偽書魔法少女アヤメ☆マギカ PSEUDEPIGRAPH PUELLA MAGI AYAME MGICA 作:ジャックノルテ
SIDE 巴マミ
「ふう・・・。朱奈さん。寝ちゃったのね」
呟く声に反応する事無く横になる私の隣で朱奈さんは安らかな寝息を立てていた。
心なしか熱を出していた時よりも表情は和らいで見える。
(このまま眠っても良いかしら?でもまだ宿題が終わっていないし・・・。朱奈さんを起こさない様にリビングに降りて宿題を・・・)
そう思った時、私は魔力を感じ取った。
《使い魔》の魔力だ。それもかなり近い。
今日は朱奈さんの様子が気に掛かったので学校帰りに行っているパトロールは何時もより速く切り上げていた。
やはりパトロールを速めに切り上げたのは良くなかったのかも知れない。
「夜更かしは良くないのだけど・・・」
そう呟きながらも私は朱奈さんを起こさない様にベッドから抜け出るとリビングに降りてベランダのドアを開いた。
夜風が体に当たって寝巻き姿では少し寒かったが気にする事無く私は《魔法少女》としての姿に変身した。
そのまま、《使い魔》の魔力が感じられる方向にベランダから一気に跳躍する。
跳躍しながら向かう方向にある建物にリボンを伸ばして引っ掛ける事を繰り返して瞬時に私は《使い魔》のいる公園の上空に辿り着いた。
まだ結界も作れない一匹の《使い魔》に対して落花しながら私は躊躇う事無く一気に多数のマスケット銃を出現させ一斉射撃で《使い魔》を銃撃した。抵抗する事すら出来ずに《使い魔》は私の銃撃で消滅した。念の為に公園に降り立った私は周囲を確認して見た。
特に誰も犠牲にはなっていない様である。
「あなたは、このまま朱奈を保護するつもりなの?」
振り向くと私の背後に《魔法少女》としての姿を取った暁美ほむらさんが歩いて来た。
驚いた私は直ぐに反論する事は出来なかった。直前まで何の気配も無かったにも関わらず私の背後に突如として現れた暁美さんに驚いて何も出来なかった。
「そんな事、あなたに関係が無いと思うわ」
思わず私は暁美さんに敵意を向けてしまっていた。私が感情的になっている事を暁美さんに悟らせたくは無かったが、私は自分の感情を抑えられなかった。
ようやく出会えた、私を孤独から救ってくれるかも知れない朱奈さんとの関係を私は他人に口を挟まれる事に不快感を覚えていたからだ。
それに暁美さんは朱奈さんに拳銃を突き付けていた。そんな相手に朱奈さんの事を任せる訳には行かないと私は思っていた。
「朱奈の持つ《呪い》は危険な物よ。あなたはそれを分かっていないの?」
「分かっているわ。だから私が朱奈さんを保護して《呪い》で引き寄せる《魔女》を倒せば問題は無い筈でしょ。それともあなたも朱奈さんの《呪い》で引き寄せた《魔女》を倒して得られるグリーフシードが狙いなの?」
私の言葉に暁美さんは表情を変える事は無かった。
「そんなんじゃ無いわ。私は別に縄張り争いにも興味は無いわ。でも朱奈が引き寄せる《魔女》が原因で死んでいった人達もいるのよ。あの子は《呪い》を持ち続ける限り他人に不幸を撒き散らし続けるわ」
「何が言いたいの?」
暁美さんが何を言いたいのか分からない私はストレートに聞いてみる事にした。答えてくれるとは思えなかったが・・・。
「朱奈を保護するのなら右目を潰して《呪い》を排除すべきよ。そうすれば公的な機関に保護させる事も出来るわ。あなたは《呪い》を使って朱奈を縛り続けるつもりなの?」
「っ!」
そうなのよ。そうなのだけれど私はそんな事を行う事は出来なかった。
あんなに酷い思いをした朱奈さんに対して更なる痛みを与えかねない行為を私は行う事が出来なかった。
抱いた思いを言い当てられて反論する事が出来ない私と暁美さんの間に沈黙が続いた。
けれど私より先に暁美さんは口を開いた。
「そう。あなたがそうしたいのならそうすれば良いわ。けれど忠告するわ。朱奈が引き寄せた《魔女》によってあなたが殺されれば結局、朱奈を苦しめるだけなのよ。それ位なら《呪い》から開放してあげるべきよ」
そう言って暁美さんは私に背を向けると歩き出してしまった。
私は何も言い返す事が出来なかった。
暁美さんが言った言葉は全て当たっていた。
薄々とだけれど。
いいえ。自分の気持ちに嘘を付くのは止めよう。
そう。私は《呪い》を使って朱奈さんを自分に縛り付けていたかった。
自分の孤独を癒す道具として・・・。
そうなのだ・・・。
結局は私も朱奈さんを道具として扱っているのかも知れなかった。
キュウべえと契約をして佐倉さんと別れてから私の孤独は募るばかりだった。
《魔法少女》として戦い続けると言う事は自分を孤独へと追い込んで行く事なのかも知れなかった。
それでも・・・。
私は朱奈さんと共に在りたかった。佐倉さんと違って《魔法少女》としての契約を行えない朱奈さんは私を裏切る筈が無いと思っていた。
けどそれはとても自分勝手な願いだった。
「私って・・・。何て自分勝手なの・・・」
暁美さんの言葉で自分の身勝手さに気付かされたけど・・・。
それでも私は朱奈さんと共に在りたかった。
帰りも同じ様に街の間を私は魔力を足に集中して跳躍すると自分のマンションのベランダに辿り着いた。
《使い魔》との戦いでは殆ど疲れなかったけれど暁美さんとの会話で私は精神的に疲弊していた。
様子を見ようと朱奈さんの眠るベッドに向かって見ると少し険しい表情をした朱奈さんの手が何かを探す様に動いていた。
「朱奈さん。起きているの?」
小声で私は声を掛けてみるが朱奈さんは反応し無かった。
「どうしたのかしら?」
ベッドに座りながら私は自分の手を朱奈さんの手に近づけた。
朱奈さんの手が私の手に触れると朱奈さんの手は私の手を握り締めてきた。
「あら・・・。起きてはいないのよね・・・。もしかして・・・。私を探していたのかしら?」
そう思うと朱奈さんの行動にも合点が言った。
きっと私を探していたのだ。
表情は和らいだ様に見える。
「大丈夫。私はあなたを1人にしたりしないわ・・・」
私は朱奈さんの隣で横になると掛け布団に入り込んだ。
そして優しく朱奈さんの肩に手を掛け抱き寄せるようにした。
例え自分勝手な願いなのかも知れないけれど私は朱奈さんと別れる事を望んでいなかった。
間違った願いかも知れないけれど私は朱奈さんと共にいたかった。
私はもう1人でいるのは嫌だった。
もう孤独ではいたくない・・・。