00. 討滅者と忍者娘
「あれが件の『魔王候補』春日アラタさんっスか」
今、自分――風間レヴィは『王立ビブリア学園』の校舎の屋根でおにぎり食べつつ、本日転入してきた噂の少年を見てるとこっス。…ごく普通の社会で育った『魔王因子』を持つ、生まれながらの魔王候補。無自覚に“世界構築”という高等魔術を行っていたという少年。
「おはよう、レヴィ。――彼が例の魔王候補君か。できるなら友人でありたいけど、彼の在り方次第だからなぁ。あ、お茶飲むかい?」
「遠慮なく貰うっス。…いい茶葉っスね。ミラさん達やセイジに早々に滅されないければいいっスけどね。…で、そちらのマスターさんは何て言ってるっスか?」
「『今月の予定に変更なし。月一の御茶会には必ず参加すべし。魔王候補? 取り敢えずマスタービブリアに任せとけばいんじゃね?』らしいです」
「御茶会優先て、何考えてんスか、あの人…」
「興味の対象外には大概そんなものですよ、あの方は。さて、そろそろ予鈴です。行きましょうか」
「っス」
鳴海セイジ、17歳。自分と王立ビブリア学園以外の機関に籍を置く生徒で、『対魔王』の討魔剣士として留学生という名目でこの学園にいる自分の元従者であり、対人戦闘の最初の師でもあるッス。そして――自分達『トリニティセブン』が暴走した場合は『討滅者(イレイザー)』となる男。
(――もし、自分があのアラタって人に堕とされたらセイジは自分達を殺しにかかるんスよね。…ま、そうならないように自分が気を付ければいいんスけど)
教室へと向かうセイジ――余談だが、レヴィと同じ教室である――の背を注視しながら冷静に考察する。なんとも皮肉な関係になったものである。
正直、トリニティに至った今でもセイジに勝機を見出すどころか五分に持ち込めるかどうかさえわからない未知数の相手。
(全ては魔王候補であるアラタさん次第。あの人が歩む道の先にあるのは『破滅』か『未来』か、どっちスかね?)
『魔王候補』の目覚めと入学を機に、全ての歯車が動き出す。
異界図書館の主『異端の魔王』はこの世界の往く末を見据えて暗躍し、3つの魔道学園の大魔公(パラディン)達は己が求める先を見るが為に画策する。
少年少女の未だ知らぬ深遠の中、運命(カウントダウン)は始まった。
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………つーか、さっき近付く気配も音も自分察知出来なかったっス。自分が未熟なんスかね? それともセイジがオカシイんスかね?