった。結界のあったこの場所は風見野市にある寂れたビルの屋上に戻っていた。
「クソ。何だったんだ。あの《魔女》は・・・。まさか《魔女》が《魔女》を喰らうなんて・・・」
悔しさから佐倉杏子は思わずそう叫び地面を蹴っていた。
「どうやらここにも現れたみたいだね」
その声を聞いて佐倉杏子が振り向くと何時の間に現れたのかキュウべえが背後から歩いて来た。
「キュウべえ。お前、あの《魔女》の事を知ってるのか?」
「うん。あれは《魔女喰らいの魔女》だよ」
「《魔女喰らいの魔女》?」
怪訝な佐倉杏子に対してキュウべえは説明を始めた。
「うん。最近になって現れた僕も今まで見た事の無い変わった《魔女》だよ。《魔女喰らいの魔女》は困った事に《魔女》だけを狙って現れるんだ。《魔法少女》や人間には目もくれる事も無い」
無感情なキュウべえの説明を聞いて佐倉杏子はさらに表情を強張らせた。
「《魔女》を食うってそうしたら喰われた《魔女》のグリーフシードはどうなるんだよ?」
「当然、《魔女喰らいの魔女》に取り込まれるだけだよ」
キュウべえの説明を聞いて佐倉杏子は不愉快極まりないと言う表情を見せた。
「たくっ。そんな《魔女》が現れるなんて聞いてねーよ!」
苛立ちから思わず大声を上げた。
「僕に言われても困るよ。《魔法少女》が条理を覆す様に《魔女》だってどんな強力な《魔女》がいつ現れてもおかしくは無い。君がグリーフシードを得る為にはあの《魔女喰らいの魔女》と戦う事にも繋がるだろう」
キュウべえの言葉に佐倉杏子は黙った。確かにキュウべえの言う通りでもある。
グリーフシードを得ようとすれば先程の《マダラの魔女》=《魔女喰らいの魔女》と戦う事に繋がるからだ。
「フン。今度、あたしの前に現れたら倒してやるだけさ。じゃあな」
そう言って佐倉杏子は寂れたビルの屋上から飛び降りて行った。
残されたキュウべえは《魔女喰らいの魔女》が逃げたと思しき方向を見ていた。
「この方角は・・・。やっぱり見滝原に向かっているのかな?」
誰に言う事無くそう呟くとキュウべえは夜の闇へと消えて行った。